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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1111164
異議申立番号 異議2002-72301  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-02-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-09-17 
確定日 2004-11-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3272640号「ボンディング装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3272640号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許3272640号の請求項1,2に係る発明は、平成9年7月11日に特許出願され、平成14年1月25日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、北條 圭介(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、平成16年1月14日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年3月15日に特許異議意見書が提出された後、平成16年9月1日付けで再度取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年9月29日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
請求項1中の「前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号と前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合して」を、「前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号から生成される被写体パタンと前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合して」と訂正する。
(2)訂正事項b
請求項2中の「前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号と前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合して」を、「前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号から生成される被写体パタンと前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合して」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書段落番号【0014】の「前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号と前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合して」を、「前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号から生成される被写体パタンと前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合して」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項a,b及びcは、請求項1,2,段落番号【0014】において、被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合するものとして、「被写体の画像信号」としていたものを、願書に添付した明細書の段落番号【0032】【0033】【0034】の記載及び図1との対応をとるために、「被写体の画像信号から生成される被写体パタン」とするもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
また、該訂正は、段落番号【0033】【0034】の「画像生成部21は、提供された画像信号Pを利用し、データバス30を介して受けるCPU3のプログラムの制御の下に静止画像としての被写体パタンを生成しパタン認識部22に供給する。【0034】パタン認識部22は、画像生成部21から提供された被写体パタンと、予め内蔵被加工物の正常位置における標準パタンとのパタン照合に基づいて」という記載に裏付けられており、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについて
1.特許異議申立の概要
特許異議申立人は、証拠として審査段階で拒絶理由通知に引用された特許文献1:特開平3-242947号公報、特許文献2:特開平4-240740号公報を指摘するともに、甲第1号証:特開平8-285539号公報、甲第2号証:特開平7-270716号公報を提出して、訂正前の請求項1に係る発明は、特許文献1、特許文献2及び甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の請求項2に係る発明は、特許文献1、特許文献2、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、これを取り消すべき旨主張する。

2.本件の請求項1,2に係る発明
上記II.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1,2に係る発明(以下、「本件発明1,2」という。)は、平成16年9月29日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項に特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームのリードとをボンディングにより接続する場合に、被写体とする被加工物の半導体チップとリードとをカメラで俯瞰的に撮像して、ボンディングツールと前記被加工物との相対位置の整合を行うボンディング装置において、半導体チップの上面とリードの上面との高低差としての段差のバラツキに対応して、前記被写体の撮像領域である焦点範囲を、撮像面に近い近位置焦点範囲と前記近位置焦点範囲よりも遠くに設定する遠位置焦点範囲との2つの焦点範囲のそれぞれに対応した撮像面を異にする互いに独立した2系統の光路を有する光学系と、この光学系を介して前記被写体を前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲のいずれかの焦点範囲で撮像する2つのカメラとを備え前記被写体の画像信号を取得する撮像手段と、前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号から生成される被写体パタンと前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合してボンディング加工時の加工ツールと前記被写体とのあるべき状態からの相対位置差を検出する相対位置差検出手段と、前記相対位置差検出手段で検出した前記相対位置差に基づきボンディング加工時における前記加工ツールと前記被写体との位置整合を確保するボンディング位置整合手段とを備えることを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームのリードとをボンディングにより接続する場合に、被写体とする被加工物の半導体チップとリードとをカメラで俯瞰的に撮像して、ボンディングツールと前記被加工物との相対位置の整合を行うボンディング装置において、半導体チップの上面とリードの上面との高低差としての段差のバラツキに対応して、前記被写体の撮像領域である焦点範囲を、撮像面に近い近位置焦点範囲と前記近位置焦点範囲よりも遠くに設定する遠位置焦点範囲との2つの焦点範囲のそれぞれに対応した撮像面を共通とする互いに独立した2系統の光路を有する光学系と、この光学系の有する2系統の光路を切り替え可能とするシャッター部と、このシャッター部で切り替えた前記2系統の光路に対応した前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲のいずれかの焦点範囲、もしくは前記シャッター部を開放状態として前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲の双方の焦点範囲で撮像する1つのカメラとを備え前記被写体の画像信号を取得する撮像手段と、前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号から生成される被写体パタンと前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合してボンディング加工時の加工ツールと前記被写体とのあるべき状態からの相対位置差を検出する相対位置差検出手段と、前記相対位置差検出手段で検出した前記相対位置差に基づきボンディング加工時における前記加工ツールと前記被写体との位置整合を確保するボンディング位置整合手段とを備えることを特徴とするボンディング装置。」

3.引用刊行物の記載事実
当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物、
刊行物1:特開平3-242947号公報
刊行物2:特開平4-240740号公報
刊行物3:特開平8-285539号公報(甲第1号証)
刊行物4:特開平7-270716号公報(甲第2号証)
には、以下のような事項が記載されている。

(1)刊行物1の記載
(1a)「第1ボンディング点に焦点を合わせる第1の光学系と、第2ボンディング点に焦点を合わせる第2の光学系と、第1及び第2の光学系を通過する画像を受け、上記像を電気信号に変換する画像認識部と、第1の光学系を通過した画像と第2の光学系を通過した画像とを切り換える切り換え機構と、画像認識部にて得た画像を電気信号に変換し画像データ信号を発生する認識処理部と、予め第1ボンディング点及び第2ボンディング点の設計上の固定データを収容している記憶部と、上記画像データ信号に基づき各ボンディングの実際の位置座標を算出すると共に上記固定データと比較して座標ずれデータを出力する演算処理部と、座標ずれデータをもとにXY移動機構を駆動するための信号を発する制御部を有することを特徴とするワイヤボンディング装置。」(特許請求の範囲第2項)。
(1b)「[産業上の利用分野]
本発明は、段差のあるボンディング点の位置認識技術に関するもので、・・・ワイヤボンディングに適用して有効な技術に関するものである。
[従来の技術]
短冊上のリードフレームに、半導体チップを取り付けたのち、リードフレームに形成されている多数本のリードと半導体チップ上の電極とを導電性の金属ワイヤで結線するワイヤボンディングが行われている。・・・
[発明が解決しようとする課題]
ところが、通常認識用カメラは1台であるために焦点を半導体チップ上の電極に合せ、リードには焦点を合わせていない。従って、電極(以降第1ボンディング点と称す)の高さとリード(以降第2ボンディング点と称す)の高さとの差がある場合焦点が合わないことから誤認識してボンディングミスが多発するという問題があった。・・・本発明の目的は、ボンディング位置認識精度を向上する技術を提供するものである。」(第1頁右下欄第12行〜第2頁左上欄第19行)
(1c)「次に本実施例の動作について説明する。まず、記憶部14内にn個の第1ボンディング点及びm個の第2ボンディング点の設計上の座標データを全て入力して記憶させておく。(これらの座標データを便宜上、固定データと呼ぶことにする。)
さらにカメラ本体11を被ボンディング体の上方へ移動させ第1の光学系16第1のボンディング点の1つ例えばP1にセットし焦点を合わせ、その画像を認識処理部12へ送出する。
画像処理部12ではその画像を電気信号に変換し画像データ信号を発生する。演算処理部13ではこの画像データ信号をもとに演算し実座標(X1,Y1)のデータを記憶部13に送出し格納する。この作業を第1ボンディング点P2〜Pnまでについて行ない(X2,Y2)〜(Xn,Yn)を記憶部13に格納する。なお、このとき光路変更ミラー19は開状態で第2の光学系17からの画像Bはカメラ本体11に伝達されることはない。
次に、第2の光学系17を第2ボンディング点の1つ、例えばR1の先端部にセットし焦点を合わせ、その画像Bを認識処理部12へ送出する。そして、その画像Bで得られる電気信号をもとに演算し実座標(U1,V1)を記憶部14に送出し格納する。この動作を
第2ボンディング点R2〜Rmの全てについて行ない、実座標(U2〜V2)〜(Um,Vm)を記憶部14に格納する。次に固定データと実座標データとを記憶部14から呼び出し演算処理部13にて誤差を算出し、座標ずれデータとして制御部15に送出する。制御部15では座標ずれデータをもとにワイヤボンディング装置本体4のXYテーブル9を正確に移動させ確実に第1ボンディング点と第2ボンディング点とを金等のボンディングワイヤ6にて結線する。」(第3頁左上欄第1行〜右上欄第13行)
(1d)「あらかじめ第1ボンディング点と第2ボンディング点の焦点に設定する2つの光学系を設け、かつ第1の光学系と第2の光学系の画像を切り替えを可能とすることにより、単一のカメラ本体にて画像を認識できるという効果が得られるものである。」(第3頁左下欄第1〜6行)
(1e)第1図には、単一のカメラ本体に対して、第1、第2の光学系、光路変更ミラー認識処理部、演算処理部、記憶部、制御部、XYテーブルを備えた装置が図示されている。

(2)刊行物2:特開平4-240740号公報
(2a)「【請求項1】半導体製造装置のボンディング装置において、ボンディングヘッド部に、少なくとも2種類以上の異なる倍率の、パターン認識及びセルフティーチ入力用のカメラレンズを有し、ワイヤボンディング時のパターン認識及びセルフティーチ入力の際に、ボンディング試料のICチップ側とパッケージ側とで認識倍率を可変としたことを特徴とするボンディング装置。」(【請求項1】)
(2b)「ICチップ33の電極パッド24の中心に正確にボンディングするためには、作業者がボンディング点を、電極パッド24の中心に正確にST入力する必要がある。そのためには、認識及びST入力用のカメラレンズ42の倍率を大きくすればよい。しかし、カメラレンズ42の倍率を大きくすると、カメラ自身の視野はレンズ倍率が低い時に比べ狭くなる。そうすると、例えばセラミックパッケージ等の場合、パッケージ個々の大きさにある程度ばらつきがあるので、カメラ自身の視野が狭くなった場合、パッケージを同一位置にセットしても、パッケージ側の認識点が、初めST入力した認識エリア内に入って来ない場合があり、認識エラーが発生するという問題点があった。」(【0005】)

(3)刊行物3:特開平8-285539号公報
(3a)「【請求項4】所定の領域に高低差のある第1のパターンと第2のパターンとを形成した試料を載置する試料ステージと、前記試料上の領域を照明する照明光学系と、互いに光路長差を有する第1の光路と第2の光路とを形成し、前記第1のパターンと第2のパターンとの間の高低差に応じて前記第1の光路と第2の光路との間の光路長差を微制御する微制御光学系を備え、前記第1及び第2のパターンからの光像の各々を前記第1及び第2の光路の各々によりイメージセンサ上に結像させて該イメージセンサから画像信号を検出する検出光学系と、前記試料ステージを移動させて前記試料上の領域を前記検出光学系の視野内に位置付けする位置付け手段と、前記検出光学系に対して前記試料の表面を自動焦点合わせをする自動焦点合わせ手段と、前記検出光学系のイメージセンサから検出された画像信号に対して第1及び第2のパターンに対応する画像信号を示す範囲を設定することによって第1のパターンの画像信号と第2のパターンの画像信号とを抽出し、該夫々抽出された第1のパターンの画像信号から第1のパターンの中心位置を算出し、抽出された第2のパターンの画像信号から第2のパターンの中心位置を算出し、該算出された第1のパターンの中心と第2のパターンの中心との間の寸法に対して前記検出光学系の倍率とオフセット補正とを施して正確な寸法を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする試料上の高低差のあるパターンの寸法測定装置。」(【請求項4】)
(3b)「【実施例】本発明の実施例を図面を用いて説明する。
まず、パターンの寸法を計測(測定)しようとする計測対象について説明する。近年、LSIウエハ等のパターンは微細化するとともに多層レジストが使用されて益々高段差化し、各工程の重ね合わせ精度は100nm以下と厳しくなってきている。本発明に係わるパターン計測方法及びその装置は、この重ね合わせ精度を計測する目的で、例えば、図1、図8、図9、図10に示すように、試料(半導体ウエハ)上に形成された計測対象(計測パターン)100である下地の基準パターン(基準マーク)101とその上に形成した次の層のパターンをエッチングするためのマスクとなる測定対象のレジストパターン102とのずれ精度を10nm以下の精度で計測し、プロセス状態の変動をモニタするものである。そして、このモニタ結果が必要に応じて投影露光装置等へフィードバックされる。また、もし、計測されて位置ずれが大きい場合には、レジストを取り除く等の作業が行われる。
【0014】次に上記計測対象100に対するパターン計測について説明する。以下計測対象100として図1に示す場合について説明する。
図2および図3は、本発明に係わるパターン計測装置の基本構成を示す。
図2に示すパターン計測装置は、光源1を有する照明光学系2、対物レンズ系3と分岐光学系4と複数焦点位置を持つ光路長の異なるリレー光学系5a、5bとそれぞれの光路に対応した複数のイメージセンサ6a,6bと自動焦点系7とを備えた検出光学系8、移動ステージ9と試料13を載置する試料台10とを備えたステージ系11及び画像処理を含めた制御系(コンピュータ)12より構成される。
図3に示すパターン計測装置は、光源1を有する照明光学系2、対物レンズ系3と分岐光学系4と光路長の異なる複数の光路14a、14bと合成光学系15とリレー光学系5と同時に異なる焦点位置の信号を検出する1つのイメージセンサ6と自動焦点系7とを備えた検出光学系8、移動ステージ9と試料13を載置する試料台10よりなるステージ系11及び画像処理を含めた制御系(コンピュータ)12より構成される。
【0015】まず、図2、図3いずれの場合も、制御系(コンピュータ)12は、自動焦点系7から得られる対物レンズ系3に対する試料(半導体ウエハ)13の表面の自動焦点情報に基づいてステージ系11のZステージを駆動制御して試料(半導体ウエハ)13の表面を適切な焦点位置に微動させてZ軸方向に位置決めする。その結果、図2の場合は、リレー光学系5aと5bで光路長が異なるためセンサ6aと6bで同時に異なる焦点位置の信号を検出することができる。また、図3の場合は、光路14aと14bで光路長が異なるため合成光学系15で合成された光学像は複数の焦点位置を持つことになり、センサ6で同時に異なる焦点位置の信号を検出することができる。これにより、同時に測定しているためステージは、測定精度より大きな再現で上下しても良く、検出光学系8は振動していても問
題ない。唯一、図2の場合には光路長の異なるリレー光学系5a、5bとそれぞれの光路に対応した複数のセンサ6a,6b、図3の場合には光路長の異なる複数の光路14a、14bが各焦点位置に対して異なる系となっているため振動等の安定性の影響を受ける。そこで、一定間隔、例えば1時間または1日等の適切な間隔でセンサ位置変動のオフセット値を補正する。」(【0013】〜【0015】)
(3c)「【0019】次に、図2に示した基本構成に対応した本発明の実施例を図4を用いて説明する。即ち、図4は、LSIウエハの重ね合わせ用のパターン計測装置の一実施例を示す全体構成図である。このパターン計測装置は、試料13を照明するための照明光源1と集光レンズ25とを有する照明光学系2、検出光学系8、移動ステージ9と試料13を載置する試料台10とよりなるステージ系11及び画像処理21を含む制御系(コンピュータ)12で構成されている。上記検出光学系8は、対物レンズ23とハーフミラー24とから構成された対物レンズ系3と、ビームスプリッタである分岐光学系4と、複数の焦点位置を持つように光路長を異ならしめ、光路長微調整用組み楔16を含むリレー光学系5a、5bと、それぞれの光路に対応した同期信号を共通化した2個のTVカメラであるイメージセンサ6a,6bと、エアマイクロよりなる自動焦点系7とを備えている。」
(【0019】)
(3d)「【0030】次に図3に示す本発明の基本構成に対応する本発明の他の実施例を図11を用いて説明する。即ち、パターン計測装置は、試料13を照明するための照明光源1と集光レンズ25とを有する照明光学系2、検出光学系8、移動ステージ9と計測対象100を形成した試料13を載置する試料台10とよりなるステージ系11及び画像処理21を有する制御系(コンピュータ)12で構成される。検出光学系8は、対物レンズ23とハーフミラー24とを有する対物レンズ系3と、ビームスプリッタである分岐光学系4と、該分岐光学系4で分岐され、互いに光路長が異なり、光路長微調整用組み楔16を含む複数の光路14a,14bと、ミラーである合成光学系15と、リレー光学系5と、TVカメラであるセンサ6と、エアマイクロよりなる自動焦点系7とより構成される。なお、26、27は光路14a,14bを形成するためのミラーである。」(【0030】)

(4)刊行物4:特開平7-270716号公報
(4a)「【請求項2】それぞれに位置合わせマークが設けられた少なくとも2枚の液晶基板を積層するときに、それぞれの異なる焦点位置にある位置合わせマークを1つの結像面で同時に観察可能な光学装置であって、前記少なくとも2枚の液晶基板の上側の液晶基板を保持するための保持手段、前記少なくとも2枚の液晶基板の下側の液晶基板が載置されるテーブル、前記位置合わせマークを撮像するための撮像手段、前記撮像手段と前記位置合わせマークとの間に設けられる光学系、前記撮像手段の撮像出力に応じて、前記少なくとも2枚の液晶基板に設けられている位置合わせマークのずれを判別する画像処理手段、および前記画像処理手段によって判別されたずれがなくなるように前記テーブルを水平方向または回転方向に移動させるための駆動手段を備え、前記光学系は、前記撮像手段の光軸上に設けられる対物レンズと、前記対物レンズを通過した前記少なくとも2つの焦点位置にある位置合わせマークからの像の光路を分岐するための第1のハーフミラーと、前記第1のハーフミラーによって分岐された一方の光路に挿入され、前記異なる焦点位置を同じ焦点位置となるように変化させるための補正レンズと、前記補正レンズの光路と前記第1のハーフミラーによって分岐された他方の光路とを合成して、前記少なくとも2つの位置合わせマークの像を前記撮像手段に与える第2のハーフミラーとを含む、光学装置。」(【請求項2】)
(4b)「【0018】図3は図1に示した光学部の具体的な構成を示す図である。図3において、光学部12は、光路をABの2つに分け、2つの異なる焦点面121,122の像を結像面131に結ぶように構成されている。すなわち、焦点面121に置かれた物体の像は対物レンズ123,結像レンズ124,ハーフミラー125,全反射ミラー126を経由し、ハーフミラー130で他方の経路を通った像を合成されて結像面131に結像するように、対物レンズ123と結像レンズ124とハーフミラー125と全反射ミラー126とハーフミラー130とが配置されて光路Aが形成される。
【0019】一方、焦点面122に置かれた物体の像は、対物レンズ123,結像レンズ124を経由し、ハーフミラー125で分岐されて光路Bに入り、全反射ミラー127,補正レンズ128,スリットとしてのシャッタ129を介してハーフミラー130で光路Aからの像と合成されて結像面131に結像される。このとき、光路Aと共通の対物レンズ123と結像レンズ124とを経由した光が正しく結像面131に結像すべく、補正レンズ128の屈折率と挿入位置が決められている。
【0020】なお、光路Aにはその途中にレンズなどの光学素子は挿入されていないが、必要に応じて挿入してもよい。また、照明系について特に図3には示していないが、対物レンズ123と結像レンズ124との間にハーフミラーなどを設け、ハーフミラーを経由して同軸落射照明を行なうようにしてもよい。また、結像面131には、図1に示したCCDカメラ14が配置され、テレビモニタ17によって像が撮像される。なお、図示していないが、補正レンズ128には、光軸に対して垂直方向に微調整機構が設けられていて、焦点面122の物体の移動に対して補正レンズ128を微動させ、調整することが可能になっている。シャッタ129は、液晶表示装置用ガラス基板貼り合わせなどにおいて、貼り合わせ終了後再度像を観察する必要があるときに、シャッタ129を閉じることによって、不要な像が合成されることがないようにするために設けられている。
【0021】上述のごとく構成された光学部12において、光路Aによる光学系は焦点面121に置かれた物体の像を結像面131に結像させると、焦点面122に置かれた物体の像は焦点深度範囲内にないため結像面131では像を結ばない。同様にして、光路Bによる光学系では、焦点面122に置かれた物体の像を結像面131に結像させるが、焦点面121に置かれた物体の像は焦点深度範囲内にないため結像面131では像を結ばない。このように、ハーフミラー130で合成された2つの光路を経由したそれぞれの像はそれぞれの焦点位置が異なるため、2つの像が干渉し合わずに結像面131に構成される。」(【0018】〜【0021】)
(4c)「【発明の効果】以上のように、請求項1の発明によれば、1つの結像面上で2ヶ所以上の焦点位置の像を結像することが可能となり、倍率や分解能の点で不利な開口率の小さな光学系を用いなくても、2ヶ所以上の焦点位置の像を観察することが可能となり、焦点位置を目的の位置に随時合わせる必要もなく、2つの結像面上の像を比較するのではなく1つの結像面上の像で比較することが可能となり、液晶表示装置用ガラス基板の貼り合わせなど焦点位置の異なる2つの位置合わせマークの観察を同時に容易に行なうことができる。
【0023】請求項2に係る発明は、テーブル上の液晶基板と保持機構によって保持されている液晶基板のそれぞれに設けられている異なる焦点位置の位置合わせマークを、請求項1の光学系を介して撮像し、その撮像出力に応じて位置合わせマークのずれを判別し、ずれがなくなるようにテーブルを水平方向に移動させ、上側の液晶基板を密着させることができる。」(【0022】〜【0023】)

4.対比・判断
(1)本件発明1について
上記摘記事項(1a)(1b)(1c)(1d)(1e)の記載を総合すると、刊行物1には、「リードフレームに半導体チップを取り付けたのち、リードフレームに形成されているリードと半導体チップ上の電極とをワイヤボンディングするにあたって、カメラを用いたボンディング位置認識精度を向上する装置であって、第1ボンディング点である電極の高さと、第2ボンディング点であるリードの高さとの差がある場合に用い、第1ボンディング点に焦点を合わせる第1の光学系と、第2ボンディング点に焦点を合わせる第2の光学系と、第1及び第2の光学系を通過する画像を受け、上記像を電気信号に変換する画像認識部である単一のカメラ本体と、第1の光学系を通過した画像と第2の光学系を通過した画像とを切り換える切り換え機構と、画像認識部にて得た画像を電気信号に変換し画像データ信号を発生する認識処理部と、予め第1ボンディング点及び第2ボンディング点の設計上の各座標データである固定データを収容している記憶部と、上記画像データ信号に基づき各ボンディングの実際の各位置座標を算出すると共に、その各実座標データを前記記憶部に格納し、上記実座標データと固定データと比較して座標ずれデータを出力する演算処理部と、座標ずれデータをもとにXY移動機構を駆動するための信号を発する制御部を有することを特徴とするワイヤボンディング装置」(以下刊行物1の第1発明という。)が開示されている。
本件発明1と刊行物1の第1発明とを対比すると、刊行物1の第1発明の「リードフレームに半導体チップを取り付けたのち、リードフレームに形成されているリードと半導体チップ上の電極とをワイヤボンディングするにあたって、カメラを用いたボンディング位置認識精度を向上する装置であって」、「第1ボンディング点である電極の高さと、第2ボンディング点であるリードの高さとの差がある場合に用い」、「第1ボンディング点に焦点を合わせる第1の光学系と、第2ボンディング点に焦点を合わせる第2の光学系」、「光学系を通過する画像を受け、上記像を電気信号に変換する画像認識部である・・・カメラ本体」、「制御部」は、それぞれ、本件発明1の「半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームのリードとをボンディングにより接続する場合に、被写体とする被加工物の半導体チップとリードとをカメラで俯瞰的に撮像して、ボンディングツールと前記被加工物との相対位置の整合を行うボンディング装置において」、「半導体チップの上面とリードとの高低差としての段差のバラツキに対応して」、「前記被写体の撮像領域である焦点範囲を、撮像面に近い近位置焦点範囲と前記近位置焦点範囲よりも遠くに設定する遠位置焦点範囲との2つ焦点範囲のそれぞれに対応した・・・互いに独立した2系統の光路を有する光学系」、「光学系を介して前記被写体を・・・焦点範囲で撮像する・・・カメラとを備え前記被写体の画像信号を取得する撮像手段」、「ボンディング位置整合手段」に相当しているので、
両者は、「半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームのリードとをボンディングにより接続する場合に、被写体とする被加工物の半導体チップとリードとをカメラで俯瞰的に撮像して、ボンディングツールと前記被加工物との相対位置の整合を行うボンディング装置において、半導体チップの上面とリードとの高低差としての段差のバラツキに対応して、前記被写体の撮像領域である焦点範囲を、撮像面に近い近位置焦点範囲と前記近位置焦点範囲よりも遠くに設定する遠位置焦点範囲との2つ焦点範囲のそれぞれに対応した互いに独立した2系統の光路を有する光学系、光学系を介して前記被写体を焦点範囲で撮像するカメラとを備え前記被写体の画像信号を取得する撮像手段、ボンディング位置整合手段を備えた装置」である点で一致し、以下の点で相違する。

イ.相対位置の比較手段が、本件発明1では、撮像手段で取得した被写体の画像信号から生成される被写体パタンと前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合してボンディング加工時の加工ツールと前記被写体とのあるべき状態からの相対位置差を検出する相対位置差検出手段であるのに対して、刊行物1の第1発明では、画像認識部にて得た画像を電気信号に変換し画像データ信号を発生する認識処理部と、予め第1ボンディング点及び第2ボンディング点の設計上の各座標データである固定データを収容している記憶部と、上記画像データ信号に基づき各ボンディングの実際の各位置座標を算出すると共に、その各実座標データを前記記憶部に格納し、上記実座標データと固定データと比較して座標ずれデータを出力する演算処理部からなっている点
ロ.本件発明1では.被写体の画像信号を取得する撮像手段が、撮像面が異なる2つのカメラであって、いずれかの焦点範囲で撮像するのに対して、刊行物1の第1発明では、単一のカメラ本体であって、第1の光学系を通過した画像と第2の光学系を通過した画像とを切り換える切り換え機構を有している点。
ハ.ボンディング位置整合手段が、本件発明1では、前記相対位置差検出手段で検出した前記相対位置差に基づきボンディング加工時における前記加工時における前記加工ツールと前記被写体との位置整合を確保するものであるのに対して、刊行物1の第1発明では、演算処理部で出力された座標ずれデータをもとにXY移動機構を駆動するための信号を発するものである点

そこで、上記相違点について検討する。
相違点イについて、刊行物1の第1発明では、画像データ信号に基づき算出された各実座標データと設計上の各座標データとして記憶されている固定データとを比較して座標ずれデータを出力しており、画像データ信号から実座標データを算出し、該実座標データを固定データと照合するのであるから、本件発明1のように、被写体の画像信号から生成される被写体パタンと正常位置を示す標準パタンとのパタン同士を照合することは記載されておらず、示唆もされていない。
また、上記摘記事項(2a)(2b)から、ICチップの電極パッドの中心に正確にボンディングするために、作業者がボンディング点を、電極パッドの中心に正確にセルフティーチ入力をすることを前提とした刊行物2記載の発明、上記摘記事項(3a)(3b)(3c)(3d)から、画像信号から第1のパターンと第2のパターンの中心位置を算出することで、重ね合わせ寸法ずれを正確に測定することを前提とした刊行物3記載の発明、上記摘記事項(4a)(4b)(4c)から、2つの位置合わせマークの観察を同時に行い位置合わせマークのずれを判別することを前提とした刊行物4記載の発明を検討しても、被写体の画像信号から生成される被写体パタンと正常位置を示す標準パタンとの照合を、半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームのリードとをボンディングにより接続する場合に、被写体とする被加工物の半導体チップとリードとをカメラで俯瞰的に撮像して、ボンディングツールと前記被加工物との相対位置の整合を行うボンディング装置において、半導体チップの上面とリードの上面との高低差としての段差のバラツキに対応して用いることについては、記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、明細書記載の解像度を保存した状態で深い焦点深度を有する画像をうることができ、カメラもしくは被写体の上下移動による焦点合わせを不要として、焦点範囲の高速切替と、装置の著しい小型軽量化が確保できるという効果を奏する。
してみれば、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

(2)本件発明2について
上記摘記事項(1a)(1b)(1c)(1d)の記載を総合すると、刊行物1には、「リードフレームに半導体チップを取り付けたのち、リードフレームに形成されているリードと半導体チップ上の電極とをワイヤボンディングするにあたって、カメラを用いたボンディング位置認識精度を向上する装置であって、第1ボンディング点である電極の高さと、第2ボンディング点であるリードの高さとの差がある場合に用い、第1ボンディング点に焦点を合わせる第1の光学系と、第2ボンディング点に焦点を合わせる第2の光学系と、第1及び第2の光学系を通過する画像を選択的に受け、上記像を電気信号に変換する画像認識部である単一のカメラ本体と、第1の光学系を通過した画像と第2の光学系を通過した画像とを切り換える切り換え機構と、画像認識部にて得た画像を電気信号に変換し画像データ信号を発生する認識処理部と、予め第1ボンディング点及び第2ボンディング点の設計上の各座標データである固定データを収容している記憶部と、上記画像データ信号に基づき各ボンディングの実際の各位置座標を算出すると共に、その各実座標データを前記記憶部に格納し、上記実座標データと固定データと比較して座標ずれデータを出力する演算処理部と、座標ずれデータをもとにXY移動機構を駆動するための信号を発する制御部を有することを特徴とするワイヤボンディング装置」(以下刊行物1の第2発明という。)が開示されている。
本件発明2と刊行物1の第2発明とを対比すると、刊行物1発明の「リードフレームに半導体チップを取り付けたのち、リードフレームに形成されているリードと半導体チップ上の電極とをワイヤボンディングするにあたって、カメラを用いたボンディング位置認識精度を向上する装置であって」、「第1ボンディング点である電極の高さと、第2ボンディング点であるリードの高さとの差がある場合に用い」、「第1ボンディング点に焦点を合わせる第1の光学系と、第2ボンディング点に焦点を合わせる第2の光学系」、「光学系を通過する画像を選択的に受け、上記像を電気信号に変換する画像認識部である単一のカメラ本体」、「第1の光学系を通過した画像と第2の光学系を通過した画像とを切り換える切り換え機構」「制御部」は、それぞれ、本件発明2の「半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームのリードとをボンディングにより接続する場合に、被写体とする被加工物の半導体チップとリードとをカメラで俯瞰的に撮像して、ボンディングツールと前記被加工物との相対位置の整合を行うボンディング装置において」、「半導体チップの上面とリードとの高低差としての段差のバラツキに対応して」、「前記被写体の撮像領域である焦点範囲を、撮像面に近い近位置焦点範囲と前記近位置焦点範囲よりも遠くに設定する遠位置焦点範囲との2つ焦点範囲のそれぞれに対応した撮像面を共通とする互いに独立した2系統の光路を有する光学系」、「光学系の有する2系統の光路を切り替え可能とするシャッター部」「シャッター部で切り替えた前記2系統の光路に対応した前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲のいずれかの焦点範囲、もしくは前記シャッター部を開放状態として前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲の双方の焦点範囲で撮像する1つのカメラとを備え前記被写体の画像信号を取得する撮像手段」、「ボンディング位置整合手段」に相当しているので、
両者は、「半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームのリードとをボンディングにより接続する場合に、被写体とする被加工物の半導体チップとリードとをカメラで俯瞰的に撮像して、ボンディングツールと前記被加工物との相対位置の整合を行うボンディング装置において、半導体チップの上面とリードとの高低差としての段差のバラツキに対応して、前記被写体の撮像領域である焦点範囲を、撮像面に近い近位置焦点範囲と前記近位置焦点範囲よりも遠くに設定する遠位置焦点範囲との2つ焦点範囲のそれぞれに対応した撮像面を共通とする互いに独立した2系統の光路を有する光学系と、この光学系の有する2系統の光路を切り替え可能とするシャッター部と、シャッター部で切り替えた前記2系統の光路に対応した前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲のいずれかの焦点範囲、もしくは前記シャッター部を開放状態として前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲の双方の焦点範囲で撮像する1つのカメラとを備え前記被写体の画像信号を取得する撮像手段と、ボンディング位置整合手段を備えた装置」である点で一致し、以下の点で相違する。

イ.相対位置の比較手段が、本件発明2では、撮像手段で取得した被写体の画像信号から生成される被写体パタンと前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合してボンディング加工時の加工ツールと前記被写体とのあるべき状態からの相対位置差を検出する相対位置差検出手段であるのに対して、刊行物1の第2発明では、画像認識部にて得た画像を電気信号に変換し画像データ信号を発生する認識処理部と、予め第1ボンディング点及び第2ボンディング点の設計上の各座標データである固定データを収容している記憶部と、上記画像データ信号に基づき各ボンディングの実際の各位置座標を算出すると共に、その各実座標データを前記記憶部に格納し、上記実座標データと固定データと比較して座標ずれデータを出力する演算処理部からなっている点
ロ.ボンディング位置整合手段が、本件発明2では、前記相対位置差検出手段で検出した前記相対位置差に基づきボンディング加工時における前記加工時における前記加工ツールと前記被写体との位置整合を確保するものであるのに対して、刊行物1の第2発明では、演算処理部で出力された座標ずれデータをもとにXY移動機構を駆動するための信号を発するものである点

そこで、上記相違点について検討すると、4.(1)において検討したように、相違点イについては、刊行物1〜4記載の発明を参酌しても、当業者が容易になし得たものとは言えない。
してみれば、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1,2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1,2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ボンディング装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームのリードとをボンディングにより接続する場合に、被写体とする被加工物の半導体チップとリードとをカメラで俯瞰的に撮像して、ボンディングツールと前記被加工物との相対位置の整合を行うボンディング装置において、半導体チップの上面とリードの上面との高低差としての段差のバラツキに対応して、前記被写体の撮像領域である焦点範囲を、撮像面に近い近位置焦点範囲と前記近位置焦点範囲よりも遠くに設定する遠位置焦点範囲との2つの焦点範囲のそれぞれに対応した撮像面を異にする互いに独立した2系統の光路を有する光学系と、この光学系を介して前記被写体を前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲のいずれかの焦点範囲で撮像する2つのカメラとを備え前記被写体の画像信号を取得する撮像手段と、前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号から生成される被写体パタンと前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合してボンディング加工時の加工ツールと前記被写体とのあるべき状態からの相対位置差を検出する相対位置差検出手段と、前記相対位置差検出手段で検出した前記相対位置差に基づきボンディング加工時における前記加工ツールと前記被写体との位置整合を確保するボンディング位置整合手段とを備えることを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】 半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームのリードとをボンディングにより接続する場合に、被写体とする被加工物の半導体チップとリードとをカメラで俯瞰的に撮像して、ボンディングツールと前記被加工物との相対位置の整合を行うボンディング装置において、半導体チップの上面とリードの上面との高低差としての段差のバラツキに対応して、前記被写体の撮像領域である焦点範囲を、撮像面に近い近位置焦点範囲と前記近位置焦点範囲よりも遠くに設定する遠位置焦点範囲との2つの焦点範囲のそれぞれに対応した撮像面を共通とする互いに独立した2系統の光路を有する光学系と、この光学系の有する2系統の光路を切り替え可能とするシャッター部と、このシャッター部で切り替えた前記2系統の光路に対応した前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲のいずれかの焦点範囲、もしくは前記シャッター部を開放状態として前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲の双方の焦点範囲で撮像する1つのカメラとを備え前記被写体の画像信号を取得する撮像手段と、前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号から生成される被写体パタンと前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合してボンディング加工時の加工ツールと前記被写体とのあるべき状態からの相対位置差を検出する相対位置差検出手段と、前記相対位置差検出手段で検出した前記相対位置差に基づきボンディング加工時における前記加工ツールと前記被写体との位置整合を確保するボンディング位置整合手段とを備えることを特徴とするボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はボンディング装置に関し、特に加工対象物としての半導体チップの電極薄膜としてのパッドと、リードフレームに配設されたリードとをボンディング加工で接続する場合に、加工対象物とボンディングツールとの相対的な位置決めをカメラで俯瞰的に撮像した画像を利用して行うボンディング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体チップ上のパッドと、リードとをボンディング加工で接続するボンディング装置は、半導体の加工分野で良く知られている。ボンディング装置には、ボンディング加工の対象物をAu(金)、Al(アルミニューム)などの金属細線で接続するワイヤボンディング装置と、テープを利用するテープボンディング装置とがある。
【0003】
前者のワイヤボンディング装置としては、ネールヘッドボンディング(nail・head Bonding)法が一般的で、これには熱印加状態で加圧ボンディングするサーモコンプレッションボンディングや、熱印加状態で超音波振動エネルギーを利用するサーモソニックボンディングのほか、常温での超音波加工を利用する超音波ウエッジボンディング等がある。
【0004】
後者のテープボンディング装置は、利用するテープが、通常、ポリミドテープに銅箔を貼り合わせて定ピッチごとに窓を設け、この窓にはICなどの半導体チップの電極としてのパッドに対応させたリードが形成され、且つパッドには金の隆起物としてのバンプ(bump,こぶ)が盛られ、リードと各バンプの重合する位置で加工道具としてのボンディングツールで加圧し、同時に通電加熱してボンディングを行っている。
【0005】
ところで、上述したワイヤボンディング装置とテープボンディング装置何れにおいても、ボンディング加工時における被加工物としての半導体チップとリード(ワイヤボンディング)、もしくは半導体チップ(テープボンディング)の位置が正しい加工位置にあるか否かを確認してから位置決めを行って加工ツールで加工することが必要で、通常、この位置決めには、被加工物を上方からITV等のカメラで光学的に撮像して得られる画像信号によって生成する画像を、標準の位置パタンと照合するなどの方法で被加工物の位置ずれを検出し、この位置ずれを正しく整合した上でボンディング加工を行っている。
【0006】
図4は、従来のボンディング装置における位置決め部の構成を示すブロック図である。図4はワイヤボンディング装置の場合を例とし、図4の(a)に示すように、あらかじめ設定した焦点距離を有する光学系を構成するレンズ101bと、カメラ101aとは、被写体としての被加工物を上方から俯瞰的に撮像して、取得した画像信号Sを画像処理部103に送出する。
【0007】
カメラ101a及びレンズ101bは、通常一体化構成とされ、カメラ駆動部102により駆動される懸架機構105により被写体に対する撮像位置を設定される。カメラ駆動部102は、駆動制御部104の出力する駆動制御信号Dによって駆動されるアクチュエータやモータ等を備える。画像処理部103は、入力した画像信号Sにより被写体の俯瞰画像を生成し、これと被写体の正しい位置を示す標準パタンとを照合し、その差を被写体の位置ずれを表現する位置ずれデータEとして、図示しない位置整合部へ送出し、これにより被写体の搭載構造等を駆動して加工のための位置整合を行っている。
【0008】
図4の(b)には、こうして撮像される被写体(被加工物)に対する焦点範囲aを併記して示す。即ち、図4の(b)に示す焦点範囲aに、被加工物を包含するようにして撮像される。
【0009】
図5は、被加工物の一例を示す側面図である。図5は、ワイヤボンディング装置の対象とする被加工物の側面図であり、ICなどの半導体チップ1001と、半導体チップ1001とワイヤボンディングされるリード1002とを示し、これら半導体チップ1001とリード2とは互いに離隔し、その間がAu,Alなどの金属細線を利用してボンディング加工され、ブリッジされる。
【0010】
半導体チップ1001の上面と、リード1002の上面との差のチップ段差1003のバラツキに対応して焦点範囲を設定することが、良き撮像の前提条件となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のボンディング装置における被加工物に対する位置決めは、単一焦点を有する光学系としてのレンズを使用するカメラで撮像した画像信号を利用して行っていたので、被加工物の高さ、即ちチップ段差のバラツキに対応して焦点を変えることはできず、このため、チップ段差が大きい場合には、次の▲1▼,▲2▼及び▲3▼のいずれかに基づいて、被加工物を焦点範囲内に取り込んで撮像を行っていた。
【0012】
▲1▼ 焦点深度の深いレンズを使用して撮像する。
▲2▼ レンズを上下させる機構を使用して撮像する。
▲3▼ 被加工物を上下させる機構を使用して撮像する。
しかしながら、▲1▼の場合は、焦点範囲を拡大することとなって、解像度が低下して位置決め精度の劣化を招き、また▲2▼の場合にはレンズを上下させる機構の付加を必要とするとともに、レンズ上下のための時間が必要となり、さらに▲3▼の場合には撮像の都度、被加工物を上下させる機構が必要となるが、この機構自体の重量が大きく、また上下動作のための時間が必要となるという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、上述した問題点を解決し、チップ段差のバラツキを有する被加工物を対象としても精度良く撮像しうる簡素な構成のボンディング装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した目的を達成するため、次の手段構成を有する。
即ち、本発明の第1の構成は、半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームのリードとをボンディングにより接続する場合に、被写体とする被加工物の半導体チップとリードとをカメラで俯瞰的に撮像して、ボンディングツールと前記被加工物との相対位置の整合を行うボンディング装置において、半導体チップの上面とリードの上面との高低差としての段差のバラツキに対応して、前記被写体の撮像領域である焦点範囲を、撮像面に近い近位置焦点範囲と前記近位置焦点範囲よりも遠くに設定する遠位置焦点範囲との2つの焦点範囲のそれぞれに対応した撮像面を異にする互いに独立した2系統の光路を有する光学系と、この光学系を介して前記被写体を前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲のいずれかの焦点範囲で撮像する2つのカメラとを備え前記被写体の画像信号を取得する撮像手段と、前記撮像手段で取得した前記被写体の画像信号から生成される被写体パタンと前記被写体の正常位置を示す標準パタンとを照合してボンディング加工時の加工ツールと前記被写体とのあるべき状態からの相対位置差を検出する相対位置差検出手段と、前記相対位置差検出手段で検出した前記相対位置差に基づきボンディング加工時における前記加工ツールと前記被写体との位置整合を確保するボンディング位置整合手段とを備える。
【0015】
また、本発明の第2の構成は、前記第1の構成の撮像手段に代えて、前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲のそれぞれに対応した撮像面を共通とする互いに独立した2系統の光路を有する光学系と、この光学系の有する2系統の光路を切り替え可能とするシャッター部と、このシャッター部で切り替えた前記2系統の光路に対応した前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲のいずれかの焦点範囲、もしくは前記シャッター部を開放状態として前記近位置焦点範囲と前記遠位置焦点範囲の双方の焦点範囲で撮像する1つのカメラとを備え前記被写体の画像信号を取得する撮像手段を備えたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
半導体チップの電極構造としてのパッドと、リードフレームのリードとを接続するボンディング装置では、通常、被加工物の俯瞰的撮像で取得する画像信号を利用して生成する画像を利用して被加工物の位置決めを行っている。
【0017】
従来のボンディング装置における被加工物の撮像においては、単一の焦点、従って、被加工物に対して一定の距離範囲に形成される単一の焦点範囲のみを有するレンズ(光学系)を使用していたので、被加工物(被写体)の高さの増大に対応して焦点範囲の位置を変えることはできず、このため、ボンディングすべきパッドとリードとの段差がバラつく場合には、いわゆる焦点深度の深い、即ち、焦点範囲の長いレンズを使用するとか、レンズもしくは被加工物を上下させる機構を備えるなどして撮像していたが、これらの対応のそれぞれについて、いずれも問題点を有することは前述したとおりである。
【0018】
本発明にあっては、例えば図1に示す如く、2つの光路を光学的に形成して成る光学系1cとカメラ(1)1a及びカメラ(2)1bとの組合せによって、被加工物のチップ段差が通常の場合には被加工物に対する所定の定位置に被写体の被加工物を含むことを可能とする距離範囲で近位置焦点範囲を形成し、チップ段差が大きい場合には、より被加工物に近接させた位置に遠位置焦点範囲を形成し、何れの場合も焦点範囲の中に被加工物を存在せしめることを可能とした状態で精度良く被加工物を撮像することを可能としている。
【0019】
図1において、カメラ(1)1aと光学系1cとによって、上述した近位置焦点範囲を、またカメラ(2)1bと光学系1cとにより、被加工物により近接せしめた遠位置焦点範囲を形成して撮像する。これら2つの異なる位置の焦点範囲の何れを選択するかは、被加工物に基づいて予め手動によって設定される。
【0020】
図1において、アーム8及びキャピラリー9が、ボンディング加工に必要なボンディングツールであり、キャリヤ部10に載置した半導体チップ14とリード15とが被加工物(被写体)であり、位置制御部4、駆動部5、XYステージ6、ボンディングヘッド7が被加工物の位置設定を行い、画像処理部2が撮像画像を生成し、CPU3が全体動作を制御している。
【0021】
尚、ワイヤボンディング装置では、被加工物に数100度の熱印加も施し、この目的のためヒータブロック11と温度コントローラ12が存在する。
【0022】
【実施例】
次に、本発明について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施例の構成を示すブロック図である。図1に示す実施例の構成は、ワイヤボンディング装置の場合を例とし、遠・近2つの位置に同一の焦点範囲を形成する光学系1cと、光学系1cの形成する遠・近2つの焦点範囲に包含する被加工物を対象として得られる2つの光学像を撮像する2台のITV形式のカメラ(1)1a,カメラ(2)1bと、2台のカメラで取得した画像信号Pに基づいて、半導体チップ及びリードの俯瞰画像を生成し、被加工物の位置ずれを検出する画像処理部2と、処理及び制御プログラムを内蔵し、全体の動作を制御するCPU3と、被加工物の位置制御する位置制御信号を送出する位置制御部4と、位置制御部4の出力する位置制御信号を受けて被加工物を駆動する駆動信号を発生する駆動部5と、基盤13上に取り付けられ、加工ツールをXY方向(水平方向)に移動するXYステージ6と、加工ツールのZ方向(垂直方向)の移動を与え、且つ加工ツール並びに撮像系を取り付けるボンディングヘッド7と、加工ツールとしてのアーム8及びキャピラリー9と、被加工物を載置するキャリヤ部10と、被加工物に熱印加するヒータブロック11と、ヒータブロック11の加熱温度制御を行う温度コントローラ12と、撮像系と加工系等を載置する基盤13と、被加工物の半導体チップ14とリード15とを備え、図1には尚撮像系をボンディングヘッド7に固着する支持アーム20と、データバス30,同40とを併記して示す。
【0023】
これら構成のうち、カメラ(1)1a、カメラ(2)1b及び光学系1cが撮像手段を形成し、画像処理部2とCPU3とが相対位置差検出手段を形成し、CPU3と、位置制御部4と、駆動部5と、XYステージ6と、ボンディングヘッド7とがボンディング位置整合手段を形成する。
【0024】
次に、本実施例の動作について説明する。
ボンディングヘッド7に、支持アーム20を介して取り付けられた光学系1cとカメラ(1)1a及びカメラ(2)1bによる撮像系は、被加工物の半導体チップ14とリード15との段差の大小に応じて、通常のチップ段差の場合の撮像に対してはカメラ(1)1aと光学系1cとによって所定の定位置に近位置焦点範囲が形成され、この近位置焦点範囲に被加工物を包含せしめて撮像する。
【0025】
また、チップ段差が大となって前述した近位置の焦点範囲から被加工物がはみ出すような場合には、遠位置焦点範囲を形成するように手動で予め切り替えておく。
【0026】
このように、近位置及び遠位置焦点範囲の形成を可能としておけば、被加工物のチップ段差の相違に対する的確な撮像にも極めて容易に対応しうることとなる。
【0027】
図2は、図1の実施例における被加工物の撮像を説明する図である。
図2の(a)に示すように、撮像カメラを2台利用する場合は、カメラ(1)1aと光路(1)1005との組合せは、遠位置焦点範囲の形成を撮像条件とする場合、即ち、半導体チップ面とリード面との段差が大きくて、通常の焦点範囲から被加工物が逸脱してしまい、被加工物を正しく撮像できない場合に選択され、カメラ(2)1bと光路(2)1006との組合せは、このような遠位置の焦点範囲を形成するものとして選択される。
【0028】
また、カメラ(1)1aと光路(1)1005との組合せは、通常のチップ段差に対する近位置焦点範囲を形成するために利用される。
【0029】
図2の(b)に、光路(1)とカメラ(1)1aを利用して形成する光路(1)の近位置焦点範囲aと、光路(2)とカメラ(2)1bを利用して形成する光路(2)の遠位置焦点範囲bとを示す。
【0030】
本実施例では、光路(1)の近位置焦点範囲aと、光路(2)の遠位置焦点範囲bとが相隣接する状態で形成されるが、これら両焦点範囲の間に非焦点範囲が設定されることもあり、これらは被加工物の内容や撮像系の構成内容等に基づいて所望の状態に設定される。
【0031】
再び図1に戻って、実施例の動作の説明を続行する。
カメラ(1)1aもしくはカメラ(2)1bで取得した被加工物の半導体チップ14とリード15を含む画像信号Pは、画像処理部2に送出される。
画像処理部2は、画像生成部21とパターン認識部22とを備える。
【0032】
画像生成部21は、提供された画像信号Pを利用し、データバス30を介して受けるCPU3のプログラムの制御の下に静止画像としての被写体パタンを生成しパタン認識部22に供給する。
【0033】
パタン認識部22は、画像生成部21から提供された被写体パタンと、予め内蔵する被加工物の正常位置における標準パタンとのパタン照合に基づいて、被写体パタンのずれ、即ち、被加工物の現位置の、あるべき正しい位置からの位置ずれを検出し、この位置ずれ情報をデータバス30を介してCPU3に送出する。
【0034】
CPU3は、提供された位置ずれ情報に基づいて、被加工物の位置ずれを補正すべき位置ずれ補正データを算出し、これをデータバス40を介して位置制御部4に送出する。位置制御部4は、提供された位置ずれ補正信号を受けて、被加工軸物に対するボンディングツールの相対的位置を正しい状態に補正する位置制御信号Cを送出する。
【0035】
この位置制御信号Cは、基盤13上に載置されているXYステージ6をX,Y軸上で、またボンディングツールとしてのアーム8とキャピラリー9とを取り付けたボンディングヘッド7をZ軸上で移動させて、被加工物に対するボンディングツールの相対位置を整合させる入力としてのX方向駆動信号L、Y方向駆動信号M及びZ方向駆動信号Nを駆動部5から出力せしめる3方向の位置制御信号である。
【0036】
こうして、被加工物に対する相対位置整合を確保したアーム8の先端に設けられたキャピラリー9には、図示しないワイヤ送出機構からワイヤの金細線が供給され、例えば本実施例の如く、熱圧着(thermo compression,サーモコンプレッション)手法でボンディングする場合には、キャリヤ部10に内包され、且つ温度コントローラ12で制御される温度のヒータブロック11で加熱(300〜350℃程度)された被加工物の半導体チップ14に対する熱圧着による第1のボンディングを終えたのち、ワイヤをリード15に移して熱圧着による第2のボンディングを施したのちワイヤを切断し、かくしてボンディングを終了し、次のボンディング工程に移行する。
【0037】
図3は、本発明の第2の実施例の部分構成を示すブロック図である。本発明の第2の実施例は、図3の(a)に示す部分構成による撮像系以外の部分は、全て図1に示す構成と同一であるので、これら同一構成に関する詳細な説明は省略する。第2の実施例では、近位置焦点範囲と遠位置焦点範囲を形成し、且つ撮像面を共通とする互いに独立した2つの光路としての光路(3)1007と光路(4)1008とを光学系1dとして有し、光路(3)1007と光路(4)1008はそれぞれ機械的シャッターとしてのシャッター16bでいずれか一方の光路のみが光学的に閉鎖される。これら2つの光路による撮像は、同一の撮像面を共有するので、1台のカメラ(1)1aで撮像することができる。
【0038】
一点鎖線で示すシャッター制御器16aは、シャッター16bとともにシャッター部16cを形成し、シャッター制御器16aはシャッター16bの動作を制御するシャッター制御信号SHを送出する。シャッター16bは、図3の(b)に示す如く、入力光Wを2分岐するハーフミラーHと、光路を選択的に閉鎖する機械的シャッターエレメントとしてのシャッターエレメントS1,S2を備え、シャッターエレメントS1,S2の何れか一方をシャッター制御信号SHで選択的に閉鎖するか、もしくはシャッターエレメントS1,S2の双方を開放状態(光進行可能状態)として、選択した近位置焦点範囲と遠位置焦点範囲のいずれか、もしくは双方で捕捉した対象シーンの撮像を可能ならしめている。
【0039】
尚、本第2の実施例では、2つの光路を選択的に閉鎖するか、もしくは双方を開放状態に制御するものとして機械的シャッターを利用しているが、これは同一閉鎖機能を有する他のシャッター、例えば、印加電圧によって屈折率を変化するLiNbO3結晶等の電気光学部材を利用した光路の切替スイッチング等によっても容易に実施しうるものである。
【0040】
このようにして、簡素な構成による高精度の撮像データに基づく位置整合を前提とするボンディング加工が可能となる。
尚、図1,2及び3には、ワイヤボンディング装置の場合を例として示したが、テープボンディングの場合も全体構成は異なるものの、撮像に基づく被加工物とボンディングツールとの相対位置整合に関しては、略同様に容易に実施しうることは明らかである。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、半導体チップの電極としてのパッドと、リードフレームに配設したリードとを接続するボンディング装置において、ボンディングツールと被加工物との相対位置を整合するために行う被加工物の俯瞰的撮像において、パッド面とリード面との段差に対応して、所定の距離を有する撮像範囲としての焦点範囲を近位置及び遠位置の2つの撮像範囲として設定することにより、解像度を保存した状態で深い焦点深度を有する画像を得ることができ、カメラもしくは被写体の上下移動による焦点合わせを不要として、焦点範囲の高速切替と、装置の著しい小形軽量化が確保できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】
図1の実施例における被加工物の撮像を説明する図である。
【図3】
本発明の第2の実施例の部分構成を示すブロック図である。
【図4】
従来のボンディング装置における位置決め部の構成を示すブロック図である。
【図5】
ワイヤボンディング装置の対象とする被加工物の側面図である。
【符号の説明】
1a カメラ(1)
1b カメラ(2)
1c 光学系
1d 光学系
2 画像処理部
3 CPU
4 位置制御部
5 駆動部
6 XYステージ
7 ボンディングヘッド
8 アーム
9 キャピラリー
10 キャリヤ部
11 ヒータブロック
12 温度コントローラ
13 基盤
14 半導体チップ
15 リード
16a シャッター制御器
16b シャッター
16c シャッター部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-10-22 
出願番号 特願平9-202382
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川真田 秀男  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 瀬良 聡機
市川 裕司
登録日 2002-01-25 
登録番号 特許第3272640号(P3272640)
権利者 株式会社カイジョー
発明の名称 ボンディング装置  
代理人 八幡 義博  
代理人 八幡 義博  

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