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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F25B
管理番号 1111148
異議申立番号 異議2003-73197  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-12-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-22 
確定日 2004-11-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3428516号「絞り装置」の請求項4、5、8、9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3428516号の請求項4、7、8に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3428516号の発明についての出願は、平成11年6月1日に特許出願した特願平11-153446号の一部を平成11年8月18日に新たな特許出願として特許出願とし、平成15年5月16日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人 金森 貴子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知がなされ、その指定期間内である平成16年7月9日に特許異議意見書とともに、訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。

・訂正事項1
願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)の
「【請求項4】弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁体に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用いて絞り部を構成したことを特徴とする絞り装置。」を、

「【請求項4】弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁体に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用い前記主弁座との間隙を開閉する方向に前記多孔質透過材を用いた主弁体をステッピングモータによって連続的に駆動して移動させ冷媒の流量特性を連続的に変化させる絞り部を構成したことを特徴とする絞り装置。」
と訂正する。

・訂正事項2
特許明細書の請求項5を削除する。

・訂正事項3
特許明細書の請求項6ないし請求項9の
「【請求項6】弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁座に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用いて流量制御弁を構成したことを特徴とする絞り装置。
【請求項7】周面が主弁座の側面と当接し、前記周面と側面との当接面積を開閉方向への移動によって可変する主弁体と、前記主弁体の開閉方向への移動を制御する制御手段とを備え、前記主弁体、主弁座および制御手段で多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段を構成したことを特徴とする請求項4又は請求項6記載の絞り装置。
【請求項8】多孔質透過材の通気孔を200から0.5マイクロメートルの範囲としたことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の絞り装置。
【請求項9】前記多孔質透過材を焼結金属としたことを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の絞り装置。」を、

「【請求項5】弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁座に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用いて流量制御弁を構成したことを特徴とする絞り装置。
【請求項6】周面が主弁座の側面と当接し、前記周面と側面との当接面積を開閉方向への移動によって可変する主弁体と、前記主弁体の開閉方向への移動を制御する制御手段とを備え、前記主弁体、主弁座および制御手段で多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段を構成したことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の絞り装置。
【請求項7】多孔質透過材の通気孔を200から0.5マイクロメートルの範囲としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の絞り装置。
【請求項8】前記多孔質透過材を焼結金属としたことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の絞り装置。」
と訂正する。

・訂正事項4
特許明細書の段落【0012】の
「【0012】
また、 弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁体に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用いて絞り部を構成したものである。」を、

「【0012】
また、 弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁体に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用い前記主弁座との間隙を開閉する方向に前記多孔質透過材を用いた主弁体をステッピングモータによって連続的に駆動して移動させ冷媒の流量特性を連続的に変化させる絞り部を構成したものである。」
と訂正する。

・訂正事項6
特許明細書の段落【0013】の
「【0013】
また、前記多孔質透過材は一端が開放した柱状を成し、前記主弁座閉止時に前記柱状の周面側と底面側とが流路入口側と出口側とに分離されるものである。」とあるのを、その記載された内容を削除する。

・訂正事項7
特許明細書の段落【0082】の
「【0082】
また、弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁体に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用いて絞り部を構成したので、冷媒流動音の発生を防止して騒音を低減できると共に通常の弁開時における圧力損失による性能低下も防止できる効果が得られる。」を、

「【0082】
また、弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁体に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用い前記主弁座との間隙を開閉する方向に前記多孔質透過材を用いた主弁体をステッピングモータによって連続的に駆動して移動させ冷媒の流量特性を連続的に変化させる絞り部を構成したので、冷媒流動音の発生を防止して騒音を低減できると共に通常の弁開時における圧力損失による性能低下も防止できる効果が得られる。」

・訂正事項8
特許明細書の段落【0083】の
「【0083】
また、前記多孔質透過材は一端が開放した柱状を成し、前記主弁座閉止時に前記柱状の周面側と底面側とが流路入口側と出口側とに分離されるので、周面側と底面側とのそれぞれで多孔質透過材の通過孔の大きさと圧力損失とを適切に選択できる効果が得られる。」とあるのを、その記載された内容を削除する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
・訂正事項1について
特許明細書には、「また本実施の形態では、第2流量制御弁は、電磁コイル25への通電あるいは非通電により開閉動作を行なうものについて説明したが、主弁体24をステッピングモータによって連続的に駆動し、第2流量制御弁の流量特性を連続的に変化させるようにしても良い。」(段落【0025】)、「この実施の形態では、主弁体24が銅や真鍮などの金属製弁、主弁座23が多孔質透過材、例えば通気孔10マイクロミリメートルの焼結金属で構成されている。また25は主弁体24を連続的に駆動する駆動部で、例えばステッピングモータで構成され、図示しない制御手段によって主弁体24を開閉方向へ移動するよう制御している。」(段落【0035】)と記載されていることから、この訂正事項1の訂正は、「絞り部」の構成について、特許明細書に記載された範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

・訂正事項2について
訂正事項2の訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。

・訂正事項3について
訂正事項3の訂正は、請求項5の削除に伴って、請求項の項番号を繰り上げると共に、引用請求項の整合を図るものであるから、特許明細書の記載された範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。

・訂正事項4ないし8について
訂正事項4ないし8の訂正は、請求項5の削除に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、特許明細書の記載された範囲内において、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。

(3)請求項6の独立特許要件についての判断
訂正明細書の請求項6に係る発明については、特許異議の申立てがなされていないが、該請求項6は、訂正明細書の請求項4を引用しており、該請求項4が訂正事項1により訂正されたから、該請求項6に係る発明についての独立特許要件を検討する。
訂正明細書の請求項6に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定されたとおりのものである(上記2.訂正の適否についての判断(1)訂正の内容 の訂正事項3を参照)。
そして、訂正明細書の請求項6に係る発明は、少なくとも「前記主弁体、主弁座および制御手段で多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段」を発明の構成要件とするものであるから、特許異議申立人が提出した証拠(甲第1号証(実願平1-51607号(実開平2-141778号)のマイクロフィルム)、甲第2号証(特開昭57-65557号公報)及び甲第3号証(実願昭52-9158号(実開昭53-104469号)のマイクロフィルム))を精査しても、前記構成要件の記載は認められず、また、その証拠に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、他に訂正明細書の請求項6に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。

したがって、訂正明細書の請求項6に係る発明は、出願の際、独立して特許を受けることができるものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.訂正の適否についての判断 で示したように訂正が認められるから、本件の請求項4、7及び8に係る発明(以下、それぞれを「本件発明4」、「本件発明7」、「本件発明8」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項4、7及び8に記載された事項に特定されるとおりのものである(上記2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 の ・訂正事項1、・訂正事項3を参照)。

(2)引用刊行物
当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物は次のものである。
刊行物1:実願平1-51607号(実開平2-141778号)のマイクロフィルム(異議申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭57-65557号公報(同じく甲第2号証)

(3)引用刊行物に記載されている事項
刊行物1には、次の事項が記載されている。
「(1)第1流体口と第2流体口との間に設けた弁座を弁室側に設けた弁体によって開閉する電磁弁において、該弁体内を貫通して該第1流体口に続く弁本体内部流路と該第2流体口に続く弁本体内部流路とを連通するテーパ付漏洩流路を設けると共に、該漏洩流路内のテーパ付部位に錐状の絞り部材を装着してなる双方向型電磁弁。
(2)漏洩流路の開口部の少なくとも一方に通気性多孔体を嵌着してなる請求項(1)記載の双方向型電磁弁。」(実用新案登録請求の範囲)、
「本考案はヒートポンプ式エアコン等に用いられる電磁弁に関する。」(1頁17〜同18行)、
「かかるエアコンシステムにおいては、除湿運転を行うために室内熱交換器を冷却用と再加熱用との2個に分割し、その間に膨張器を設けるなどの構成をとる必要があり、かかるエアコンシステムの回路例が、たとえば特開昭58-106369号に開示されている(第4図)。この回路においては、室外熱交換器cと室内熱交換器bとの間に可逆流通性を有する膨張弁fを設け、室内熱交換器a、b間にキャピラリーチューブhとニ方電磁弁gとを並列として設けてある。そして、通常の冷房または暖房時には電磁弁gを開いて室内熱交換器a、bを共に冷却または加熱用として用い、除湿時には膨張弁fを開くと共に電磁弁gを閉じて室内熱交換器bを加熱用にまた室内熱交換器bを冷却用に用いるものである。dは圧縮機、eは四方弁、Fはファンである。」(2頁4〜同19行)、
「本考案は冷暖房および除湿ができるエアコンシステムにおける膨張器兼用の電磁弁を改良して、コンパクトに組み込むことができかつ騒音レベルを低下させると共に高信頼性をそなえた双方向型電磁弁を得ることを目的とした。」(3頁17行〜4頁2行)、
「本考案の電磁弁の例を第1図に示す。図において、1は弁本体であり、1aは第1流体口、1bは第2流体口である。第1流体口1aに通ずる弁室1cの底部には第2流体口に通ずる弁座1dが形成されている。2は弁体であり、弁ばね3によって弁座1dに向けて付勢されている。4は吸引子、5は電磁コイルである。弁体2には弁座1dから第2流体口1bへ通ずる流路に面する弁体2の先端部に凹孔2aが設けてあり、弁室1cにも通じている。更にこの凹孔2aの中には金属材料から形成されてテーパ状の漏洩流路7aを有するオリフィス体7と、そのテーパ状の漏洩流路7a内に管壁面に沿う流通間隙を残すように組み込まれた錐状の絞り部材8とが嵌着されており、またオリフィス体7の前後には漏洩流路7aの開口部を遮るように、金属粉末を焼結して得た通気性の円筒状多孔体6aと盤状多孔体6bとがそれぞれ嵌着されている。従って、弁の開閉に拘わらず第1流第口(誤記。「流体口」が正しい。)1aと第2流体口1bとはオリフィス体7の漏洩流路7aと多孔体6aおよび6bとを介して常時連絡されている。
そして、この漏洩流路7aが膨張器として働くときは、流体の流出に伴う擦過音発生が効果的に抑制される。」(5頁5行〜6頁8行)、
「第3図は、このような本考案の双方向型電磁弁を用いたヒートポンプ式エアコンシステムの回路例である。図においてVは本考案の双方向型電磁弁であり、第4図における電磁弁gとキャピラリーチュープhとに置きかえて設けられているほかは従来と全く同様な機能を備えた回路が構成されている。」(6頁17行〜7頁3行)

刊行物2には、次の事項が記載されている。
「本発明は、空調装置に用いられる空調装置用冷媒減圧器に関するものである。」(1頁左下欄16〜同17行)、
「本発明の空調装置用冷媒減圧器の特徴は、空調装置に用いられる空調装置用冷媒減圧器において、空孔が連通した円柱状の発泡金属を、パイプ内に挿入して固定した空調装置用冷媒減圧器にある。」(2頁左上欄6〜同9行)、
「前記した発泡金属6としては、たとえば外径17mm、長さ30mmの粉末焼結体(黄銅、多孔率15%、孔径0.lmm)、…が好適な組み合わせの一例である。」(2頁右上欄9〜同14行)

(4)対比・判断
(4-1)本件発明4について
本件発明4と刊行物1に記載されたものとを対比し、検討する。
上記摘示した事項からみて、刊行物1には、
「弁室1c側壁に第1流体口1aが開口する弁本体1と、弁室1c底部に第2流体口1bが開口する弁座1dと、弁室1c内に前記弁座1dを閉止できる弁体2と、弁体2を駆動する電磁コイル5と、を有し、前記弁体2は、テーパ状の漏洩流路7aを有するオリフィス体7と、このテーパ状の漏洩流路7a内に管壁面に沿う流通間隙を残すように組み込まれた錐状の絞り部材8と、前記オリフィス体7の前後に冷媒流れ方向に連通する金属粉末を焼結して得た通気性の円筒状多孔体6aと盤状多孔体6bと、からなる冷媒絞り機構を備えた絞り装置。」
が記載されているものと認められる。

そこで、本件発明4と刊行物1に記載されたものとを対比すると、刊行物1に記載された、「弁室lc」、「第1流体口la」、「弁本体1」、「第2流体口lb」、「弁座ld」及び「弁体2」は、それぞれ本件発明4の「弁室」、「第1流路」、「弁本体」、「第2流路」、「主弁座」及び「主弁体」に相当し、また、刊行物1に記載された弁体2は、オリフィス体7と、錐状の絞り部材8と、金属粉末を焼結して得た通気性の円筒状多孔体6a及び盤状多孔体6bとからなる冷媒絞り機構を備えているから、該冷媒絞り機構は、本件発明4の「絞り部」に相当し、その「金属粉末を焼結して得た通気性の円筒状多孔体6a及び盤状多孔体6b」は、本件発明4における「多孔質透過材」に相当しているものと認められ、該冷媒絞り機構は、少なくとも多孔質透過材を備えたものといえる。

そうすると、両者は、
「弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁体に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を備えた絞り部を構成した絞り装置。」
において、一致しているものと認められる。

しかし、次の点で相違している。
・相違点1
多孔質透過材を備えた絞り部の構成が、本件発明4では、「冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用い」たのに対し、刊行物1に記載されたものは、冷媒流れ方向に連通する、オリフィス体7と、錐状の絞り部材8と、金属粉末を焼結して得た通気性の円筒状多孔体6a及び盤状多孔体6bとを用いた点。
・相違点2
主弁体が、本件発明4では、「前記主弁座との間隙を開閉する方向に前記多孔質透過材を用いた主弁体をステッピングモータによって連続的に駆動して移動させ冷媒の流量特性を連続的に変化させる」のに対し、刊行物1に記載されたものは、弁体2が、電磁コイル5によって開閉されている点。

そこで、この相違点を検討する。
・相違点1について
刊行物2には、空気調和装置の冷媒流れ方向に配置される冷媒減圧器を発泡金属6の多孔質透過材だけで構成しているものが示されているから、刊行物1に示されている冷媒絞り機構の、オリフィス体7及び錐状の絞り部材8を省き、多孔質透過体だけで構成することは、当業者が容易に想到し得たものといえる。

・相違点2について
空気調和装置の冷媒流量を調節する膨張弁の開度を調節する手段として、ステッピングモータを利用するものが、例えば、実願昭59-130477号(実開昭61-46374号)のマイクロフィルム、特開昭62-13952号公報、特開昭61-293200号公報、特開昭56-42776号公報に示されるように周知技術であるから、刊行物1に示された弁体2を駆動する電磁コイル5に代えて、該周知技術を適用することによって、相違点2の本件発明4の構成は、当業者が容易に想到し得たものといえる。

そして、本件発明4の効果についても、刊行物1、2に記載されたもの、及び空気調和装置における周知技術から予測し得たものである。

したがって、本件発明4は、刊行物1、2に記載されたもの、及び空気調和装置における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-2)本件発明7について
本件発明7は、本件発明4を含む従属発明であるから、本件発明4の多孔質透過材について、さらに「通気孔を200から0.5マイクロメートルの範囲としたこと」に限定したものである。

そこで、本件発明7と刊行物1に記載されたものとを対比すると、本件発明4において検討したように上記相違点1及び2が存在する他に、次の相違点3が認められる。
・相違点3
多孔質透過材について、本件発明7が、「通気孔を200から0.5マイクロメートルの範囲としたこと」にあるのに対し、刊行物1には、このような数値範囲が記載されていない点。

そこで、この相違点1ないし3について検討すると、相違点1及び2について上記本件発明4において検討したように、格別なものとはいえない。また、相違点3については、刊行物2に、空気調和装置の冷媒流れ方向に配置される冷媒減圧器を発泡金属6の多孔質透過材で構成するものが開示されており、その発泡金属として、本件発明7の通気孔の数値範囲に含まれる、孔径0.1mmのものが示されている。さらに、その通気孔の孔径についても、本件特許権者も、本件特許明細書の段落【0024】に記載しているように、冷媒の流量特性(流量条件)に応じて適宜設計されるものであるし、その数値範囲の臨界的な意義も認められないから、通気孔を200から0.5マイクロメートルの範囲内としたことは、当業者が適宜なし得る設計的な事項というべきものである。

そして、本件発明7の効果についても、刊行物1、2に記載されたもの、及び空気調和装置における周知技術から予測し得たものである。

したがって、本件発明7は、刊行物1、2に記載されたもの、及び空気調和装置における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4-3)本件発明8について
本件発明8は、本件発明4を含む従属発明であるから、本件発明4の多孔質透過材について、さらに「焼結金属としたこと」に限定したものである。

そこで、本件発明8と刊行物1に記載されたものとを対比すると、刊行物1には、円筒状多孔体6a及び盤状多孔体6bが記載され、その「円筒状多孔体6a及び盤状多孔体6b」は「金属粉末を焼結して得た」ものであるから、本件発明8の「前記多孔質透過材を焼結金属としたこと」は、刊行物1に記載されているものと認められる。

そうすると、本件発明8と引用刊行物1に記載されたものとには、上記本件発明4において検討したように上記相違点1及び2が存在する。
しかしながら、相違点1及び2については、上記本件発明4において検討したように、格別な構成とはいえない。

そして、本件発明8の効果についても、刊行物1、2に記載されたもの、及び空気調和装置における周知技術から予測し得たものである。

したがって、本件発明8は、刊行物1、2に記載されたもの、及び空気調和装置における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件発明4、本件発明7及び本件発明8についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件発明4、本件発明7及び本件発明8についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
絞り装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 絞り部を冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材で構成し、前記多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段を備えたことを特徴とする絞り装置。
【請求項2】 電磁開閉弁が設けられた第1の流路と、この第1の流路と並列に設けられた第2の流路と、この第2の流路中に設けられ冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材で構成した絞り部と、前記多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段とを備えたことを特徴とする絞り装置。
【請求項3】 前記多孔質透過材で冷媒流路を覆うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の絞り装置。
【請求項4】 弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁体に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用い前記主弁座との間隙を開閉する方向に前記多孔質透過材を用いた主弁体をステッピングモータによって連続的に駆動して移動させ冷媒の流量特性を連続的に変化させる絞り部を構成したことを特徴とする絞り装置。
【請求項5】 弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁座に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用いて流量制御弁を構成したことを特徴とする絞り装置。
【請求項6】 周面が主弁座の側面と当接し、前記周面と側面との当接面積を開閉方向への移動によって可変する主弁体と、前記主弁体の開閉方向への移動を制御する制御手段とを備え、前記主弁体、主弁座および制御手段で多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段を構成したことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の絞り装置。
【請求項7】 多孔質透過材の通気孔を200から0.5マイクロメートルの範囲としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の絞り装置。
【請求項8】 前記多孔質透過材を焼結金属としたことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の絞り装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒流動音を低減し、騒音に対する快適性を向上させた絞り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の空気調和装置では、空調負荷の変動に対応するためにインバータなどの容量可変型圧縮機が用いられ、空調負荷の大小に応じて圧縮機の回転周波数が制御されている。ところが冷房運転時に圧縮機回転が小さくなると蒸発温度も上昇し、蒸発器での除湿能力が低下したり、あるいは蒸発温度が部屋内の露点温度以上に上昇し、除湿できなくなったりする問題点があった。
【0003】
この冷房低容量運転時の除湿能力を向上させる手段としては次のような空気調和装置が考案されている。図21は例えば特公昭61-43631号公報に示された従来の空気調和装置の冷媒回路構成を示す。図において1は圧縮機、3は室外熱交換器、4は第1流量制御弁、5は第1室内熱交換器、6は第2流量制御弁、7は第2室内熱交換器であり、これらは配管で順次接続され、冷凍サイクルを構成している。
次に従来の空気調和装置の動作について説明する。まず通常の冷房運転では、圧縮機1を出た冷媒は室外熱交換器3で凝縮液化し、第1流量制御弁4で減圧され、第2室内熱交換器5、第2流量制御弁6および第2室内熱交換器7を通って圧縮機1に戻る。この時の第2流量制御弁は全開状態であり、第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7は蒸発器として動作して冷房運転が行なわれる。
【0004】
一方、除湿運転時には、第1流量制御弁4を全開状態とし、第2流量制御弁6で冷媒流量を制御することにより、第1室内熱交換器5が凝縮器すなわち再熱器、第2室内熱交換器7が蒸発器として動作し、室内空気は第1室内熱交換器5で加熱されるため、室温の低下が小さい除湿運転が可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の空気調和装置では、室内ユニット内に設置する第2流量制御弁として、通常、オリフィスを有する流量制御弁を用いているため、このオリフィスを冷媒が通過する時に発生する冷媒流動音が大きく、室内環境を悪化させる要因となっていた。特に除湿運転時には第2流量制御弁の入口冷媒が気液二相状態になり、冷媒流動音が大きくなるという問題があった。
【0006】
この除湿運転時の第2流量制御弁の冷媒流動音低減対策としては、特開平7-91778号に示された流量制御弁内の主弁体に小孔を設けたものや、特開平10-89803号に示された流量制御弁の下流に螺旋状流路部分を設けたものなどがある。ところがこれらの冷媒流動音低減対策はいずれも絞り部が小孔やオリフィスで構成されているため、螺旋状流路を追加しても効果的ではなく、特に流量制御弁入口冷媒が気液二相状態の場合には、冷媒流動音が大きくなるという問題点があった。またこの冷媒流動音を低減するために、流量制御弁本体に、遮音材や制振材を設けるなどの追加の対策を必要としていたが、この追加対策によりコストが増加したり、設置スペースが大きくなるため室内ユニットが大型化したり、製品回収時のリサイクル性が悪化するという問題があった。
【0007】
さらに、除湿運転時の圧縮機の運転容量を小さく制御し、冷媒流量を小さくして、この冷媒流動音を低減させることも可能であるが、結果として除湿運転時の冷媒流量が制約されてしまうため、除湿能力を自由に制御することができず、部屋の温度、湿度を一定に保つことができないという問題があった。
【0008】
この発明は、上記のような問題を解決されるためになされたもので、冷媒流動音を大幅に低減できる絞り装置を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る絞り装置は、絞り部を冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材で構成し、前記多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段を備えたものである。
【0010】
また、電磁開閉弁が設けられた第1の流路と、この第1の流路と並列に設けられた第2の流路と、この第2の流路中に設けられ冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材で構成した絞り部と、前記多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段とを備えたものである。
【0011】
また、前記多孔質透過材で冷媒流路を覆うものである。
【0012】
また、 弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁体に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用い前記主弁座との間隙を開閉する方向に前記多孔質透過材を用いた主弁体をステッピングモータによって連続的に駆動して移動させ冷媒の流量特性を連続的に変化させる絞り部を構成したものである。
【0013】
【0014】
また、弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁座に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用いて流量制御弁を構成したものである。
【0015】
また、周面が主弁座の側面と当接し、前記周面と側面との当接面積を開閉方向への移動によって可変する主弁体と、前記主弁体の開閉方向への移動を制御する制御手段とを備え、前記主弁体、主弁座および制御手段で多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段を構成したものである。
【0016】
また、多孔質透過材の通気孔を200から0.5マイクロメートルの範囲としたものである。
【0017】
また、前記多孔質透過材を焼結金属としたものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態の一例を示す空気調和装置の冷媒回路図で、従来装置と同様の部分は同一符号で示している。図において、1は圧縮機、2は冷房運転および暖房運転の冷媒の流れを切換える流路切換手段で例えば四方弁、3は室外熱交換器、4は第1流量制御弁である電気式膨張弁、5は第1室内熱交換器、7は第2室内熱交換器であり、この第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7の間には、第2流量制御弁6が設けられており、これらは配管によって順次接続され、冷凍サイクルを構成している。また圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3および第1流量制御弁4で室外ユニット11を構成し、第1室内熱交換器5、第2室内熱交換器7および第2流量制御弁6で室内ユニット12を構成している。この冷凍サイクルの冷媒には、R32とR125の混合冷媒であるR410Aが用いられている。
【0019】
図2は図1に示した空気調和機の第2流量制御弁6の構造を示す図であり、21が第1流路であり、第1室内熱交換器5が接続され、22が第2流路であり、第2室内熱交換器7が接続されている。23は第2流路が開口する主弁座であり、この図では弁本体と一体に形成されている。24は第2流路制御弁6本体の内面に沿って上下に摺動する主弁体で、これら主弁座23と主弁体24とで絞り部を構成している。25は主弁体24を駆動する電磁コイルで、図示しない制御部からの指令に基づいて電磁コイル25を通断電し、主弁体24を開閉する。主弁体24は多孔質透過材により成形され、具体的には通気孔(流体が透過することのできる多孔質体内部の気孔)が10マイクロメートルの焼結金属(金属粉末あるいは合金粉末を型に入れて加圧成形し、次いで溶融点以下の温度で焼結を行なって製造されたもの)で構成されている。さらにこの第2流量制御弁6は、電磁コイル25に非通電することにより、主弁体24を上部に引き上げ、主弁体24を主弁座23から引き離すことによって、第1流路21と第2流路22がほとんど圧力損失なしにつながる(図2(a))。また電磁コイル25に通電することにより、主弁体24が下部に下がり、主弁体24を主弁座23に密着させることによって、弁本体の通気孔を介して第1流路21と第2流路22がつながる(図2(b))。
【0020】
次に本実施の形態による空気調和装置の冷房時の動作について説明する。図1では冷房時の冷媒の流れを実線矢印で示している。冷房運転は、起動時や夏季時など部屋の空調顕熱負荷と潜熱負荷がともに大きい場合に対応する通常冷房運転と、中間期や梅雨時期のように空調潜熱負荷は小さいが、顕熱負荷が大きな場合に対応する除湿運転に分けられる。通常冷房運転は、第2流量制御弁6の電磁コイル25を非通電状態とする。このとき圧縮機1を出た高温高圧の冷媒蒸気は、四方弁2を通って室外熱交換器3に流入し、外気と熱交換して凝縮、液化する。この高圧の液冷媒は、第1流量制御弁4で低圧に減圧され、気液二相冷媒となって第1室内熱交換器5および第2室内熱交換器7で室内空気の顕熱および潜熱を奪って蒸発する。第2流量制御弁6では、図2(a)に示すように第1流路21と第2流路が大きな開口面積で接続されているので、この弁を通過する際の冷媒圧力損失はほとんどなく、圧力損失による冷房能力や効率面での低下もない。第2室内熱交換器7を出た低圧の蒸気冷媒は、四方弁2を通って再び圧縮機1に戻る。この通常冷房運転時の第1流量制御弁4の開度は、例えば第2室内熱交換器の出口冷媒の過熱度が5℃となるように制御されている。
【0021】
次に除湿運転時の動作について、図3に示す圧力-エンタルピー線図を用いて説明する。なお、図3に示した英文字は、図1に示した英文字と対応している。この除湿運転時は、第2流量制御弁の電磁コイル25に通電し、図2(b)に示すように主弁体24を主弁座23に密着させ、主弁体24の通気孔を介して第1流路21である第1室内熱交換器5の出口と第2流路22である第2室内熱交換器7の入口を接続する。この時、圧縮機1を出た高温高圧の冷媒蒸気(A点)は、四方弁2を通って室外熱交換器3に流入し、外気と熱交換して凝縮する(B点)。この高圧の液冷媒あるいは気液二相冷媒は、第1流量制御弁4で若干減圧され(C点)、中間圧の気液二相冷媒となって第1室内熱交換器5に流入する。この第1室内熱交換器5に流入した冷媒は、室内空気と熱交換してさらに凝縮する(D点)。第1室内熱交換器5を出た中間圧の液冷媒あるいは気液二相冷媒は、第2流量制御弁6に流入する。第2流量制御弁6では、図2(b)に示すように主弁体24が主弁座23に密着しているため、この弁に流入した冷媒は、焼結金属で構成されている主弁体24内の通気孔を通って第2室内熱交換器7に流入する。この主弁体24の通気孔は10マイクロメートル程度であり、この通気孔を通る冷媒は減圧されて、低圧の気液二相冷媒となって、第2室内熱交換器7に流入する(E点)。この第2室内熱交換器7に流入した冷媒は、室内空気の顕熱および潜熱を奪って蒸発する。第2室内熱交換器7を出た低圧の蒸気冷媒は、四方弁2を通って再び圧縮機1に戻る。室内空気は、第1室内熱交換器5で加熱され、第2室内熱交換器7で冷却除湿されるため、部屋の室温低下を防ぎながら除湿を行うことができる。
【0022】
なお、この除湿運転では、圧縮機1の回転周波数や室外熱交換器3のファン回転数を調整して、室外熱交換器3の熱交換量を制御し、第1室内熱交換器5による室内空気の加熱量を制御して吹出し温度を広範囲に制御できる。また第1流量制御弁7の開度や室内ファン回転数を調整して、第1室内熱交換器5の凝縮温度を制御し、第1室内熱交換器5による室内空気の加熱量を制御することもできる。また第2流量制御弁4の開度は、例えば第2室内熱交換器の出口冷媒の過熱度が5℃となるように制御されている。
【0023】
この実施の形態では、焼結金属を主弁体24に用いた第2流量制御弁6を第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7の間に配置し、冷房除湿運転時の絞り装置として用いているので、第2流量制御弁6を液冷媒あるいは気液二相冷媒が通過する際の冷媒流動音を大幅に低減することができる。通常のオリフィスタイプの絞り装置に気液二相冷媒が通過する際には、大きな冷媒流動音が発生する。特に気液二相冷媒の流動様式がスラグ流となる場合に、大きな冷媒流動音が発生することが知られている。この冷媒流動音の発生要因としては、絞り装置内のオリフィス部など小孔をスラグ流が通過する際に、小孔よりも大きな冷媒蒸気スラグあるいは冷媒気泡が破壊し、この冷媒蒸気スラグあるいは冷媒気泡の崩壊により振動が発生することや、小孔を蒸気冷媒と液冷媒が交互に通過するため、この小孔を冷媒が通過する際に発生する圧力損失が大きく変動することが考えられる。図2に示した第2流量制御弁では、冷房除湿運転時に第1室内熱交換器5を出た気液二相冷媒あるいは液冷媒は、焼結金属で構成されている主弁体24内の微細な通気孔を通り、この際に減圧されて第2室内熱交換器7に流入するため、冷媒蒸気スラグや冷媒気泡の崩壊が発生せず、また蒸気冷媒と液冷媒は同時に主弁体24の通気孔内を通過するため、圧力損失の大きな変動も生じない。このため従来装置で必要であった遮音材や制振材を弁の外周に巻きつけるなどの低騒音化手段が不要となり、コストの低減ができ、さらに空気調和機器のリサイクル性も向上する。尚、上述した気液二相冷媒に起因する冷媒流動音の課題に関しては、空気調和装置に限定されることなく、冷蔵庫等の冷凍サイクル一般についての課題であり、本実施の形態の絞り装置はこのような冷凍サイクル一般に広く適用することで、同様の作用効果が得られる。
【0024】
冷房除湿運転時の第2流量制御弁6の流量特性(冷媒流量と圧力損失の関係)は、主弁体24に用いる焼結金属の通気孔の径や冷媒が通過する流路長さを調整することによって調整することができる。すなわちある冷媒流量を小さな圧力損失で流す場合には、焼結金属の通気孔を大きくしたり、弁本体の径を大きくすれば良い。また図4に示すように、弁本体の内部に空洞部26を設け、焼結金属を通過する流路長さを小さくしても良い。また逆に、ある冷媒流量を大きな圧力損失で流す場合には、焼結金属の通気孔を小さくしたり、弁本体の径を小さくすれば良い。このような主弁体24に用いる焼結金属の通気孔の径や弁本体の形状は、機器設計時に最適に設計される。尚、主弁体24先端が開放した空洞部26に代えて、周囲が焼結金属で囲まれた中空部としてもよい。さらに主弁体24閉止時に柱状の主弁体24の周面側と底面側とが流路入口側と出口側とに分断される構造であれば、周面側と底面側とで圧力損失等の調整が独立して行なえる。この焼結金属の通気孔の径としては、200から0.5マイクロメートルであれば充分な冷媒流動音低原稿化低減効果が得られることを実験により確認した。好適な例としては、冷媒がR410Aで、焼結金属前後の圧力差が1MPa(メガパスカル)程度の場合に上記通気孔径が10マイクロメートル程度とすると良い。圧力差が大きい場合には通気孔径をより小さく、圧力差が小さい場合には通気孔径をより大きく設計することで対応させられる。この焼結金属の通気孔は、径が小さいほど焼結金属が小形となり、結果として第2流量制御弁6もコンパクトになる。なお通気孔の小さな焼結金属を弁本体に用いた際に、冷凍サイクル内の異物やスラッジによる通気孔の詰まりを防止するために、第2流量制御弁6の上流側に、金属メッシュなどのフィルターを設置しても良い。
【0025】
また本実施の形態では、第2流量制御弁は、電磁コイル25への通電あるいは非通電により開閉動作を行なうものについて説明したが、主弁体24をステッピングモータによって連続的に駆動し、第2流量制御弁の流量特性を連続的に変化させるようにしても良い。このように流量特性を連続的に制御することにより、冷房除湿運転時の温度および湿度制御性はより一層向上し、快適な室内空間を実現できる。
【0026】
次に、この実施の形態の空気調和装置の運転制御法について説明する。空気調和装置には、部屋内に居る居住者の好みの温湿度環境を設定するために、例えば設定温度と設定湿度が空調装置運転時に設定される。なおこの設定温度と設定湿度は、居住者がそれぞれの設定値を室内ユニットのリモコンから直接入力してもよく、また暑がりの人用、寒がりの人用や子供用、老人用など室内ユニットのリモコンに対象とする居住者別に定めた温度および湿度の最適値テーブルを記憶させ、対象居住者のみを直接入力するようにしてもよい。また室内ユニット12には、室内の温度および湿度を検知するために、室内ユニットの吸い込み空気の温度および湿度を検出するセンサーがそれぞれ設けられている。
【0027】
空気調和装置が起動されると、設定温度と現在の室内吸込み空気温度との差を温度偏差、設定湿度と現在の室内吸込み空気湿度との差を湿度偏差として演算し、最終的にこれらの偏差がゼロあるいは所定の値以内となるように空気調和装置の圧縮機1の回転周波数、室外ファン回転数、室内ファン回転数、第1流量制御弁4の絞り開度、および第2流量制御弁6の開閉を制御する。この時、温度および湿度偏差をゼロあるいは所定の値以内に制御する際には、温度偏差を湿度偏差よりも優先して空気調和装置の制御を行なう。すなわち、空気調和装置起動時に、温度偏差および湿度偏差がともに大きい場合は、第2流量制御弁7を開状態とし、まず通常冷房運転で、室内の温度偏差を優先的にゼロまたは所定の値以内となるように運転する。空気調和装置の冷房能力が部屋の熱負荷と一致し、温度偏差がゼロまたは所定の値以内となった場合に、湿度偏差を検出し、この時、湿度偏差がゼロまたは所定の値以内となっている場合は、現在の運転を続行する。
【0028】
温度偏差がゼロまたは所定の値以内となり、この時の湿度偏差がまだ大きな値となっている場合は、第2流量制御弁6を絞り、冷房除湿運転に切換える。この冷房除湿運転では、室内の温度偏差がゼロまたは所定の値以内を維持できるように、第2室内熱交換器7の加熱量を制御するとともに、湿度偏差がゼロまたは所定の値以内に入るように、第1室内熱交換器5の冷却除湿量を制御する。第2室内熱交換器7の加熱量の制御には、室外熱交換器3のファン回転数や第1流量制御弁4の開度などによって調整する。また第1室内熱交換器5の冷却除湿量の制御には、圧縮機1の回転周波数や室内ユニット12のファン回転数などによって制御する。
【0029】
このようにこの実施の形態では、冷房運転時の部屋の負荷に応じて、冷媒回路を通常冷房運転と冷房除湿運転に切換えることにより、部屋内の温湿度環境を、居住者の好みに応じて最適な状態に制御することができる。
【0030】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態の他の例を示す空気調和装置の第2流量制御弁の構成図であり、図2に示したものと同一または同様の構成部品には同一符合を付して、その重複する説明を省略する。この実施の形態では、主弁体24には通常の金属製弁を用い、主弁座23に焼結金属を用いている。図2と同様に、電磁コイル25に非通電することにより、主弁体24が主弁座23から引き離れ、第1流路21と第2流路22がほとんど圧力損失なしにつながる(図5(a))。また電磁コイル25に通電することにより、主弁体24を主弁座23に密着させ、主弁座23の通気孔を介して第1流路21と第2流路22がつながる(図2(b))。冷房除湿運転時には、図5(b)のように電磁コイルに通電することにより、第1室内熱交換器5を出た冷媒は、第2流量制御弁6内の主弁座23の通気孔を通って減圧され、第2室内熱交換器7に流入するため、冷媒流動音の発生がなく、快適な室内空間を実現できる。また通常冷房時には、電磁コイルを非通電とすることにより、図5(a)に示すように主弁体24を主弁座23から引き離れ、第1流路21と第2流路22がほとんど圧力損失なしにつながるため、第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7の間で圧力損失はなく、冷房能力や効率面で低下することもない。
【0031】
図2に示した実施の形態のように主弁体24を焼結金属で成形するよりも、本実施の形態で示したように主弁座23を焼結金属で形成する方が形状が単純なため、比較的容易であり、結果として安価で、しかも冷媒流動音の発生しない流量制御弁を得ることができる。またこの流量制御弁の流量特性を設計するのも形状が簡単なため、設計しやすい。この流量制御弁の流量特性は、図2の実施の形態と同様に、主弁座23に用いる焼結金属の通気孔の径や冷媒が通過する流路長さを調整することによって調整することができる。すなわちある冷媒流量を小さな圧力損失で流す場合には、焼結金属の通気孔を大きくしたり、主弁座の冷媒が通過する流路長さをを小さくすれば良い。また逆に、ある冷媒流量を大きな圧力損失で流す場合には、焼結金属の通気孔を小さくしたり、図6に示すように主弁座の冷媒が通過する流路長さを大きくしても良い。
【0032】
なお、本実施の形態1および形態2では、弁本体を焼結金属で成形した開閉弁や主弁座を焼結金属で成形した開閉弁を第2流量制御弁として用いる例について説明したが、これに限ることはなく、焼結金属は、弁内で減圧作用が生じる部位であれはどこでもよく、弁本体および主弁座をともに焼結金属で成形してもよい。また焼結金属の材質としては、鉄を主成分とし炭素、銅、ニッケルなどを加えた低合金鋼や、ステンレス鋼、あるいは青銅などであっても良い。
【0033】
また本実施の形態1および形態2では、弁本体あるいは主弁座に焼結金属を用いた例について説明したが、これに限ることはなく、気液二相冷媒が液体と気体に分離することなく、減圧されるもでのあれば良く、例えば樹脂の発砲材などの多孔質体であっても同様の効果を発揮する。
【0034】
また本実施の形態1および形態2では、第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7の間に、焼結金属を用いた第2流量制御弁を用いた例について説明したが、これに限ることはなく、第1流量制御弁4に焼結金属を用いた弁を用いることにより、第1流量制御弁での冷媒流動音の発生を防止することができる。さらに焼結金属の利用は、流量制御弁に限らず、冷凍サイクル内で冷媒流動音が発生する全ての個所に適用し、その冷媒流動音の発生を抑制することができる。例えば複数流路に分割された熱交換器に用いる冷媒分配器の内部に焼結金属を用い、冷媒分配器からの冷媒流動音発生を防止することができる。また家庭用冷蔵庫など従来の絞り装置として毛細管などを用いた装置では、毛細管の変りに焼結金属を絞り装置として用いることにより、冷媒流動音の発生を防止することができる。
【0035】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態の他の例を示す空気調和装置の第2流量制御弁の構成図であり、図2に示したものと同一または同様の構成部品には同一符合を付して、その重複する説明を省略する。この実施の形態では、主弁体24が銅や真鍮などの金属製弁,主弁座23が多孔質透過材、例えば通気孔10マイクロミリメートルの焼結金属で構成されている。また25は主弁体24を連続的に駆動する駆動部で、例えばステッピングモータで構成され、図示しない制御手段によって主弁体24を開閉方向へ移動するよう制御している。
【0036】
この実施の形態による第2流量制御弁6では、図1の回路構成において、通常冷房運転など第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7を圧力損失なしにつなげる時には、図7(a)に示すようにステッピングモータ25によって主弁体24を引き上げ、主弁体24と主弁座23の間隙を冷媒が流れるようにする。一方、冷房除湿運転時など第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7で圧力差を生じさせる時には、図7(b)に示すようにステッピングモータ25によって主弁体24を引き下げ、主弁体24と主弁座23の間隙を無くし、冷媒が焼結金属である主弁座23内の通気孔を通って流れるようにする。この時、主弁体24の引き下げ量をステッピングモータ25で調整することにより、冷媒が通過する焼結金属の通過面積を変えることができ、この焼結金属を通過する際の冷媒の圧力損失を制御することができる。すなわちステッピングモータ25による主弁体24の移動量を制御することによって、この第2流量制御弁6を通過する冷媒の圧力損失を自由に変えることができ、第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7の圧力差を制御することができる。
【0037】
冷房除湿運転時には、第1室内熱交換器5のほぼ中間の冷媒温度と第2室内熱交換器7のほぼ中間の冷媒温度の差温によって、この第2流量制御弁前後6の圧力差を間接的に検知し、この圧力差を所定の値となるように第2流量制御弁6の主弁体24の移動量を制御することにより、室内の温湿度環境をより快適に制御することができる。
【0038】
また図8に示すように、主弁体24の一部を金属製弁24a、他の部分を焼結金属24bで構成し、また主弁座23を金属で構成し、この主弁座24の移動量をステッピングモータ25によって連続的に制御し、第2流量制御弁6前後の圧力差を自由に調整できるように構成してもよい。また主弁体が上下に連続的に移動する場合だけではなく、回転運動などによって冷媒が通過する焼結金属の通過面積を可変にする機構を設け、焼結金属を通過する冷媒の圧力損失を自由に制御できるようにしても良い。
【0039】
実施の形態4.
以下、本発明の実施の形態3による空気調和装置について説明する。本実施の形態は、暖房運転に関するもので、空気調和機を構成する冷媒回路は、例えば実施の形態1での図1と同様であり、第2流量制御弁6の構造は図2と同様である。本実施の形態による空気調和装置の暖房時の動作について説明する。図1では暖房時の冷媒の流れを破線矢印で示している。通常の暖房運転は、第2流量制御弁6の電磁コイル25を非通電状態とする。このとき圧縮機1を出た高温高圧の冷媒蒸気は、四方弁2を通って第2室内熱交換器7および第1室内熱交換器5に流入し、室内空気と熱交換して凝縮、液化する。なお第2流量制御弁6は、図2(a)に示すように第1流路21と第2流路が大きな開口面積で接続されているので、この弁を通過する際の冷媒圧力損失はほとんどなく、圧力損失による暖房能力や効率面での低下もない。第1室内熱交換器5を出た高圧の液冷媒は、第1流量制御弁4で低圧に減圧され、気液二相冷媒となって室外熱交換器3で室外空気と熱交換して蒸発する。室外熱交換器3を出た低圧の蒸気冷媒は、四方弁2を通って再び圧縮機1に戻る。この通常冷房運転時の第1流量制御弁4の開度は、例えば室外熱交換器3の出口冷媒の過熱度が5℃となるように制御されている。
【0040】
次に暖房除湿運転時の動作について、図9に示す圧力-エンタルピー線図を用いて説明する。なお、図9に示した英文字は、図1に示した英文字と対応している。この暖房除湿運転時は、第2流量制御弁の電磁コイル25に通電し、図2(b)に示すように主弁体24を主弁座23に密着させ、弁本体の通気孔を介して第2流路22である第2室内熱交換器7の出口と第1流路21である第1室内熱交換器5の入口とを接続する。この時、圧縮機1を出た高温高圧の冷媒蒸気(F点)は、四方弁2を通って第2室内熱交換器7流入し、室内空気と熱交換して凝縮する(E点)。この高圧の液冷媒あるいは気液二相冷媒は、第2流量制御弁6に流入する。第2流量制御弁6では、図2(b)に示すように主弁体24が主弁座23に密着しているため、この弁に流入した冷媒は、焼結金属で構成されている主弁体24内の通気孔を通って第1室内熱交換器5に流入する。この主弁体24の通気孔は10マイクロメートル程度であり、この通気孔を通る冷媒は減圧されて、中間圧の気液二相冷媒となって、第1室内熱交換器5に流入する(D点)。この第1室内熱交換器5に流入した冷媒の飽和温度は室内空気の露点温度以下であり、室内空気の顕熱および潜熱を奪って蒸発する(C点)。第1室内熱交換器5を出た中間圧の気液二相冷媒は、第1流量制御弁4に流入し、低圧まで減圧され、さらに室外熱交換器3に流入し、室外空気と熱交換して蒸発する。室内外熱交換器4を出た低圧の蒸気冷媒は、四方弁2を通って再び圧縮機1に戻る。
【0041】
この暖房除湿運転では、室内空気は、第2室内熱交換器7で加熱されるとともに、第1室内熱交換器5で冷却除湿されるため、部屋を暖房しながら除湿を行うことができる。また暖房除湿運転では、圧縮機1の回転周波数や室外熱交換器3のファン回転数を調整して、室外熱交換器3の熱交換量を制御し、第1室内熱交換器5による室内空気の加熱量を制御して吹出し温度を広範囲に制御できる。また第1流量制御弁7の開度や室内ファン回転数を調整して、第1室内熱交換器5の蒸発温度を制御し、第1室内熱交換器5による室内空気の除湿量を制御することもできる。また第2流量制御弁4の開度は、例えば第2室内熱交換器7の出口冷媒の過冷却度が10℃となるように制御されている。
【0042】
このように本実施の形態では、焼結金属を弁本体として用いた第2流量制御弁を用いているため、暖房時の除湿運転が可能となるとともに、この暖房除湿運転時の冷媒流動音の発生を防止でき、温湿度環境および騒音面でも快適な空間が実現できる。
【0043】
また暖房起動時など第2流量制御弁の電磁コイル25に通電することにより、暖房吹出し温度を高温化することも可能となる。すなわち、暖房起動時に上記暖房除湿サイクルを形成し、第1室内熱交換器5の蒸発温度を室内の吸込み空気温度とほぼ等しくなるように第2流量制御弁で制御する。第1室内熱交換器5の蒸発温度が室内の吸込み空気温度とほぼ等しいため、第1室内熱交換器5ではほとんど冷却および除湿は行なわれず、結果として暖房時の凝縮器の伝熱面積が通常の暖房運転の約半分になり、このため凝縮温度は通常の暖房運転よりも上昇し、吹出し温度の高温化が可能となる。さらにこの暖房高温吹出し運転時でも、第2流量制御弁6での冷媒流動音発生はなく、騒音面でも問題となることはない。
【0044】
次に、この実施の形態の空気調和装置の具体的な暖房運転制御法の一例について説明する。この空気調和装置には、実施の形態1で説明したように、設定温度と設定湿度および吸込み空気温度と湿度が入力されている。この空気調和装置は、暖房起動時に高温吹出し運転運転を所定の時間、たとえば5分間行ない、その後通常暖房運転に移行する。この後、部屋の温度偏差および湿度偏差に応じて、通常暖房運転と暖房除湿運転を切換制御される。
【0045】
暖房運転起動時は、第2流量制御弁6を閉状態とし、圧縮機1を起動する。この時、第1室内熱交換器5での冷却除湿能力がゼロとなるように、室外熱交換器3のファン回転数や第1流量制御弁4の弁開度などを調整して、第1室内熱交換器5の蒸発温度が、吸込み空気温度と等しくなるように制御する。圧縮機起動から所定の時間である5分間が経過すると、第2流量制御弁6を開状態とし、通常暖房運転に移行する。この時、温度偏差がゼロまたは所定の値以内となるように、圧縮機1の回転周波数や、室内ファンの回転数、室外ファンの回転数を調整する。この暖房通常運転により温度偏差がゼロまたは所定の値以内となった場合は、湿度偏差を検出し、この湿度偏差がゼロまたは所定の値以内の場合、および湿度偏差が所定の値以上であっても、加湿を必要とする場合には、通常暖房運転を継続する。一方、湿度偏差がゼロまたは所定の値以上であり、除湿を必要とする場合には、第2流量制御弁6を閉状態とし、暖房除湿運転を行なう。この暖房除湿運転では、室内の温度偏差がゼロまたは所定の値以内を維持できるように、第2室内熱交換器7の加熱量を制御するとともに、湿度偏差がゼロまたは所定の値以内に入るように、第1室内熱交換器5の冷却除湿量を制御する。第2室内熱交換器7の加熱量の制御には、圧縮機1の回転周波数や室内ユニット12のファン回転数などによって制御する。また第1室内熱交換器5の冷却除湿量の制御には、室外熱交換器3のファン回転数や第1流量制御弁4の開度などによって調整する。
【0046】
このようにこの実施の形態では、暖房運転時の運転時間や部屋の負荷に応じて、冷媒回路を暖房高温吹出し運転や通常暖房運転、暖房除湿運転に切換えることにより、部屋内の温湿度環境を、居住者の好みに応じて最適な状態に制御することができる。
【0047】
実施の形態5.
図10はこの発明の実施の形態の他の例を示す空気調和装置の冷媒回路図で、図1に示したものと同一または同様の構成部品には同一符合を付して、その重複する説明を省略する。この実施の形態では、多段に折り曲げた2列の室内熱交換器の上部を第1室内熱交換器5に、下部を第2室内熱交換器7とし、冷房除湿運転時は、上部の第1室内熱交換器5で室内ユニットの吸込み空気を加熱し、下部の第2室内熱交換器7で吸い込み空気を冷却、除湿し、これらの吸込み空気を室内ファン(図示せず)によって混合して、室内に吹出している。また暖房除湿運転時は、下部の第2室内熱交換器7で室内ユニットの吸込み空気を加熱し、上部の第1室内熱交換器5で吸い込み空気を冷却、除湿し、これらの吸込み空気を室内ファン(図示せず)によって混合して、室内に吹出している。さらにこの実施の形態でも、第2流量制御弁6は、図2に示した焼結金属で成形された主弁体24を用いているので、冷房除湿および暖房除湿運転時に、冷媒流動音の発生がなく、低騒音な室内ユニットを実現できる。
【0048】
また室内熱交換器の冷房時の冷媒流路は、入口が1流路とし、途中で3方管8aにより2流路に分岐し、第1室内熱交換器5を構成し、この2流路を3方管8bで1流路に合流させ、第2流量制御弁6に接続している。さらに第2流量制御弁6の出口配管は、3方管8cで再度2流路に分岐され、第2室内熱交換器7を構成し、第2室内熱交換器7の出口で3方管8dにより、この2流路を1流路に合流させている。このように室内熱交換器の冷房時の入口冷媒流路を1流路とし、途中で2流路に分岐することにより、冷房時の冷媒圧力損失が低減でき、通常冷房運転や冷房除湿運転時の性能が向上する。また暖房時は、入口冷媒流路が2流路、出口流路が1流路となるため、冷媒熱伝達率の小さい凝縮器出口付近の冷媒流速が早くなり、熱交換器性能が向上する。さらに第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7の間の流路は3方管により1流路としているので、第2流量制御弁6は1つで済み、室内ユニットが安価となる。
【0049】
なお、この実施の形態では、2列の熱交換器の上部を第1室内熱交換器5、下部を第2室内熱交換器とした構成について説明したが、これに限ることはなく、2列熱交換器の1列目を第2室内熱交換器7、2列目を第1室内熱交換器5として、前後に直列に並べて構成してもよい。また3列熱交換器や、2列および3列熱交換器の混在型であってもよい。
【0050】
またこの実施の形態では、第1流量制御弁4と第1室内熱交換器5の間の配管に液冷媒を貯留するレシーバ30を室外ユニット11内に設けている。このレシーバは、通常暖房運転あるいは暖房除湿運転時に発生する余剰冷媒を貯留し、これらの運転時の冷媒過多による性能低下を防いでいる。すなわち、冷房除湿運転では、室外熱交換器3と第1室内熱交換器5が凝縮器として動作し、凝縮器内容積が最も大きくなるため、必要な冷媒量が最も多くなる。したがって空気調和機の冷媒充填量は、この冷房除湿運転時に必要な冷媒量から決定される。暖房運転時は、室外熱交換器3よりも内容積の小さな第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7が凝縮器となり、また暖房除湿運転時は、第2室内熱交換器7のみが凝縮器となるため、これらの運転時の必要冷媒量は、冷房除湿運転時よりも少なくなる。レシーバ30を設けずに、暖房運転あるいは暖房除湿運転を行なうと、冷媒量が過多の状態で運転することになり、圧縮機1への液バック量が増加して、圧縮機の信頼性低下や、サイクルの性能低下が生じる。そこでこの実施の形態では、暖房運転あるいは暖房除湿運転時の余剰な液冷媒をレシーバ30内に貯留し、全ての運転時の冷媒量を最適に制御し、圧縮機の信頼性向上、および性能向上を実現している。なお、レシーバ30の内容積は、あらかじめ各運転時の最適冷媒量を試験などによって求め、その最大冷媒量と最小冷媒量の差が貯留できる内容積として決定できる。またこのレシーバ30は室外ユニット11内に設置しているため、室内ユニット12が大きくなったりすることがない。
【0051】
実施の形態6.
図11はこの発明の実施の形態の他の例を示す空気調和装置の冷媒回路図で、図1に示したものと同一または同様の構成部品には同一符合を付して、その重複する説明を省略する。この実施の形態では、第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7の間の配管に、焼結金属を用いた絞り装置31と電磁開閉弁37を並列に接続し、第2流量制御弁を構成している。この焼結金属を用いた絞り装置31は、図12に示すように容器内部の一端が閉じられ、他端が開放した円筒状を成し、周面および底面を介して円筒状の内外を連通する焼結金属32が挿入されて絞り部を構成しており、この焼結金属32の両端は、固定板33、34、およびバネ35、36で容器内に固定されている。固定板34は円周部が部分的に切りかかれた円盤状に形成されている。
【0052】
この実施の形態の、通常冷房運転、冷房除湿運転、通常暖房運転、暖房除湿運転、および暖房高温吹出し運転時の動作は、図1の実施の形態と同様であり、その詳細な説明は省略し、以下では各運転時の焼結金属を用いた絞り装置31と電磁開閉弁37の動作について説明する。通常冷房運転および通常暖房運転時には、電磁開閉弁37を開状態とし、冷凍サイクルを構成する。このとき焼結金属を用いた絞り装置31は開状態の電磁開閉弁37に比べて流動抵抗が大きいため、ほとんどの冷媒は絞り装置31を流れず、電磁開閉弁37を流れる。一方、冷房除湿運転、暖房除湿運転、暖房高温吹出し運転時は、電磁開閉弁37を閉状態とし、焼結金属を用いた絞り装置31に冷媒を流して、減圧作用を行なう。絞り装置31に流入した気液二相冷媒あるいは液冷媒は、円筒状の焼結金属32内の通気孔を通過する。この焼結金属32の通気孔は200から0.5マイクロメートル程度であり、この微細な通気孔を通る冷媒は減圧されため、冷媒蒸気スラグや冷媒気泡の崩壊が発生せず、また蒸気冷媒と液冷媒はともに焼結金属32の通気孔内を通過するため、圧力損失の大きな変動も生じず。冷媒流動音の発生が防止できる。このため、冷房除湿運転、暖房除湿運転および暖房高温吹出し運転時に低騒音な室内環境を実現できるとともに、従来装置で必要であった遮音材や制振材を弁の外周に巻きつけるなどの低騒音化手段が不要となり、コストの低減ができ、さらに空気調和機器のリサイクル性も向上する。また図2に示した主弁体24に焼結金属を用いた第2流量制御弁に比べて、焼結金属の複雑な加工が必要でなく、また電磁開閉弁は通常の電磁弁の使用が可能であるため、第2流量制御弁を安価に得ることができる。
【0053】
なお、この実施の形態では、絞り装置31内に設けられた焼結金属32を一端が閉じられた円筒状で構成した例について説明したいが、これに限ることはなく、円盤状や円柱状あるいは直方体など、その形状はどのようなものでもよく、冷媒がこの焼結金属部を流れる際に、所定の減圧作用が得られるものであればよい。
【0054】
実施の形態7.
図13はこの発明の実施の形態の他の例を示す空気調和装置の冷媒回路図で、図1に示したものと同一または同様の構成部品には同一符合を付して、その重複する説明を省略する。この実施の形態では、第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7の間の配管に、毛細管38と電磁開閉弁37を並列に接続し、第2流量制御弁を構成している。この毛細管38は内径が1mm以上、例えば内径2mmの銅配管を用いている。
【0055】
この実施の形態の、通常冷房運転、冷房除湿運転、通常暖房運転、暖房除湿運転、および暖房高温吹出し運転時の動作は、図1の実施の形態と同様であり、その詳細な説明は省略し、以下では各運転時の毛細管38と電磁開閉弁37の動作について説明する。通常冷房運転および通常暖房運転時には、電磁開閉弁37を開状態とし、冷凍サイクルを構成する。このとき毛細管38は開状態の電磁開閉弁37に比べて流動抵抗が大きいため、ほとんどの冷媒は毛細管38を流れず、電磁開閉弁37を流れる。一方、冷房除湿運転、暖房除湿運転、暖房高温吹出し運転時は、電磁開閉弁37を閉状態とし、毛細管38に冷媒を流して、減圧作用を行なう。
【0056】
毛細管内を気液二相冷媒が流れる時の冷媒流動音は、毛細管内の冷媒流速に大きく依存している。図14は、冷媒流量が30kg/h一定のもとで、毛細管内径を変えた時の冷媒流動音の測定結果であり、図の横軸が毛細管内径、縦軸が毛細管の冷媒流動音である。毛細管内を気液二相冷媒が流れる時の冷媒流動音は、毛細管内径が小さくなるほど、すなわち毛細管内の冷媒流速が早くなるほど、大きくなる。これは毛細管内部の冷媒流速が早くなるほど、毛細管内部の圧力変動も大きくなることや、毛細管出口部での冷媒流出速度も速くなり、この毛細管出口部の冷媒エネルギーが増加することなどが要因と考えられる。図14に示した冷媒流動音測定結果によると、毛細管内径を1mm以上とすることにより、毛細管から発生する冷媒流動音は許容値以下となり、冷房除湿運転、暖房除湿運転および暖房高温吹出し運転時に低騒音な室内環境を実現できるとともに、従来装置で必要であった遮音材や制振材を弁の外周に巻きつけるなどの低騒音化手段が不要となり、コストの低減ができ、さらに空気調和機器のリサイクル性も向上する。また図2に示した弁本体に焼結金属を用いた第2流量制御弁に比べて、安価な絞り装置を得ることができる。なお、図14に示した毛細管内径を変えた時の冷媒流動音の測定結果は、冷媒流量が30kg/h一定のもとでの結果であり、冷媒流量が30kg/hより大きい場合は、冷媒流動音は全体的に大きくなり、また逆に冷媒流量が30kg/hより小さい場合は、冷媒流動音は全体的に小さくなるが、1mm以上の内径の毛細管を用いることにより、冷媒流動音はほぼ許容値以下に低減することができる。
【0057】
実施の形態8.
図15はこの発明の実施の形態の他の例を示す空気調和装置の冷媒回路図で、図1に示したものと同一または同様の構成部品には同一符合を付して、その重複する説明を省略する。この実施の形態では、第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7の間の配管に、毛細管38と電磁開閉弁37を並列に接続し、さらに冷房除湿運転時の毛細管38入口配管と第2室内熱交換器の出口の低圧配管とを熱交換する熱交換器40を設けている。この熱交換器は二重管式熱交換器や接触式熱交換器あるいはプレート式熱交換器などで構成されている。
【0058】
この実施の形態の、通常冷房運転、冷房除湿運転の動作は、図1の実施の形態と同様であり、その詳細な説明は省略し、以下では各運転時の毛細管38と電磁開閉弁37および熱交換器40の動作について、図16に示した冷房除湿運転時の圧力-エンタルピー線図を用いて説明する。なお、図16に示した英文字は、図15に示した英文字と対応している。通常冷房運転には、電磁開閉弁37を開状態とし、冷凍サイクルを構成する。このとき毛細管38は開状態の電磁開閉弁37に比べて流動抵抗が大きいため、ほとんどの冷媒は毛細管38を流れず、電磁開閉弁37を流れ、熱交換器40も動作しない。一方、冷房除湿運転は、電磁開閉弁37を閉状態とし、毛細管38に冷媒を流して、減圧作用を行なう。第1室内熱交換器5を出た中間圧の気液二相冷媒は(D点)、熱交換器40に流入し、ここで第2室内熱交換器7を出た低温低圧の冷媒によって冷却され、中間圧の液冷媒となって毛細管38に流入する(E点)。この液冷媒は、毛細管によって中間圧から低圧まで減圧され、低圧の気液二相冷媒となって第2室内熱交換器7に流入する(F点)。
【0059】
毛細管内を流れる冷媒流動音は、毛細管入口冷媒が気液二相状態よりも液状態の方が小さくなる。これは毛細管入口冷媒が気液二相状態よりも液状態の方が、毛細管内で減圧により発生する蒸気冷媒量が少なく、このため毛細管内の冷媒の平均流速が小さくなるためである。この実施の形態では、冷房除湿運転時の第2流量制御弁である毛細管38の入口冷媒を、熱交換器40内で第2室内熱交換器7の出口冷媒により冷却、液化しているので、毛細管入口冷媒が液状態となり、冷媒流動音の発生を低減することができる。なお、毛細管38の冷媒状態は、必ずしも液状態まで冷却する必要はなく、気液二相冷媒の蒸気冷媒の割合(乾き度)を小さくするだけでも、冷媒流動音の低減効果は得られる。また熱交換器40によって、第2室内熱交換器7の出口冷媒は加熱されるため、第2室内熱交換器7の出口冷媒は湿り冷媒となり、図1に示した実施の形態に比べて、第2室内熱交換器内の冷媒伝熱性能が向上し、冷房除湿運転時の効率も向上する。
【0060】
なおこの実施の形態では、毛細管38の入口冷媒を第2室内熱交換器7の出口冷媒によって冷却する例について説明したが、これに限ることはなく、毛細管38の入口冷媒を室内空気によって冷却するように構成しても、同様の効果を発揮する。
【0061】
実施の形態9.
図17はこの発明の実施の形態の他の例を示す空気調和装置の冷媒回路図で、図1に示したものと同一または同様の構成部品には同一符合を付して、その重複する説明を省略する。この実施の形態では、第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7の間の配管に、毛細管38と電磁開閉弁37を並列に接続し、さらに冷房除湿運転時に毛細管38と第2室内熱交換器の出口の低圧配管とを熱交換する熱交換器40を設けている。この熱交換器は二重管式熱交換器や接触式熱交換器などで構成されている。
【0062】
この実施の形態の、通常冷房運転、冷房除湿運転の動作は、図1の実施の形態と同様であり、その詳細な説明は省略し、以下では各運転時の毛細管38と電磁開閉弁37および熱交換器40の動作について、図18に示した冷房除湿運転時の圧力-エンタルピー線図を用いて説明する。なお、図18に示した英文字は、図17に示した英文字と対応している。通常冷房運転には、電磁開閉弁37を開状態とし、冷凍サイクルを構成する。このとき毛細管38は開状態の電磁開閉弁37に比べて流動抵抗が大きいため、ほとんどの冷媒は毛細管38を流れず、電磁開閉弁37を流れ、熱交換器40も動作しない。一方、冷房除湿運転は、電磁開閉弁37を閉状態とし、毛細管38に冷媒を流して、減圧作用を行なう。第1室内熱交換器5を出た中間圧の気液二相冷媒は(D点)、毛細管38に流入し、さらに熱交換器40で第2室内熱交換器7を出た低温低圧の冷媒によって冷却されながら、中間圧から低圧まで減圧され、低圧の気液二相冷媒となって第2室内熱交換器7に流入する(F点)。
【0063】
一般に、毛細管内を流れる気液二相冷媒は、流れとともに減圧されるため、液冷媒から冷媒蒸気が発生し、流れ方向に乾き度が大きくなる。毛細管内を流れる気液二相冷媒の冷媒流動音は、毛細管内で発生する冷媒蒸気によって冷媒の速度が増加し、毛細管内での圧力損失の変動が大きくなることや、毛細管出口部の冷媒速度が増加することが要因である。この実施の形態では、冷房除湿運転時の第2流量制御弁である毛細管38を、熱交換器40内で第2室内熱交換器7の出口冷媒により冷却しているので、毛細管内では蒸気冷媒の発生がほとんどなく、このため毛細管内部の圧力損失の変動も小さく、また毛細管出口の冷媒速度の増加を抑制することができる。このため、毛細管で発生する冷媒流動音は低減でき、室内の騒音環境を向上することができる。また熱交換器40によって、第2室内熱交換器7の出口冷媒は加熱されるため、第2室内熱交換器7の出口冷媒は湿り冷媒となり、図1に示した実施の形態に比べて、第2室内熱交換器内の冷媒伝熱性能が向上し、冷房除湿運転時の効率も向上する。
【0064】
なおこの実施の形態では、毛細管38を第2室内熱交換器7の出口冷媒によって冷却する例について説明したが、これに限ることはなく、毛細管38を室内空気によって冷却するように構成しても、同様の効果を発揮する。
【0065】
実施の形態10.
図19はこの発明の実施の形態の他の例を示す空気調和装置の冷媒回路図で、図1に示したものと同一または同様の構成部品には同一符合を付して、その重複する説明を省略する。この実施の形態は、図1に示した実施の形態の、冷房除湿運転および暖房高温吹出し運転の改良に関するものであり、第1流量制御弁4と第1室内熱交換器5の間の配管と第2流量制御弁6と第2室内熱交換器7の間の配管との間をバイパスするバイパス流路を接続し、このバイパス流路には開閉手段である電磁弁41が設けられている。第1流量制御弁4、第2流量制御弁および電磁弁41は、図示しない制御手段からの指示によって互いに関連しあいながら開閉する。
【0066】
まずこの実施の形態の、冷房除湿運転時の動作について説明する。通常冷房運転時は、電磁弁41を閉じ、第2流量制御弁6を開として、図1の実施の形態と同様の動作を行なう。冷房顕熱負荷が小さくなった場合には、電磁弁41を開き、第2流量制御弁6を閉じた熱交換器分割による除湿運転を行なう。この熱交換器分割による除湿運転では、圧縮機1を出た高温高圧の冷媒蒸気は、四方弁2を通って室外熱交換器3に流入し、外気と熱交換して凝縮、液化する。この高圧の液冷媒は、第1流量制御弁4で低圧に減圧され、気液二相冷媒となって電磁弁41を通って、第2室内熱交換器7に流入し、室内空気の顕熱および潜熱を奪って蒸発する。この時の第1流量制御弁4の開度は、例えば第2室内熱交換器の出口冷媒の過熱度が5℃となるように制御されている。この熱交換器分割による除湿運転では、通常冷房運転が第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7とを蒸発器としているのに対して、第2室内熱交換器7のみを蒸発器としているので、冷房能力が小さく、圧縮機1の回転周波数を小さくして状態でも、通常冷房運転に比べて、蒸発温度を低くすることができ、十分な除湿量を確保することができる。
【0067】
さらに部屋の冷房顕熱能力が低下し、熱交換器分割による除湿運転で圧縮機1の回転周波数を下げると蒸発温度が上昇し、除湿量が充分に確保できなくなった場合や、部屋の冷房顕熱がゼロ、すなわち部屋の室温を低下させずに除湿運転を行なう場合には、冷媒再熱による除湿運転を行なう。この冷媒再熱による除湿運転では、電磁弁41を開、第2流量制御弁6を閉とし、実施の形態1で示したように、第1室内熱交換器を凝縮器、第2室内熱交換器7を蒸発器とした除湿運転を行なう。この際、第2流量制御弁6には、絞り部に焼結金属を使用したものや、毛細管を使用しているので、冷媒流動音の発生を防止することができる。
【0068】
次に、この実施の形態の空気調和装置の冷房時の具体的な運転制御法について説明する。空気調和装置には、部屋内に居る居住者の好の温湿度環境を設定するために、例えば設定温度と設定湿度が空調装置運転時に設定される。なおこの設定温度と設定湿度は、居住者がそれぞれの設定値を室内ユニットのリモコンから直接入力してもよく、また暑がりの人用、寒がりの人用や子供用、老人用など室内ユニットのリモコンに対象とする居住者別に定めた温度および湿度の最適値テーブルを記憶させ、対象居住者のみを直接選択するようにしてもよい。また室内ユニット12には、室内の温度および湿度を検知するために、室内ユニットの吸い込み空気の温度および湿度を検出するセンサーがそれぞれ設けられている。
【0069】
空気調和装置が起動されると、設定温度と現在の室内吸込み空気温度との差を温度偏差、設定湿度と現在の室内吸込み空気湿度との差を湿度偏差として演算し、最終的にこれらの偏差がゼロあるいは所定の値以内となるように空気調和装置の圧縮機1の回転周波数、室外ファン回転数、室内ファン回転数、第1流量制御弁4の絞り開度、および第2流量制御弁7の開閉、電磁弁41を制御する。この時、温度および湿度偏差をゼロあるいは所定の値以内に制御する際には、温度偏差を湿度偏差よりも優先して空気調和装置の制御を行なう。すなわち、空気調和装置起動時に、温度偏差および湿度偏差がともに大きい場合は、第2流量制御弁7を開状態とし、また電磁弁41を閉状態として、まず通常冷房運転で、室内の温度偏差を優先的にゼロまたは所定の値以内となるように運転する。圧縮機1の回転周波数や室内ファンの回転数の調整により空気調和装置の冷房能力が部屋の熱負荷と一致し、温度偏差がゼロまたは所定の値以内となった場合に、湿度偏差を検出し、この時、湿度偏差がゼロまたは所定の値以内となっている場合は、現在の運転を続行する。
【0070】
温度偏差がゼロまたは所定の値以内となり、この時の湿度偏差がまだ大きな値となっている場合は、その時の圧縮機1の回転周波数に応じて、熱交換器分割による冷房除湿運転と冷媒再熱による冷房除湿運転を選択し、冷媒回路を切換える。すなわち冷房顕熱能力は、熱交換器分割による冷房除湿運転の方が、冷媒再熱による冷房除湿運転よりも大きいため、温度偏差をゼロまたは所定の値以内に維持するために必要な冷房顕熱能力を、通常冷房運転時の圧縮機1の回転周波数で間接的に検知し、冷媒回路を選択する。すなわち、温度偏差をゼロまたは所定の値以内となった圧縮機1の回転周波数が、所定の値、例えば30Hz以上であれば、第2流量制御弁6を絞り、電磁弁41を開状態として、熱交換器分割による冷房除湿運転に切換える。この熱交換器分割による冷房除湿運転では、圧縮機1の回転周波数や室内ファンの回転数などを調整して、温度偏差および湿度偏差がともにゼロあるいは所定の値以内となるように制御される。
【0071】
一方、通常冷房運転で温度偏差がゼロまたは所定の値以内となり、この時の湿度偏差がまだ大きな値となり、かつ圧縮機1の回転周波数が所定の値、例えば30Hz以下であった場合や、上記説明のように通常冷房運転から熱交換器分割による冷房除湿運転に移行した後、部屋の空調負荷が小さくなり、温度偏差をゼロまたは所定の値以内に維持するために部屋の空気を加熱する必要があると判断された場合は、第2流量制御弁6を絞り、電磁弁41を閉状態として、冷媒再熱による冷房除湿運転に切換える。この冷媒再熱による冷房除湿運転では、室内の温度偏差がゼロまたは所定の値以内を維持できるように、第2室内熱交換器7の加熱量を制御するとともに、湿度偏差がゼロまたは所定の値以内に入るように、第1室内熱交換器5の冷却除湿量を制御する。第2室内熱交換器7の加熱量の制御には、室外熱交換器3のファン回転数や第1流量制御弁4の開度などによって調整する。また第1室内熱交換器5の冷却除湿量の制御には、圧縮機1の回転周波数や室内ユニット12のファン回転数などによって制御する。
【0072】
このようにこの実施の形態では、冷房時、室内の顕熱および潜熱負荷に応じて、通常冷房運転、熱交換器分割による除湿運転、冷媒再熱による除湿運転の3つの運転モードが切換可能であるので、幅広い範囲で部屋内の温度、湿度環境を最適に制御することが可能となる。また第2流量制御弁6には、絞り部に焼結金属を使用したものや、毛細管を使用しているので、冷媒流動音の発生を防止し、静かな室内環境を実現できる。
【0073】
次にこの実施の形態の暖房高温吹出し運転の動作について説明する。通常暖房運転時は、電磁弁41を閉じ、第2流量制御弁6を開として、図1の実施の形態3と同様の動作を行なう。起動時など高温の吹出し温度が要求された場合には、電磁弁41を開き、第2流量制御弁6を閉じた熱交換器分割による暖房運転を行なう。この熱交換器分割による暖房運転では、圧縮機1を出た高温高圧の冷媒蒸気は、四方弁2を通って第2室内熱交換器7に流入し、室内空気と熱交換して凝縮、液化する。この高圧の液冷媒は、電磁弁41を通って。第1流量制御弁4に流入し、低圧まで減圧され、室外熱交換器3に流入し、室外の空気と熱交換して蒸発し、四方弁2を通って再び圧縮機1に戻る。この時の第1流量制御弁4の開度は、例えば室外熱交換器3の出口冷媒の過熱度が5℃となるように制御されている。この熱交換器分割による暖房運転では、通常暖房運転が第1室内熱交換器5と第2室内熱交換器7と凝縮器としているのに対して、第2室内熱交換器7のみを凝縮器としているので、通常冷房運転に比べて、凝縮温度を高くすることができ、この凝縮器で加熱され、室内に吹出される空気温度を高くすることがでる。さらに暖房運転時に、室内の除湿運転を行なう場合には、電磁弁41を閉、第2流量制御弁6を閉とすることにより、実施の形態3で説明した暖房除湿運転が可能となる。また第2流量制御弁6には、絞り部に焼結金属を使用したものや、毛細管を使用しているので、冷媒流動音の発生を防止することができる。
【0074】
このようにこの実施の形態では、暖房時、通常暖房運転、熱交換器分割による暖房高温吹出し運転、暖房除湿運転の3つの運転モードが切換可能であるので、使用者の好みに応じて部屋内の温度、湿度環境を最適に制御することができる。また第2流量制御弁6には、絞り部に焼結金属を使用したものや、毛細管を使用しているので、冷媒流動音の発生を防止し、静かな室内環境を実現できる。
【0075】
なお本実施の形態では、第1室内熱交換器5と第2流量制御弁6と並列に電磁弁41を設置する例について説明したが、これに限るものではなく、図20に示すように、電磁弁41と第2流量制御弁6を一体化した3方弁42を用いても良い。このように電磁弁41と第2流量制御弁6を一体化した3方弁42を用いることにより、室内機の小形化が可能となる。
【0076】
また実施の形態1から形態9では、空気調和装置の冷媒としてR410Aを用いた場合について説明した。R410Aは、HFC系冷媒であり、オゾン層を破壊しない地球環境保全に適した冷媒であるとともに、従来冷媒として用いられてきたR22に比べて、冷媒圧力損失が小さいため、第2流量制御弁6の絞り部に用いる焼結金属の通気孔の径を小さくでき、より一層冷媒流動音低減効果を得ることができる冷媒である。
【0077】
さらにこの空気調和装置の冷媒としては、R410Aに限ることはなく、HFC系冷媒であるR407CやR404A、R507Aであっても良い。また地球温暖化防止の観点から、地球温暖化係数の小さなHFC系冷媒であるR32単独R152a単独あるいはR32/R134aなどの混合冷媒であっても良い。またプロパンやブタンなどの炭化水素冷媒やアンモニア、二酸化炭素、エーテルなどの自然系冷媒およびそれらの混合冷媒であってもよい。
【0078】
また本実施の形態1から形態9では、特に圧縮機の潤滑油については言及していないが、潤滑油としては鉱油やアルキルベンゼンなどの合成油であっても良く、また近年、HFC系冷媒用として開発されたエステル油やエーテル油であっても良い。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したとおりこの発明の絞り装置によれば、絞り部を冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材で構成し、前記多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段を備えたので、絞り部を冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材で構成したので、冷媒流動音の発生を防止して騒音を低減できると共に多孔質透過材を通過することによる圧力差を適度に調節できる効果が得られる。
【0080】
また、電磁開閉弁が設けられた第1の流路と、この第1の流路と並列に設けられた第2の流路と、この第2の流路中に設けられ冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材で構成した絞り部と、前記多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段とを備えたので、多孔質透過材の複雑な加工を要求することなく、冷媒流動音の発生を防止して騒音を低減できると共に多孔質透過材を通過することによる圧力差を適度に調節できる効果が得られる。
【0081】
また、前記多孔質透過材で冷媒流路を覆うので、圧力損失の変動を抑制できると共に、冷媒流動音の発生を防止して騒音を低減できる効果が得られる。
【0082】
また、弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁体に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用い前記主弁座との間隙を開閉する方向に前記多孔質透過材を用いた主弁体をステッピングモータによって連続的に駆動して移動させ冷媒の流量特性を連続的に変化させる絞り部を構成したので、冷媒流動音の発生を防止して騒音を低減できると共に通常の弁開時における圧力損失による性能低下も防止できる効果が得られる。
【0083】
【0084】
また、弁室側壁に第1流路が開口する弁本体と、弁室底面に第2流路が開口する主弁座と、弁室内に前記主弁座を閉止できる主弁体を有し、前記主弁座に冷媒流れ方向に連通する多孔質透過材を用いて流量制御弁を構成したので、冷媒流動音の発生を防止して騒音を低減できると共に絞り部の設計が容易となり、安価で低騒音なものとできる効果が得られる。
【0085】
また、周面が主弁座の側面と当接し、前記周面と側面との当接面積を開閉方向への移動によって可変する主弁体と、前記主弁体の開閉方向への移動を制御する制御手段とを備え、前記主弁体、主弁座および制御手段で多孔質透過材の透過面積を調節する調節手段を構成したので、主弁体の開閉動作と同方向の動作で多孔質透過材を利用した圧力差を適度に調節できる効果が得られる。
【0086】
また、多孔質透過材の通気孔を200から0.5マイクロメートルの範囲としたので、液冷媒や気液二相冷媒が通過する際の冷媒流動音の発生を防止できる効果が得られる。
【0087】
また、前記多孔質透過材を焼結金属としたので、耐久性に優れた絞り装置とすることができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1による空気調和装置の冷媒回路図である。
【図2】 実施の形態1に係わり、第2流量制御弁の構成を示す図である。
【図3】 実施の形態1に係わる空気調和装置の冷房除湿運転時の動作状態を表す特性図である。
【図4】 実施の形態1に係わり、第2流量制御弁の他の構成例を示す図である。
【図5】 本発明の実施の形態2に係わり、第2流量制御弁の構成を示す図である。
【図6】 実施の形態2に係わり、第2流量制御弁の他の構成例を示す図である。
【図7】 本発明の実施の形態3に係わり、第2流量制御弁の構成を示す図である。
【図8】 実施の形態3に係わり、第2流量制御弁の他の構成例を示す図である。
【図9】 本発明の実施の形態4に係わり、暖房除湿運転時の動作状態を表す特性図である。
【図10】 本発明の実施の形態5による空気調和装置の冷媒回路図である。
【図11】 本発明の実施の形態6による空気調和装置の冷媒回路図である。
【図12】 実施の形態6に係わり、第2流量制御弁の構成を示す図である。
【図13】 本発明の実施の形態7による空気調和装置の冷媒回路図である。
【図14】 実施の形態7に係わり、毛細管の冷媒流動音の測定結果を示す図である。
【図15】 本発明の実施の形態8による空気調和装置の冷媒回路図である。
【図16】 実施の形態8に係わる空気調和装置の冷房除湿運転時の動作状態を表す特性図である。
【図17】 本発明の実施の形態9による空気調和装置の冷媒回路図である。
【図18】 実施の形態9に係わる空気調和装置の冷房除湿運転時の動作状態を表す特性図である。
【図19】 本発明の実施の形態10による空気調和装置の冷媒回路図である。
【図20】 実施の形態10に係わる空気調和装置の他の例を示す冷媒回路図である。
【図21】 従来の空気調和装置を示す冷媒回路図である。
【符号の説明】 1 圧縮機、 3 室外熱交換器、 4 第1流量制御弁、 5 第1室内熱交換器、 6 第2流量制御弁、 7 第2室内熱交換器、 21 第1流路、 22 第2流路、 23 主弁座、 24 主弁体、 30 レシーバ、 31 焼結金属、 38 毛細管、 40 熱交換器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-14 
出願番号 特願平11-231331
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (F25B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 佐野 遵丸山 英行  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
櫻井 康平
登録日 2003-05-16 
登録番号 特許第3428516号(P3428516)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 絞り装置  
代理人 谷 義一  
代理人 村上 加奈子  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 高橋 省吾  
代理人 宮田 金雄  
代理人 阿部 和夫  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 村上 加奈子  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 高橋 省吾  
代理人 宮田 金雄  
代理人 佐藤 久容  

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