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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1112225
審判番号 不服2002-3832  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-06 
確定日 2005-02-18 
事件の表示 平成11年特許願第327950号「成膜方法及び半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年5月25日出願公開、特開2001-144084〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年11月18日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明は、平成13年12月18日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】TMOS(Tetra-Methoxy-Silane)と、NO2、NO、CO,CO2又はH2Oのいずれかひとつの酸化性ガスとからなる反応ガスをプラズマ化し、反応させてシリコン酸化膜を被堆積基板上に形成する成膜方法。」

2.引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-69197号公報(以下「引用刊行物」という)には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は半導体装置の製造方法、特に半導体基体および金属配線の上の1次絶縁膜、多層金属配線間の層間絶縁膜およびパッシベーション膜として作用する最終絶縁膜や金属配線のサイドウォールまたは電界効果トランジスタのゲート電極のサイドウォールとして使用することができる絶縁膜を有機ケイ素化合物を原料ガスとして用いる化学気相成長により形成する方法に関するものである。」
(2b)「【0006】【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、有機シラン系化合物を原料ガスとするCVD法によって絶縁膜を形成する従来の半導体装置の製造方法においては、成膜速度や膜質の下地依存性が大きく、ステップカバレージが悪くなるとともにボイドが発生するという欠点がある。・・・・
【0009】 本発明の目的は上述した従来の絶縁膜形成方法の欠点を解消し、ステップカバレージおよび平坦性に優れており、特にサブミクロンデバイスの絶縁膜として使用するのに有効であるとともに優れた膜質を有し、クラックやボイドの発生もない絶縁膜の形成することができ、したがって信頼性の高い半導体装置を製造することができる方法を提供しようとするものである。」
(2c)「【0013】また、前記有機ケイ素化合物としては、例えば以下のようなものを用いることができる。テトラアルコキシシラン( オルトケイ酸エステル):テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラnプロポキシシラン、・・・。本発明においては、上述した有機ケイ素化合物を単独で用いるかあるいは2以上の有機ケイ素化合物を混合して用いることができる。混合して用いる場合の混合割合は適当に定めれば良い。また、気相化学成長法としては常圧熱CVD 法、減圧熱CVD 法、プラズマCVD 法、光CVD 法、オゾンCVD 法などを用いることができ、反応ガスとしては、酸素ガスやオゾンガスを0.1 〜7 重量%含む酸素ガスやオゾンガスを用いることができる。」
(2d)実施例として、「【0026】(実施例6) 図7Aに示すようにシリコン基板61の上に膜厚が6000ÅのBPSG膜62を形成し、さらにその上に高さ1μm のアルミ配線63をライン巾0.5 μm 、スペース巾0.5 μm で形成し、次に図7Bに示すようにBPSG膜およびアルミ配線の上にTMOSおよびO2を用いるプラズマCVD 法によって下層絶縁膜としてプラズマTMOS CVD NSG膜64を2000Åの厚さに形成した。このプラズマ-TMOS CVD NSG膜64の成膜条件は以下の通りとした。
【表10】成膜温度 400 ℃
圧力 0.35 Torr
成膜時間 120 秒
TMOSバブリングN2流量 400 ml/ 分
バブリング温度 25 ℃
O2ガス流量 400 ml/ 分
電極間隔 15 mm
RFパワー密度 2.0 W/cm2
【0027】次に、このようにしてプラズマTMOS CVD NSG膜64を形成したウエファを図2に示す反応装置に導入し、TMOSを有機シラン化合物の原料ガスとして用い、メタノールを下地依存性を軽減するための有機化合物ガスとする常圧CVD 法によって以下の成膜条件で上層絶縁膜として作用する常圧オゾン-TMOS CVD NSG膜65を6000Åの膜厚に形成した様子を図7Cに示す。
【表11】成膜温度 400 ℃
成膜圧力 大気圧
成膜時間 545 秒
第1ガスバブラへの窒素ガス流量 400 ml/ 分
第1恒温槽温度 65 ℃
第2ガスバブラへの窒素ガス流量 300 ml/ 分
第2恒温槽温度 25 ℃
オゾン濃度 5 重量%
キャリア窒素ガスの流量 18 リットル/ 分
このようにして形成した常圧オゾン-TMOS CVD NSG膜65はアルミ配線63間の狭いスペースを埋め、良好なステップカバレージを有しているとともに平坦性も優れており、ボイドも形成されていないものであった。」
(2e)実施例として、「【0030】(実施例8) 図8Aに示すようにシリコン基板71の上に膜厚が6000ÅのBPSG膜72を形成し、さらにその上に高さ1μm のアルミ配線73をライン巾0.5 μm 、スペース巾0.5 μm で形成し、このBPSG膜およびアルミ配線の上にTMOSおよびO2からプラズマCVD 法によって下層絶縁膜としてプラズマTMOS CVD NSG膜74を2000Åの厚さに形成した様子を図8Bに示す。このプラズマTMOS CVD NSG膜74の成膜条件は以下の通りとした。
【表14】成膜温度 400 ℃
圧力 0.35 Torr
成膜時間 120 秒
TMOSバブリングN2流量 400 ml/ 分
バブリング温度 25 ℃
O2ガス流量 400 ml/ 分
電極間隔 15 mm
RFパワー密度 2.0 W/cm2
キャリア窒素ガスの流量 18 リットル/ 分
【0031】次に、このようにしてプラズマTMOS CVD NSG膜16を形成したウエファを図2に示す反応装置に導入し、TMOSを有機シラン化合物原料ガスとして用い、メタノールを下地依存性を軽減するための有機化合物ガスとする減圧CVD 法によって以下の成膜条件で上層絶縁膜として減圧オゾン-TMOS CVD NSG膜75を6000Åの膜厚に形成した様子を図8Cに示す。・・・・・」が記載されている。

3.当審の判断
引用刊行物には、上記摘記事項(2d)(2e)によれば、実施例として、「シリコン基板の上に膜厚が6000ÅのBPSG膜を形成し、さらにその上に高さ1μm のアルミ配線をライン巾0.5 μm 、スペース巾0.5 μm で形成し、このBPSG膜およびアルミ配線の上にTMOSおよびO2からプラズマCVD 法によって下層絶縁膜としてプラズマTMOS CVD NSG膜を2000Åの厚さに形成したこと」(以下、「引用刊行物記載の発明」という)が記載されている。
そこで、本願発明と引用刊行物記載の発明とを対比する。引用刊行物記載の発明では、TMOSとO2とからなる反応ガスをプラズマ化し、反応させてシリコン酸化膜を形成しているから、両者は「TMOS(Tetra-Methoxy-Silane)と、酸化性ガスとからなる反応ガスをプラズマ化し、反応させてシリコン酸化膜を被堆積基板上に形成する成膜方法。」である点で一致するものの、用いる酸化性ガスが、本願発明では「NO2、NO、CO,CO2又はH2Oのいずれかひとつ」であるのに対し、引用刊行物記載の発明では「O2」である点で相違している。

そこで、上記相違点について検討する。
シリコン酸化膜を被堆積基板上に形成する際に、用いる酸化性ガスとして、NO2、NO、CO、CO2又はH2Oは、O2と同様周知のこと(必要ならば、特開平9-102491号公報の請求項1、特開平7-316823号公報の8欄【0041】参照)であるから、引用刊行物記載の発明において、酸化性ガスとして、NO2、NO、CO、CO2又はH2Oのいずれかひとつとすることは、当業者ならば容易に想到し得えたことである。
また、本願発明の効果は、引用刊行物の記載、および周知技術から予測し得る程度のものであって格別なものとは認められない。

なお、審判請求人は、請求の理由として「TMOSの酸化剤としてO2を用いると、TMOSとO2とがプラズマ中で簡単に気相反応を起こし、この結果、パーティクルがたくさん発生してしまう傾向があります。
これに対して、本願発明によれば、プラズマエネルギーはまずNO2、NO、CO、CO2又はH2Oを分解し活性酸素の発生に消費されます。この結果、余計な気相反応が抑制されてパーティクルの発生を防止しつつ、基板上あるいは基板近傍で酸化反応が起きて良質のシリコン酸化膜を形成することができます。
このように、・・・本願発明の成膜方法によれば、パーティクルの発生を抑えながら良質のシリコン膜を形成するという、従来技術には見られない格別の効果を奏します。」と主張しているが、そもそも本願明細書には、酸化性ガスとして、O2 、N2Oを用いた実施例があるのみで、本願発明でのNO2、NO、CO、CO2又はH2Oを用いた例が記載されていないばかりか、パーティクルの発生を防止できることなど、何処にも記載されておらず、上記主張を採用することはできない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-02 
結審通知日 2004-11-24 
審決日 2004-12-08 
出願番号 特願平11-327950
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正加藤 浩一  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
瀬良 聡機
発明の名称 成膜方法及び半導体装置  
代理人 岡本 啓三  
代理人 岡本 啓三  

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