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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1112113
審判番号 不服2001-15582  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-09-03 
確定日 2004-11-02 
事件の表示 平成 3年特許願第355374号「電子写真における帯電方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年 6月25日出願公開、特開平 5-158288〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年11月22日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は、平成12年12月20日付けおよび平成13年10月3日付け手続補正書によって補正された明細書および図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものであり、特に請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下、「本願発明1」という。)。

「【請求項1】光導電性面とシールドの間において光導電性面に近接して電極を設け、光導電性面に電荷を制御しつつ付与する方法において、
A.前記電極に流れる電流が光導電性面の帯電電流とシールド電流の和となるように前記電極に電圧を加える工程と;
B.前記シールド電流を用いて前記光導電性面の帯電電流に比例する電気信号を得る工程であって、
a)前記シールド電流と、シールド電流および光導電性面帯電電流の和が電流加算ノードに対して異なる方向に流れるように、電流加算ノードを前記電極と前記シールドを含む回路に接続する段階と、
b)前記ノードから前記光導電性面帯電電流に比例する信号を得る段階と;
c)前記信号を電流指令入力信号と比較する段階と;
d)前記比較の結果を用いて前記電極に対する電圧の印加を制御する段階と、を含む工程からなり;
C.前記光導電性面と前記電極と前記シールドとの間の距離の変化にかかわらず前記光導電性面の帯電電流を一定に保持するようにしたことを特徴とする電子写真における帯電方法。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された特開昭58-186763号公報(引用文献1)には次のような技術事項が図面と共に記載されている。

[引用文献1]
a)「本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、複写機内に設けられる各種のコロナ放電器がそれぞれの機能に応じてコロナ放電を行うように制御されるため、例えば、放電電極の汚れ、電極間距離の変動、温度等の環境等の複写条件の変動を補正する制御量を演算記憶し、予め設定した単位複写サイクル(・・・)中のコロナ放電を前記制御量に基いて制御する複写機用コロナ放電制御装置を提供するものである。」(第2頁左上欄第4〜14行)
b)「第1図は帯電用コロナ帯電器に本発明を適用した本発明の一実施例を示し、感光体ドラム1の帯電部Aに放電電極2aとシールド体2bより成る帯電用コロナ放電器2が設けられ、放電電極2aの出力電圧V0は、例えば、フライバック式電源回路3から出力される。感光体ドラム1の感光体ドラム電流IDを検出する電流モニター部4と、電流モニター部4のモニター信号を入力して制御量を演算し、該制御量に基いて電源回路3を制御する制御ユニット5が設けられ、また、該制御ユニット5はメモリ6と接続されている。」(第2頁左上欄第17行〜同頁右上欄第7行)
c)「また、シールド体2bのシールド電流ISはトランスTの主巻線32に帰還するように構成されている。また、電流モニター部4は感光体ドラム電流IDに応じた電圧値のモニター信号を出力する抵抗41を有し、更に、制御ユニット5はモニター信号をデジタル値に変換するA/Dコンバータ51と、予め設定した単位複写サイクル(例えば、一定時間毎、一定複写枚数毎、電源オン時から計時して設定した時間等)毎にメモリ6のシーケンスに基いて演算指令するシーケンスコントローラ52(前記シーケンスに基いて複写機の各部の動作を制御するように指令するものを内蔵している場合、これを演算シーケンス用として援用するとコストダウンを図ることができる)と、この演算指令によってデジタル変換モニター信号とメモリ6の基準値を比較し、その差に応じたコントロール信号を出力する演算回路53と、該制御信号をコントロール電圧(アナログ値)として出力するD/Aコンバータ54を有している。以上の構成において、第2図のフローチャートに基いてその操作を説明するに、前回の単位複写サイクルのコントロール電圧(あるいは、予め定めた基準のコントロール電圧)をシーケンスコントローラ52の制御によってメモリ6から読み出してD/Aコンバータ54から出力すると、該コントロール電圧が出力電圧V0の分圧値を示す抵抗34の検出電圧と差動増幅器35で比較され、その差に応じて第1のトランジス36を制御する。この制御では、コントロール電圧を負方向に大にしてその差を大にすると、第1のトランジスタ36のコレクタ電流が小になって第2のトランジスタ37のベース電流が大になり、その結果、出力電圧V0が増加する。逆に、コントロール電圧の絶対値を減少すると、出力電圧V0が減少する。繰り返し説明すると、前回の複写サイクルのコントロール電圧に応じた出力電圧V0が放電電極2aに出力されると、そのときの放電条件に応じた感光体ドラム電流IDが流れ、これが抵抗34の端子電圧値として制御ユニット5に読み込まれる。シーケンスコントローラ52の演算シーケンスによって、
ID>IDMAX(最大設定値) ・・・・・・・・・ (1)
ID<IDMIN(最小設定値) ・・・・・・・・・ (2)
の演算が演算回路53で行われ(IDMAX、IDMINはメモリ6から読み出される)、(1)が成立するとコントロール電圧を1レベルずつ低下させ、また、(2)が成立するとコントロール電圧を1レベルずつ上げることによって、
IDMIN<ID<IDMAX ・・・・・・・・・ (3)
が成立するように出力電圧V0を制御する。(3)が成立したとき、そのときのコントロール電圧がメモリ6に記憶され、現在の単位複写サイクルが終了するまで、この記憶されたコントロール電圧に応じた出力電圧V0によってコロナ放電が行われる。以上の実施例では、感光体ドラム電流IDを設定範囲に入れる制御量を演算記憶して出力電圧V0を制御したが、・・・できる。」(第2頁右上欄第19行〜第3頁左上欄末行)
d)第1図には、感光体ドラム1とシールド体2bの間において感光体ドラム1に近接して放電電極2aを設け、前記放電電極2aに流れる電流が感光体ドラム電流IDとシールド電流ISの和となるように前記放電電極2aに電圧を加えられ、前記シールド電流ISと、シールド電流ISおよび感光体ドラム電流IDの和が抵抗41とA/Dコンバータ51につながる導線の接続点に対して同じ方向に流れるように、前記接続点を前記放電電極2aと前記シールド体2bを含む回路に接続され、前記接続点から前記感光体ドラム電流IDに比例する信号を得て、さらに前記信号をA/Dコンバータ51にてデジタル変換した信号とメモリ6の基準値とを演算回路に入力し、その演算結果に応じた信号をD/Aコンバータ54でアナログ値として電源回路3に出力して前記放電電極2aに対する出力電圧V0の印加を制御すること、が示されているものと認められる。



以上の記載を対比のためにまとめると、
摘記事項a、bの記載によれば、複写機用コロナ放電制御装置は、感光体ドラム1の帯電部Aに電荷を制御しつつ付与するものであるし、その装置を用いた電荷の制御・付与方法について記載されていると言うことができる。また、これは電子写真における帯電方法を含むものであるから、引用文献1には次のような発明が記載されている。

「感光体ドラム1の帯電部Aとシールド体2bの間において感光体ドラム1に近接して放電電極2aを設け、感光体ドラム1の帯電部Aに電荷を制御しつつ付与する方法において、
A.前記放電電極2aに流れる電流が感光体ドラム電流IDとシールド電流ISの和となるように前記放電電極2aに電圧を加える工程と;
B.前記感光体ドラム1の帯電部Aの感光体ドラム電流IDに比例する電圧値のモニター信号を得る工程であって、
a)前記シールド電流ISと、シールド電流ISおよび感光体ドラム電流IDの和が抵抗41につながる導線と電源回路3内のシールド電流ISが流れる導線との接続点に対して異なる方向に流れるように、前記接続点を前記放電電極2aと前記シールド体2bを含む回路に接続する段階と、
b)前記接続点から前記感光体ドラム電流IDに比例する電圧値のモニター信号を得る段階と;
c)前記信号をA/Dコンバータ51にてデジタル変換した信号とメモリ6の基準値と比較する段階と;
d)前記比較し、その差に応じたコントロール信号を出力する演算回路53と、該信号をD/Aコンバータ54によりアナログ値であるコントロール電圧として出力し、その結果を用いて前記放電電極2aに対する出力電圧V0の印加を制御する段階と、を含む工程からなり;
C.放電電極2a間の距離の変動にかかわらず前記感光体ドラム電流IDを一定に保持するようにした電子写真における帯電方法。」

3.対比・判断
本願発明1を引用文献1記載の発明と対比すると、
引用文献1記載の発明の「感光体ドラム1の帯電部A」、「シールド体2b」、「放電電極2a」、「感光体ドラム電流ID」、「シールド電流IS」、「感光体ドラム電流IDに比例する電圧値のモニター信号」は、本願発明1の「光導電性面」、「シールド」、「電極」、「帯電電流」、「シールド電流」、「帯電電流に比例する信号」に相当する。
引用文献1記載の発明の「放電電極2a間の距離の変動」は、電極が光導電性面とシールドの間に所定間隔にて設けられているものであるから、本願発明1の「光導電性面と電極とシールドとの間の距離の変化」に相当する。
本願発明1の「電流加算ノード」と引用文献1記載の発明の「抵抗41につながる導線と電源回路3内のシールド電流ISが流れる導線との接続点」は、「接続点」の点で共通する。
引用文献1記載の発明の「感光体ドラム電流IDに比例する電圧値のモニター信号を得る」は、引用文献1記載の発明も、本願発明と同様、「接続点」にシールド電流ISが流れ込む構成となっているし、該接続点とアース間に抵抗41を通して流れる感光体ドラム電流IDにより「抵抗41」の両端間には感光体ドラム電流IDに比例する電気信号が発生していることから、本願発明1の「シールド電流を用いて光導電性面の帯電電流に比例する電気信号を得る」に相当する。
引用文献1記載の発明の「感光体ドラム電流IDに比例する電圧値のモニター信号をA/Dコンバータ51にてデジタル変換した信号とメモリ6の基準値と比較する」のうち、前記デジタル変換した信号は感光体ドラム電流IDに比例する信号と言い換えることができるから、本願発明1の「光導電性面帯電電流に比例する信号を電流指令入力信号と比較する」と引用文献1記載の発明の「感光体ドラム電流IDに比例する電圧値のモニター信号をA/Dコンバータ51にてデジタル変換した信号とメモリ6の基準値と比較する」は、「光導電性面帯電電流に比例する信号を所定信号と比較する」点で共通する。
引用文献1記載の発明の「比較し、その差に応じたコントロール信号を出力する演算回路53と、該信号をD/Aコンバータ54によりアナログ値であるコントロール電圧として出力し、その結果を用いて前記放電電極2aに対する出力電圧V0の印加を制御する」は、演算回路53で比較し出力された信号を最終的にD/Aコンバータ54によりアナログ値として出力するものであり、この出力は比較された結果と言い換えることができるから、本願発明1の「比較の結果を用いて電極に対する電圧の印加を制御する」に相当する。
以上のことから、両者間には次のような一致点、相違点がある。

[一致点]
「光導電性面とシールドの間において光導電性面に近接して電極を設け、光導電性面に電荷を制御しつつ付与する方法において、
A.前記電極に流れる電流が光導電性面の帯電電流とシールド電流の和となるように前記電極に電圧を加える工程と;
B.前記シールド電流を用いて前記光導電性面の帯電電流に比例する電気信号を得る工程であって、
a)前記シールド電流と、シールド電流および光導電性面帯電電流の和が接続点に対して異なる方向に流れるように、前記接続点を前記電極と前記シールドを含む回路に接続する段階と、
b)前記接続点から前記光導電性面帯電電流に比例する信号を得る段階と;
c)前記信号を所定信号と比較する段階と;
d)前記比較の結果を用いて前記電極に対する電圧の印加を制御する段階と、を含む工程からなり;
C.前記光導電性面と前記電極と前記シールドとの間の距離の変化にかかわらず前記光導電性面の帯電電流を一定に保持するようにしたことを特徴とする電子写真における帯電方法。」

[相違点]
(相違点1)
本願発明1は、「電流加算ノード」としているのに対して、引用文献1記載の発明は、「接続点」とする点。

(相違点2)
光導電性面帯電電流に比例する信号と比較する信号を、本願発明1は、単に「電流指令入力信号」とするのに対して、引用文献1記載の発明は、「メモリ6の基準値」とする点。

[相違点の検討]
(相違点1について)
引用文献1記載の発明の「接続点」は、本願発明1の「電流加算ノード」のようにシールド電流と帯電電流が流入し、それらの電流の和が流出する構成となっているし、この接続点は、抵抗41とA/Dコンバータ51につながる導線の接続点、つまり、帯電電流と比例する信号を得る接続点と同電位になっていることから、引用文献1の「接続点」は、本願発明1の「電流加算ノード」と実質的に異なるものではないし、本願発明の電流加算ノードが導線間を接続する接続点以上の作用効果を有しているものとも認められない。

(相違点2について)
本願発明1の電流指令入力信号と引用文献1記載の発明のメモリ6の基準値は共に、帯電電流に比例する信号と所定の比較手段に入力され、得られた結果により帯電電流を一定に制御するためのものである。そして、本願発明1は、単に「電流指令入力信号」と規定しているのみであって、外部から入力されるとか、内部メモリーから入力されるとかを規定しているわけではないから、引用文献1記載のメモリ6の基準値を電流指令入力信号とする程度のことは当業者が容易になし得たものである。

4.請求人の主張に対する当審の見解
請求人は、平成13年10月25日差出の、審判請求書を補正する手続補正書の第3頁第10〜25行において、「すなわち、端子82への電流指令入力(外部制御入力)により電子複写用帯電電流を直接制御し、これによって電子複写用帯電電流の急速かつ大量の制御を可能とすることが本願発明の特徴である。例えば、画像のコントラストは、端子82に接続したポテンショメータのつまみを回すことにより、直ちに制御できる。また、画像品質に影響を与える他の因子についても、端子82に加える外部制御信号により、速やかに補償することができる。・・・引用文献1(・・・)のものは、本願の上記補正後における請求項1及び2に記載されたような外部信号(電流指令)による制御を行うものではない。・・・すなわち、引用例は、本願の請求項1及び2に記載した、外部制御信号としての電流指令入力により、電子複写における帯電電流を迅速に制御するという機能をなんら教示しもしくは一片の示唆をも与えるものではない。」と主張している。
しかし、本願請求項1には、単に「電流指令入力信号」と記載されるのみで、その信号が外部から入力される信号であることやポテンショメータからの信号であることを特定する記載はなく、この主張は請求項の記載に基づかないものである。
よって、上記請求人の主張を認めることはできない。

5.むすび
以上のことから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項2についての判断を示すまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2004-04-22 
結審通知日 2004-05-18 
審決日 2004-05-31 
出願番号 特願平3-355374
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國田 正久竹村 真一郎  
特許庁審判長 石川 昇治
特許庁審判官 梅岡 信幸
伏見 隆夫
発明の名称 電子写真における帯電方法および装置  
復代理人 村田 紀子  
復代理人 ▲吉▼▲崎▼ 修司  
復代理人 武石 靖彦  

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