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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1112053
審判番号 不服2000-19285  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-06 
確定日 2005-02-10 
事件の表示 平成11年特許願第 60709号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月25日出願公開、特開2000-202138〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年5月14日に出願された特願平9-124430号を、平成11年3月8日に分割して新たな出願としたものであって、平成12年7月26日付拒絶理由に対応して平成12年9月7に手続補正がなされ、その後平成12年10月31日に拒絶査定された。
これに対して拒絶査定不服の審判が請求されると共に平成12年12月6日に手続補正がなされたものである。


第2.平成12年12月6日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成12年12月6日付の手続補正を却下する。
[理由]
[1].補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ROM等の制御素子を設置した制御装置が取り付けられたパチンコ機であって、ROMの外面に、赤外線CO2レーザによって識別情報が直接に表示されているとともに、
制御装置に、プリント基板を覆うように透明な合成樹脂製のカバー部材が設けられており、そのカバー部材の外部からROMに表示された識別情報を認識可能であるとともに、
制御装置が不正に取り外された場合に痕跡が残る構造を有していることを特徴とするパチンコ機。」(以下「本願補正発明」という)
と補正された。

[2].特許法第17条の2第3項、第4項の検討
<1>.上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「制御装置」について「制御装置が不正に取り外された場合に痕跡が残る構造」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

[3].特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)の検討
<1>.刊行物記載事項
原査定の拒絶理由に引用された、特開平7-100253号公報、特開平1-144695号公報には、以下の事項が記載されている。
(A).特開平7-100253号公報(以下「刊行物A」という)
(A-1).「【0037】透明カバー体74と収納ボックス本体52とにわたった封印シール80が貼られている。さらに、透明カバー体74には、切欠78が設けられており、透明カバー体74の組付け状態で、この切欠78を通してROMカセット112をゲーム制御用基板26に対し着脱自在となるように構成されている。その結果、ROMカセット112を他の種類のものに容易に取替えることができ、他の種類の遊技制御用プログラムが記憶されたROMカセット112に取替えることにより遊技制御を容易に変更することが可能となる。なお、このROMカセット112とゲーム制御用基板26あるいは収納ボックス本体52との間に封印シール80が貼着される。封印シール80を貼着することにより、遊技場側の人間が不正に遊技内容を変更するべくゲーム制御用基板26の変更あるいは改造またはROMカセット112の交換を不正に行なった場合には、封印シールが破られるので、その行為があったことを確認することができる。」(第9欄第40行〜第10欄第6行)
(A-2).「【0040】また、ゲーム制御用基板ボックス52を取外す場合は、押圧部84を図示下方へ押下げることにより、係合片85と係合孔57との係合を解除し、ゲーム制御用基板ボックス52を左側にスライドさせれば、ゲーム制御用基板ボックスを簡単に取外すことができる。」(第10欄35〜39行)
(A-3).「0041】図8は、ROMカセット112の構成を示す説明図であり、(a)は下方から見た図、(b)は正面から見た図である。ROMカセット112内には、基板113が内蔵されており、この基板113には、可変表示装置9の表示画像を記憶するキャラクタROM115と、ゲーム制御用データを記憶する遊技制御用ROM117と、可変表示装置9の制御用プログラムデータを記憶する表示制御用ROM116とが形成されている。ゲーム制御用データとは、可変表示装置9や可変入賞球装置11を制御してゲームを制御するための制御用のプログラムである。この基板113には、前記それぞれのROM115,116,117に対応する端子114a,b,cが形成されており、この端子114a,b,cによりゲーム制御用基板26と電気的に接続される。そして、各ROM115〜117に亘って名称シール118が貼着されており、メーカー名が表示される。このメーカー名が印字された名称シール118の代わりに、メーカー名を刻印してもよい。」(第10欄第48行〜第11欄第15行)
(A-4).してみると、刊行物Aには下記の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「可変表示装置9の表示画像を記憶するキャラクタROM115、ゲーム制御用データを記憶する遊技制御用ROM117、及び可変表示装置9の制御用プログラムデータを記憶する表示制御用ROM116等には、メーカー名が刻印されており、当該ROMをその内部に形成したROMカセット112は、ゲーム制御用基板26に対して着脱自在に構成され、当該ROMカセットが装着されるゲーム制御用基板26は収納基板ボックス本体52に取付られ、取り外し可能な収納基板ボックスには透明カバー体74が固定されて、透明カバー体74とROMカセット、収納基板ボックス本体とに亘って封印シールが貼着されたパチンコ遊技機」

(B).特開平1-144695号公報(以下「刊行物B」という)
(B-1).「2.特許請求の範囲 レーザ光照射により炭化して変色する材料からなるパターンを印刷基板表面に設けた後、前記パターンにレーザ光を照射することにより前記パターンを変色させ印刷基板の識別を行なうことを特徴とする印刷基板の識別方法。」

<2>.本願補正発明と引用発明との対比
(ア).発明特定事項の対応
(i).引用発明における「メーカー名」は、本願補正発明の「識別情報」に対応する。
(ii).引用発明における「透明カバー体」は、本願補正発明における「カバー部材」に対応する。
(iii).引用発明における「封印シール」は、本願補正発明において、「不正に取り外された場合に痕跡が残る構造」に対応する。
(iv).引用発明における「ゲーム制御用基板」は、本願補正発明における「プリント基板」に対応する。」
(v).引用発明における、ゲーム制御用基板、透明カバー体、収納基板ボックスからなる装置は、本願補正発明における「制御装置」に対応する。

(イ).一致点
ROM等の制御素子を設置した制御装置が取り付けられたパチンコ機であって、ROMの外面に識別情報が直接に表示されているとともに、
制御装置に、プリント基板をカバーするように透明なカバー部材が設けられており、
制御に関する装置に対して不正が行われた場合に痕跡が残る構造を有していることを特徴とするパチンコ機

(ウ).相違点
(i).相違点1
ROMに直接表示させる識別記号の形成手段として、本願補正発明は「赤外線CO2レーザ」であるのに対し、引用発明は「刻印」である点
(ii).相違点2
制御装置を形成するカバー部材に関して、本願補正発明は、合成樹脂材料であり、プリント基板を覆うものであるのに対し、引用発明は、材料の限定はされておらず、さらに、プリント基板を完全に覆っていない点
(iii).相違点3
本願補正発明におけるROMは、外部からその識別情報が認識できるものであるのに対し、引用発明においては、ROMカセット内に形成されているため、外部から直接認識できるか否か不明である点
(iv).相違点4
装置に対して不正が行われた場合に痕跡が残る構造として、本願補正発明では、「制御装置」の取り外しについて痕跡が残るのに対し、引用発明では、ROMカセット、ゲーム制御基板の変更、交換について痕跡が残る点

(エ)相違点の検討
(i).相違点1
レーザ、炭酸ガスレーザーにより半導体等の電子部品に識別情報を表示することは刊行物B、特開平4-92455号公報(以下「周知例1」という)、特開平3-70115号公報(以下「周知例2」という)、に示されるように周知の表示作成手段であり、赤外線の光源としての炭酸ガスレーザーも特開昭53-38897号公報(以下「周知例3」という)に示されるように周知の事項である。
そして、使用するレーザーとして、赤外線CO2レーザと限定したことによる格別の効果も認めれらない。
してみると、当該相違点は当業者が適宜為し得る程度の事項で格別のものとは認めらない。
(ii).相違点2、相違点3
制御回路に対する不正防止の為に、内部を透視できる透明ケース内に制御回路を封印することは、特開平6-304299号公報(段落【0003】参照、以下「周知例4」という)、特開平6-61279号公報(段落【0002】、【0003】参照、以下「周知例5」という)、特開平5-131048号公報(段落【0034】、図12参照、以下「周知例6」という)、に見られるように周知の事項であり、材料として合成樹脂とすることも、周知例5,周知例6に記載されているように周知の事項であり、内部を透視可能としたことは、ROM等の制御回路素子が不正であるか否かチェックする為のものであることもまた周知の事項である。
したがって、引用発明において交換可能としたROMカセットに代えて、周知の、例えば実開昭63-122469号公報に示されるように基板に固定されたROMに変更することは、当業者が容易に為し得る程度の事項である。
また、その様に設計変更することにより、ROMの識別情報が外部から認識可能となることは前記透明ケースに関する周知の事項から明らかである
したがって、当該相違点は当業者が適宜為し得る程度の事項であり、格別のものではない。
(iii).相違点4
不正が行われる対象は、ROM、制御基板などの電子部品であることは周知であり、当該電子部品を収納する容器に対しても不正防止手段を施すことも周知であるから、制御装置に、封印シール等周知の痕跡が残る構造を採用することは当業者が容易に為し得る程度の事項である。
したがって、当該相違点も格別のものではない。

(オ).まとめ
以上の相違点を総合的に勘案しても格別の作用効果も認めれらないから、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

[4].むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3.本願発明の検討
[1].本願発明
平成12年12月6日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成12年9月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「制御装置内に設置されたROM等の制御素子によって作動が制御されるパチンコ機であって、
ROMの外面に、赤外線CO2 レーザによって識別情報が直接に表示されているとともに、
制御装置に、プリント基板を覆うように透明な合成樹脂製のカバー部材が設けられており、そのカバー部材の外部からROMに表示された識別情報を認識可能であることを特徴とするパチンコ機。」

[2].刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「第2.[3].<1>.」に記載したとおりである。

[3].本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明は、前記「第2.[3].<2>.」で検討した本願補正発明から「制御装置」の限定事項である「制御装置が不正に取り外された場合に痕跡が残る構造を有している」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.[3].<2>.」で検討したとおり、刊行物A、刊行物Bに記載された発明、及び、周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物A、刊行物Bに記載された発明、及び、周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4].むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物A、刊行物Bに記載された発明、及び、周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-18 
結審通知日 2004-11-24 
審決日 2004-12-24 
出願番号 特願平11-60709
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 白樫 泰子
塩崎 進
発明の名称 パチンコ機  
代理人 石田 喜樹  

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