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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01J |
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管理番号 | 1112074 |
審判番号 | 不服2002-4191 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-04-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-03-11 |
確定日 | 2005-02-09 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第238277号「3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 4月10日出願公開、特開平10- 92324]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年9月3日(パリ条約による優先権主張1996年9月3日、大韓民国)に特許出願されたものであり、平成13年11月13日付けで拒絶査定(同年12月11日発送)がされ、これに対して平成14年3月11日に審判が請求され、当審において平成15年4月11日付けで拒絶の理由を通知(同月15日発送)したところ、その指定期間内である同年10月14日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。 2.本願請求項に係る発明 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年3月14日、平成13年8月27日、平成14年4月10日、及び、平成15年10月14日の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、 上記データ電極は、複数の電極に分割され、 上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、 上記データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和からなる維持周期の最小値は5.5μSであるとともに、上記維持周期の許容値は上記データ電極の分割数の増加につれて増加することを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。」 3.当審で通知した拒絶の理由の要点 本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された以下の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1:特開平4-42289号公報 刊行物2:特開平2-136889号公報 刊行物3:特開平2-152138号公報 4.引用刊行物に記載された発明 当審の拒絶理由通知書で引用した刊行物1乃至3のうち、刊行物1には、以下の記載がある。 (1)「従来用いられているメモリ機能を有するドットマトリクス表示型ACプラズマディスプレイパネルの一例の構成を第7図に示す。第7図(a)は平面図、第7図(b)は同図(a)におけるA-A'線による断面図である。 また第8図は第7図に示すプラズマディスプレイパネルの電極配置を示す上面図である。第8図においては、第7図に示した行電極3が2つのグループ、すなわち、走査電極S1からSmと、共通行電極C1からCm+1に分かれている。」(第1頁右下欄第6乃至第15行) (2)第7図(b)には、「1 第1絶縁基板」に「3 行電極」が形成され、「3 行電極」を覆うように「5 絶縁層」が形成されていること、及び、「2 第2絶縁基板」に「4 列電極」が形成され、「4 列電極」を覆うように「6 絶縁層」が形成されていること、並びに、「2 第2絶縁基板」を上側の基板、「1 第1絶縁基板」を下側の基板として、両者の間に、「3 行電極」及び「4 列電極」が配置されていることが見て取れる。 (3)第8図には、「共通行電極」と「走査電極」が互いに平行に配列されていること、及び、「列電極」は「共通行電極」と「走査電極」に対して直角に配列されていること、並びに、「共通行電極」と「走査電極」とが「列電極」と交差するところに「11 画素」が形成されていることが見て取れる。 (4)「多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを駆動しようとすると、必然的に維持パルスの周波数を上げなければならなくなる」(第2頁右上欄第3乃至6行) (5)「第7図、第8図に示したプラズマディスプレイパネルに対して本発明の駆動方法を適用した第1の実施例では・・・維持パルスA、維持パルスBおよび走査パルスのパルス幅は5マイクロ秒、消去パルス幅は0.7マイクロ秒である。データパルスはこれらの走査パルスに同期して各列電極に印加挿入される。・・・本実施例では維持パルス周波数を従来の1/3に低減できることが分かる。・・・また、本実施例では、維持パルスや走査パルス幅を従来より広く取れる利点もある。第6図(a)に示したように、従来の維持パルスの周期T1は1/115200=8.7マイクロ秒であるから、維持パルスおよび走査パルスの幅は均等割り振りで2.9マイクロ秒以下となってしまう。しかし、本実施例の場合は、・・・従来の1.8倍近い幅を割り当てることができる。維持パルスや走査パルスの幅の増大は放電の安定性向上に大きく寄与するので、これは非常に大きな利点である。」(第3頁右上欄第7行乃至右下欄第11行) (6)「本発明によれば、維持パルスや走査パルスの幅を従来より広く取れるので、放電の安全性、ひいてはプラズマディスプレイパネルの動作安定性を著しく高めることができ、実用上非常に有益である。」(第4頁右上欄第9乃至13行) (7)第3頁右下欄第12乃至20行の「次に、本発明の第2の実施例について説明する。ここで用いたプラズマディスプレイパネルは、第1の実施例と同じく、第7図、第8図に示したパネルである。・・・維持パルスBの位置が第1の実施例と異なっている。このように、維持パルスBの位置は消去パルスと重ならない限りは維持パルスAの間のどのような位置でも良い。」という記載と共に、第2図には、列電極に印加されるデータパルスの印加と同時に走査電極に印加される走査パルス、走査パルスの印加後に共通行電極に印加される維持パルスA、共通行電極への維持パルスAの印加後に走査電極に印加される維持パルスBが見て取れる。 したがって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「第1絶縁基板と第2絶縁基板の間に共通行電極、走査電極及び列電極が配置されるとともに、共通行電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつ列電極は上記共通行電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記第1絶縁基板と第2絶縁基板のうち一方の基板に形成された上記共通行電極及び走査電極と上記第1絶縁基板と第2絶縁基板のうち他方の基板に形成された上記列電極とを覆うように絶縁層が形成され、上記共通行電極と上記走査電極とが上記列電極と交差するところに画素が形成されているプラズマディスプレイパネルにおいて、多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段を適用し、また、プラズマディスプレイパネルは、上記列電極に印加されるデータパルスの印加と同時に走査電極に印加される走査パルス、この走査パルスの印加後に共通行電極に印加される維持パルスA、共通行電極への維持パルスAの印加後に走査電極に印加される維持パルスB、によって駆動されるものである、プラズマディスプレイパネル。」 また、刊行物2には、以下の記載がある。 (A)「走査信号が供給される走査電極群と表示データ信号が供給されるデータ電極群とをマトリックス状に配列し、交差部に放電セル群を形成してなるプラズマディスプレイパネルにおいて、・・・前記データ電極群を複数分割してなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。」(特許請求の範囲) (B)「AC型のPDPでメモリ機能を活かした表示をするには、ある程度のアクセスタイムが確保されなければならないからである」(第2頁左上欄第11乃至14行) (C)「第1図、第2図および第3図は本発明の一実施例を示すもので、・・・背面ガラス板2の対向面には、複数列のデータ電極群Y1、Y2、Y3、…、Ymを各データ電極毎に前記4つのブロックに対応して4分割された複数列のデータ電極群Y11〜Y14、Y21〜Y24、Y31〜Y34、…、Ym1〜Ym4が設けられている。」(第2頁左下欄第4行乃至右下欄第3行) (D)「データ電極群Y11〜Ym4のそれぞれに独立のデータ信号を供給すると、対応した放電セル群S、S、…が放電発光し、所定の表示がなされる。・・・例えば、HDTV(ハイビジョン)のように、1秒間の画面が60枚、1画面の走査電極群が1000行、パルス数制御による表示の階調数が256(8ビット)の高画質表示にした場合、1行のアクセスタイムは従来の約2μsの4倍の約8μsと長くなり、AC型のPDPでも十分にメモリ機能を活かした走査による表示をすることができる。」(第2頁右下欄第15行乃至第3頁左上欄第15行) したがって、刊行物2には、以下の発明が記載されている。 「プラズマディスプレイパネルにおいて、データ電極群は、複数分割され、上記データ電極群に供給されるデータ信号は、上記分割された複数のデータ電極群のそれぞれに対して独立に供給されるようにしたプラズマディスプレイパネル。」 5.対比 本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。 第1に、刊行物1に記載された発明の「第1絶縁基板と第2絶縁基板」、「共通行電極」、「走査電極」、「列電極」、「絶縁層」、「画素」、及び、「走査パルス」は、それぞれ、本願発明の「上下基板」、「共通電極」、「走査電極」、「データ電極」、「絶縁膜」、「セル」、及び、「アドレッシング用走査パルス」に相当する。 第2に、刊行物1全体の記載、特に、第7図(a)(b)を見れば、刊行物1に記載された発明の「プラズマディスプレイパネル」は「3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル」である。 第3に、本願発明の「上記データ電極は、複数の電極に分割され、上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、」という構成は、段落番号【0013】「まず、画面を上下に2等分する場合に対して説明する。・・・従って、同一の1280×1024の解像度を有する表示素子を本実施形態による方法で駆動する場合、従来技術による方法に比べて維持パルスの周期が2倍に増加してプラズマディスプレイパネルセルの放電特性から与えられる放電に必要な最少要求時間を充足できることを分かる。」などの作用効果に関する記載からみて、刊行物1に記載された発明の「多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段」に対応する。 第4に、本願発明のプラズマディスプレイパネルは「データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和からなる維持周期の最小値は5.5μSであるとともに、上記維持周期の許容値は上記データ電極の分割数の増加につれて増加する」という記載によって特定されるものであるから、「データ電極に印加されるデータパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルス、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルス、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルス、によって駆動されるもの」という点において、刊行物1に記載された発明と対応する。 したがって、本願発明と刊行物1に記載された発明とは、「上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段を適用し、また、プラズマディスプレイパネルは、上記データ電極に印加されるデータパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルス、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルス、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルス、によって駆動されるものである、3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。」の点で一致し、他方、以下の点において相違する。 (相違点1) 本願発明における「多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段」は、「上記データ電極は、複数の電極に分割され、上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され」るものであるのに対して、刊行物1に記載された発明のそれは、これとは異なる構成である点。 (相違点2) 本願発明におけるプラズマディスプレイパネルは「データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和からなる維持周期の最小値は5.5μSであるとともに、上記維持周期の許容値は上記データ電極の分割数の増加につれて増加する」という記載によって特定される物であるのに対し、刊行物1にはこのような記載はない点。 6.当審の判断 (相違点1について) 本願発明と、刊行物2に記載された発明を比較すると、刊行物2に記載された発明の「データ電極群」、「複数分割され」、「データ信号」、及び、「供給する」は、それぞれ、「データ電極」、「複数の電極に分割され」、「データパルス」、及び、「印加する」に相当する。 したがって、「プラズマディスプレイパネルにおいて、データ電極は、複数の電極に分割され、上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加されるようにした、プラズマディスプレイパネル。」の発明は、刊行物2に記載されており、公知である。 また、刊行物2の摘記事項(D)の記載を考慮すれば、刊行物2に記載された発明は、「多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段」である。 そして、刊行物1および刊行物2に記載された発明が、プラズマディスプレイパネルに関するものであるという、産業上の利用分野の共通性を考慮すれば、刊行物1に記載された多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段として、刊行物2に記載された「データ電極は、複数の電極に分割され、上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され」る構成を採用することは、当業者が容易にできることである。 (相違点2について) 「データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和からなる維持周期の最小値は5.5μSであるとともに、上記維持周期の許容値は上記データ電極の分割数の増加につれて増加する」という記載によって特定される物としては、例えば、以下の(ア)、(イ)、及び(ウ)の要件を備えたものが含まれる。 (ア)データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルス、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルス、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルス、によって駆動されるもの。 (イ)維持周期は5.5μs以上であるもの。 (ウ)データ電極の分割数の増加につれて維持周期の許容値が増加する性質のもの。 ここで、上記(ア)は、刊行物1に記載された発明が有するものである。 また、刊行物1に記載された発明のプラズマディスプレイパネルにおいて、走査パルス、維持パルスの時間幅は各々5マイクロ秒である(摘記事項(5))から、「データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和からなる維持周期」は15マイクロ秒であり、これは、上記(イ)に該当する。 さらにまた、刊行物1に記載されたプラズマディスプレイパネルも、データ電極を分割すれば走査線数は減少するから、維持周期の許容値は増加し得る性質のものである。 したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。 そして、本願発明の作用効果は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から予期しうるものであって、刊行物1及び2に記載された発明を組み合わせたことにより予期し得ない格別な効果を奏しているとすることはできない。 したがって、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 7.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 また、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明について審究するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-11-26 |
結審通知日 | 2003-12-02 |
審決日 | 2003-12-15 |
出願番号 | 特願平9-238277 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小松 徹三、小島 寛史、橋本 直明 |
特許庁審判長 |
瀧 廣往 |
特許庁審判官 |
樋口 信宏 中塚 直樹 |
発明の名称 | 3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル |
代理人 | 山川 茂樹 |
代理人 | 紺野 正幸 |
代理人 | 西山 修 |
代理人 | 黒川 弘朗 |
代理人 | 山川 政樹 |