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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1112267
審判番号 不服2002-23983  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-12 
確定日 2005-02-17 
事件の表示 平成8年特許願第270690号「面位置検出装置および方法、それを用いた露光方式、ならびにデバイス製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年5月6日出願公開、特開平10-116877〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯及び本願発明
本願は、平成8年10月14日の出願であって、平成14年11月6日付けで拒絶査定がなされ、平成14年12月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年1月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年1月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年1月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 複数の領域を有する基板を面位置検出手段に対してスキャンさせながら、前記面位置検出手段により前記領域内のスキャン方向における複数ポイントで面位置を検出する面位置検出装置において、
前記面位置検出手段は、前記スキャン方向に略垂直な方向における複数スポットでの面位置をそれぞれ計測するセンサを複数備えており、
前記面位置検出装置は、面位置検出のためのスキャンに先立ち、少なくとも前記基板のサイズおよび前記領域のサイズに基づいて、前記領域内のスキャン方向における複数ポイントごとに、それぞれの前記センサによる計測結果が面位置検出に有効であるか否かを判定する判定手段と、
前記領域内で面位置検出のためのスキャンを行いながら、前記領域内のスキャン方向における複数ポイントごとに、前記判定手段により有効であると判定された前記センサの計測結果に基づいて、前記基板の姿勢を順次算出する算出手段と、を具備することを特徴とする面位置検出装置。」と補正された。
上記補正は、補正前の構成要件である「面位置検出のためのスキャン」及び「スキャン方向」について、いずれも「領域内」に限定し、また、「スキャンの際」及び「チルト」を、それぞれ「スキャンを行いながら」及び「姿勢」に訂正するもので、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-283403号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の(a1)〜(a6)の事項が記載されている。
(a1)「【0006】従来の多点のフォーカス位置検出系において、露光光ELとは異なりウエハ53上のフォトレジストを感光させない照明光が、図示省略された照明光源から光ファイバ束60を介して導かれている。光ファイバ束60から射出された照明光は、集光レンズ61を経てパターン形成板62を照明する。パターン形成板62を透過した照明光は、レンズ63、ミラー64及び照射対物レンズ65を経てウエハ53の露光面に投影され、ウエハ53の露光面にはパターン形成板62上のパターンの像が光軸AX1に対して斜めに投影結像される。ウエハ53で反射された照明光は、集光対物レンズ66、回転方向振動板67及び結像レンズ68を経て受光器69に受光面に再投影され、受光器69の受光面には、パターン形成板62上のパターンの像が再結像される。この場合、主制御系58は加振装置70を介して回転方向振動板67に後述のような振動を与え、受光器69の多数の受光素子からの検出信号が信号処理装置71に供給され、信号処理装置71は、各検出信号を加振装置70の駆動信号で同期検波して得た多数のフォーカス信号を主制御系58に供給する。」(段落【0006】)
(a2)「【0011】このスリットスキャン露光方式の投影露光装置では、矩形状又は円弧状等の照明領域(以下、「スリット状の照明領域」という)に対してレチクル及びウエハを相対的に同期して走査しながら、そのレチクルのパターンがウエハ上に露光される。従って、前記スリット状の照明領域と共役な領域内で像が平均化され、ディストーション精度が向上するという利点があった。」(段落【0011】)
(a3)「【0047】図1のスリットスキャン方式の投影露光装置に、図20及び図21を参照して説明した従来方式の斜め入射型の多点フォーカス位置検出系を装着する。但し、本例の多点フォーカス位置検出系は、計測点の個数が従来例よりも多いと共に、計測点の配置が工夫されている。」(段落【0047】)
(a4)「【0049】図2(c)は、本例の多点フォーカス位置検出系の受光器69Aを示し、この受光器69A上に第1列目には9個の受光素子75-11〜75-19が配置され、第2列目〜第5列目にもそれぞれ9個の受光素子75-12〜75-59が配置されている。即ち、受光器69Aには、合計で45個の受光素子が配列されており、各受光素子上にはスリット状の絞り(図示省略)が配置されている。また、それら受光素子75-11〜75-59上にそれぞれ図2(a)の計測点AF11〜AF59に投影されたスリット状の開口パターンの像が再結像される。そして、ウエハ5の露光面で反射された光を、図20の回転方向振動板67に対応する振動板で回転振動することで、受光器69A上では再結像された各像の位置が絞りの幅方向であるRD方向に振動する。
【0050】各受光素子75-11〜75-59の検出信号が信号処理装置71Aに供給され、信号処置装置71Aではそれぞれの検出信号を回転振動周波数の信号で同期検波することにより、ウエハ上の各計測点AF11〜AF59のフォーカス位置に対応する45個のフォーカス信号を生成し、これら45個のフォーカス信号の内の所定のフォーカス信号より後述のように、ウエハの露光面の傾斜角(レベリング角)及び平均的なフォーカス位置を算出する。これら計測されたレベリング角及びフォーカス位置は図1の主制御系22Aに供給され、主制御系22Aは、その供給されたレベリング角及びフォーカス位置に基づいて駆動装置22B及びZレベリングステージ4を介してウエハ5のレベリング角及びフォーカス位置の設定を行う。」(段落【0049】〜【0050】)
(a5)「【0070】上述のように、本例ではウエハの各ショット領域への露光を行う際に、予備的な走査である助走スキャンを行う場合がある。そこで、その助走スキャン距離の設定方法について説明する。図8(a)は、ウエハ上のショット領域SA11の露光を終わってから、順次隣りのショット領域SA12及びSA13へレチクルのパターンを露光する場合の走査方法を示す。この図8(a)において、ウエハを-Y方向に走査して、ウエハ上のショット領域SA11への露光が終わってから、加減速期間TW1の間にウエハをX軸及びY軸に対して斜めに移動させて、次のショット領域SA12の下端の近傍を投影光学系の露光フィールドに配置する。最初のショット領域SA11への露光が終わってから、次のショット領域SA12の下端の近傍へ移動する間にY方向へ間隔ΔLの移動が行われる。また、その加減速期間TW1の終期において、ウエハのY方向への移動が開始される。
【0071】その後の制定(整定)期間TW2の間に、ウエハの走査速度がほぼV/βに達し、それに続く露光期間TW3の間にショット領域SA12へのレチクルのパターンの露光が行われる。この場合の、ウエハ側での加減速期間TW1、制定期間TW2及び露光期間TW3を図8(c)に示し、レチクル側での加減速期間TR1、制定期間TR2及び露光期間TR3を図8(b)に示す。なお、レチクル側では図8(a)のように隣りのショット領域へ移動する必要がないため、レチクル側のステージの移動はY軸に沿う往復運動である。また、ウエハ側では、図8(c)に示すように、加減速期間TW1から制定期間TW2へ移行する程度の時点tsから、多点フォーカス位置検出系によるフォーカス位置のサンプリングが開始される。」(段落【0070】〜【0071】)
(a6)「【0075】次に、本例のスリットスキャン露光方式の投影露光装置における、多点フォーカス位置検出系の計測点中のサンプル点の配置を検討する。先ず、図2(a)において、多点フォーカス位置検出系による計測点AF11〜AF59の内で、スリット状の露光フィールド24内の計測点AF31〜AF39のフォーカス位置の計測結果を用いる場合、即ち計測点AF31〜AF39をサンプル点とする場合には、従来のステッパーの場合と同様の「露光位置制御法」による制御が行われる。更に、本例のウエハのスキャンはY方向又は-Y方向へ行われるので、露光フィールド24に対して走査方向の手前に計測点中のサンプルを配置することで、先読み制御、時分割レベリング計測、及び計測値平均化等が可能になる。」(段落【0075】)
以上の(a1)〜(a6)の記載及び明細書に添付の図面から、刊行物1には、「複数のショット領域を有する基板を、多点フォーカス位置検出系に対してスキャンさせながら、多点フォーカス位置検出系により前記ショット領域の複数のフォーカス位置で面のフォーカス位置と傾斜角を検出する多点フォーカス位置検出系を有し、多点フォーカス位置検出系は複数のフォーカス位置を検出するセンサを複数備えている、基板のフォーカス位置と傾斜角を順次算出する多点フォーカス位置検出系。」についての発明が記載されているものと認められる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-196386号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(b1)「【0028】本実施例では、各スリット像を5つの部分に分割し、図2中に示す5つの計測点を選択している。スリット像をどのように配置し、各スリット像をどのように分割し、どの分割部分に計測点を選択し、さらに分割部分のどの位置に計測点を選択するかは、露光すべきパターン、1回に露光すべきチップ数およびその配列、露光前に既に形成されている段差等の条件に依存する。これらの条件は、すべて各投影露光工程前に既知であり、いわゆる変更可能な設計事項に関する。
【0029】以上のように構成された本発明の投影露光装置の動作を、以下に説明する。MCU30には、入力手段31を介して上位コンピュータ等から次の露光時のXYステージ21の目標位置、次の露光すべき領域の所望計測点位置等の情報が入力される。XYステージ21の現在位置、次の目標位置、および感光基板面上におけるアレイセンサ15の各受光セルの対応位置、すなわち多点AF系のパターン像上の高さ計測可能位置等の情報から、次の露光領域への移動中に、次の露光領域内の所望計測位置のうちどの計測点がパターン像を通過し、その結果移動中の測定が可能であるかを求める。
【0030】こうして、次の露光領域への移動中に計測可能である所望計測点については、XYステージ21が所定の位置に達したときの所定の受光セルの検波出力信号FSから高さ位置を移動中に求めることができる。また、次の露光領域への移動中にパターン像を通過せず、したがって移動中に計測不可能である所望計測点については、所望計測点がパターン像に十分近接した時点で計測を行う。換言すれば、パターン像を通過しない他の所望計測点については、所望計測点に十分近接した位置において移動中に計測を行う。
【0031】このように、露光開始前の設計事項および既知情報から、XYステージ21がどの位置に達したとき、どの受光セルの検波出力信号FSから露光領域内のどの位置の高さを計測することができるかを予め知ることができる。」(段落【0028】〜【0031】)
(b2)「【0041】また、ウェハWの最外周に位置する露光領域は、その一部が欠けていることがある。このような露光領域に対してレチクルパターンを転写するとき、当然ながら当該領域内で高さ位置を計測すべき計測点の数は減り得る。そこで、上記領域への移動前に多点AF系の複数の計測点の中から上記領域で使用する計測点を選択しておき、この選択された少なくとも1つの計測点と多点AF系の複数の計測点のいずれかとが一致し、もしくは近接したときに、その高さ位置を検出することが望ましい。」(段落【0041】)
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-164033号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。
(c1)「本発明はこの様な従来の問題点に鑑みてなされたもので、上述のように露光領域がウエハ外縁からはみ出て、一部が欠けたICパタ-ン領域を含む場合、あるいは、露光可能領域の一部について露光を行う場合でも、完全に全体が形成されるICパタ-ン領域あるいは実際に露光を行うICパタ-ン領域の水平位置を精度よく設定することができる投影露光装置を提供することを目的とするものである。」(2頁右上欄末行〜左下欄8行)
(c2)「[作用]
本発明においては、水平位置検出装置の検出領域の形状を変更するための視野絞りを設けたことにより、検出領域の形状を適宜変更することができるので、ウエハ外縁部の露光を行う際に露光領域が、一部が欠けるICパタ-ン領域を含む場合でも、完全に全体が形成されるICパタ-ン領域のみを含む領域の形状の水平位置検出領域を設定することにより、一部が欠けるICパタ-ン領域部分を検出領域から除外することができる。また、露光可能領域の一部のみについて実際に露光を行う場合には、実際に露光を行う領域のみに水平位置検出領域を設定することにより、実際には露光を行わない領域を検出領域から除外することができる。すなわち、水平位置の検出領域を、露光領域全体に設定することも、あるいは露光領域内の一部である一個ないし複数個のICパタ-ン領域に設定することも可能となるので、完全に全体が形成されるICパタ-ン領域の水平位置検出精度が向上する。
さらに具体的には、例えばウエハ中央部を露光する場合のように露光領域が完全にウエハ上にある場合には、検出領域を露光領域全体に設定し、ウエハ外縁部を露光する場合のように露光領域の一部がウエハ外縁からはみ出てしまう場合には、完全、にウエハ上にあるICパタ-ン投影領域に対応する形状の検出領域を設定することにより、つエバ外縁近辺の完全に全体が形成されるICパタ-ン領域の水平位置を精度よく検出することが可能となる。」(2頁左下欄14行〜3頁左上欄3行)
(c3)「次に、視野絞り(16)の選択動作について説明する。前記ステ-ジ(5)の位置は干渉計(41)によつて計測されており、その座標値が中央演算処理装置(42)に送られる。
中央演算処理装置(42)には、ウエハ(3)の径、ウエハ(3)上の焼付は領域の配列マツプ等の必要なデ-タが予め設定されており、該中央演算処理装置(42)は露光焼付けする領域のウエハ(3)上での位置等から、後述の如く視野絞り板(4)に設けられた形状の異なる複数の視野絞り(16)の中から適当な絞りを選択し、その情報を制御装置(43)に出力する。
制御装置(43)は、前記情報に基づいて駆動手段(44)に制御信号を出力し、該制御信号に基づいて該駆動手段(44)が視野絞り板(4)を回転させ、選択した視野絞り(16)を絞り位置に回転位置決めする。
次に、この視野絞り切換えの動作をさらに第2図、第3図を用いて詳細に説明する。
第2図はウエハ(3)上の露光領域の配置の一例を示す模式図である。図において、(Sl)〜(S8)は露光領域を示す。各露光領域内には、第2A図に示すように、例えば4つのIC素子(a)、(b)、(c)、(d)が形成されるものとする。また、第3図は視野絞り板(4)を示し、形状の異なる複数の視野絞り(16)を備えている。
上記の場合において、例えば露光領域が第2図に示す(S8)のように完全にウエハ(3)上に位置しているときには、水平位置検出装置の検出領域を斜線部分で示すように露光領域全体に一致するような正方形に設定すればよい。この場合には、第3図に示した視野絞り板(4)に設けられた異なる形状の複数の視野絞り(16)のうち、絞り(A1)を選択する。
次に、露光領域がウエハ(3)の外縁にかかり、露光領域の一部がウエハ(3)をはみ出る場合、すなわち例えば露光領域が第2図の(Sl)又は(Sl)の位置にある場合には、完全に全体が形成されるIC素子は斜線部分の領域内、すなわち第2A図の(b)、(c)に相当するものだけなので、検出領域もこの斜線部分に一致する形状に設定すればよい。この場合には、第3図の視野絞り板(4)の視野絞り(16)のうち、絞り(A5)を選択する。
同様にして、露光領域が(S4)又は(S5)の位置の場合には、第3図の視野絞り板(4)の絞り(A2)を選択する。」(4頁左上欄6行〜左下欄8行)

(3)本願補正発明と刊行物1に記載された発明との対比
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1の発明に係る「多点フォーカス位置検出系」、「ショット領域」、「フォーカス位置」は、本願補正発明に係る「面位置検出装置」、「領域」、「ポイント」に、それぞれ実質的に相当するから、両者は、「複数の領域を有する基板を面位置検出手段に対してスキャンさせながら、前記面位置検出手段により前記領域内のスキャン方向における複数ポイントで面位置を検出する面位置検出装置において、前記面位置検出手段は、前記スキャン方向に複数スポットでの面位置をそれぞれ計測するセンサを複数備え、前記基板の姿勢を順次算出する算出手段とを具備することを特徴とする面位置検出装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1;
本願補正発明では、面位置検出手段はスキャン方向に略垂直な方向における複数スポットでの面位置を計測するものであるが、刊行物1に係る発明では、面位置検出手段が複数スポットでの面位置を計測するものの、スキャン方向との位置関係については記載がない点。
相違点2;
本願補正発明では、面位置検出のためのスキャンに先立ち、少なくとも基板のサイズおよび領域のサイズに基づいて、前記領域内のスキャン方向における複数ポイントごとに、それぞれのセンサによる計測結果が面位置検出に有効であるか否かを判定する判定手段を有し、領域内で面位置検出のためのスキャンを行いながら、前記領域内のスキャン方向における複数ポイントごとに、前記判定手段により有効であると判定された前記センサの計測結果に基づいて、基板の姿勢を順次算出する算出手段を具備するものであるのに対し、刊行物1に係る発明は、面位置検出手段により基板の姿勢を順次算出する算出手段を具備しているが、判定手段については記載されていない点。

(4)当審の判断
相違点1について;
刊行物1の図3及び図12並びに当該図面に対応する明細書の記載を参照すれば、刊行物1に記載の発明のものも、面位置検出手段はスキャン方向に略垂直な方向における複数スポットでの面位置を計測するものと認められるから、両者は実質的な差異はないものである。
相違点2について;
刊行物2及び3の上記摘記箇所の記載を参酌すれば、刊行物2及び3には、面位置検出に先立ち、基板のサイズ及び領域サイズに基づいて、一部が欠如した領域における無効な計測スポットを判定し、実際の露光に際して、無効となる計測スポットは面位置検出手段の対象としないことが示唆されているものである。してみれば、刊行物2及び3のものは露光方式が本願補正発明のものと相違するとはいえ、無効な計測スポットを予め判定し、それを面位置検出手段の対象とはしない点では共通するものであるから、刊行物2又は3に記載のそのような術思想を本願補正発明でいうスキャンタイプの露光装置に適用し、本願補正発明に係る相違点2の構成とすることは、当業者であれば、容易に想到することができたものである。

そして、本願補正発明の作用効果も上記刊行物1乃至3から当業者が予測できる範囲のものでる。

したがって、本願補正発明は刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年1月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年10月17日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)。
「複数の領域を有する基板を面位置検出手段に対してスキャンさせながら、前記面位置検出手段により前記領域内のスキャン方向における複数ポイントで面位置を検出する面位置検出装置において、
前記面位置検出手段は、前記スキャン方向に略垂直な方向における複数スポットでの面位置をそれぞれ計測するセンサを複数備えており、
前記面位置検出装置は、面位置検出のためのスキャンに先立ち、少なくとも前記基板のサイズおよび前記領域のサイズに基づいて、前記スキャン方向における複数ポイントごとに、それぞれの前記センサによる計測結果が面位置検出に有効であるか否かを判定する判定手段と、
前記面位置検出のためのスキャンの際、前記スキャン方向における複数ポイントごとに、前記判定手段により有効であると判定された前記センサの計測結果に基づいて、前記基板のチルトを順次算出する算出手段と、を具備することを特徴とする面位置検出装置。」

(2)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1乃至3の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で認定した本願補正発明に係る構成要件である「領域内で面位置検出のためのスキャン」及び「領域内のスキャン方向」について、「領域内」の限定を省き、また、本願補正発明に係る「スキャンを行いながら」及び「姿勢」を、それぞれ「スキャンの際」及び「チルト」とするものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、上記刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-14 
結審通知日 2004-12-21 
審決日 2005-01-05 
出願番号 特願平8-270690
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 重雄南 宏輔  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 青木 和夫
辻 徹二
発明の名称 面位置検出装置および方法、それを用いた露光方式、ならびにデバイス製造方法  
代理人 西山 恵三  
代理人 内尾 裕一  

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