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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1112156
審判番号 不服2001-23044  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-25 
確定日 2005-02-16 
事件の表示 平成11年特許願第194890号「医療管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月15日出願公開、特開2000-348125〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年6月4日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年11月8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「患者毎に設けられ、血液型等の患者データが記憶された診察カードと、
前記記載された患者データを読み出して治療される複数の患者毎に、その治療に関連する治療情報を記憶する記憶手段と、
患者を識別する識別情報を入力する入力手段と、
前記入力された識別情報に基づいて、前記記憶手段から対応する治療情報を表示する表示手段とを備えた、医療管理装置。」

2.引用例
原審で拒絶の理由に引用した、伊東十三男,電子カルテの運用経験と今後の課題,医療とコンピュータ,株式会社日本電子出版,1998年11月20日,第9巻,第11号,p.8〜11(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

「亀田メディカルセンターでは、統合電子カルテシステムが稼働している。このシステムは、オーダーリング・システムや画像システム、症状/所見/評価等の従来、紙に手書きしていたカルテを電子カルテとしてシステム化しオーダーリング・システムや画像システムを含めてクライアント/サーバー・システムによって一元的に管理している。
患者の膨大な情報(メディアとしては、テキスト、画像、手書きイメージ等)全てをシステムに蓄積・共有し、必要に応じて即座に表示・参照することができ、以下のような患者を主体とした質の高い医療サービスを提供し得る可能性を飛躍的に拡大した。
まず、蓄積された診療情報は、診療プロセスとして医療行為を体系化し、一定水準以上の医療サービスの提供を可能にするほか、統計的に病気の治癒状況を把握することができるなど、高度医療環境を提供することができ、また、カルテ情報の電子化は、他の医師や看護婦・技師等がすべての患者情報を共有できることから、重複検査の排除や、複数の診療科を受診する患者への統合的な対応が可能となる。さらに、他医師がカルテを見ることで相互監査も行われ、より質の高い医療が提供される。
<統合電子カルテ・システム>の効果は院内に留まらない。標準的な電子カルテが普及してネットワーク化が実現すれば、患者(診療)情報を他施設でも共有して病院と診療所を結んだ病診連携や病院同士をつなぐ病診連携を推進することができ、また、膨大な医療情報や症例データベースによって、最新かつ最高の質の医療が提供できる可能性が高くなり、カルテ情報は1人の医師のものという情報の閉鎖性を<統合電子カルテ・システム>が破ったことにより、多様な可能性が広がった。
亀田メディカル・センターの中核となる診療系のシステムとして、電子カルテ・システム、オーダーリング・システム、画像システムがある。さらに、診察室の指示を受ける部門系のシステムとして、薬局部門/検査部門/放射線部門/給食部門等のシステムがあり、診察室の指示や部門の実施データに基づいて会計処理を行う医事会計システムがある。詳細は、[図1、2]を参照して頂きたい。
同センター内の約100室の診察室には、それぞれトークン・リングLAN(FDDIバックボーン)に接続されたパソコンが設置されている。
診療に当たる医師は、待ち患者を画面から選択し診察室に呼び入れ、過去の診療内容を電子カルテ・システムに呼び出して診察を開始する。電子カルテ画面には患者対応の標準パターンが表示されているので、該当項目をクリックしながらカルテを入力していく。
蓄積されたデータベースを活用するという観点から、コードと関連付けられたテキスト・データを入力することを運用の基本としているが、手書き入力用としてパソコンと接続された業務用Zaurus(シャープ製)を使用することも可能である。
その場合、あらかじめZaurusに登録してある各種の人体図に手書きでコメントを記載して、電子カルテにイメージ情報を付加することができ、また、過去の検査結果を時系列表示したり、レントゲン画像を表示して患者に示しながら病気の説明をすることも可能である。診断の結果、処方や検査あるいはレントゲン撮影の必要があれば、<オーダーリング・システム>によって使用しているパソコンから薬局、検査部門、放射線部門等に指示を出すことができる。そして、次回の来院日を患者と相談し、予約システムから日付や時刻を入力する。このように医師と患者のコミュニケーションのツールとしても使われている。<オーダーリング・システム>によって診察室から指示を受けた各部門の業務の流れは、次のとおりである。」(8頁左欄1行〜9頁左欄12行)
ここで、上記「統合電子カルテシステム」は、「診療情報」を「電子カルテ」として蓄積するものであり、また、「カルテ」は、治療される複数の患者毎に、作成されるものであるから、上記「統合電子カルテシステム」は、「治療される複数の患者毎に、その治療情報に関連する診療情報を記憶する記憶手段」を有することは、明らかである。
また、患者の膨大な情報全てをシステムに蓄積・共有し、必要に応じて即座に表示・参照することができるようになっていることからみて、システムに患者を識別する識別情報を入力することにより、記憶手段から対応する診療情報を表示できるようになっていることも、明らかである。
そうすると、上記引用例には、
「治療される複数の患者毎に、その治療に関連する診療情報を記憶する記憶手段と、
患者を識別する識別情報を入力する入力手段と、
前記入力された識別情報に基づいて、前記記憶手段から対応する診療情報を表示する表示手段とを備えた、統合電子カルテシステム。」
の発明が記載されているといえる。

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「前者」という。)と引用例に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、
後者の「診療情報」は、前者の「治療情報」に相当することが明らかである。
また、後者の「統合電子カルテシステム」は、医療を管理する機能を有することが明らかであるから、前者の「医療管理装置」に相当する。
そうすると、両者は、
「治療される複数の患者毎に、その治療に関連する治療情報を記憶する記憶手段と、
患者を識別する識別情報を入力する入力手段と、
前記入力された識別情報に基づいて、前記記憶手段から対応する治療情報を表示する表示手段とを備えた、医療管理装置。」
である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
前者は、「患者毎に設けられ、血液型等の患者データが記憶された診察カード」を備え、「前記記載された患者データを読み出して」治療される複数の患者毎に、その治療に関連する治療情報を記憶手段に記憶させるのに対して、後者は、そうでない点。

上記相違点について検討すると、
医療機関においては、医療管理に患者毎に設けられた診察カードを使用することは、普通に行われていることであり、また、カードに記憶されている患者データを読み込んで、そのデータをパソコン等の記憶装置に記憶させることは、周知の事項(例えば、特開平5-225212号公報、特開平6-149836号公報)であるから、後者のものにおいて、患者毎に設けられ、血液型等の患者データが記憶された診察カードを備え、前記記載された患者データを読み出して治療される複数の患者毎に、その治療に関連する治療情報を記憶手段に記憶させるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、本願の請求項1に係る発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

4.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-30 
結審通知日 2004-12-07 
審決日 2004-12-20 
出願番号 特願平11-194890
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 直也  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 久保田 健
須原 宏光
発明の名称 医療管理装置  
代理人 葛西 泰二  

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