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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1111951
審判番号 不服2002-22530  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-05-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-21 
確定日 2005-02-10 
事件の表示 平成 5年特許願第282636号「アミノカルバゾール類の製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 5月23日出願公開、特開平 7-133261〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成5年11月11日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年12月20日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「ニッケル、アルミニウムおよび鉄から成る合金粉末をカセイアルカリ水溶液で展開して得られる鉄を含むラネーニッケル系触媒、およびアルカリ金属炭酸塩類又はアルカリ金属水酸化物の存在下に、硝酸根を不純物として含有するニトロカルバゾール類を、水および水と混和しない塩素化芳香族系不活性有機溶媒中で水素化還元することを特徴とするアミノカルバゾール類の製造法。」

2.引用文献

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物には、以下の事項が記載されている。

(1)特開昭58-140070号公報(以下、「引用文献1」という)

(1-1)「ニトロカルバゾール類を芳香族塩素化物系溶媒中、鉄または鉄化合物の共存下にニッケル触媒を用いて水素で還元することを特徴とするアミノカルバゾール類の製造方法。」(特許請求の範囲、第1頁、左下欄、第5〜8行)

(1-2)「ニッケル触媒としては、ラネーニッケル・・・等の担体を用いたニッケル触媒・・・等、ニッケルを主成分とするものであり」(第2頁、右上欄、第8〜12行)

(1-3)「実施例1・・・攪拌機付オートクレーブに、3-ニトロ-9-エチルカルバゾール70g、O-ジクロロベンゼン140g、ラネーニッケル0.7g、鉄粉0.35g、水50g及び炭酸ソーダ1.0gを仕込み(反応系の鉄分0.13%)オートクレーブ内の窒素置換、水素置換したのち、攪拌下、反応温度85℃において、水素を反応系の圧力が10〜20Kg/cm2・Gを保つように供給した。7時間後に水素吸収が終了したので60℃まで冷却し、・・・水層を分離して、3-アミノ-9-エチルカルバゾールのO-ジクロロベンゼン溶液を得た。・・・純度は98.0%であった。純度換算収率は99.5%であった。
・・・
比較例1・・・鉄粉0.35gを仕込まずに、その他は実施例1と全く同様に操作した。・・・水素の吸収速度は実施例1に比較して遅く、吸収終了までに13時間を要した。・・・純度は86.0%と低く、純度換算収率は87.0%であった。」(第2頁、左下欄、第4行〜同頁、右下欄、第10行)

(2)特開昭53-119291号公報(以下、「引用文献2」という)

(2-1)「活性金属ニッケルおよび鉄の総量に対して10乃至30重量%の鉄を含有し、そしてニッケル21乃至49.5重量%、鉄3乃至16.5重量%および全体が100重量%となる量のアルミニウムを含むアルミニウム/ニッケル/鉄合金を、それ自身公知の手法によって無機または有機の塩基を用いて処理することにより製造することの出来る、高い鉄含有率を有するラネーニッケル触媒。」(特許請求の範囲第1項、第1頁、左下欄、第5〜12行)

(2-2)「7)有機化合物の水素化のために特許請求の範囲第1項・・・の触媒を用いること。
8)芳香族ニトロ化合物の水素化のために特許請求の範囲第7項に従う触媒を用いること。
9)芳香族モノニトロおよびジニトロ化合物を水素化して相当するアミンを得る為に、特許請求の範囲第7項および第8項に従う触媒を用いること。」(特許請求の範囲第7〜9項、第2頁、右上欄、第4〜11行)

(2-3)「本発明は、ラネーニッケルよりも活性で、同時に、使用中の副生成物の生成が低いことによって更に良い収率を与える、鉄含有率の高い新しいラネーニッケル触媒に関する。」(第2頁、右上欄、第17行〜同頁、左下欄、第3行)

(2-4)「本発明に従う触媒は、鉄を含まない触媒に比して短い反応時間および低い反応温度を特色とし、それに加えて、少しの副生成物しか生成しない。」(第3頁、左下欄、第5〜7行)

(2-5)「触媒は、それ自身としては公知の方法・・・により製造することが出来る。・・・一般に、触媒を製造するためには、それ自身としては公知の方法で無機または有機の塩基を用いて処理し、好ましくは・・・水酸化ナトリウムを塩基として用いるのが好ましい。」(第4頁、左上欄、第7行〜同頁、右上欄、第10行)

3.対比、判断

(1)本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、

0 両者は、「鉄を含むラネーニッケル系触媒、およびアルカリ金属炭酸塩類又はアルカリ金属水酸化物の存在下に、ニトロカルバゾール類を、水および水と混和しない塩素化芳香族系不活性有機溶媒中で水素化還元することを特徴とするアミノカルバゾール類の製造法。」である点で一致し、

ただ、

(A)本願発明は、ニトロカルバゾ-ル類が「硝酸根を不純物として含有する」ものであるのに対し、

引用文献1に記載された発明は、ニトロカルバゾール類については硝酸根を不純物として含むことが明記されていない点、及び

(B)本願発明は、「ニッケル、アルミニウムおよび鉄から成る合金粉末をカセイアルカリ水溶液で展開して得られる鉄を含むラネーニッケル触媒」を用いるのに対し、

引用文献1に記載された発明は、鉄粉とラネーニッケル触媒を用いる点

において相違するものと認めることができる。

(2) 以下、相違点について検討する

(相違点A)

引用文献1には使用するニトロカルバゾール類の製法が具体的に示されてはいないが、原料であるニトロカルバゾール類はカルバゾール類を硝酸によりニトロ化して得られるものであって、

(必要ならば、「大有機化学第14巻 複素環式化合物I」、小竹 無二雄監修、昭和40年10月10日 5版発行、株式会社朝倉書店、第495頁、第1〜9行参照)

得られるニトロカルバゾール類は反応後の処理によってその含有量に差異があるとしても、通常不純物として反応に使用した硝酸に由来する硝酸根を含有するものと認めることができる。

そうすると、引用文献1に記載されたニトロカルバゾール類も程度の差はあれ、当然不純物として硝酸根を含むものと認められるから、両者は実質的に相違するものではない。

(相違点B)

引用文献2には、ニッケル、アルミニウム、鉄からなる合金粉末を苛性アルカリ水溶液で展開して得られる鉄を含むラネーニッケル触媒が記載されており(摘示事項(2-1)及び(2-5))、鉄を含むラネーニッケルは、含まないものに比べて有利な効果があること(摘示事項(2-3)〜(2-4))、及び該鉄を含むラネーニッケルが芳香族ニトロ化合物の対応する芳香族アミンへの還元に使用できること(摘示事項(2-2))が記載されている。

また、ラネー触媒の活性を促進するために、助触媒を添加して活性をはじめ選択性や安定性の向上をはかるのが普通であり、種々の添加物によって活性の改良が試みられていること、添加物はその調製の種々の段階(合金の調整のとき、または反応系へなど)で加えることができること、ラネー合金に少量の第3金属を加え3元合金として触媒活性の改良を図った例は非常に多いこと、Ni-Alに対しては主としてFeを添加する試みが行なわれていることも本願の出願前に周知(必要ならば、「ラネー触媒」、久保松 照夫 外1名著、昭和46年5月10日 初版1刷発行、川研ファインケミカル株式会社発行、第104頁、第1〜14行参照)である。

そうすると、引用文献1における鉄粉とラネーニッケルからなる触媒に代えて、引用文献2に記載されたニッケル、アルミニウム、鉄からなる合金粉末を苛性アルカリ水溶液で展開して得られる鉄を含むラネーニッケル触媒を用いることは当業者であれば容易になし得たことである。


そして、本願発明の効果も、引用文献1及び2に記載された発明並びに本願の出願前に周知の技術事項から当業者であれば予測し得る範囲内のものである。

4.むすび

したがって、本願発明は引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-09 
結審通知日 2004-12-14 
審決日 2004-12-27 
出願番号 特願平5-282636
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 保  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 横尾 俊一
弘實 謙二
発明の名称 アミノカルバゾール類の製造法  
代理人 久保山 隆  
代理人 榎本 雅之  
代理人 中山 亨  

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