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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F04B
管理番号 1111142
異議申立番号 異議2000-74072  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-08 
確定日 2004-12-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3039762号「往復動型圧縮機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3039762号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続きの経緯
特許第3039762号の請求項1に係る発明についての出願は、平成7年3月7日に出願され、平成12年3月3日に設定登録され、その後、カルソニックカンセイ株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月20日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否
1.訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載について、「表面被覆層」とあるのを、「メッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層」に訂正する。
イ.訂正事項b
明細書の段落【0009】の記載について、「表面被覆層」とあるのを、「メッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層」に訂正する。
ウ.訂正事項c
明細書の段落【0015】の記載について、「表面被覆」とあるのを、「表面被覆層」に訂正する。
エ.訂正事項d
明細書の段落【0016】の記載について、「することが好ましい。」とあるのを、「する。」に訂正する。
オ.訂正事項e
明細書の段落【0031】の記載について、「kg/cm2、吐出圧力=3kg/cm2、回転数=1000r.p.m」とあるのを、「kg/cm2、吐出圧力=3kg/cm2、回転数=1000r.p.m.」に訂正する。
カ.訂正事項f
明細書の【図面の簡単な説明】の記載について、「【図2】 ピストンの嵌合部を示す腰部」とあるのを、「【2】 ピストンの嵌合部を示す要部」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、発明の構成に欠くことのできない事項である「表面被覆層」をこれに含まれる事項である「メッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層」に変更し、しかも、「メッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層」については、願書に添付した明細書の段落【0016】に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項b及びdは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項c、e及びfは、いずれも、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.取消理由についての判断
1.訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである(上記II.1.ア.訂正事項a参照。)。
「【請求項1】軸と平行に設けられた複数個のシリンダボアをもつシリンダブロックと、該シリンダブロック内に回転自在に保持された駆動軸と、該駆動軸に支持され該シリンダブロック内で回転するカムと、該シリンダボア内に摺動自在に収容されたピストンと、該ピストンと該カムとの間に摺動自在に介在し該カムの回転により該ピストンを往復運動させるカムフォロワとを備えた往復動型圧縮機において、使用冷媒ガスをR134a(CF3CH2F)とし、前記ピストンは、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記カムフォロワは半球部を有するシューであって鉄系金属を母材とし、該カムフォロワと摺接する、ピストン側の嵌合部には錫を主体としたメッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層をもつことを特徴とする往復動型圧縮機。」
2.引用刊行物
当審が通知した取消理由通知に引用した刊行物1(実願昭55-118934号(実開昭57-43366号)のマイクロフィルム)には、「一般に回転斜板式圧縮機は、第1図に示すように、ケーシング1の一壁を貫通して設けられた駆動軸2のケーシング内に位置する部分に斜板3が固着され、斜板3の周縁部に係合された双頭型ピストン4が駆動軸2および斜板3の回転により往復動せしめられて流体の吸入、圧縮、吐出を行うようにされている。」(第2頁第10〜16行)、「ピストン4は装置の軽量化のためにアルミニウム合金で形成されている。」(第4頁第4〜6行)、「平坦面部と球面部とから成る略半球状のシューを設け、その平坦面を斜板の周縁部側面に当接させるとともに、その球面をピストンの斜板対向面に形成された半球状の凹部に収納して配設し、且つ、該シューを斜板の材料となじまない材料で形成するとともに、該ピストンの半球状の凹部を該シューの材料となじまない材料から成る部材によって被覆するものである。」(第5頁第3〜10行)、「シュー15は、斜板の材料である鉄系金属となじまない材料であるアルミニウム、銅、鉛、これらの合金などの材料から形成されている。ピストン14の凹部14aは、シュー15の材料となじまない材料である鋳鉄などの鉄系金属からなる板状部材Aによって被覆されている。」(第5頁第19行〜第6頁第4行)、及び「シューと摺接するピストンの面をシューの形成材料となじまない異種材で被覆するようにしたのでシューはピストン本体と直接に接触することがなく、従ってシューの形成材料としてピストン本体の形成材料とのなじみ性を考慮することなく単に斜板の材料となじまない性質の材料を選択して使用すればよく、もつてシューの材質選択の自由度が増し、しかも斜板およびピストンとの両接触面における焼付きを防止することができるので、機械の製造コストの低減を図ることができる。」(第7頁第18行〜第8頁第8行)との記載、並びに第1図の回転斜板式圧縮機の断面図、第2図のピストンとシューとの係合部の部分拡大断面図、第3図のピストンとシューとの係合部の部分拡大断面図、及び第4ないし6図の変形例を示す拡大断面図の記載からみて、
軸と平行に設けられた複数個のシリンダボアをもつシリンダブロックと、該シリンダブロック内に回転自在に保持された駆動軸2と、該駆動軸2に支持され該シリンダブロック内で回転する斜板3と、該シリンダボア内に摺動自在に収容されたピストン14と、該ピストン14と該斜板3との間に摺動自在に介在し該斜板3の回転により該ピストン14を往復運動させるシュー15とを備えた往復動型圧縮機において、前記ピストン14は、アルミニウム合金とし、前記シュー15は半球部を有するシュー15であって斜板の材料である鉄系金属となじまない材料であるアルミニウム、銅、鉛、これらの合金などの材料とし、該シュー15と摺接する、ピストン14側の凹部14aには耐焼付き性を向上させる被覆層をもつ往復動型圧縮機、
が記載されている。
同じく刊行物2(特開平5-26154号公報;取消理由通知書における刊行物3)には、「この駆動軸11に対して駆動斜板13を傾斜角度可変に連結し、この駆動斜板13に対してウォブル板16を摺動自在に取付けてある。摺動斜板13とウォブル板16との間には、スラスト軸受14及びラジアル軸受15が配設され、これら両軸受14、15はコロ状軸受である。ウォブル板16には、複数のピストンロッド22の一端が円周方向等間隔に取付けてあり、このピストンロッド22の他端はピストン23に連結している。このピストン23は、シェル17内に設けられたシリンダ24の内部で摺動するように設けられ、このシリンダ24のボア内に流入される冷媒ガスを圧縮し吐出するようにしている。」(第2頁第1欄第36〜47行)、「さらに、今日では、冷媒であるR12はオゾン層を破壊するために規制の対照となっており、このような環境破壊を起こさない代替の冷媒として、例えばフロンガス134a(CH2FCF3)が用いられようとしている。しかし、このフロンガス134aは分解しにくい物質であり、このガス134aを用いて従来のコンプレッサ3を作動させた場合には、軸受14,15等の摺接部材間に酸化物や弗化物などが沈着せず、摩擦抵抗が大きく、摺接部材の磨耗、摺接部材間の材料移着などが発生する虞がある。例えば、軸受14,15は鉛青銅(LBC5)であり、ウォブル板16はタフライド処理を施した鋳鉄により夫々形成されているが、これら摺接部材自体は、潤滑性を有していないので、摺接部材同士の凝着の防止は潤滑油膜と、冷媒の分解によって生じる潤滑性塩化物あるいは弗化物の沈着とにより行っている。【0006】本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、摺接部材表面に潤滑膜を形成しないフロンガスR-134aを冷媒として用いた場合でも、コンプレッサの起動時、長時間停止後の作動初期、高負荷時等において、摺接部材間の摩擦が小さく、部材の磨耗、部材間の材料移着などが発生する虞がない容量可変斜板式コンプレッサを提供することを目的とする。」(第2頁第2欄第43行〜第3頁第3欄第15行)、「シリンダ内に流入されたフロンガス冷媒R-134aをピストンの摺動により圧縮して吐出するようにした容量可変斜板式コンプレッサにおいて、少なくとも前記ラジアル軸受は、滑り軸受により構成し、この滑り軸受を構成するスリーブを、2〜10重量%の錫と98〜90重量%の銅とからなる金属材料に、10〜20体積%の個体潤滑剤粒子を混入してなる固体潤滑性複合材料により構成したことを特徴とする容量可変斜板式コンプレッサである。」(第3頁第3欄第25〜33行)、及び「この滑り軸受を構成するスリーブを、固体潤滑性複合材料により構成したので、これら摺接部材自体が自己潤滑機能を発揮し、部材表面に潤滑油膜の形成あるいは塩化物、弗化物の沈着が起こらなくても摺接部材間の摩擦抵抗は小さいものとなる。したがって、摺接部材表面に潤滑油膜、および塩化物、弗化物が十分に、あるいはまったく形成されない場合でも摺接部材の磨耗、部材間の材料移着などが発生する虞がない。」(第3頁第3欄第39〜47行)との記載、並びに図1及び図2の記載からみて、
オゾン層破壊の問題から、使用冷媒ガスにR134a(CF3CH2F)を採用すること、R134a(CF3CH2F)は、摺接部材間に摩擦抵抗が大きく、摺接部材の磨耗が発生する虞があり、摺接部材表面に潤滑膜を形成しないこと、
及び、
軸と平行に設けられた複数個のシリンダボアをもつシリンダブロックと、該シリンダブロック内に回転自在に保持された駆動軸11と、該駆動軸11に支持され該シリンダブロック内で回転する駆動斜板13と、該シリンダボア内に摺動自在に収容されたピストン23と、該ピストン23と該駆動斜板13との間に(ウォブル板16を介して)摺動自在に介在し該駆動斜板13の回転により該ピストン23を往復運動させるピストンロッド22とを備えた往復動型圧縮機において、使用冷媒ガスをR134a(CF3CH2F)とした往復動型圧縮機、
が記載されている。
同じく刊行物3(特開平3-141876号公報;取消理由通知書における刊行物2)には、「従来、第4図に示すように、軸と平行に設けられライナlaを備えた複数個のシリンダボア11をもつシリンダブロック1と、このシリンダブロック1内で回転自在に保持された回転軸2と、この回転軸2に固定されシリンダブロック1内で回転する斜板3と、シリンダボア11内に摺動自在に配置されたピストン4と、ピストン4と斜板3との間に摺動自在に介在し斜板3の回転によりピストン4を往復運動させる半球状のシュー5とをもつ斜板式圧縮機が知られている。この斜板式圧縮機では、回転軸2の回転により斜板3が回転すると、シュー5を介してピストン4がシリンダブロック1のシリンダボア11内を往復運動し、ガスの吸入、圧縮、排出を行なう。」(第1頁下右欄第3〜16行)、「かつシリンダブロックにおける鉄製のライナーを削除すると、シリンダブロック及びピストンがともにアルミニウム系でありながら直接摺接するため、「ともがね」現象によって両者に焼付きを生じ易いという不具合がある。」(第2頁上左欄第7〜12行)、「本発明の斜板式圧縮機は、上記課題を解決するため、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるシリンダブロックを備えた斜板式圧縮機において、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材としかつ少なくとも前記シリンダボアと摺接する表面には錫を主体とした表面被覆層をもつピストンを採用するという新規な構成を採用している。ピストンはアルミニウム又はアルミニウム合金を母材とする。アルミニウム合金としては、例えばAl-Si系合金、Al-Si-Cu系合金などを使用できる。この母材材料としては硬質粗大粒子をマトリックス中に含むものを用いるのが好ましい。ここで、硬質粗大粒子とは、硬度がHv300以上、より好ましくはHv600以上で、平均粒径が20〜100μmのものをいい、例えば初晶シリコンがある。このような母材材料として代表的なものにアルジル合金がある。アルジル合金は、Si含有率が13〜30重量%程度と共晶組成以上のシリコン含有量をもち、かつマトリックス中に初晶シリコンを有するため、優れた摺動特性を有し、厳しい摺動条件で使用されるピストンの母材として特に適している。なお、硬質粗大粒子を含む他の母材材料としては、Al-Mn金属間化合物、Al-Si-Mn金属間化合物、Al-Fe-Mn金属間化合物、Al-Cr金属間化合物などがある。母材表面に下地処理として、アルマイト処理、リン酸マンガン処理、リン酸亜鉛処理、Znメッキ処理を施した後に、後述する表面被覆層を形成することが好ましい。耐焼付性をより向上させることができるからである。ピストンは錫を主体とした表面被覆層をもつ。表面被覆層は、シリンダボアと摺接する表面に形成されていてもよく、ピストン全体に形成されていてもよい。この表面被覆層によりピストンがシリンダブロックとの摺動時の摩擦抵抗を低減することができ、苛酷な使用条件下における両者の焼付きを防止することができる。表面被覆層は、錫単独であっても、銅、ニッケル、亜鉛、鉛、インジウムの中から選ばれる少なくとも一種の金属と錫との合金であってもよい。錫単独で表面被覆層を形成した場合には摩擦係数は低下するが、錫の特性から比較的軟質となり摩耗しやすい。錫とともに銅、ニッケル、亜鉛、鉛、インジウムから選ばれる少なくとも一種の金属を共存させることにより、表面被覆層の摩擦係数は低く維持できるとともに、硬度が向上して耐摩耗性に優れる。錫と他の金属との共存比率は、目的とする性能に応じて実験により種々選択できる。例えば銅を共存させる場合、表面被覆層中の銅の含有量は0.1重量%〜50重量%とするのがよい。銅が0.1重量%より少ないと共存させた効果に乏しく耐摩耗性の向上がみられず、50重量%より多くなると錫による効果が減少してシリンダブロックとの摩擦抵抗が増大するため好ましくない。銅、ニッケル、亜鉛、鉛、インジウムから選ばれる少なくとも一種の金属は、表面被覆層中で0.8重量%〜1.2重量%とするのが特に望ましい。表面被覆層にはさらにフッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン粉末、カーボン粉末、窒化ホウ素粉末などの固体潤滑剤を共存させることも好ましい。このようにすれば摩擦抵抗を一層小さくすることができる。この表面被覆層を形成するには、化学メッキ、電気メッキ、CVD法及び蒸着、スパッタリングなどのPVD法が利用できる。特にメッキ法により形成することが推奨される。メッキ法によれば錫と銅などの他の金属とを容易に共析させることができる。またメッキ法によればフッ素樹脂、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を表面被覆層に容易に取込むことができる。なお表面被覆層の厚さは、1〜5μm程度とするのが好ましい。これより薄くなると摩擦係数の低下が少なく、厚くなり過ぎるとはく離などの強度上の不具合が生じる場合がある。[作用]本発明の斜板式圧縮機は、ピストンの母材がアルミニウム又はアルミニウム合金であるため、軽量である。」(第2頁上左欄第18行〜第3頁上左欄第16行)、「軸と平行に設けられた複数個のシリンダボア61をもつシリンダブロック6と、シリンダボア61内に摺動自在に配置されたピストン7とを有するものである。」(第3頁上右欄第8〜11行)、及び「本実施例の斜板式圧縮機に用いられたピストン7は、アルミニウム100重量%からなるピストン本体の全面に、化学メッキ法により形成した錫100重量%、lμmの厚さの表面被覆層をもつものである。(実施例2)本実施例の斜板式圧縮機に用いられたピストン7は、表面被覆層が異なること以外は実施例1と同様である。すなわち、本実施例におけるピストン7は、錫99重量%、銅1重量%の組成の表面被覆層をもつ。(実施例3)本実施例の斜板式圧縮機に用いられたピストン7は、表面被覆層が異なること以外は実施例2と同様である。すなわち、本実施例におけるピストン7は、実施例2と同じピストン7に150℃×1Hrの熱処理を施したものである。(実施例4)本実施例の斜板式圧縮機に用いられたピストン7は、表面被覆層が異なること以外は実施例1と同様である。すなわち、本実施例におけるピストン7は、錫99重量%、銅0.9重量%、フッ素樹脂粉末0.1重量%の組成の表面被覆層をもつ。(比較例5)本比較例の斜板式圧縮機に用いられたピストン7は、表面被覆層をもたないこと以外は実施例1と同様のものである。(比較試験及び評価)上記実施例1〜4及び比較例5の斜板式圧縮機を車両の空調装置に用い、真夏時の高速運転時を想定した比較的苛酷な条件下で、ピストンとシリンダブロックとのカシリが生じるまでの時間を測定した。試験は、吐出圧力=3kg/cm2、吸入圧力=27kg/cm2、回転数=4000r.p.m.、断続運転の条件下で行なった。結果を第3図に示す。第3図に示す試験結果より、錫99重量%、銅1重量%の表面被覆層をさらに熱処理したピストンを採用した実施例3の斜板式圧縮機が最もカシリを生じにくく、優れていることがわかる。そして、実施例1〜4の斜板式圧縮機は、それぞれ表面被覆層をもつピストンを採用しているため、比較例5の斜板式圧縮機と比較して、苛酷な条件下での使用時にもピストンとシリンダブロックとのカシリが生じにくいことがわかる。したがって、本実施例の斜板式圧縮機では、軽量化に寄与できるとともに、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるシリンダブロックのライナを削除したとしてもピストンとシリンダブロックとが焼付くことが防止される。[発明の効果]本発明の斜板式圧縮機では、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材としかつシリンダボアと摺接する表面に錫を主体とした表面被覆層をもつピストンを採用するため、軽量化に寄与できるとともに、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるシリンダブロツクのライナを削除したとしてもピストンとシリンダブロックとの摩擦係数が小さくて焼付きを生じない。」(第3頁上右欄第19行〜第4頁上左欄第17行)との記載、並びに第1及び2図の記載からみて、
軸と平行に設けられた複数個のシリンダボア61をもつシリンダブロック6と、該シリンダブロック6内に回転自在に保持された回転軸2と、該回転軸2に支持され該シリンダブロック6内で回転する斜板3と、該シリンダボア61内に摺動自在に収容されたピストン7と、該ピストン7と該斜板3との間に摺動自在に介在し該斜板3の回転により該ピストン7を往復運動させるシュー5とを備えた往復動型圧縮機において、前記ピストン7は、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記シュー5は半球部を有するシュー5であって、(削除されない場合の)ライナーは鉄製とし、該ライナーと摺接する、ピストン側の摺接部には錫を主体としたメッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層をもつ往復動型圧縮機、
及び、
ピストン7と(削除されない場合の)ライナー1aとの間で発生する摺動抵抗の低減を容易にし、耐焼付き性を向上させることを効果とすること、
が記載されている。
同じく刊行物4(実願平3-415号(実開平4-93773号)のマイクロフィルム)には、「【請求項1】回転力を入力する駆動軸に傾斜して取付けられた駆動斜板により駆動軸の中心軸方向に摺動するソケットプレート(2)と、駆動軸の中心軸に平行して形成されたシリンダの内部に該中心軸方向に摺動自在に組込まれたピストン(1)と、ソケットプレート(2)とピストン(1)とを連結するピストンロッド(3)とを備え、ソケットプレート(2)とピストン(1)とにピストンロッド(3)の端部に嵌合する嵌合部(4)を形成し、夫々の嵌合部(4)にピストンロッド(3)の端部を嵌合させてソケットプレート(2)とピストン(1)とをピストンロッド(3)により連結して成る斜板式コンプレッサにおいて前記ソケットプレート(2)及びピストン(1)を、すくなくとも嵌合部(4)の表面に錫メッキを施した7%以上の珪素を含有するアルミニュウム材により形成したことを特徴とする斜板式コンプレッサ。」(第2頁上左欄第2行〜同頁上右欄第3行)、「本考案は、斜板式コンプレッサのソケットプレートとピストンロッド並びにピストンロッドとピストンの摺動性を良好のまま持続させることができる斜板式コンプレッサに関する。」(第3頁第4〜6行)、「従来、このようなピストン及びソケットプレートは、軽量化を図るためにアルミニュウム材で形成されており、ピストンロッドは、これらと溶着を防止するためにこれらより堅い鋼等で形成されている。」(第4頁第3〜5行)、「従来にはこれらの摺動部の摺動性を向上させるために、例えば実開昭64-36673号公報に開示されているようにピストンロッドの端部に錫メッキを施しているものがある。錫は、アルミニュウムや鉄よりも柔かいので、上記のようにピストンロッドに錫メッキを施せば、嵌合部とピストンロッドの端部との間に錫の層が形成されることになり、錫メッキによりピストンロッド端部とピストン又はソケットプレートの嵌合部の隙間に潤滑油を侵入、保持良好にでき、摺動性を向上させることができる。」(第4頁第11〜17行)、「回転力を入力する駆動軸に傾斜して取付けられた駆動斜板により駆動軸の中心軸方向に揺動するソケットプレートと、駆動軸の中心軸に平行して形成されたシリンダの内部に該中心軸方向に摺動自在に組込まれたピストンと、」(第4頁第29行〜第5頁第3行)、「尚、ピストンロッド3は、従来と同様の鋼(SUJ2)である。」(第7頁第7〜8行)、「したがって、前述したように珪素の含有量が7%以上のアルミニュウム材でピストン1及びソケットプレート2を形成し、表面に錫メッキを施せば、夫々の摺動部4は、ピストンロッド3との摺動性を良好のまま持続できるので、コンプレッサ内部の構成部材でも比較的稼動量の多いピストン1とピストンロッド3並びにソケットプレート2とピストンロッド3の耐久性が向上し、コンプレッサの使用寿命を延ばすことができるようになる。」(第7頁下から第3行〜第8頁第3行)、及び「さらに、錫メッキをより確実に保持させるために、銅メッキ等を施してから錫メッキを施すようにしてもよい。」(第8〜10行)との記載からみて、
軸と平行に設けられたシリンダと、回転自在に保持された駆動軸と、該駆動軸に支持され回転する駆動斜板と、該シリンダ内に摺動自在に収容されたピストン1と、該ピストン1と該駆動斜板との間に(ソケットプレート2を介して)摺動自在に介在し該駆動斜板の回転により該ピストン1を往復運動させるピストンロッド3とを備えた往復動型圧縮機において、前記ピストン1は、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記ピストンロッド3は球部を有するSUJ2とし、該ピストンロッド3と摺接する、ピストン1側の嵌合部4には錫メッキ層又は銅メッキ等を施してから施される錫メッキ層から成る表面被覆層をもつ往復動型圧縮機、
及び、
摺動部の摺動性を良好にすることを効果とすること、
が記載されている。
同じく刊行物5(特開昭60-13991号公報)には、「この斜板式コンプレッサにおいて、一般に斜板やシューには、アルジル合金等のように母材マトリックス中に硬質粗大粒子が分散したアルミニウム合金が多用されている。しかしながら、母材のマトリックスを形成するアルミニウム、あるいはアルミニウム合金が凝着しやすいために、無潤滑の状態とか、摺動加重が大きいような苛酷な摺動条件下では焼付きしやすいという問題がある。〔発明の目的〕本発明は上記問題を克服するもので、対焼付性に優れた、斜板式コンプレッサを提供することを目的とする。」(第2頁上左欄第13行〜同頁上右欄第4行)、「本発明の斜板式コンプレッサを特徴づける斜板およびシューの少なくとも一方は、母材としてアルミニウムまたはアルミニウム合金のマトリックス中に硬質粗大粒子が分散した金属組織をもつ。この代表的な母材材料としては、アルジル合金として知られているようにシリコン含有量が13〜30重量%程度の高いシリコン含有量を持ち、金属組織中に初晶シリコンの粗大粒子を有するものがあげられる。」(第2頁下左欄第6〜14行)、「硬質粗大粒子が突出した母材マトリックスの上面に固体潤滑剤層を形成し、この固体潤滑剤層が摺動面に表出することにしてもよい。固体潤滑剤層としては、例えば二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化硼素、酸化鉛、フッ素樹脂等の粉末、鉛、インジュウム、錫等の軟質金属を用いることができる。母材マトリックスの上面に固体潤滑剤を形成するには、まず、母材マトリックスより突出する硬質粗大粒子の周囲の凹部に、固体潤滑剤を含む熱硬化性樹脂ペーストを塗布し、これを常温あるいは熱を加えることによって、あるいはその他の方法で固化するとよい。なお固体潤滑剤が鉛等の軟質金属の場合にはメッキ等で固体潤滑剤層を形成することができる。」(第3頁下右欄第9行〜第4頁上左欄第2行)、「このシリンダブロック5内には回転軸6が軸受7、8を介して回転自在に軸支されこの回転軸6には、斜板9が連結固定されているそして前記シリンダブロック5には放射状等間隔位置にシリンダボア10がそれぞれ形成され、各ボア10内には、ピストン11が摺動自在に嵌合されている。」(第4頁下左欄第16行〜同頁下右欄第2行)、「前記ピストン11の中央部分には斜板9の外周部分を受け入れる凹陥部11aが形成され、この凹陥部11aの軸方向対向面には、それぞれ球状凹陥部11bが形成されている。そして斜板9の端面には、半球状のシュー16が摺接され、前記斜板9の回転をピストン11に往復運動として伝達するようになっている。なお以上の構成は基本的には従来の斜板式コンプレッサの構成と同一である。」(第4頁下右欄第7〜15行)、「なお、摺動の相手側であるシュー16の母材は鉄鋼で、浸炭焼入処理を施し硬さをHv820としたものである。」(第5頁上左欄第3〜6行)、及び「斜板の母材として実機テスト1の斜板と同じアルジル合金を使用した。そして斜板の摺動面には上端が略平らとなった初晶シリコンを母材マトリックスの表面より0.8μm突出させた。また斜板の摺動面全面に、二硫化モリブデン粒子およびグラファイト粒子をエポキシ樹脂で固定した固体潤滑剤層を形成した。実機テスト1の斜板に代えて、上記斜板を用い他の本発明の斜板式コンプレッサを作った。なお、斜板の相手材であるシューとしては、鉄鋼を母材として浸炭焼入処理を施し、硬さをHv820としたもの、SUJ-2を焼入れし、Hv780としたもの、およびSCM材にタフトライド処理を施し、Hv900としたものの3種類を用いた。」(第5頁上右欄第11行〜同頁下左欄第4行)との記載、並びに第3図の記載からみて、
軸と平行に設けられた複数個のシリンダボア10をもつシリンダブロック5と、該シリンダブロック5内に回転自在に保持された回転軸6と、該回転軸6に支持され該シリンダブロック5内で回転する斜板9と、該シリンダボア10内に摺動自在に収容されたピストン11と、該ピストン11と該斜板9との間に摺動自在に介在し該斜板9の回転により該ピストン11を往復運動させるシュー16とを備えた往復動型圧縮機において、前記斜板9は、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記シュー16は半球部を有するシュー16であって鉄鋼を母材とし、該シュー16と摺接する、斜板9側の摺動部には錫等の軟質金属を含みメッキ等で形成された固体潤滑剤層をもつ往復動型圧縮機、
及び、
耐焼付き性に優れた斜板式コンプレッサを提供することを目的とすること、
が記載されている。

3.対比及び判断
請求項1に係る発明と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「駆動軸2」、「斜板3」、「ピストン14」、「シュー15」、「凹部14a」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「駆動軸」、「カム」、「ピストン」、「カムフォロワ」(又は「シュー」)、「嵌合部」に相当するので、両者は、
軸と平行に設けられた複数個のシリンダボアをもつシリンダブロックと、該シリンダブロック内に回転自在に保持された駆動軸と、該駆動軸に支持され該シリンダブロック内で回転するカムと、該シリンダボア内に摺動自在に収容されたピストンと、該ピストンと該カムとの間に摺動自在に介在し該カムの回転により該ピストンを往復運動させるカムフォロワとを備えた往復動型圧縮機において、前記ピストンは、アルミニウム合金とし、前記カムフォロワは半球部を有するシューであって、該カムフォロワと摺接する、ピストン側の嵌合部には耐焼付き性を向上させる被覆層をもつ往復動型圧縮機。
の点で一致し、
(イ)請求項1に係る発明では、使用冷媒ガスをR134a(CF3CH2F)とするのに対し、刊行物1に記載された発明では、その点が明らかでない点、(ロ)請求項1に係る発明では、前記ピストンは、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記カムフォロワは鉄系金属を母材とし、該カムフォロワと摺接する、ピストン側の嵌合部には錫を主体としたメッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層をもつのに対し、刊行物1に記載された発明では、前記ピストンは、アルミニウム合金とし、前記カムフォロワは斜板の材料である鉄系金属となじまない材料であるアルミニウム、銅、鉛、これらの合金などの材料とし、該カムフォロワと摺接する、ピストン側の嵌合部には耐焼付き性を向上させる被覆層をもつ点、
で相違している。
相違点(イ)について検討する。
刊行物2に記載された発明の「駆動軸11」、「ピストン23」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「駆動軸」、「ピストン」に相当するので、軸と平行に設けられた複数個のシリンダボアをもつシリンダブロックと、該シリンダブロック内に回転自在に保持された駆動軸と、該駆動軸に支持され該シリンダブロック内で回転する駆動斜板と、該シリンダボア内に摺動自在に収容されたピストンと、該ピストンと該駆動斜板との間に(ウォブル板を介して)摺動自在に介在し該駆動斜板の回転により該ピストンを往復運動させるピストンロッドとを備えた往復動型圧縮機において、使用冷媒ガスをR134a(CF3CH2F)とする点は、刊行物2に記載されている。しかも、オゾン層破壊の問題から、R134a(CF3CH2F)を採用することも、刊行物2に記載されている。刊行物1及び刊行物2記載の発明は往復動型圧縮機という同一の技術分野に属し、しかも、オゾン層破壊の問題は、冷媒ガスを使用するについて一般共通に留意すべき技術事項なので、刊行物2記載の技術事項を刊行物1に記載された冷媒ガスを使用する往復動型圧縮機に適用することは、当業者が容易になしえたことである。
相違点(ロ)について検討する。
R134a(CF3CH2F)は、摺接部材間に摩擦抵抗が大きく、摺接部材の摩耗が発生する虞があり、摺接部材表面に潤滑膜を形成しないことも、刊行物2に記載されているので、使用冷媒ガスをR134a(CF3CH2F)とするに際して、往復動型圧縮機においても、摺接部材間の摩擦抵抗を考慮すべきことは、当業者にとって、自明のことである。
刊行物3に記載された発明の「シリンダボア61」、「シリンダブロック6」、「回転軸2」、「斜板3」、「ピストン7」、「シュー5」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「シリンダボア」、「シリンダブロック」、「駆動軸」、「カム」、「ピストン」、「カムフォロワ」(又は「シュー」)に相当するので、刊行物3には、軸と平行に設けられた複数個のシリンダボアをもつシリンダブロックと、該シリンダブロック内に回転自在に保持された駆動軸と、該駆動軸に支持され該シリンダブロック内で回転するカムと、該シリンダボア内に摺動自在に収容されたピストンと、該ピストンと該カムとの間に摺動自在に介在し該カムの回転により該ピストンを往復運動させるカムフォロワとを備えた往復動型圧縮機において、前記ピストンは、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記カムフォロワは半球部を有するシューであって、(削除されない場合の)ライナーは鉄製とし、該ライナーと摺接する、ピストン側の摺接部には錫を主体としたメッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層をもつ往復動型圧縮機、が記載されている。そこで、往復動型圧縮機において、摺接部材であるピストンとシリンダボアに備えられたライナーについて、ピストンはアルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、ライナーは鉄製とし、該ライナーと摺接する、ピストン側の嵌合部には錫を主体としたメッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層をもち、摩擦抵抗の低減を容易にし、耐焼付き性を向上させることが、記載されており、しかも、刊行物1及び刊行物3記載の発明は往復動型圧縮機における摺接部材間の摩擦抵抗の低減及び耐焼付き性を向上させるという同一の技術分野に属するものなので、刊行物3記載の技術事項を刊行物1に記載された往復動型圧縮機の摺接部材であるピストン及びカムフォロワに適用することは、当業者が容易になしえたことである。
刊行物4に記載された発明の「ピストン1」は、請求項1に係る発明の「ピストン」に相当するので、刊行物4には、軸と平行に設けられたシリンダと、回転自在に保持された駆動軸と、該駆動軸に支持され回転する駆動斜板と、該シリンダ内に摺動自在に収容されたピストンと、該ピストンと該駆動斜板との間に(ソケットプレートを介して)摺動自在に介在し該駆動斜板の回転により該ピストンを往復運動させるピストンロッドとを備えた往復動型圧縮機において、前記ピストンは、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記ピストンロッドは球部を有するSUJ2(鋼であり、鉄系金属である。)とし、該ピストンロッドと摺接する、ピストン側の嵌合部には錫メッキ層又は銅メッキ等を施してから施される錫メッキ層から成る表面被覆層をもつ往復動型圧縮機、が記載されている。そこで、刊行物4には、往復動型圧縮機において、摺接部材であるピストンとピストンロッドについて、ピストンは、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、ピストンロッドはSUJ2とし、該ピストンロッドと摺接する、ピストン側の嵌合部には錫メッキ層又は銅メッキ等を施してから施される錫メッキ層から成る表面被覆層をもち、摺動部の摺動性を良好にすることが、記載されており、しかも、刊行物1及び刊行物4記載の発明は往復動型圧縮機における摺接部材間の摩擦抵抗の低減又はそれに関連する耐焼付き性という同一の技術分野に属するものなので、刊行物4記載の技術事項を刊行物1に記載された往復動型圧縮機の摺接部材であるピストン及びカムフォロワに適用することは、当業者が容易になしえたことである。
刊行物5に記載された発明の「シリンダボア10」、「シリンダブロック5」、「回転軸6」、「斜板9」、「ピストン11」、「シュー16」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「シリンダボア」、「シリンダブロック」、「駆動軸」、「カム」、「ピストン」、「カムフォロワ」(又は「シュー」)に相当するので、刊行物5には、軸と平行に設けられた複数個のシリンダボアをもつシリンダブロックと、該シリンダブロック内に回転自在に保持された駆動軸と、該駆動軸に支持され該シリンダブロック内で回転するカムと、該シリンダボア内に摺動自在に収容されたピストンと、該ピストンと該カムとの間に摺動自在に介在し該カムの回転により該ピストンを往復運動させるカムフォロワとを備えた往復動型圧縮機において、前記カムは、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記カムフォロワは半球部を有するシューであって鉄鋼を母材とし、該カムフォロワと摺接する、カム側の摺動部には錫等の軟質金属を含みメッキ等で形成された固体潤滑剤層をもつ往復動型圧縮機、が記載されている。そこで、刊行物5には、往復動型圧縮機において、摺接部材であるカムとシューであるカムフォロワについて、カムは、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、カムフォロワは鉄鋼を母材とし、該カムフォロワと摺接する、カム側の摺動部には錫等の軟質金属を含みメッキ等で形成された個体潤滑剤層をもち、耐焼付き性に優れることが、記載されており、しかも、刊行物1及び刊行物5記載の発明は往復動型圧縮機における摺接部材間の耐焼付き性を向上させるという同一の技術分野に属するものなので、刊行物5記載の技術事項を刊行物1に記載された往復動型圧縮機の摺接部材であるピストン及びカムフォロワに適用することは、当業者が容易になしえたことである。
したがって、刊行物3ないし5において、摺接部材について、一方の材質をアルミニウム又はアルミニウム合金とし、他方の材質を鉄製、SUJ2とし又は鉄鋼(鉄系金属である。)を母材とすることが記載されており、いずれも錫メッキ層をもっており、刊行物5には鉄系金属を母材とすること、刊行物3には錫を主体としたメッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層をもつことが記載されているので、刊行物3ないし5の摺接部材間の技術事項を、往復動型圧縮機において、摺接部材間の摺動抵抗を低減させ耐焼付き性を向上させるために、刊行物1記載の摺接部材であるピストンとカムフォロワに適用し、もって、前記ピストンは、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記カムフォロワは鉄系金属を母材とし、該カムフォロワと摺接する、ピストン側の嵌合部には錫を主体としたメッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層をもつこととすることは当業者が容易になしえたことである。
なお、本件特許公報の段落【0026】には(訂正明細書においても同様)、例(6)において、「錫を主体としたメッキ層」の実施例として「錫単独のメッキ層」を挙示している(但し、本件特許公報原文においては、「(6)」は丸数字の6で記載されている。)。
更に、1〜5μmの数値限定について検討する。実施例としても「1.2μm」、「1μm」、「2μm」、「1.5μm」、「1.4μm」の例が記載されているのみであり、段落【0016】の、「1〜5μm程度とする」、及び「これより薄くなると摩擦係数の低下が少なく、厚くなり過ぎると剥離等の強度上の不具合が生じる場合がある。」との記載からしても、この限定は、格別の臨界的な意義を持つものではなく、通常の業務において必要とされる実験的に選択すべき好適な条件の一つを指摘するにとどまり、格別の技術的困難性を伴うものとはいえない。
そして、請求項1に係る発明の構成に欠くことのできない事項によってもたらされる効果も、刊行物1ないし5に記載された発明から当業者であれば予測できる程度のものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
往復動型圧縮機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と平行に設けられた複数個のシリンダボアをもつシリンダブロックと、該シリンダブロック内に回転自在に保持された駆動軸と、該駆動軸に支持され該シリンダブロック内で回転するカムと、該シリンダボア内に摺動自在に収容されたピストンと、該ピストンと該カムとの間に摺動自在に介在し該カムの回転により該ピストンを往復運動させるカムフォロワとを備えた往復動型圧縮機において、
使用冷媒ガスをR134a(CF3CH2F)とし、前記ピストンは、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記カムフォロワは半球部を有するシュ-であって鉄系金属を母材とし、該カムフォロワと摺接する、ピストン側の嵌合部には錫を主体としたメッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層をもつことを特徴とする往復動型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はシリンダボア内に収容されたピストンを駆動軸の回転に連動して往復動させる往復動型圧縮機に係り、詳しくはピストンとカムフォロワ間の摺動性向上に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より自動車等の空調装置には、冷媒ガスを圧縮する装置として図5に示す様な往復動型圧縮機が使用されている。この種の圧縮機は、軸と平行に設けられた複数個のシリンダボア30をもつシリンダブロック31と、このシリンダブロック31内で回転自在に軸支された駆動軸32と、この駆動軸32に支持されシリンダブロック31内で回転する斜板33と、シリンダボア30内に摺動自在に配置されたピストン34と、ピストン34と斜板33との間に摺動自在に介在し、斜板33の回転によりピストン34を往復運動させる半球部を有したシュ-35とにより構成されている。
【0003】
そして、駆動軸32の回転は、斜板33の回転により、シュ-35を介してシリンダボア30内におけるピストン34の往復運動に変換され、冷媒ガスの吸入、圧縮、吐出を行なう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、吐出容量の拡大を図る場合、単純に圧縮室の拡大と共にピストン34、斜板33、更にピストン34と斜板33とをつなぐシュ-35を大型化することが考えられる。しかしながら、アルミニウム合金等で形成されているピストン34及び斜板33とは異なり、シュ-35は「ともがね」現象による焼付きを防止する点から鉄系金属で形成されている。そのため、シュ-35の大型化は即、圧縮機全体の重量増加に繋がってしまう。
【0005】
そこで、シュ-35自体の大きさを変えずに吐出容量の拡大を図るべく、ピストン34及び斜板33のみを大型化すると、斜板33からシュ-35を介してピストン34に作用する荷重は、吐出容量の拡大に伴って大きくなることから、シュ-35、ピストン34間にかかる摩擦力は相当過大なものとなり、シュ-35、ピストン34間において摺動不良を引き起こしてしまう。その摺動不良はシュ-35、ピストン34間における荷重の伝達能力を低減するため、斜板33からシュ-35には大きな負荷が作用することとなり、シュ-35、斜板33間での摩擦抵抗は著しく増大してしまう。
【0006】
又、各機構の冷却を行なう目的及び、吸入側のマフラ作用を行なう目的から冷媒ガスは、外部吸入通路を介して先ず斜板室に導かれ、その後にハウジング内の吸入室へと導かれる。ところが、現在使用される冷媒ガスは、成層圏におけるオゾン層破壊の問題から分子中に塩素を含まないR134a(CF3CH2F)が採用されており、分子中に極圧剤として働く塩素が存在しないことから、冷媒ガスがもつ洗浄作用によって斜板33の表面に滞留する潤滑油を流してしまうと、シュ-35、斜板33間を無潤滑、若しくは潤滑油が極めて少ない状態にしてしまう。
【0007】
上述の如く、シュ-35、ピストン34間における摺動不良及び、シュ-35、斜板33間における無潤滑、若しくは潤滑油が極めて少ない状態といった苛酷な状態によりシュ-35と斜板33間において摩擦発熱による高温化のため、焼付きが生じるといった問題が起こる。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的はカムフォロワとピストンとの間で発生する摺動抵抗の低減を解決すべき課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、軸と平行に設けられた複数個のシリンダボアをもつシリンダブロックと、該シリンダブロック内に回転自在に保持された駆動軸と、該駆動軸に支持され該シリンダブロック内で回転するカムと、該シリンダボア内に摺動自在に収容されたピストンと、該ピストンと該カムとの間に摺動自在に介在し該カムの回転により該ピストンを往復運動させるカムフォロワとを備えた往復動型圧縮機において、使用冷媒ガスをR134a(CF3CH2F)とし、前記ピストンは、アルミニウム又はアルミニウム合金を母材とし、前記カムフォロワは半球部を有するシュ-であって鉄系金属を母材とし、該カムフォロワと摺接する、ピストン側の嵌合部には錫を主体としたメッキ層から成る厚さが1〜5μmの表面被覆層をもつことをその要旨とする。
【0010】
ピストンはアルミニウム又はアルミニウム合金を母材とする。アルミニウム合金としては、例えばAl-Si系合金、Al-Si-Cu系合金等を使用できる。この母材材料として硬質粒子をマトリックス中に含むものを用いるのが好ましい。このような母材材料として代表的なものにアルジル合金がある。アルジル合金は、10〜30重量%程度のシリコンが含有されており、共晶組成以下のシリコン含有率ならば、該シリコンはマトリックス内において共晶シリコンとして存在している。
【0011】
尚、硬質粒子を含む他の母材材料としては、Al-Mn金属間化合物、Al-Si-Mn金属間化合物、Al-Fe-Mn金属間化合物、Al-Cr金属間化合物等が考えられる。又、ピストンの母材表面に行なう下地処理としては、アルマイト処理、燐酸マンガン処理、燐酸亜鉛処理、亜鉛メッキ処理を施した後に、後述する表面被覆層を形成することが好ましい。耐焼付き性をより向上させることができるからである。
【0012】
シュ-は代表的な軸受鋼であるSUJ2材(高炭素クロム軸受鋼鋼材)又はカムと接触する摺動部にアルミナセラミックス(Al2O3)を備えたSUJ2材を母材とする。
【0013】
錫と他の金属との共存比率は、目的とする性能に応じて実験により種々選択できる。例えば銅を共存させる場合、表面被覆層中の銅の含有率は0.1重量%〜50重量%とするのがよい。銅が0.1重量%より少ないと共存させた効果に乏しく耐摩耗性の向上がみられず、50重量%より多くなると錫による効果が減少してカムフォロワとの摩擦抵抗が増大するため好ましくない。銅、ニッケル、亜鉛、鉛、インジウムから選ばれる少なくとも一種の金属は、表面被覆層中で0.8重量%〜1.2重量%とするのが特に望ましい。
【0014】
表面被覆層にはさらにフッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン粉末、カ-ボン粉末、窒化ホウ素粉末等の固体潤滑剤を共存させることも好ましい。このようにすれば摩擦抵抗を一層小さくすることができる。
【0015】
この表面被覆層を形成するには、公知技術である電解メッキ法、化学メッキ法等の湿式メッキ法、CVD法、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレ-ティングのPVD法等の乾式メッキ法が利用でき、固体潤滑剤等を被覆中に分散させる場合には、複合メッキ法も利用できる。特に化学メッキ法によれば錫と銅等の他の金属とを容易に共析させることができ、フッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン粉末等の固体潤滑剤を表面被覆層に容易に取り込むことができる。
【0016】
尚、表面被覆層の厚さは、1〜5μm程度とする。これより薄くなると摩擦係数の低下が少なく、厚くなり過ぎると剥離等の強度上の不具合が生じる場合がある。
【0017】
【作用】
上記構成を採用したことにより、請求項1に記載の発明では、圧縮機内において潤滑油不足等が発生しても、ピストンとカムフォロワの摺動面である該ピストンの嵌合部に形成された自己潤滑性を有する錫を主体とする表面被覆層の作用によって、前記嵌合部におけるピストン、カムフォロワ間での摩擦抵抗を減少させる。カムにより駆動されるカムフォロワは、少ない負荷でピストンの嵌合部内で相対回動するため、カムとカムフォロワ間の摺動抵抗は低減され、両者の焼付きは防止される。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を具体化した実施例1の斜板式圧縮機を説明し、且つこれの比較例である従来の斜板式圧縮機との比較試験を説明する。尚、機械的な構成は、従来と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0019】
(実施例1)
本実施例は、錫を主体とする表面被覆層を図1に示す様なピストン1の嵌合部2に形成した圧縮機について説明する。
【0020】
(例▲1▼)
本実施例の斜板式圧縮機に用いられたピストン1は、図2の要部断面図に示すように、シリコン3を12重量%含有したアルジル合金4を母材とする本体5と、カムフォロワとしてのシュ-35と摺接する嵌合部2の表面に形成された表面被覆層6とから構成されている。この表面被覆層6は錫と銅の共析メッキ層である。
【0021】
この表面被覆層6は以下のようにして形成されている。即ち、錫酸カリウムを6重量%、グルコン酸銅を0.012重量%含有する水溶液を60〜80℃に保ち、その中にピストン1の本体全体を浸漬して約3分間保持し無電解メッキした後、取り出して水洗いする。これによりシュ-35と摺接する嵌合部2を含むピストン1の全体に錫と銅とが共析メッキされ、表面被覆層6が形成される。尚、表面被覆層6の厚さは1.2μmであり、錫97重量%に対して銅3重量%の組成となっている。
【0022】
(例▲2▼)
本実施例の斜板式圧縮機に用いられるピストン1は、表面被覆層6の構成が異なること以外は例▲1▼と同様である。即ち、錫酸カリウムを6重量%、塩化ニッケルを0.005重量%含有する水溶液を用い、例▲1▼と同様にして、シュ-35と摺接する嵌合部2を含むピストン1の全体に錫とニッケルとの共析メッキ層から成る表面被覆層6が形成される。尚、表面被覆層6の厚さは1μmであり、錫98重量%に対してニッケル2重量%の組成となっている。
【0023】
(例▲3▼)
本実施例の斜板式圧縮機に用いられるピストン1は、表面被覆層6の構成が異なること以外は例▲1▼と同様である。即ち、錫酸カリウムを6重量%、硫酸亜鉛を0.005重量%含有する水溶液を用い、例▲1▼と同様にして、シュ-35と摺接する嵌合部2を含むピストン1の全体に錫と亜鉛との共析メッキ層から成る表面被覆層6が形成される。尚、表面被覆層6の厚さは1μmであり、錫97重量%に対して亜鉛3重量%の組成となっている。
【0024】
(例▲4▼)
本実施例の斜板式圧縮機に用いられるピストン1は、表面被覆層6の構成が異なること以外は例▲1▼と同様である。即ち、錫酸カリウムを6重量%、硫酸鉛を0.007重量%含有する水溶液を用い、例▲1▼と同様にして、シュ-35と摺接する嵌合部2を含むピストン1の全体に錫と鉛との共析メッキ層から成る表面被覆層6が形成される。尚、表面被覆層6の厚さは2μmであり、錫95重量%に対して鉛5重量%の組成となっている。
【0025】
(例▲5▼)
本実施例の斜板式圧縮機に用いられるピストン1は、表面被覆層6の構成が異なること以外は例▲1▼と同様である。即ち、錫酸カリウムを6重量%、硫酸インジウムを0.005重量%含有する水溶液を用い、例▲1▼と同様にして、シュ-35と摺接する嵌合部2を含むピストン1の全体に錫とインジウムとの共析メッキ層から成る表面被覆層6が形成される。尚、表面被覆層6の厚さは1μmであり、錫97重量%に対してインジウム3重量%の組成となっている。
【0026】
(例▲6▼)
本実施例の斜板式圧縮機に用いられるピストン1は、表面被覆層6の構成が異なること以外は例▲1▼と同様である。即ち、錫酸カリウムを6重量%含有する水溶液を用い、例▲1▼と同様にして、シュ-35と摺接する嵌合部2を含むピストン1の全体に錫単独のメッキ層から成る表面被覆層6が形成される。尚、表面被覆層6の厚さは1.5μmである。
【0027】
(例▲7▼)
本実施例の斜板式圧縮機に用いられるピストン1は、表面被覆層6の構成が異なること以外は例▲1▼と同様である。即ち、錫酸カリウムを6重量%、グルコン酸銅を0.003重量%含有し、且つフッ素樹脂粉末が1.0重量%分散された水溶液を用い、例▲1▼と同様にして、シュ-35と摺接する嵌合部2を含むピストン1の全体にフッ素樹脂粉末を含む錫と銅との共析メッキ層から成る表面被覆層6が形成される。尚、表面被覆層6の厚さは1.4μmであり、錫99重量%に対して銅0.9重量%、フッ素樹脂粉末0.1重量%の組成となっている。
【0028】
(例▲8▼)
本実施例の斜板式圧縮機に用いられるピストン1は、表面被覆層6の構成が異なること以外は例▲1▼と同様である。即ち、例▲1▼と同様の化学メッキを行った後に、150℃×1Hrの熱処理が施される。
【0029】
(例▲9▼)
本実施例の斜板式圧縮機に用いられるピストン1は、表面被覆層6の構成が異なること以外は例▲1▼と同様である。即ち、錫酸カリウムを6重量%、グルコン酸銅を0.003重量%、亜鉛を0.003重量%含有する水溶液を用い、例▲1▼と同様にして、シュ-35と摺接する嵌合部2を含むピストン1の全体に錫と銅及び亜鉛との共析メッキ層から成る表面被覆層6が形成される。尚、表面被覆層6の厚さは1.2μmであり、錫97重量%に対して銅1.5重量%、亜鉛1.5重量%の組成となっている。
【0030】
(比較例)
本比較例の斜板式圧縮機に用いられるピストン1は、シュ-35と摺接する嵌合部2に表面被覆層6をもたないこと以外は例▲1▼と同様のものである。
【0031】
(比較試験及び評価)
上記例▲1▼〜▲9▼及び比較例の斜板式圧縮機を車両用の空調装置を用いて、苛酷な使用条件下(圧縮機内に潤滑油がない場合)における焼付き試験を行った。試験は、吸入圧力=-0.5kg/cm2、吐出圧力=3kg/cm2、回転数=1000r.p.m.の連続運転の条件下で行った。結果を図3に示す。尚、シュ-35はSUJ2材のものを用いた。
【0032】
図3に示す試験結果より、錫と銅の共析メッキ層から成る表面被覆層6を嵌合部2にもつピストン1を採用した例▲1▼の斜板式圧縮機が最も耐焼付き性があることが分かる。そして、例▲1▼〜▲9▼の斜板式圧縮機は、それぞれ嵌合部2に表面被覆層6を形成したピストン1を採用しているため、比較例の斜板式圧縮機と比較して苛酷な使用条件下での使用時にもシュ-35、斜板33間において焼付きが生じにくいことが分かる。又、例えば、錫を主体とする表面被覆層6中への銅共析では、被覆を緻密化し、さらに硬質な錫-銅化合物(Cu6Sn5)が該被覆中へ分散されるため、表面被覆層6を強化することができる。
【0033】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で例えば次のように構成することもできる。
(1)上記実施例1では、斜板式圧縮機に本発明を具体化したが、斜板式片側ピストン圧縮機、可変容量型圧縮機、或いは図4に示すような、ウエ-ブカム式圧縮機等に具体化してもよい。ウエ-ブカム式圧縮機は、駆動軸32の1回転に対して複数回吐出動作を行なうため(図4では2回)、更に、シュ-35は複雑なウエ-ブ面に追随する必要上から、シュ-35、ピストン34間での摺動量は斜板式圧縮機における摺動量に対して複数倍以上になる。そのため、シュ-35、ピストン34間における耐焼付き性の向上は、冷媒ガスの安定した圧縮作用を行なう上で重要なものとなる。尚、上述の圧縮機と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1に記載の発明によれば、カムフォロワとピストンとの間で発生する摺動抵抗の低減を容易に図ることができるため、そこでの耐焼付き性を向上させることができるとともに、その結果として斜板、カムフォロワ間の摩擦抵抗も低減できる。そのためピストンやカムの大きさに左右されることなくカムフォロワの選択ができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した実施例1のピストンを示す斜視図である。
【図2】ピストンの嵌合部を示す要部拡大断面図である。
【図3】実施例1における焼付き時間の測定結果を示すグラフである。
【図4】別例におけるウエ-ブカム式圧縮機を示す断面図である。
【図5】従来の斜板式圧縮機を示す断面図である。
【符号の説明】
1、34…ピストン、2…嵌合部、4…アルミニウム合金としてのアルジル合金、6…表面被覆層、35…カムフォロワとしてのシュ-、30…シリンダボア、31…シリンダブロック、32…駆動軸、33…カムとしての斜板。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2002-04-18 
出願番号 特願平7-47192
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (F04B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 尾崎 和寛  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 亀井 孝志
清田 栄章
登録日 2000-03-03 
登録番号 特許第3039762号(P3039762)
権利者 株式会社豊田自動織機
発明の名称 往復動型圧縮機  
代理人 中村 敬  
代理人 三好 秀和  
代理人 中村 敬  

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