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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1111941
審判番号 不服2002-6066  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-09 
確定日 2005-02-07 
事件の表示 平成 7年特許願第127010号「帳票管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月12日出願公開、特開平 8-297713〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成7年4月26日の出願であり、当審において平成16年4月14日付けで拒絶の理由が通知され、それに対し指定した期間内である平成16年6月11日付けで手続補正書の提出がなされたものであって、平成16年6月11日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。

「少なくとも一つの端末機器と、該端末機器とデータ通信手段を介して接続されるホスト装置とを備える帳票管理システムであって、
前記ホスト装置は、
帳票用紙発行機能、および
記入欄や項目欄の種類、個数、各項目のレイアウト等を定めて帳票を設計することができる帳票設計機能を有し、
前記端末機器は、
前記ホスト装置が有する帳票設計機能に基づき設計された帳票用紙をセットするためのボード、
前記帳票用紙にキャラクタの、目視可能な筆跡を手書きするためのペン、
前記筆跡を、時系列に従う座標データ列として取得する検出手段、および、
前記座標データ列と前記帳票用紙の識別情報とを含む帳票情報を前記ホスト装置へ伝送する手段を有し、
前記ホスト装置は、帳票情報を受信した場合、該帳票情報に含まれる座標データ列に基づきキャラクタをコード化し、該帳票情報に含まれる前記識別情報に基づき、該座標データ列の座標の値から、コード化されたキャラクタが、帳票用紙のどの記入欄に該当するかを特定する、
ことを特徴とする帳票管理システム。」

2.当審の拒絶理由・引用例

2-1 当審の拒絶理由

一方、当審において平成16年4月14日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開昭61-170877号公報(以下「引用例1」という。)、特開平6-236389号公報(以下「引用例2」という。)、特開平6-314289号公報(以下「引用例3」という。)を示し、請求項1及び2に係る発明は、引用例1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものである、というものである。
なお、当該拒絶理由において、根拠条文を示していないが、請求人への電話連絡により、当該拒絶理由の根拠条文が特許法第29条第2項であることを通知し、請求人は、それに基づいて意見書を提出した。

2-2 引用例

そして、引用例1-3には、それぞれ図面とともに次の事項が記載されている。

2-2-1 引用例1(特開昭61-170877号公報)の記載事項

(A)「(1)文字入力エリア内に文字を手書き入力するための文字枠が設定される入力タブレットと、前記文字枠の大きさを指定するための文字枠指定部と、入力タブレットに対しペン先を接触させて文字を手書きするための入力ペンと、入力タブレットの前記文字入力エリアより手書き入力文字を取り込み文字認識を実行する認識処理部とを具備し、
前記認識処理部は、文字枠指定部より文字枠指定情報を取り込む手段と、文字枠指定情報に基づき文字入力にかかる文字枠を特定して求める手段と、特定された文字枠を切り出してその文字枠内の入力文字を認識処理する手段とを含んで成る手書き文字認識装置。
(2)前記文字枠指定部は、入力タブレットに設けてある特許請求の範囲第1項記載の手書き文字認識装置。」(特許請求の範囲)
(B)「第2図はこの発明の手書き文字認識装置1を導入した文字処理システムの全体概略構成を示す。
図示例の手書き文字認識装置1は、入力タブレット2と認識処理部3とから成るもので、これらの各構成はコード線にてホスト側の装置4に電気接続されている。」(第2頁左下欄第13-18行)
(C)「前記認識処理部3は・・・もって構成され、この認識処理部3にて、手書き文字の入力処理、辞書照合を含む一連の文字認識処理、更には認識結果の出力処理がそれぞれ制御される。」(第2頁左下欄第6-12行)
(D)「前記入力タブレット2は、タブレット面に文字入力エリア10、タッチキーエリア11及びエラーランプ12が設けてあり、前記各エリア10、11は専用の入力ペン13のペン先の接触が感知可能に形成されている。文字入力エリア10は、帳票15を介して、入力ペン13のペン先をタブレット面に接触させ且つ移動させて、所望の文字を手書き入力するためのもので、前記タブレット面の内側に、文字入力エリア10に対応してマトリクス回路より成る座標検出回路を組み込み、これにより文字入力エリア10に接触位置するペン先のX座標およびY座標を検出する。
上記入力タブレット2のタブレット面上には、文字入力エリア10に対応して、所定の帳票15が位置決め載置される。この帳票15には、升目状の文字枠14が複数列、複数段にわたり一連に印刷されており、各文字枠14内に文字を1文字宛手書き入力するようになっている。この実施例の場合、文字枠14の大きさを縦横各5〔mm〕に設定した第1の帳票と、縦横各10〔mm〕に設定した第2の帳票と、縦横各20〔mm〕に設定した第3の帳票とをあらかじめ準備しておき、文字記入者が自らの意志でいずれか帳票を自由に選択して使用する構成となっている。」(第2頁右下欄第13行-第3頁左上欄第16行)
(E)「かくていずれかの帳票をタブレット面上に位置決め固定した後、その帳票の文字枠14内へ入力ペン13を用いて文字を手書きすると、手書き文字認識装置1において文字入力にかかる文字枠の切り出しを行って、その文字枠内の文字を認識した後、その認識結果を文字枠を特定する情報と共にホスト側装置4へ出力する。」(第3頁左下欄第17行-右上欄第3行)
(F)「前記タッチキーエリア11は、入力ペン13のペン先で選択操作されるもので、第5図に示す文字枠指定キー16の他、各種コマンドをキー入力するための複数のファンクションキーが配列してある。この文字枠キー16は、文字認識処理に際し、切り出すべき文字枠サイズを指定するためのもので、前記第1の帳票を使用するときは第5図に示す枠小キー16Aを、第2の帳票を使用するときは枠中キー16Bを、第3の帳票を使用するときは枠大キー16Cを、それぞれペン13を用いて選択操作する。」(第3頁右上欄第14行-左下欄第4行)
(G)「入力ペン13は、入力タブレット2上にペン先が触れ且つ所定筆圧が加わったとき、例えばペン先部に磁力線が発生する構造となっており、従って入力タブレット2の文字入力エリア10においてこの磁力線の移動軌跡を検出することによって、着筆から離筆に至る入力文字の各ストロークをデータとして得るものである。」(第3頁左下欄第5-11行)
(H)「第3図は、前記認識処理部3におけるメモリの内容を示し・・・また文字枠種別記憶エリア28には前記第1〜第3の帳票にそれぞれ設定されたいずれかの文字枠サイズを規定する文字枠データが格納され・・・
一方前記タッチキーエリア11において、いずれか文字枠指定キー16が押されて、文字枠の種別を指定するコマンドが入力されたときは・・・例えば文字枠指定キー16の枠小キー16Aが押されたときは、第1の帳票に設定された文字枠のサイズを規定する第1文字枠データが・・・それぞれ文字枠種別記憶エリア28にセットされることになる。
かくして入力タブレット2の文字入力エリア10に帳票15を介して入力ペン13のペン先が接触して所定筆圧が加わると・・・ステップ41へ進む。このステップ41では、着筆点の座標が前記座標検出回路により検出された後、その座標データを用いて文字枠の切出しおよび、文字枠番号の算出が実行される。
第7図はステップ41に付随して呼び出されるサブルーチンを示しており、まず第7図のステップ110において認識処理部3は文字枠種別記憶エリア28にセットされた文字枠データDX、DY(第8図に示す)を読み出し、これをCPU内レジスタにセットする。
今仮に、文字枠データDX、DYをそれぞれ15〔mm〕、前記着筆点Pの座標Xを100〔mm〕、座標Yを160〔mm〕とするとつぎのステップ111,112において、各座標X、Yを文字枠データDX、DYで割り・・・着筆点Pにかかる文字枠14の列および段の番号n,mを・・・求める」(第3頁左下欄第12行-第4頁左下欄第16行)
(I)「今仮に、第1、第2の文字ストロークより成る文字(例えば数字「4」)の第1ストローク目が文字枠14内に記入される場合を想定すると、まず第9図のステップ71において、前記ステップ40の着筆点が文字枠14内か否かが判定され、”YES”の判定で、座標カウンタ19の内容が1加算されると共に、入力タブレット2内の座標検出回路により検出されたペン位置座標が、座標カウンタ19の内容に対応する座標記憶エリア20の所定番地に格納される(ステップ72、73)。そしてペン先が移動して同一文字枠14内に文字ストロークが画かれると、ステップ74の「離筆か?」の判定がNO”、ステップ71に戻って「同一文字枠内か?」の判定が”YES”となり、前記同様、座標カウンタ19が加算され且つペン位置座標が記憶される(ステップ72,73)。」(第5頁左上欄第9行-右上欄第4行)
(J)「かくして数字「4」の第2ストローク目の入力処理においては、ステップ47の「照合一致か?」の判定が”YES”となり、この段階で認識文字コードが文字枠番号と共にホスト側装置4へ送信されることになる(ステップ51)。」(第6頁左下欄第2-6行)
(K)「第13図はホスト側装置4におけるメモリの内容を示している。図中、・・・また帳票フォーマット情報記載エリア142には、前記入力タブレット2上に設置される帳票15のフォーマットが格納される。・・・つぎに帳票フォーマット情報記憶エリア142の内容が読み出されて、CRT5の画面に帳票のフォーマットが表示された後・・・される(ステップ92,93)。・・・
これに対し数字「4」の第2ストローク目の認識終了時点では、認識文字コードが文字枠番号と共にホスト側装置4へ送信されるから(第1図のステップ51)、この場合はステップ100の判定は”NO”であり、ステップ101において、受信した文字枠番号に対応するCRT5の表示位置に認識文字コードに対応する文字(この場合は、数字「4」)が表示されると共に、ステップ102において、文字枠番号に応じた文字記憶エリア147の番地に受信文字コードが格納される。
上記一連の処理は受信がある毎に繰り返し実行されるもので、これによりCRT5には受信文字がつぎつぎに表示されてゆくと共に、文字記憶エリア147には受信情報が貯えられてゆく(ステップ101,102)。」(第7頁左上欄第1行-右下欄第9行)
上記記載事項(I)によると、ペン先が移動すると新たなペン座標位置が記憶されるので、座標検出回路は時系列に従いペン位置座標を取得している。
上記記載事項(J)によると、認識文字コードが文字枠番号と共にホスト側装置4へ送信されるのであるから、認識処理部は、文字認識コード化された文字が、帳票のどの文字枠に該当するかを特定している。

したがって、引用例1には、
「少なくとも一つの入力タブレットと、該入力タブレットとコード線を介して電気接続される認識処理部と、該認識処理部とコード線を介して電気接続されるホスト装置とを備える手書き文字認識装置であって、
前記入力タブレットは、
帳票をセットするためのタブレット面、
前記帳票に文字の、移動軌跡を手書きするための入力ペン、
前記移動軌跡を、時系列に従うペン位置座標として収得する座標検出回路、および、
前記ペン位置座標と文字枠指定情報とを含む情報を前記認識処理部へ伝達する手段を有し、
前記認識処理部は、ペン位置座標と文字枠指定情報とを含む情報を受信した場合、該情報に含まれるペン位置座標に基づき文字を認識文字コード化し、前記情報に含まれる前記文字枠指定情報に基づき、文字認識コード化された文字が、前記帳票のどの文字枠に該当するかを特定する、
手書き文字認識装置」
の発明(以下「引用例1記載発明」という。)が記載されていると認められる。

2-2-2 引用例2(特開平6-236389号公報)の記載事項

(L)「【発明が解決しようとする課題】
このような従来のシステムでは、発注側で文字認識装置をもつので、発注装置が高価になると共に小型化しにくいという課題がある。
さらに、発注側で文字認識装置をもつと、読み取る対象とする文字や記号が増えた場合などに各発注装置ごとに文字認識装置を変更しなければならず、コストが高くなるという課題がある。
本発明はこのような状況を鑑みてなされたもので、操作性が良好で、かつ安価な発注装置と、それに対応した受注装置を用いて、普及しやすい受発注システムを構築しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
この発明に係る受発注システムは、発注側に入力ペンを用いて文字を書き込むことができる入力タブレット・表示装置と入力された文字イメージ情報を送信する送信手段を備えているものであり、
かつ、受注側は送信されてきた文字イメージ情報を受信する受信手段と、受信した文字イメージ情報から文字イメージを取り出して、文字コードに変換する文字認識手段を備えているものである。」(段落【0005】〜【0008】)
(M)「このように本実施例においては、文字認識手段はホスト側にあるので、発注側の装置が安価になり、発注装置が普及しやすい受発注システムを構築することができる。」(段落【0022】)
(N)「図1・2において101は発注装置、2は公衆回線、102は受注装置である。4は入力タブレット・表示装置、4cは送信ボタン、5は入力ペン、106はイメージ送信手段、103はイメージ受信手段、104は文字認識手段、105はコンピュータである。」(段落【0015】)
(O)図1には、発注装置101と受注装置102が、公衆回線2で接続されたものが記載されている。

2-2-3 引用例3(特開平6-314289号公報)の記載事項

(P)「本発明に係るペンコンピュータおよびこれを用いる伝票処理システムにおいては、ホストコンピュータで、どのデータが何の項目に対応するかを示す書式定義データ、どのデータをどのように演算するかを示す処理定義データ、また、商品コードや商品名を、マスタファイルにある該当データを入力する場合、必要となるデータをマスタファイルから、必要なものだけを抽出したマスタデータを作成する。そして、ホストコンピュータで作成した、書式定義データ,処理定義データ,マスタデータを、RS-232-C,LANまたは加入電話回線等を使用してペンコンピュータにダウンロードする。ペンコンピュータでは、ダウンロードされた書式定義データを使用して、表示機能11によりディスプレイに伝票を表示する。」(段落【0005】)

3.対比

本願発明と引用例1記載発明を対比すると、
(イ)引用例1記載発明の「入力タブレット」、「帳票」、「タブレット面」、「文字」、「移動軌跡」、「入力ペン」、「ペン位置座標」、「座標検出回路」、「認識文字コード化」及び「文字枠」は、本願発明の「端末機器」、「帳票用紙」、「ボード」、「キャラクタ」、「筆跡」、「ペン」、「座標データ列」、「検出手段」、「コード化」及び「記入欄」にそれぞれ相当する。
(ロ)引用例1記載発明の「文字枠指定情報」は、文字枠指定キーにより、使用する帳票が、第1〜3の帳票のいずれかであるかを指定するための情報であるので、本願発明の「帳票用紙の識別情報」に相当するものであり、また、前述のように引用例1記載発明の「ペン位置座標」は、本願発明の「座標データ列」に相当するものであるから、引用例1記載発明の「ペン位置座標と文字枠指定情報とを含む情報」は、本願発明の「座標データ列と前記帳票用紙の識別情報とを含む帳票情報」に相当する。
(ハ)引用例1記載発明の「認識処理部」も、本願発明の「ホスト装置」も機能において共に、座標データ列のキャラクタコード化と、帳票用紙の記入欄の特定を行うものなので、引用例1記載発明の「認識処理部」と、本願発明の「ホスト装置」とは、「文字認識処理と記入欄の特定をする手段」である点で一致する。
(ニ)引用例1記載発明の「手書き文字認識装置」は、帳票を入力タブレットにセットし、セットした帳票の識別情報である文字枠指定情報を、認識処理部へ伝達することにより、入力タブレットにセットした帳票の情報を管理しているといえるので、引用例1記載発明の「手書き文字認識装置」は、本願発明の「帳票管理システム」に相当するものである。

したがって、本願発明と引用例1記載発明とは、
「少なくとも一つの端末機器と、該端末機器と接続されるホスト装置とを備える帳票管理システムであって、
前記端末機器は、
帳票用紙をセットするためのボード、
前記帳票用紙にキャラクタの、筆跡を手書きするためのペン、
前記筆跡を、時系列に従う座標データ列として取得する検出手段、および、
前記座標データ列と前記帳票用紙の識別情報とを含む帳票情報を文字認識処理と記入欄の特定をする手段へ伝送する手段を有し、
前記文字認識処理と記入欄の特定をする手段は、帳票情報を受信した場合、該帳票情報に含まれる座標データ列に基づきキャラクタをコード化し、該帳票情報に含まれる前記識別情報に基づき、該座標データ列の座標の値から、コード化されたキャラクタが、帳票用紙のどの記入欄に該当するかを特定する、
ことを特徴とする帳票管理システム。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明においては、文字認識処理と記入欄の特定をする手段が、ホスト装置であるのに対して、引用例1記載発明は、文字認識処理と記入欄の特定をする手段が、認識処理部である点。
(相違点2)
本願発明においては、端末機器とホスト装置を、データ通信手段を介して接続したのに対して、引用例1記載発明は、入力タブレットとホスト装置を、間に認識処理部を置いてそれぞれコード線を介して電気接続した点。
(相違点3)
本願発明は、ホスト装置が、帳票用紙発行機能、および記入欄や項目欄の種類、個数、各項目のレイアウト等を定めて帳票を設計することができる帳票設計機能を有し、前記ホスト装置が有する帳票設計機能に基づき設計された帳票用紙を端末機器で用いるのに対して、引用例1記載発明は、ホスト装置がそのような機能を有しない点。
(相違点4)
本願発明は、ペンの筆跡が、目視可能であるのに対して、引用例1記載発明は、ペンの筆跡が、目視可能であるか記載されていない点。

4.当審の判断

4-1 上記相違点について検討する。

(相違点1について)
引用例2には、上記記載事項(L)及び(M)にあるように、文字認識処理を行う手段をホスト側に設ける技術が記載されている。
引用例1及び2に記載されたものは、共に入力タブレットに手書入力された文字を認識する技術に関連するものであるので、引用例2に記載された文字認識処理を行う手段をホスト側に設ける技術を引用例1記載発明に適用し、認識処理部をホスト装置に設けることは、当業者が容易に想到し得ることと認める。
また、引用例1記載発明の認識処理部が文字認識処理と共に実行する記入欄の特定を行う処理を、ホスト装置側に設けることに対する阻害要因も認められないことから、引用例2に記載された技術を引用例1記載発明に適用する際に、ホスト装置において文字認識処理と記入欄の特定を行うことに格別な技術的困難性はない。
したがって、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得ることと認める。
(相違点2について)
上記記載事項(N)及び(O)において、発注装置が本願発明の「端末機器」に、受注装置が本願発明の「ホスト装置」に、公衆回線が本願発明の「データ通信手段」に、それぞれ相当するものであるから、引用例2には、端末機器とホスト装置により、端末機器で入力された文字の文字認識処理を実行する際に、双方をデータ通信手段を介して接続する技術が示されている。
そして、上記相違点1で検討したように、ホスト装置において文字認識処理と記入欄の特定を行うことは格別なことでないので、引用例1記載発明に引用例2に記載された、端末機器とホスト装置をデータ通信手段を介して接続する技術を適用し、相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得ることと認める。
(相違点3について)
引用例3には、上記記載事項(P)にあるように、ホストコンピュータが、ペンコンピュータで使用する伝票の書式定義データを作成することが記載されており、当該伝票が本願発明でいう帳票用紙に相応し、当該伝票の書式定義データを作成することが、本願発明でいう帳票設計機能に対応することから、引用例3には、ホスト装置が帳票設計機能を有する技術が示されている。
また、上記記載事項(K)によると、引用例1記載発明のホスト装置は、帳票フォーマット情報を記憶し、記憶した帳票フォーマット情報を利用することにより、文字を文字枠番号に対応した表示位置に画面表示する共に、受信文字コードを文字枠番号に応じた番地に格納している。
引用例1には、該帳票フォーマット情報を作成する装置については記載されてないが、引用例1記載発明のホスト装置は、帳票フォーマット情報を利用するものであり、かつ、引用例3に示すように、ホスト装置に帳票設計機能を持たせることは公知の技術であるから、引用例1記載発明においても、ホスト装置が自ら利用する帳票フォーマット情報を作成するために、ホスト装置に帳票設計機能を持たせることは格別なことではない。
そして、引用例1記載発明の帳票は文字枠が印刷されたものであり、該文字枠はホスト装置が記憶している帳票フォーマット情報と対応したものであるから、ホスト装置において、帳票フォーマット情報を利用して文字枠の印刷を行い帳票を作成することに技術上の困難性は認められない。
したがって、ホスト装置に帳票設計機能及び帳票用紙発行機能を持たせ、相違点3に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たものと認める。
(相違点4について)
入力タブレットにおいて、筆跡が目視可能な入力ペンを使用する技術は、例示するまでもなく周知であるので、相違点4は格別なものとはいえない。

以上のように、相違点1-4は、何れも格別なものとは認められず、本願発明の作用効果も、引用例1-3に記載された事項から当業者が予測しうる程度のものであり、格別なものとはいえない。

4-2 請求人の主張

請求人は、平成16年7月23日付け提出の上申書において、「ここで、刊行物2には、段落0002〜0007に記載されているように、発注装置1が入力タブレット・表示装置4、文字認識装置7等を備えている構成を従来技術として、発注装置が高価になる等の課題を解決すべく、受注側に文字認識装置をもつ点をポイントとする技術が記載されております。そして、刊行物2の構成では、上記のように受注側に文字認識装置をもっているにも関わらず、平成16年6月11日付け提出の意見書においても述べましたように、発注側においてフォーマット情報を記憶しておくか(実施例1)、受注側(ホスト側)からフォーマットイメージやデータを発注側に送信する構成となっています。従って、当業者は、仮に受注側において文字認識を行う刊行物2を参照することで、刊行物1の構成においてホスト側で文字認識を行う構成に思い至るとしても、その場合、むしろフォーマット情報については刊行物2に開示されているように、端末側に記憶しておくか、又はホスト側から端末側に送信する構成を考えるのが自然です。そして、そのような刊行物1及び刊行物2から想到される構成、すなわち、ホスト側で文字認識を行う一方、フォーマット情報を端末側に記憶しておくか、又はホスト側から端末側に送信する構成と、本願発明との相違については、前記意見書において既に述べたとおりです。」と主張している。
そして、平成16年6月11日付け提出の意見書では、「すなわち、端末機器では、ホスト装置で設計した帳票用紙に書き込み、その結果得られた座標データ列と識別情報とを対応づけてホスト装置に送れば足りるため、フォーマット情報を予め記憶しておく必要や、ホスト装置からフォーマット情報を送ってもらう必要はありません。」と主張している。

そこで、上記主張について検討する。
上記記載事項(H)には、引用例1記載の認識処理部3が、文字枠種別記憶エリア28を有し、文字枠種別記憶エリア28には、第1〜第3の帳票にそれぞれ設定されたいずれかの文字枠サイズを規定する文字枠データが格納されていることが記載されている。この文字枠データは、請求人がいうところのフォーマット情報に対応するものである。
そして、相違点1で検討したように、引用例1記載発明において、認識処理部で行う文字認識処理及び記入欄の特定を、ホスト装置側で行うことに何ら困難性が認められないのであるから、文字認識処理及び記入欄の特定をホスト装置側で行うこととし、それにあわせて、記入欄の特定に必要な認識処理部が記憶している文字枠データ、即ち、フォーマット情報の記憶場所を端末側でなくホスト装置側とすることは、通常にとり得る構成にすぎない。
したがって、請求人の主張するフォーマット情報をホスト装置側に記憶させる点においても、格別な技術的意義は見いだせず、上記主張を採用することができない。
なお、相違点1での検討は、引用例2に記載された、発注装置が高価になる等の課題を解決すべく、ホスト側に文字認識手段をもたせるという技術思想を、引用例1記載発明に適用し、文字認識処理と記入欄の特定をすることをホスト装置で行うことの容易性を検討したのであって、引用例2に、発注側においてフォーマット情報を記憶しておくか(実施例1)、受注側(ホスト側)からフォーマットイメージやデータを発注側に送信する構成が記載されていたとしても、相違点1の判断に影響を及ぼすものではない。

5.むすび

したがって、本願発明は、引用例1-3に記載された発明及び周知の技術思想に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2004-12-08 
結審通知日 2004-12-08 
審決日 2004-12-22 
出願番号 特願平7-127010
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子新川 圭二佐藤 智康  
特許庁審判長 岩崎 伸二
特許庁審判官 須原 宏光
竹中 辰利
発明の名称 帳票管理システム  
代理人 田中 克郎  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大賀 眞司  

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