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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1112054
審判番号 不服2001-6887  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-27 
確定日 2005-02-10 
事件の表示 平成4年特許願第29489号「ダイナミカリーチューンドジャイロのフレクシャ構造」拒絶査定不服審判事件〔平成5年8月31日出願公開、特開平5-223576〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明.
本願は、平成4年2月17日の特許出願であって、その特許を受けようとする発明は、平成13年2月22日付け手続補正書、及び同年5月21日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「柱状をなすジンバル(1)に設けられた十字形スプリング体(2)と、この十字形スプリング体(2)の端部に設けられ4個のリング片(3a〜3d)からなるリング体(3)とを備えた構成からなるダイナミカリーチューンドジャイロのフレクシャ構造において、前記ジンバル(1)の周縁位置には軸方向に形成され内周面(1cA)が面形状のみからなる8個の細孔(1c)を有し、前記細孔(1c)には、ステンレス、アルミニウム及び銅の何れかよりなり外周面(10a)が面形状のみからなる円柱体のピン(10)が挿入されていることを特徴とするダイナミカリーチューンドジャイロのフレクシャ構造。」(以下、「本願発明」という。)

2.原査定の理由
これに対して、原査定の拒絶の理由は、本願の出願前に頒布された下記刊行物1,2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

刊行物1:実願昭61-55411号(実開昭62-168424号)の
マイクロフィルム
刊行物2:特開昭64-32112号公報

3.各刊行物に記載された発明
刊行物1及び刊行物2には、それぞれ以下の事項が図面とともに記載されている。
(1)刊行物1:
(1a)「a.産業上の利用分野 本考案は、フレックスジャイロスコープに関し、特に、曲げに対して大なるばね定数を有し、ねじれに対しては小なるばね定数を有するスプリングからなるヒンジ機構を有するための新規な改良に関するものである。」(明細書2頁17〜3頁2行)
(1b)「第1図から第4図迄は、本考案によるフレックスジャイロスコープを示すためのものである。第4図で示す構成は、本考案によるフレックスジャイロスコープの原理を示す概略斜視図であり、図において、符号12で示されるものは、スピンモータ11のロータ軸3の上端に、一体状に取付けられたほぼU字形をなす保持部材であり、この保持部材12の両端に直立して形成された一対の保持片12a及び12bには、一対の第1スプリング13の各一端13aが固定して接続され、各第1スプリング13の各他端13bは、前記ロータ軸3と同軸状に配設されたジンバル14の周壁に接続されている。従って、前記ジンバル14は、前記各第1スプリング13によって、前記保持部材12に宙吊り状に保持されている。前記ジンバル14の周壁には、一対の第2スプリング15の一端15aが固定的に接続され、各第2スプリング15の他端15bは、前記ジンバル14と同軸に配設されたジャイロロータ4の内壁4bに固定して接続されると共に、各第2スプリング15は、前記各第1スプリング13に対して直交する状態で配設されている。」(明細書7頁14行〜8頁16行)
(1c)「第1図の構成において、各第1スプリング13の一端13aは、一対の第1アウターリング片20に接続されており、これらの第1アウターリング片20が前記保持部材12に接続されている。さらに、各第2スプリング15の他端15bには、一対の第2アウターリング片21に接続されており、これらの第1(当審注:第2の誤記と認める。)アウターリング片21がジャイロロータ4に接続されている。従って、第4図の構成においては、各第1スプリング13の一端13aが保持片12aに接続され、各第2スプリング15の他端15bがジャイロロータ4に直接接続されている構成としたが、実際には、第1図で示す構成の各アウターリング片20及び21の外側位置にジャイロロータ4が配設されている構成であり、そのため、前述の各アウターリング片20及び21は、第2図に示すように、第1アウターリング片20の外径が、第2アウターリング片21の外径よりも小に形成され、保持部材12とジャイロロータ4とが非接触であるのと同様に、各第1アウターリング片20はジャイロロータ4と非接触に保たれ、各第2アウターリング片21はジャイロロータ4に一体状に接続されている。」(明細書10頁11行〜11頁15行)
(1d)第1,2図には、円柱状のジンバル14に一対の第1スプリング13及び一対の第2スプリング15の一端が配設され、前記一対の第1スプリング13の他端には一対の第1アウターリング片20がそれぞれ接続され、前記一対の第2スプリング15の他端には一対の第2アウターリング21がそれぞれ接続されており、前記一対の第1スプリング13と前記一対の第2スプリング15とは互いに直交し、平面的にみて十字形となることが示されている。

刊行物2:
(2a)「[産業上の利用分野] 本発明は、チューンド・ドライ・ジャイロに関し、特にチューンド・ドライ・ジャイロの重要構成品であるフレクチャヒンジ機構にジンバルアンバランスとミスチューニングとを簡便、容易に調整する手段を具備させることにより、高精度のジャイロの加工、組み立てを可能にしたチューンド・ドライ・ジャイロの構造に関するものである。」(1頁右欄6〜13行)
(2b)「〔発明が解決しようとする問題点〕チューンド・ドライ・ジャイロの理想は、(2)式で示した右辺の如くトルクがゼロとなるよう設計並びに製作されていることが理想である。特に(2)式のδTIXYはミスチューニングトルクであり、これはフレクチャヒンジ/ジンバル機構の設計の良し悪しが関与する。そして、このフレクチャヒンジ機構の設計で注意を要する点は、ジンバルアンバランストルク(フレクチャヒンジの捩れ軸とジンバルの重心の不一致によるトルク)があった場合、外部よりの2Nの角振動が印加された場合、2Nレクティフィケーション誤差を発生すると言うことである。・・・本発明は上述した従来のチューンド・ドライ・ジャイロにおける問題点を解消するために成されたもので、ミスチューニングトルクの調整、ジンバルアンバランストルクの調整、そして、モジュレーションの3点を調整できるフレクチャヒンジ機構を得ることを目的とするものである。」(3頁右上欄9行〜右下欄17行)
(2c)「チューンド・ドライ・ジャイロのフレクチャヒンジ機構12は、既述のようにジャイロロータ10の支持をするために設けられ、同ジャイロロータ10はインナロータ14、アウタロータ16、バランスリング20を備え、また、バランススクリュー22を有している。・・・そしてフレクチャヒンジ機構12のジンバル34は一般に平板と見なせ、・・・アウタフレクチャヒンジ32のアッパリング36の4箇所に切欠部38を設けてジンバル34が外側から見える構造とし、該ジンバル34には軸心方向に穿孔したねじ孔40を同一ピッチ円上に設け、それらのねじ孔40に4ケの調整用スクリュー42(第1図参照)を装着するようにしている。これらの調整用スクリュー42は、調整時にねじ孔40内で上下調節動される。本実施例では、K=-(a+b-c)-N2(当審注:-(a+b-c)N2の誤記と認める。)を達成するためにはインナフレクチャヒンジ30のジンバル慣性とアウタフレクチャヒンジ32に取付けた4本の調整用スクリュー42のジンバル慣性が関与する。設計はK=-(a+b-c)N2として、まず4本の調整用スクリュー42の重心位置がジンバル34の重心位置に一致するように上下動させてセットする。この状態でチューンド・ドライ・ジャイロに外部より2種類のGレベルで2Nの振動をスピン軸に対して垂直に印加し、4本全部或いは何れか2本の調整用スクリュー42を動し、それぞれの振動に伴なって出てくる誤差出力が零となるよう調整する。次にミスチューニングの調整に入る。上述の式におけるδ軸(当審注:z軸の誤記と認める。)まわりの慣性モーメントCはスクリュー42の長さをかえない限り固定値となることから、慣性モーメント値a、b(通常a=b)を調整する。例えば、設計的にミスチューニング調整のためには、a、bを増大方向に調整すれば良いとすると、一本のスクリューは引上げ、他のもう一本は引上げ量と同量だけ引き下げれば良い。これはネジピッチを適正に予め選定すると、スクリュー回転数を指定することで、かなり正確に実施することができる。また、上記のa、bが減少方向の場合は、重量調整で可能となる。更に、このフレクチャヒンジ機構12は、インナフレクチャヒンジ30がシャフトを貫通できるよう構成されており、このためチューンド・ドライ・ジャイロのストップ調整が容易に出来るような設計となっている。」(4頁右上欄16行〜5頁左上欄15行)

4.対比
そこで、本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「ジンバル14」、「一対の第1スプリング13と一対の第2スプリング15」及び「一対の第1アウターリング片20と一対の第2アウターリング21」は、それぞれ本願発明の「ジンバル(1)」、「スプリング体(2)」及び「4個のリング片(3a〜3d)からなるリング体(3)」に相当する。そして、上記摘記事項(1d)から、刊行物1に記載された発明も、「ジンバル14」は柱状であり、また「一対の第1スプリング13と一対の第2スプリング15」は十字形とされ、その端部に「一対の第1アウターリング片20と一対の第2アウターリング21」が設けられた「ジャイロのフレクシャ構造」が開示されている。
以上のことから、本願発明と刊行物1に記載された発明とは、以下の【一致点】で一致し、【相違点】で相違する。

【一致点】
柱状をなすジンバルに設けられた十字形スプリング体と、この十字形スプリング体の端部に設けられ4個のリング片からなるリング体とを備えた構成からなるジャイロのフレクシャ構造

【相違点】
本願発明が、ダイナミカリーチューンドジャイロのフレクシャ構造に関するものであって、そのジンバル(1)の周縁位置には軸方向に形成され内周面(1cA)が面形状のみからなる8個の細孔(1c)を有し、前記細孔(1c)には、ステンレス、アルミニウム及び銅の何れかよりなり外周面(10a)が面形状のみからなる円柱体のピン(10)が挿入されているのに対し、刊行物1に記載された発明は、フレックスジャイロと記載され、そのジンバル14は細孔を有するものでない点。

5.当審の判断
上記【相違点】について、以下に検討する。
刊行物1には、ダイナミカリーチューンドジャイロであることについて記載はない。しかし、刊行物1に記載された発明のフレックスジャイロが、ジンバル14の慣性能率Jと、第1及び第2のスプリング13、14のばね定数k、ジャイロロータ4の回転周波数ωを、J=ω2/kの関係に調整して使用するダイナミカリーチュードジャイロであることは当業者からみて自明なものである。そして、刊行物2には、チューンド・ドライ・ジャイロ(本願発明の「ダイナミカリーチューンドジャイロ」に相当)において、ジンバル34(本願発明の「ジンバル(1)」に相当)のジンバルアンバランスとミスチューニングとを簡便、容易に調整するために、「該ジンバル34には軸心方向に穿孔したねじ孔40を同一ピッチ円上に設け、それらのねじ孔40に4ケの調整用スクリュー42(第1図参照)を装着するように」(摘記事項(2c)参照)することが記載されている。そして、当該記載からみて、このねじ孔40は、ジンバル34の周縁位置に軸方向に形成されていることは明らかである。また、刊行物2に記載された調整用スクリュー42は、回転体のアンバランスを調整するための調整用部材を構成しているが、このように回転体に設けた孔に調整用部材を挿入して、アンバランスを調整することは慣用手段であって、その場合に調整用部材や孔の材質、配置及び形状といったものが適宜変更可能であることも、例えば下記文献1〜5に記載されたとおり当業者にとって周知な事項である。

・文献1:特開平3-282227号公報
(ア)「「産業上の利用分野」 本発明は回転体のバランスを取る方法に関するものである。」(1頁左欄10〜12行)
(イ)「回転体1の側面に同一半径上に8等配されたタップ加工穴2が施してある。偏心測定器により得られた偏心量は、補正用ネジ3を1個又は複数個装置し、補正することになる。偏心量を微調整する場合は、タップ加工穴2の径、位置および数量を多く施すことが望ましい。」(1頁右欄17行〜2頁左欄4行)

・文献2:特開昭61-85501号公報
(ウ)「(技術分野) 本発明は、セラミックローターのスピンテストを行う際のバランス修正方法、並びにそのバランス修正に用いられる修正治具に関するものである。」(2頁左上欄1〜5行)
(エ)「セラミックロータが固着された金属製治具は、スピンテストに先立って、先ずバランス測定器に取り付けられ、その回転バランスが修正される。このバランス修正に際しては、例えばバランス測定器でアンバランスの方向と大きさを検知しつつ、金属製治具に設けられた複数のネジ穴に対して適数個のバランス修正用ネジを取り付けてバランスを調整する。かかるネジによるバランス修正においては、ネジの移動量(締込量)を調整したり、ネジ穴に対してネジを脱着したり、大きさの異なる大小のネジの組合わせを変更したり、重量の異なるネジの組み合わせを変更したり、或いはそれらを適宜併用したりして行うこととなるが、いずれにしても金属製治具がバランス測定器に取り付けられたままの状態で、ドライバーにて簡単にバランス修正を行うことが可能である。」(4頁右上欄1〜17行)
(オ)第3図には、8個のネジ穴22に修正用ネジ34を取り付けた例が示されている。

・文献3:特開昭63-290910号公報
(カ)「a.産業上の利用分野 本発明はフレックスジャイロに関し、特に、スピン軸と結合しているジンバルの慣性能率を簡単に調整し、フレックスジャイロのチューニング条件を簡単に得るようにするための新規な改良に関する。」(1頁右欄5〜10行)
(キ)「第1スプリング6及び第2スプリング7によって懸架されたジンバル5は、全体形状が筒形に構成され、その中心位置に保持孔5aが形成されている。この保持孔5a内には、第2図で示されるように所要の質量を有する円柱状をなす質量体5bが嵌入されている。この質量体5bは、第2図では1個のみしか示されていないが、実際には、各々異なる質量の複数個の質量体5bを用意しておき、慣性能率調整時に最適の質量のものを選んで保持孔5a内に嵌入するものである。又、第4図及び第5図に示す構成は、他の実施例を示すもので、保持孔5aの内壁にねじ部5aAが形成され、質量体5bの外壁に前記ねじ部5bA(当審注:5aAの誤記と認める。)と螺合することができる5bAが形成されている。さらに、前記質量体5bは、前記保持孔5a内に着脱自在に螺入できる構成であり、前記質量体5bの上面に回転用係止溝5bBが形成され、ドライバ(図示せず)等にて質量体5bを回転することができる。」(3頁左下欄17行〜右下欄18行)

・文献4:特開昭60-184747号公報
(ク)「技術分野 本発明は、エンジンに空気を過給するルーツ形過給機のロータの回転アンバランスを除去する方法に関するものである。」(1頁右欄11〜14行)
(ケ)「例えば、上記実施例でおいては質量を負荷するためにピン48が行き止まりアナ6に圧入されるようになっていたが、第8図に示すように行き止まり穴に代えて雌ねじ穴60を形成し、これに鋼製の雄ねじ部材62を螺号するようにすることも可能であり、このようにすれば万一バランス修正量が不適当であった場合に、雄ねじ部材62を取り外して別の雄ねじ部材と交換することによりバランス修正をし直すことが可能となる。」(4頁右下欄8〜16行)

・文献5:実願昭63-48988号(実開平1-152136号)のマイクロフィルム
(コ)「〈産業上の利用分野〉 本考案はVTRの回転ヘッド等に用いるに適した回転体のバランス調整装置に関するものである。」(明細書1頁14〜17行)
(サ)「第6図及び第7図に示す例はバランスウエイト9”の中央に貫通穴13を設け、その穴に嵌合する例えば金属製のピン14を圧入あるいは接着剤等により固着し、前記の例と同様に、ピンの長さや材質を変えることにより必要な重量のバランスウエイトを提供できる。」(明細書6頁19行〜7頁4行)

ここで、上記文献1〜5には、調整用部材や孔の材質、配置及び形状の変更に関して、以下(1)〜(3)の事項が示唆されている。

(1)微調整可能とするためには、回転体に設けた調整用部材を挿入するための孔を多くすることが望ましく、その細孔を8個とすることは当業者が適宜なし得る設計事項であること(上記摘記事項(イ)、(オ)参照)。
(2)調整用部材の外周面を面形状のみからなるものとし、その調整用部材を挿入する孔の内周面を面形状のみからなるものとするか、調整用部材を雄ねじとし、その調整用部材を挿入する孔に雌ねじを形成することとは、当業者であれば適宜選択し得る設計事項であること(上記摘記事項(キ)、(ケ)参照)。
(3)金属製のピンからなる調整用部材の材質を異ならせることで、必要な重量の調整部材を提供することは当業者が適宜なし得る事項であること(上記摘記事項(サ)参照)。
さらに、調整用部材を挿入するための孔の径は、当業者が適宜決定する設計事項であり、孔の径を単に細くすることに格別の技術的意義は見いだせない。また、上記(3)の異なる材質の選択として、どのような材質のものを何種類にわたり用意するかは、調整しようとする重量の幅に応じて当業者が任意に決定すべきものであり、ステンレス、アルミニウム及び銅といった周知の金属材料から適宜数のものを選択することに格別の創作能力を要するとも認められない。

以上のことから、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明を適用することで、ジンバルの周縁位置に軸方向に形成された孔に調整用部材を挿入することでアンバランスを調整するよう構成することに格別の困難性はなく、さらに当該調整に際して、前記孔は、8個の細孔であって内周面が面形状のみからなるものとし、また前記調整用部材は外周面が面形状のみからなる円柱体のピンであってステンレス、アルミニウム及び銅といった3種類の周知材質からなるものとするよう変更することも当業者が適宜なし得た設計的事項である。
そして、本願明細書の段落【0017】に記載された本願発明の「ジンバルに形成された細孔にピンを挿入することにより、ジンバルの慣性能率を簡単に調整することができ、従来のようにフレクシャ自体を本体から取外して調整する必要もなく、ジャイロ装置の組立及び調整を大幅に容易化することができる。」という効果も、刊行物2に「このフレクチャヒンジ機構12は、インナフレクチャヒンジ30がシャフトを貫通できるよう構成されており、このためチューンド・ドライ・ジャイロのストップ調整が容易に出来るような設計となっている。」(摘記事項(1b)参照)と記載された効果と同等なものであって、格別でない。

なお、審判請求人は、請求の理由として「前述のご説明により4個の孔だけで回転バランスを取ることは極めて困難であることが明白になったものと存じます。つまり、最低でも8個の細孔を必要とするものであります。・・・前述ジンバルの外径は6ミリ程度であるため、ピンの外径は0.5ミリ以下であり、このサイズの外径でねじ面を形成してねじ面の細孔内に螺入することは操作性が悪く、ねじ加工の加工精度を保つことは至難の技であるため、ねじ面を有しない細孔とピンが最適と言えます。さらに、本願におきましては、ねじを用いておりませんが、ねじを用いて螺入したと仮定しますと、ピンは全て細孔内に螺入しないとバランスが悪くなりますが、ねじの場合には添付の参考図3のようにねじが回らなくなることもありますが、本願のようにピンと細孔であればこのような問題の発生もなくなります。・・・前述の(1)式を近似させるには、多種類の質量を有するねじ又はピンを用意しなければならないが、細孔のサイズを複数種類用意することは極めて困難であるため、ピンの材質を複数用意して複数種類の質量を有するピンを用意し、比重が1近辺のセラミックスから比重が19のタングステン合金まで用意できかつ機械加工性の点からも問題がなく、本願のようにアルミニウム、ステンレス、銅の何れかを用いることが好適であります。」と主張している。
しかし、ジンバルの外径は6ミリ程度であるため、ピンの外径は0.5ミリ以下であるとあるが、本件の請求項1には、ジンバルの寸法も、ピンの寸法も特定されていないことから、この点の主張は、本件の請求項1の記載に基づくものでない。また、上記「5.当審の判断」の(1)〜(3)に列記した内容から、バランス調整用の孔を8個とすること、調整用部材をねじからピンとすること、調整用部材の材質を変えることは、当業者が適宜なし得る事項であり、また孔の径を単に細くすること、及び調整用部材の材質として、ステンレス、アルミニウム及び銅といった周知の金属材料を選択することが当業者にとって格別困難であるとはいえない。よって、請求人の上記主張は採用できない。

6.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-30 
結審通知日 2004-12-07 
審決日 2004-12-21 
出願番号 特願平4-29489
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌岡田 卓弥有家 秀郎  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 福田 裕司
三輪 学
発明の名称 ダイナミカリーチューンドジャイロのフレクシャ構造  
代理人 曾我 道治  
代理人 白石 泰三  
代理人 中村 礼  
代理人 池谷 豊  
代理人 梶並 順  
代理人 古川 秀利  
代理人 曾我 道照  
代理人 鈴木 憲七  

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