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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1111908
審判番号 不服2002-9805  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-31 
確定日 2005-02-07 
事件の表示 平成8年特許願第267228号「防水コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年4月28日出願公開、特開平10-112346号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年10月8日の特許出願であって、原審において平成14年4月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成14年5月31日付けで審判請求がなされたものである。その請求項1に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。(以下、「本願発明」という。)
「端子収納部の外周位置に装着されたシールリングをサヤ部で保護してなる防水コネクタにおいて、前記端子収納部の先端部外周の少なくとも一部をサヤ部の先端より突出させたことを特徴とする防水コネクタ。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願の日前の平成8年9月27日に頒布された刊行物(特開平8-250196号公報)には、以下の事項が記載されている。

(a)「コネクタハウジングには端子金具が挿入されるキャビティが内部に設けられるとともに、その外周にゴムリングが装着される嵌合溝が設けられ、前記ゴムリングを相手のコネクタハウジングとの間で挟むことで両コネクタハウジング間のシールを行うようにした防水コネクタにおいて、前記ゴムリングを前記コネクタハウジングの嵌合溝の奥側に係止するための構造であって、
前記ゴムリングが挿着される側のコネクタハウジングの嵌合溝の壁面には、常にはゴムリングを挿着可能とする位置に退避し、端子金具の挿入に伴って前記挿着されたゴムリングを抜け止め状態で係止する位置に突出変位する撓み変形可能な係止部が設けられていることを特徴とする防水コネクタにおけるゴムリングの係止構造。」(【請求項1】)
(b)「【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施例>図1および図2は本発明の第1実施例を示す。図において、符号1は雌側のコネクタハウジング(以下、雌ハウジングという)であって、合成樹脂材により一体成形されており、外形略角柱形をなす本体部2の前端側(図1の上側)の外周に、フード部3が間隔を開けて形成されている。なお、本体部2の長辺側の壁面は、上端側が内方に引っ込んだ段付き状に形成されており、この内方に引っ込んだ壁面が、詳しくは後記する係止片21を設ける外壁5bとなっている(図2参照)。この本体部2の外周面とフード部3との間において、後記する相手の雄側のコネクタハウジング15(以下、雄ハウジングという)の嵌合筒部17が嵌合される嵌合溝4が形成されている。」(段落【0013】)
(c)「また、上記した雌ハウジング1の嵌合溝4の内周側における奥側には、略角形の環形をなすゴムリング20が挿着されるようになっている。したがって、ゴムリング20が挿着されたのち両ハウジング1、15が嵌合されると、ゴムリング20が雌ハウジング1の本体部2の外周面と、雄ハウジング15の嵌合筒部17の先端部の内周面との間で弾性変形しつつ挟み付けられることで、両ハウジング1、15間がシールされるようになっている。」(段落【0016】)
(d)「本第1実施例は上記のような構造であって、続いてその作用を説明する。まず、ゴムリング20を雌ハウジング1の本体部2の外周に嵌め、図示しない押込治具により嵌合溝4の奥側に押し込む。この際、係止片21は、図1の左側に示すように、外壁5bと面一の姿勢に退避しているから、ゴムリング20は奥側までスムーズに押し込まれる。」(段落【0019】)
(e)図1ないし図2には「本体部2の前端側の外周の少なくとも一部をフード部3より突出させた」点が示されている。

したがって、上記の記載事項(a)〜(e)からみて、引用刊行物には、「本体部2の前端側の外周にフード部3が間隔を開けて形成され、本体部2外周面とフード部3との間において嵌合溝4が形成され、本体部2の外周に嵌められ嵌合溝4の内周側における奥側に挿着されるゴムリング20を有する防水コネクタにおいて、前記本体部2の前端側の外周の少なくとも一部をフード部3の前端より突出させた防水コネクタ」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
両者をその意味、機能または作用等からみると、後者の「本体部2」は前者の「端子収納部」に相当し、以下同様に、後者の「ゴムリング20」は前者の「シールリング」に、後者の「フード部3」は前者の「サヤ部」に、後者の「本体部2の前端側の外周」は前者の「端子収納部の先端部外周」に、後者の「フード部3の前端」は前者の「サヤ部の先端」に、それぞれ相当する。
また、後者の「本体部2の外周に嵌められ嵌合溝4の内周側における奥側に挿着」は、前者における「端子収納部の外周位置に装着」といえることも明らかである。
したがって、両者は、「端子収納部の外周位置に装着されたシールリングとサヤ部を有する防水コネクタにおいて、前記端子収納部の先端部外周の少なくとも一部をサヤ部の先端より突出させた防水コネクタ。」という点(以下、「一致点」という。)で一致しており、下記の点で一応相違している。

【相違点】サヤ部に関し、本願発明ではシールリングを保護するものであるのに対し、引用発明では文言上明らかでない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用発明において、ゴムリング20は、本体部2外周面とフード部3との間に形成された嵌合溝4の内周側における奥側に挿着されており、また、図1をみても、該ゴムリング20はフード部3によって覆われる状態にあることが見てとれる。そうすると、フード部3が該ゴムリング20に対する外力や異物の侵入に対してゴムリング20を保護する機能を持つことは明らかであり、フード部3はゴムリング20を保護するものということができる。
したがって、本願発明と引用発明との間に実質的な構成上の差異はない。

なお、請求人は審判請求書において、(刊行物1の図1、2には、「端子収納部2の先端部外周をサヤ部3の先端より突出させた」構成が明らかに記載されているとの)「見解は、引用文献1の図1、2に本願の特徴点である「端子収納部の先端部外周の少なくとも一部をサヤ部の先端より突出させる」が図面の上で記載されている、との見方による判断と推察するが、明細書に添付された図面は、『明細書の説明に資するために要点の構成部分が分かりやすいように作成された説明のための図面であって、実際の製品の構造を示す設計図ではなく、記載図面の各寸法比は製品の設計図面とは同じでなく』、このような『図面を実際製品の構造を示す設計図と同じ寸法比と認定し、実際の寸法・構造がこれらの図に示されている』と認定することは妥当ではなく、この図面のみから「端子収納部の先端部外周の少なくとも一部がサヤ部の先端より突出している」構成が刊行物公知である、との認定は、引用文献1を誤認してなされたものと言わざるをえない。」旨主張する。
しかしながら、引用刊行物の図1ないし2は引用刊行物に記載された発明の実施例を示した断面図あるいは斜視図であり、また、その認定を妨げる特別の事情は見いだせないから、請求人の上記主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は本願出願前に頒布された引用刊行物に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-07 
結審通知日 2004-12-10 
審決日 2004-12-22 
出願番号 特願平8-267228
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松縄 正登  
特許庁審判長 増山 剛
特許庁審判官 内藤 真徳
北川 清伸
発明の名称 防水コネクタ  

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