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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01M
管理番号 1112252
審判番号 不服2001-18403  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-06-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-11 
確定日 2005-02-17 
事件の表示 平成 4年特許願第316926号「非水電解液電池」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 6月10日出願公開、特開平 6-163018〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成4年11月26日の出願であって、平成13年9月4日付けで拒絶査定がなされ、平成13年10月11日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたところ、これに対し、当審により、平成16年8月16日付けで拒絶理由が通知され、平成16年10月18日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願請求項1、2に係る発明は、平成13年11月12日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「外装缶内に収納され、正極と負極との間にセパレータを介して渦巻き状に捲回した電極体と、前記外装缶内に収容された非水電解液と、安全弁機構とを備えた非水電解液電池において、前記電極体の巻芯空間部に金属製パイプを配置し、かつ前記パイプは円形の開口部の面積が電池の放電容量(mAh)当り5×10-5cm2〜0.3cm2であると共に肉厚が0.1〜1mmであることを特徴とする非水電解液電池。」(以下、「本願発明1」という。)

3.当審の拒絶理由通知
当審において平成16年8月16日付けで通知した拒絶理由は、本願発明1は、特開平4-332481号公報(以下、「引用例1」という)に記載された発明であるか、引用例1及び特開平2-297860号公報に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項3号若しくは第29条第2項の規定によって特許を受けることができない、というものである。

4.引用例記載の事項
当審での拒絶の理由に引用した本願の出願日前に頒布された引用例1には、以下の事項が記載されている。
(a)「収納缶内に、負極と正極とがセパレータを介して渦巻き状に積層巻回されてなる巻回体と、該巻回体の中心空隙部に配設された中空筒状のセンターピンとを収納してなる非水電解液二次電池において、上記センターピンが金属より構成されていることを特徴とする非水電解液二次電池。」(【請求項1】)
(b)「上記金属よりなるセンターピンの形状は、電解液の溢れを防止するために中空筒状とされる。」(段落【0014】)
(c)「電池缶5の中にプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとの等容量混合溶媒中にLiPF6を1モル/lの割合で溶解した非水電解液を4.9mlを注入して、渦巻式電極に含浸させた。」(段落【0024】)
(d)「このようにして電解液を注入した後、図2に示す外径3.5mm、内径2.5mm、長さ40mmのステンレス(SUS304)製テーパー付き中空センターピン8を・・・完全に挿入した。」(段落【0025】)
(e)図1には、本発明の非水電解液二次電池の縦断面図が記載され、この縦断面図には電池缶5内の負極1、正極2及びセパレータ3を含む渦巻式電極と、電池蓋7の間に、渦巻式電極側と電池蓋側の空間を隔離する、正極リード12に接触する凸部を有する部材が記載されている。

5.対比・判断
引用例1の(a)には、「収納缶内に、負極と正極とがセパレータを介して渦巻き状に積層巻回されてなる巻回体と、該巻回体の中心空隙部に配設された中空筒状のセンターピンとを収納してなる非水電解液二次電池において、上記センターピンが金属より構成されていることを特徴とする非水電解液二次電池」と記載されているが、上記センターピンは、(d)によると、外径3.5mm、内径2.5mmのステンレス製中空センターピンであるから、「円形の開口部を有するパイプ」であることは明らかであり、肉厚は外径と内径の差の半分であることから0.5mmである。また、上記非水電解液二次電池は、(c)によると、電池缶内に非水電解液を有し、(e)によると、渦巻式電極(巻回体)と、電池蓋7の間に、渦巻式電極(巻回体)側と電池蓋側の空間を隔離する、正極リード12に接触する凸部を有する部材を有している。
以上の点を踏まえ、引用例1に記載された事項を、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、「収納缶内に収納され、正極と負極との間にセパレータを介して渦巻き状に積層巻回されてなる巻回体と、前記収納缶内に収容された非水電解液と、巻回体と、電池蓋7の間に、巻回体側と電池蓋側の空間を隔離する、正極リード12に接触する凸部を有する部材とを備えた非水電解液電池において、前記巻回体の中心空隙部に金属製パイプを配置し、かつ前記パイプは円形の開口部を有し、肉厚が0.5mmである非水電解液電池」の発明(以下、引用例1発明という。)が記載されていると云える。
そこで、本願発明1(「前者」という。)と引用例1発明(「後者」という。)とを対比する。
後者の「収納缶」、「積層巻回されてなる巻回体」、「巻回体の中心空隙部」は、それぞれ前者の「外装缶」、「捲回した電極体」、「電極体の巻芯空間部」に相当するから、両者は、「外装缶内に収納され、正極と負極との間にセパレータを介して渦巻き状に捲回した電極体と、前記外装缶内に収容された非水電解液とを備えた非水電解液電池において、前記電極体の巻芯空間部に金属製パイプを配置し、かつ前記パイプは円形の開口部を有し、肉厚が0.5mmである非水電解液電池」という点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本願発明1では、パイプの開口部の面積が電池の放電容量(mAh)当り5×10-5cm2〜0.3cm2であるのに対し、引用例1発明では、パイプの開口部の面積が電池の放電容量(mAh)当りで規定されていない点。
相違点2:本願発明1では、非水電解液電池は安全弁機構を備えているのに対し、引用例1発明では、安全弁機構を備えているとの直接的な規定がない点。
次に上記相違点について検討する。
相違点1について:本願発明1において、パイプの開口部の面積を電池の放電容量(mAh)当り5×10-5cm2〜0.3cm2とする理由は、明細書の段落【0013】の記載によれば、開口部の面積が電池の放電容量(mAh)当り5×10-5cm2未満であると、電池の内圧上昇時に発生したガスをパイプ内を通して安全弁機構側に移動させることができなくなり、開口部の面積が0.3cm2を超えると、電池の容量が低下するためというものである。
一方、引用例1の上記(b)によると、引用例1発明において、センターピン(パイプ)が中空であるのは、センターピン(パイプ)挿入時の電解液の溢れを防止するためであるが、パイプ挿入時、電解液の溢れを防止するには、パイプの中空部に電解液を収容できることが必要であるから、パイプの開口部の面積は、少なくともパイプの中空部に電解液を収容できる面積である。また、パイプの開口部の面積が大きくなると、外装缶内の内容物の減少等で電池の容量が低下するので、パイプの開口部の面積は、電池の容量が低下しない範囲を上限とすることは明らかである。
本願発明1と引用例1発明で、パイプの開口部の面積の規定理由について検討するに、本願発明1は、パイプの開口面積の下限の規定理由で引用例1発明と相違するにしても、上限の規定理由である電池の容量の低下という点では引用例1発明と一致している。
してみると、本願発明1のパイプの開口部の面積は、引用例1発明のパイプの開口部の面積と重複する部分を有しているとするのが相当であるから、相違点1は、実質的な相違点となるものではない。
相違点2について:本願発明1の段落【0003】、【0004】に従来の技術として記載されるように、非水電解液電池は、ガスの発生による電池の破裂を防ぐため、通常は、安全弁機構を備えているものである。しかも、当審において拒絶理由に引用した特開平2-297860号公報に記載の非水電解液電池でも、引用例1発明の「巻回体側と電池蓋側の空間を隔離する、正極リード12に接触する凸部を有する部材」と同様の部材を、「安全弁」と表記しているから(第1図)、引用例1発明の「巻回体側と電池蓋側の空間を隔離する、正極リード12に接触する凸部を有する部材」も「安全弁機構」に相当するものであることは明らかである。
してみると、引用例1発明も、安全弁機構を有していると云えるので、相違点2も、実質的な相違点となるものではない。
以上のとおり、本願発明1は引用例1発明と実質的に相違するところはないのであるから、本願発明1は、引用例1に記載された発明と云うべきである。

上記したように、相違点1は、実質的な相違点となるものではないが、仮に実質的な相違点であるとして、以下に検討する。
本願発明1において、上記相違点に係るパイプの開口部の面積を規定するのは、要は、電池の容量を低下させず、内圧上昇時に発生したガスをパイプ内を通して安全弁機構側に移動させるためであるが(段落【0013】)、上記したように引用例1発明においても、パイプの開口部の面積は、電池の容量を低下させない値を上限とするものである。そして、電池の放電容量と許容される開口部の面積との間には、放電容量の大きな電池ほど、パイプの開口部の上限の面積も大きくなるという、相関があることは明らかであるから、開口部の面積の上限値を電池の放電容量(mAh)当たり適宜設定して、本願発明1に規定される程度とすることは当業者が容易に想到し得たことと云うべきである。
また、引用例1発明における同面積の下限についても、電池内でガスが発生した場合は、パイプの中空部をガスが安全弁機構側に移動し、ガスの移動が妨げられて安全弁機構に到達しなければ電池が破裂してしまうことは明らかであるから、同面積の下限をガスの移動を妨げない程度とすることは当業者が容易に想到し得ることである。そして、非水電解液電池におけるガスは、電解液の分解によって生じるところ(本願明細書段落【0003】)、電解液の分解は電気化学的な反応で起こるのであるから、ガスの発生量と放電容量との間には相関があることは明らかである。さらに、ガスの発生量とガスを移動させるのに必要なパイプの中空部の面積の下限との間にも相関があることは明らかであるから、同面積の下限と放電容量との間には相関があると云える。
してみると、引用例1発明のパイプの開口部の面積の下限値を、電池の放電容量(mAh)当り適宜設定して、本願発明1に規定される程度とすることも当業者が容易に想到し得たことと云うべきである。
以上のとおり、本願発明1は、引用例1に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると云える。

6.むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項3号若しくは特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-15 
結審通知日 2004-12-21 
審決日 2005-01-06 
出願番号 特願平4-316926
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01M)
P 1 8・ 113- WZ (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 美知子植前 充司  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 原 賢一
吉水 純子
発明の名称 非水電解液電池  
代理人 中村 誠  
代理人 峰 隆司  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  
代理人 村松 貞男  
代理人 橋本 良郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  

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