ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1112380 |
審判番号 | 不服2002-13840 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-06-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-20 |
確定日 | 2005-02-23 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第340394号「色画像補正方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月23日出願公開、特開平 7-160871〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成5年12月9日付けの出願であって、その請求項1〜19に係る発明は、平成13年7月23日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜19に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項6】それぞれ予め設定された入力装置の再現色領域と出力装置の再現色領域とを比較して、その各色領域を抽出し、 該抽出色領域から知覚色空間への変換、あるいは知覚色空間から抽出色領域への変換の少なくともいずれか一の変換にファジィ処理を用いたことを特徴とする色画像補正方法。」 2.引用刊行物 (引用例1) 原審の拒絶の理由で引用した特開平4-217167号公報(平成4年8月7日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の各記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】出力装置の色空間上での色再現領域を記憶する色再現領域記憶手段と、入力カラー画像信号が該色再現領域記憶手段での記憶色再現領域内か否かに応じて少なくとも2種類の方法のうちの1つを選択して出力カラー画像信号に変換する変換手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。 【請求項2】前記変換手段のうち少なくとも1つは出力装置の色再現領域外についても階調を持つ様に色空間上の圧縮を行う変換処理であることを特徴とする請求項1記載のカラー画像処理装置。 【請求項3】前記変換手段のうち少なくとも1つは出力装置の色再現領域内について画像原稿と出力画像の測色的等色を行う変換処理であることを特徴とする請求項1記載のカラー画像処理装置。 【請求項4】前記変換手段のうち少なくとも1つは出力装置の色再現領域内について画像原稿の色空間領域を広げて出力画像の再現色とすべく、色空間上の拡大を行う変換処理であることを特徴とする請求項1記載のカラー画像処理装置。 」(第2頁左欄の特許請求の範囲) (イ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は入力カラー画像信号を出力カラー画像信号に変換して変換色信号を処理する出力装置に出力するカラー画像処理装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来のカラー画像複写装置では、図4に示す様に、画像読取り装置401により読取られた加色法によるR,G,Bのデジタル画像信号を、対数変換回路402、マスキング回路403、墨入れUCR回路404により減色法によるカラー画像信号に変換して、画像出力装置405によりトナーまたはインクで印刷記録されるよう構成されていた。 【0003】一般に、カラー画像原稿である印刷物や写真、CRT上で表わされる画像のもつ色は、色空間座標系で画像出力装置のトナーまたはインクの混色による色再現領域によりも広い。入力カラー画像信号の全ての色についても最適な色再現を実現するために、通常、色空間上での圧縮が行われ、色再現領域外の色に対しても階調性を持たせる処理を行つている。 【0004】図5は従来の上記色空間(a-b軸上)での圧縮写像を表わした図であり、図中実線で囲まれた領域はカラー画像原稿の色空間領域、実線内側の点線は画像出力装置の色再現領域を示しており、入力カラー画像原稿が画像出力装置の色再現範囲を越えている事を表わしている。従来、矢印の様に色再現領域外の色再現は色再現領域に投影される。一方、それに伴つて、順次画像の階調性を持たせる為に、矢印の様に少しずつ、本来の色とずらして再現されていた。即ち、色空間の圧縮写像が行われていた。」(段落【0001】〜【0004】参照。) (ウ)「【0005】 【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、上記従来例では、カラー画像原稿の色空間分布が、画像出力装置色再現領域内に存在し、原稿色と同色が再現可能にもかかわらず、圧縮写像された再現色となり、原稿色と異なるという欠点があつた。また、カラー画像原稿が複写装置、画像出力装置による出力画像である場合(孫コピー、あるいはジエネレーシヨンコピーと呼ぶ)、さらに圧縮された再現色となる。この様に孫コピーを繰り返すと次々に再現色は圧縮され、元の画像原稿と異なるという欠点があつた。この再現色の軌跡を示したのが図5の矢印である。 【0006】さらには、カラー画像原稿の色空間分布が画像出力装置色再現領域内に存在し、かつ、空間上小領域内で階調表現する原稿画像、例えば地図上の山や海域のグラデーシヨンによる等高線表示などは圧縮再現によつて階調がなくなるという欠点があつた。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は上述の課題を解決することを目的として成されたもので、上述の課題を解決する一手段として以下の構成を備える。即ち、出力装置の色空間上での色再現領域を記憶する色再現領域記憶手段と、入力カラー画像信号が該色再現領域記憶手段での記憶色再現領域内か否かに応じて少なくとも2種類の方法のうちの1つを選択して出力カラー画像信号に変換する変換手段とを備える。 【0008】そして、例えば、変換手段のうち少なくとも1つは出力装置の色再現領域外についても階調を持つ様に色空間上の圧縮を行う変換処理であり、また、変換手段のうち少なくとも1つは出力装置の色再現領域内について画像原稿と出力画像の測色的等色を行う変換処理である。更に、変換手段のうち少なくとも1つは出力装置の色再現領域内について画像原稿の色空間領域を広げて出力画像の再現色とすべく、色空間上の拡大を行う変換処理である。 【0009】 【作用】上の構成において、カラー画像原稿の色再現処理系の構成として、従来の色空間圧縮写像再現に加えて、画像出力装置の色再現領域内についてのみカラー画像原稿と等色な色再現をする色再現処理系を設けることにより、原稿読取りの際に、原稿の色空間座標系での色の広がりに応じ、処理系を選択することができ、原稿に応じて最適な色再現を実現することができる。」(段落【0005】〜【0009】参照。) (エ)「【0010】 【実施例】以下、図面を参照して、本発明に係る一実施例を詳細に説明する。 図1は本発明に係る一実施例である複写装置の構成を表わすブロツク図である。本複写装置は、図1に示すように、カラー画像の入力部である画像入力装置101、画像入力装置101によつて読み取られた画像入力信号を画像出力信号に変換する画像処理装置102、画像処理装置102によつて変換された画像出力信号を受けて複数色のトナーまたはインクによ対応する永久可視表示を行う画像出力装置103の3構成から成る。 【0011】画像処理装置102で処理される画像信号は、画像入力装置101で読み取られたカラー画像原稿や印刷物に限定されるものではなく、CG(コンピユータグラフイツク)画像や、電子スチールカメラによる撮像画像についても同様に扱うことができる。また、画像処理装置102は色座標判別回路110、濃度変換テーブル111、濃度変換回路112、マスキング回路113及び、切換回路114より構成されている。次に、図2を参照してカラー画像が印刷物原稿の場合と、CG画像の場合について本実施例画像入力装置101の概略を説明する。 【0012】まずカラー画像原稿が印刷物の場合を説明する。図2に示す原稿台ガラス201上に載置された原稿202は、原稿照明用ハロゲンランプ203で照明され、ロツドレンズアレー204(例えばセルフオツク(登録商標))により、CCDラインセンサ205上に結像される。CCDラインセンサ205には、赤(R),緑(G),青(B)の色分解フイルタが点順次で塗布されており、原稿画像のR,G,B色分解信号を順次出力する。 【0013】206はサンプルホールド回路であり、CCDラインセンサ205よりの出力を画素毎にサンプルホールドし、A/D変換回路207でデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された画像データは、図示しない、あらかじめ記憶されたホワイトデータと共に、シエーデイング回路208に入力され、CCD画素間の感度バラツキによる出力ムラを補正し、所定のビツト数に規格化する。入力マスキング回路209はシエーデイング回路208からのR,G,B出力信号に、前もつて決定されたマトリクスで演算し、NTSC規格に規格化された画像信号R′,G′,B′を出力する。 【0014】 ┌R′┐ ┌a11 a12 a13┐┌R┐ │G′│=│a21 a22 a23││G│ └B′┘ └a31 a32 a33┘└B┘ マトリクス係数aijは、例えば最小二乗法により最適解が決定される。次に、カラー原稿画像がCGによるカラー画像の場合、コンピユータ210から出力されるR,G,Bビデオ信号は、インターフエース211を介して入力マスキング回路209へ入力する。ビデオ信号がNTSC規格に準ずるならば、入力マスキング回路マトリクス係数はスルー、即ち、 aij=┌1 (i=j) └0 (i≠j) で、後の画像処理回路102へ出力する。次に、以下、デイジタルR,G,B入力信号を複数色のトナーまたはインク出力信号に変換する画像処理装置102の詳細を説明する。 【0015】画像処理装置102へ入力されたR,G,B画像信号は、色座標判定回路110と、後述の濃度変換回路112及び濃度変換テーブル111への入力との2系統に分かれる。色座標判定回路110は、カラー画像原稿の色空間上の分布が画像出力装置103の色再現領域内に含まれるか、色再現領域を越えるかを、以下説明する方法により判定する。 【0016】色座標判定回路110に入力したR,G,B画像信号は、XYZ表色系の3刺激値X,Y,Zに変換される。RGB信号がNTSC方式に準ずる時、変換式は次の式で表わされる。 ┌X┐ ┌ 0.6067 0.1736 0.2001 ┐┌R┐ │Y│=│ 0.2988 0.5178 0.1144 ││G│ └Z┘ └ 0.0 0.0661 1.1150 ┘└B┘ …(1) X,Y,Zの3刺激値に変換された画像信号は次にL* a* b* 表色系のL* a* b* に変換される。 【0017】 ┌L* =116 (Y/Y0)-16 │a* =504.3[(X/X0)1/3-(Y/Y0)1/3]…(2) └b* =201.7[(Y/Y0)1/3-(Z/Z0)1/3] (X0 ,Y0 ,Z0 =const) 図3にL* a* b* 表色系での様子を示す。図中の六面体は、先に述べた画像出力装置103の色再現領域を示し、画像信号がこの六面体内部に存在する時、画像出力装置は色再現可能である。 【0018】(2)式によつてL* a* b* 座標に変換された画像信号は、各画素について色再現領域か否かを以下の方法によつて判定される。 六面体の各平面の方程式は、 kL* +la* +mb* +n=0 (k,l,m,n=const ) で表わされる。 【0019】よつて、六面体内部は、画像信号(L* ,a* ,b* )が kiL* +lia* +mib* +ni≧0 i=1〜6 を各面について満たしていることが条件となる。このようにしてカラー画像原稿の全面あるいは一部分につき、以上の判定を画素単位で行い色再現領域内に存在する画素の画素数を累積していく。 【0020】所定の領域につき以上の処理が終了すると、累積値を所定の閾値と比較し、例えば原稿画像の95%以上が色再現領域内に存在する時、カラー画像原稿の色空間分布は色再現領域内に存在するものと判定し、1ビツトの判定信号を出力する。例えば、カラー画像原稿が本複写装置の出力画像である時(以下、これを「ジエネレーシヨンコピー」、又は「孫コピー」と呼ぶ)、全ての画像データは色再現領域内に存在し、色座標判定回路110は必ず色再現領域内と判定する。画像処理装置102へ入力されたR,G,B画像信号のうちの分岐した他の1系統は、さらに、2系統に分岐し、1系統は、濃度変換回路112とマスキング回路113により、図4に示した従来技術で述べた対数変換回路402とマスキング回路403の処理と同様の処理が行われる。 【0021】即ち、カラー画像原稿の色空間を画像出力装置103の色再現領域より大きく取り、色空間を圧縮して再現し、色再現領域以外の色座標についても階調性のある画像を出力する処理が行われる。一方、画像信号は上記の色処理と同時に濃度変換テーブル105へも入力されている。濃度変換テーブル105は、R,G,B画像信号を入力とし、Y,M,C,K出力信号を出力値とする変換テーブルである。 【0022】以下、簡単に濃度変換テーブル105の作成方法を説明する。今、あるY,M,C,K出力信号の組(y,m,c,k)が画像出力装置103によつて印刷記録される場合の再現色は、L* a* b* 座標において(l* ,a* ,b* )であるということが予め既知であるとする。 【0023】一方、R,G,B画像読取り信号は式(1),(2)よりL* a* b* 座標が計算できる。よつて、R,G,B画像読取り信号は、L* a* b* 座標を介して測色的にYMCK出力信号と対応ずけることができる。ところで、一般にYMCK4色により印刷記録される画像記録装置においては、ある1つの出力信号(Y1 M1 C1 K1 )と、他の出力信号(Y2 M2 C2 K2 )で印刷される再現色が測色的に等色する場合がある。 【0024】これは、Y,M,C3色の混色による黒とKによる黒とが等色するからであり、1つの混色色座標(l* a* b* )に対してそれぞれ異なるY,M,C,K出力値が存在することを表わしている。本テーブルでは、互いに等色な複数組のY,M,C,K出力値の内、K信号の最も大きい組合せを出力値とする。これはUCR(下色除去)の効果を上げるためである。 【0025】以上の様に作成された変換テーブルは、色再現領域内において、カラー画像原稿と等色な色再現が可能である。この様にそれぞれの系統で変換された画像処理装置出力信号(Y1 ,M1 ,C1 ,K1 )及び(Y2 ,M2 ,C2 ,K2 )は、先の色座標判定回路110の判定結果に基づいて、カラー画像原稿が色再現領域を越えている時は圧縮された色空間による色再現処理による出力信号(Y1 ,M1 ,C1 ,K1 )を、又、カラー画像原稿が色再現領域内にある時、等色な色再現処理による出力信号(Y2 ,M2 ,C2 ,K2 )がセレクタ106によつて選択され、画像出力装置103へと出力される。 【0026】画像出力装置103では、この画像出力信号(Y,M,C,K)を、PWM法、デイザ法、誤差拡散法等それぞれの方式に合わせて印刷記録する。」(段落【0009】〜【0026】参照。) (オ)「<実施例3> 上述の第1実施例では、色座標判定回路110の色空間をL* a* b* 均等色座標を用いて表す例について説明したが、色座標判定回路110の色空間をLuv表色系、XYZ表色系、またはRGB信号系によつて張られる画像出力装置の色再現領域を用いて表しても同様の効果を得られる。」(第4頁右欄第21〜26行) (カ)「<実施例8> 上述した第1の実施例では、色空間色座標判定回路110の判定に画像出力装置の色再現領域内か否かによつて判定を行つていたが、他に色空間上を微小色空間ブロツクに分割し、原稿画像がどの微小色空間ブロツクに存在するかを各ブロツク毎に累積し、原稿画像の色が存在するブロツクの数及びブロツクの色空間上の座標を判定することにより、原稿画像の色空間分布が判定することも可能である。」(第5頁左欄第13〜17行) 以上の記載から見て、引用例1には、次のような発明が記載されているものと認められる。 「使用する画像入力装置101の色再現領域と画像出力装置の色再現領域とが相異なっており、しかも両装置の色再現領域が予め制限されているカラー画像処理であって、画像入力装置101からの画像出力信号であるRGBカラー画像信号は、先ず画像処理装置102の色座標判定回路110へ入力され、ここでXYZ表色系の3刺激値X,Y,Zに変換され、更に3刺激値X,Y,ZからL*a*b*表色系のL*a*b*画像信号へと変換され、そしてこの色座標判定回路110は、該カラー原稿画像信号に一対一に対応するL*a*b*画像信号が、画像出力装置103の色再現領域に含まれるか否かを判定し、該カラー原稿画像信号が色再現領域内と判定された場合には、このL*a*b*画像信号に対し、濃度変換テーブル111により等色な色再現処理を行って、出力画像信号Y2,M2,C2,K2に変換し、等色な色再現処理により得られた該画像出力信号(Y2 ,M2 ,C2 ,K2 )を画像出力装置103へ出力し、一方、カラー原稿画像信号が色再現領域を越えて色再現領域外と判定された場合には、濃度変換回路112とマスキングテーブル113により画像入力装置101の色空間を圧縮して色再現処理を行い、L*a*b*画像信号を出力画像信号Y1 ,M1 ,C1 ,K1に変換し、この画像出力信号(Y1 ,M1 ,C1 ,K1 )を画像出力装置103へと出力し、画像出力装置103は、等色な色再現処理又は圧縮色再現処理を施された画像出力信号(Y,M,C,K)を、印刷記録するカラー画像処理装置。」 (引用例2) 原審の拒絶の理由で引用した特開平4-323957号公報(平成4年11月13日出願公開。以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の各記載がある。 (2のア)「【請求項1】補正処理対象領域に対して定められたメンバーシップ関数に基づいて、入力されたカラー画像信号のその補正対象領域に対するメンバーシップ値を求め、このメンバーシップ値に基づいて前記カラー画像信号に対する補正量を決定し、この補正量により前記カラー画像信号を補正する構成としたカラー画像処理方法であって、カラー画像画面において補正したい所望の領域内の画素を指定し、この指定画素の周辺に位置し且つこの指定画素の色に近い色を有する画素が形成する領域を前記補正処理対象領域として決定するとともに、前記補正対象領域に属する画素が有する色の属性の実際の値に基づいて前記メンバーシップ関数を定めることを特徴とするカラー画像処理方法。 【請求項2】補正対象領域に属する画素が有する色の属性値の最大値、中間値、最小値に基づいてメンバーシップ関数を決定することを特徴とする請求項1に記載のカラー画像処理方法。 【請求項3】補正処理対象領域に対して定められたメンバーシップ関数に基づいて、入力されたカラー画像信号のその補正対象領域に対するメンバーシップ値を求め、このメンバーシップ値に基づいて前記カラー画像信号に対する補正量を決定し、この補正量により前記カラー画像信号を補正する構成としたカラー画像処理方法であって、カラー画像画面において補正したい所望の領域内の画素を複数個指定し、これらの画素が有する色の属性の実際の値に基づいて前記メンバーシップ関数を定めることを特徴とするカラー画像処理方法。 【請求項4】指定した複数個の画素が有する色の属性値の最大値、中間値、最小値に基づいてメンバーシップ関数を決定することを特徴とする請求項3に記載のカラー画像処理方法。」(第2頁特許請求の範囲参照。) (2のイ)「【0002】 【従来の技術】たとえば、カラー複写機において、入力されたカラー原画を忠実に複写するのではなく、原画を基に、肌色の美しいカラーコピー画を得たい場合がある。出願人は、このような画像処理に関し、特願平2-193542号として出願した。この出願における画像処理は、ファジィ推論を利用するものである。たとえば、美しい肌色を得たい場合、所定の肌色領域に対して、肌色に適合する程度を示すメンバーシップ関数を予め定義しておき、このメンバーシップ関数を利用してファジィ推論を行い、美しい肌色を得るための色補正量を決定していた。」(段落【0002】参照。) (2のウ)「【0004】 【課題を解決するための手段】本発明においては、処理対象となるカラー画像画面において、補正したい所望の領域(例えば、肌色領域)内の画素を指定し、この指定画素の周辺に位置し且つこの指定画素の色に近い色を有する画素が形成する領域を補正処理対象領域として決定するとともに、この補正対象領域に属する画素が有する色の属性(明度、彩度、色相)の実際の値に基づいて、各属性毎にメンバーシップ関数を定める構成とする。そして、メンバーシップ関数は、補正対象領域に属する画素が有する色の属性値の最大値、中間値、最小値に基づいて決定する。 【0005】更に、処理対象となるカラー画像画面において、補正したい所望の領域(例えば、肌色領域)内の画素を複数個指定し、これらの画素が有する色の属性(明度、彩度、色相)の実際の値に基づいて、各属性毎にメンバーシップ関数を定める構成とする。そして、メンバーシップ関数は、これらの画素が有する色の属性値の最大値、中間値、最小値に基づいて決定する。 【0006】 【作用】上記構成によれば、処理対象となる個々のカラー画像画面について、補正対象領域が決定され、この補正対象領域に対するメンバーシップ関数が決定されるので、標準的な光源の下で撮影されていないカラー画像画面、ホワイトバランスがずれたビデオカメラで撮影した画像画面に対しても、的確な色補正ができる。 【0007】特に、補正したい所望の領域(例えば、顔の部分の肌色領域)内の画素を指定し、この指定画素の周辺に位置し且つこの指定画素の色に近い色を有する画素が形成する領域を補正処理対象領域とする構成とした場合は、補正対象領域をXY座標等の位置情報にて特定できるので、顔の部分の肌色に対してのみを補正が行われ、その他の部分の肌色については、何等補正が行われない。」(段落【0004】〜【0007】参照。) (2のエ)「【0009】この実施例はカラービデオプリンタの例である。先づ、入力されたカラー画像信号(RGB信号)をはCIE(国際照明委員会)が定めた図8に示すような色空間L(明度)、Cab(彩度)Hab(色相)極座標系カラー画像信号に変換される。次に変換されたL、Cab、Hab信号データは、肌色領域にあるか否かが判断される。この判断方法については、後述する。肌色領域にあると判断された画素に対して、好ましい肌色を得るためのファジィ画像処理により補正を行う。これ以外の画素に対しては、ファジィ画像処理を行わない。ファジィ画像処理された信号は、印刷に適したYMCカラー信号に変換され、この信号によりプリントが行われる。」(段落【0009】参照。) (2のオ)「【0011】メンバーシップ関数は、処理対象となる個々の画像に対して次のようにして決定する。ここで、処理対象画像は、人の顔が写っている画像とする。先づ、ブラウン管上に写し出された画面に対して、マウス等を利用して顔の肌色部分の1点を指定する。そして、この指定した画素の色空間座標をL1*、a1*、b1*として(図8参照)、隣接する画素の色空間座標をL2*、a2*、b2*としたとき、次の式を満足するか否かを判定し、満足すれば更に隣接する画素について判定する形で領域を拡張し、下記式を満足する画素が形成する領域を補正対象領域とする。 【0012】 【数1】 (L1*-L2*)2+(a1*-a2*)2+(b1*-b2*)2 <k 【0013】 この式において、kは閾値定数であり、実施例では10としたが、使用者が任意に指定できるようにすれば、より汎用性のある画像補正処理ができる。更に、補正対象領域を決定する場合、色の明度、彩度、色相の値を利用せずに、RGBの値を利用しても良い。 【0014】上記の方法は、補正対象領域は画素の位置情報として特定した訳であるが、ブラウン管上に写し出された画面に対して、マウス等を利用して顔の肌色部分の複数の個所を指摘して、明度L、彩度Cab、色相Habの値を求め、次に明度L、彩度Cab、色相Habについてそれぞれ最大値、最小値を求め、これらの値に基づいて補正対象領域を決定しても良い。この場合、指定した個所の値としてその1点の値を採用せずに、その周辺の値の平均値を指定点の値をしても良い。 【0015】この補正対象領域の色に対して、ファジィ画像処理ルールの条件部メンバーシップ関数を以下の通り、決定する。 【0016】先づ、前記補正対象領域に属する画素の明度L、彩度Cab、色相Habについてそれぞれ最大値、最小値、中間値を求める。 【0017】人の顔が撮影した画面の顔の部分について、複数個所を指定して明度L、彩度Cab、色相Habを求めて補正対象領域を決定する場合について、実際に値を求めたところ、Llarge=64、Lmiddle=37、Lsmall=10、Cablarge=25、Cabmiddle=20、Cabsmall=15、Hablarge=126、Habmiddle=90、Habsmall=54となった。この実施例では中間値は実際の測定値ではなく、最大値と最小値の平均値とした。 【0018】これらの値の基づいて決定されたメンバーシップ関数が、図2、図3、図4に示されている。 【0019】例えば、色相Habについて説明すると、メンバーシップ関数Habsは、始点をHabsmall-(Habmiddle-Habsmall)(18)、頂点をHabsmall(54)、終点をHabmiddle(90)とする三角形となる。同様にして、メンバーシップ関数Habmは、始点を Habsmall(54)、頂点をHabmiddle(90)、終点をHablarge(126)とする三角形となる。メンバーシップ関数Hablは、始点をHabmiddle(90)、頂点をHablarge(126)、終点をHablarge+(Hablarge-Habmiddle)(162)とする三角形となる。 【0020】メンバーシップ関数Habvsは、Habが18より小のときメンバーシップ値が1であり、Habが18ないしし54のとき、メンバーシップ値が1から0の値をとるような台形となる。メンバーシップ関数Habvlは、Habが126ないし162のときメンバーシップ値が0から1の値をとり、Habが162より大きいときメンバーシップ値が1となる台形となる。これらの台形状のメンバーシップ関数は、補正対象領域に属さない程度を示すメンバーシップ関数となっている。このようなメンバーシップ関数は、色補正量が、補正対象領域の境界部において、不連続にならないようにするために必要である。 【0021】 同様にして、明度L、彩度Cabについても、メンバーシップ関数を決定することができる。 【0022】図5、図6、図7はファジィ画像処理を行うためのルールを示している。この例では、L(明度)、Cab(彩度)、Hab(色相)のそれぞれについて、L、Cab、Habの各状態について、好ましい肌色を得るための補正量を、L、Cab、Habそれぞれについて定めたものである。かかるルールは、何回かの試行錯誤のうえ、最適な補正量を求めることにより決定されるものである。 【0023】好ましい肌色を得るためのL、Cab、Habの各最終補正量ΔL、ΔCab、ΔHabは、それぞれ数2、数3、数4に示す通りである。 【0024】 【数2】 ΔL=Σ(μi×ΔLi)/Σμi 【0025】 【数3】 ΔCab=Σ(μi×ΔCabi)/Σμi 【0026】 【数4】 ΔHab=Σ(μi×ΔHabi)/Σμi 【0027】但し、μiは、i番目のルールに対するL、Cab、Habの各メンバーシップ値のうち、最も小さい値を示す。また、ΔLiはi番目のルールによるLの補正量、ΔCabiはi番目のルールによるCabの補正量、ΔHabiはi番目のルールによるHabの補正量である。 【0028】上記式から理解できるように、例えば、Lの最終補正量ΔLを求める場合、L大且つCab大且つHab中のときの補正量+3を採用する度合μiとしては、L、Cab、Habそれぞれがこの領域に属する程度を示すメンバーシップ値のうちの最小値を採用する。そして最終的な補正量は重み付け重心法により決定している。 【0029】この例では、ファジィルールの後件部は、補正量を定数として決定する構成となっているが、これは処理速度を早くする為であり、勿論、後件部をメンバーシップ関数で定義してもよい。かようにして、求められた最終補正量を元の信号に加算することにより、元の信号に対する好ましい肌色補正を行う。即ち、L=L+ΔL、Cab=Cab+ΔCab、Hab=Hab+ΔHabを計算する。 【0030】以上が画像信号の一つのデータ(画素)に対する補正となる。かかる補正を肌色領域にある全ての画素に対して行う。上記信号をY(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)信号に変換して出力することによりカラープリント用信号を得る。CRTデイスプレイ装置にて表示する場合にはRGB信号に変換する。 【0031】尚、以上説明した実施例は好ましい肌色を得るように画像処理する場合であったが、本発明はこれに限定されることなく、たとえば、好ましい青空の色あるいは美しい葉の色を得るような画像処理にも適用できる。もちろん、この場合には、それぞれの場合に応じたファジィ画像処理ルールが設定されることになる。」(段落【0011】〜【0031】参照。) 3.対比 本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された発明の「画像入力装置101」及び「画像出力装置103」は、それぞれ、本願発明の「入力装置」及び「出力装置」に相当することは、明かである。また、本願明細書の段落【0023】,【0036】における記載、及び前記記載(オ)からみて、引用例1に記載された発明の「L*a*b*色空間、L*u*v*色空間、またはXYZ色空間」は、本願発明の「知覚色空間」に相当することも、明かである。 そして、引用例1の(i)〜(iv)に示される次の記載、すなわち、 (i)「【請求項1】出力装置の色空間上での色再現領域を記憶する色再現領域記憶手段と、入力カラー画像信号が該色再現領域記憶手段での記憶色再現領域内か否かに応じて少なくとも2種類の方法のうちの1つを選択して出力カラー画像信号に変換する変換手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。 【請求項2】前記変換手段のうち少なくとも1つは出力装置の色再現領域外についても階調を持つ様に色空間上の圧縮を行う変換処理であることを特徴とする請求項1記載のカラー画像処理装置。 【請求項3】前記変換手段のうち少なくとも1つは出力装置の色再現領域内について画像原稿と出力画像の測色的等色を行う変換処理であることを特徴とする請求項1記載のカラー画像処理装置。 【請求項4】前記変換手段のうち少なくとも1つは出力装置の色再現領域内について画像原稿の色空間領域を広げて出力画像の再現色とすべく、色空間上の拡大を行う変換処理であることを特徴とする請求項1記載のカラー画像処理装置。」(前記(ア)参照。) (ii)「【0003】一般に、カラー画像原稿である印刷物や写真、CRT上で表わされる画像のもつ色は、色空間座標系で画像出力装置のトナーまたはインクの混色による色再現領域によりも広い。入力カラー画像信号の全ての色についても最適な色再現を実現するために、通常、色空間上での圧縮が行われ、色再現領域外の色に対しても階調性を持たせる処理を行つている。【0004】図5は従来の上記色空間(a* -b* 軸上)での圧縮写像を表わした図であり、図中実線で囲まれた領域はカラー画像原稿の色空間領域、実線内側の点線は画像出力装置の色再現領域を示しており、入力カラー画像原稿が画像出力装置の色再現範囲を越えている事を表わしている。従来、矢印の様に色再現領域外の色再現は色再現領域に投影される。一方、それに伴つて、順次画像の階調性を持たせる為に、矢印の様に少しずつ、本来の色とずらして再現されていた。即ち、色空間の圧縮写像が行われていた。」(前記(イ)参照。) (iii)「色座標判定回路110は、カラー画像原稿の色空間上の分布が画像出力装置103の色再現領域内に含まれるか、色再現領域を越えるかを、以下説明する方法により判定する。 【0016】色座標判定回路110に入力したR,G,B画像信号は、XYZ表色系の3刺激値X,Y,Zに変換される。RGB信号がNTSC方式に準ずる時、変換式は次の式で表わされる。 ┌X┐ ┌ 0.6067 0.1736 0.2001 ┐┌R┐ │Y│=│ 0.2988 0.5178 0.1144 ││G│ └Z┘ └ 0.0 0.0661 1.1150 ┘└B┘ …(1) X,Y,Zの3刺激値に変換された画像信号は次にL* a* b* 表色系のL* a* b* に変換される。 【0017】 ┌L* =116 (Y/Y0)-16 │a* =504.3[(X/X0)1/3-(Y/Y0)1/3] …(2) └b* =201.7[(Y/Y0)1/3-(Z/Z0)1/3] (X0 ,Y0 ,Z0 =const) 図3にL* a* b* 表色系での様子を示す。図中の六面体は、先に述べた画像出力装置103の色再現領域を示し、画像信号がこの六面体内部に存在する時、画像出力装置は色再現可能である。【0018】(2)式によつてL* a* b* 座標に変換された画像信号は、各画素について色再現領域か否かを以下の方法によつて判定される。 六面体の各平面の方程式は、 kL* +la* +mb* +n=0 (k,l,m,n=const ) で表わされる。 【0019】よつて、六面体内部は、画像信号(L* ,a* ,b* )が kiL* +lia* +mib* +ni≧0 i=1〜6 を各面について満たしていることが条件となる。このようにしてカラー画像原稿の全面あるいは一部分につき、以上の判定を画素単位で行い色再現領域内に存在する画素の画素数を累積していく。 【0020】所定の領域につき以上の処理が終了すると、累積値を所定の閾値と比較し、例えば原稿画像の95%以上が色再現領域内に存在する時、カラー画像原稿の色空間分布は色再現領域内に存在するものと判定し、1ビツトの判定信号を出力する。」(前記(ウ)参照。) (iv)「色空間上を微小色空間ブロツクに分割し、原稿画像がどの微小色空間ブロツクに存在するかを各ブロツク毎に累積し、原稿画像の色が存在するブロツクの数及びブロツクの色空間上の座標を判定することにより、原稿画像の色空間分布が判定することも可能である。」(前記(エ)参照。) からみるに、引用例1に記載された発明は、画像入力装置101の色再現領域と画像出力装置103の色再現領域とを比較し、各色につき色領域を抽出しているから、本願発明と引用例1に記載された発明とは、 「それぞれ予め設定された入力装置の再現色領域と出力装置の再現色領域とを比較して、その各色領域を抽出している」 点で差異はない。 『なお、付言するに、画像入力装置の色再現範囲が広く、画像出力装置色再現領域が狭い場合、このままでは画像入力装置で得られた画像信号を画像出力装置で忠実に色再現できない。このようなときには、画像入力装置の色再現領域を画像出力装置の色再現範囲まで圧縮して、すなわち画像入力装置の色再現範囲を画像出力装置の色再現範囲まで縮めることにより両装置の色再現領域を一致させ、その後必要とあらば色変換をすることにより忠実な画像信号を出力するようにすることは、当業者には周知慣用されている技術常識である。この点については、更に、特開平4-186968号公報をも参照のこと。 さて、先述した「必要とあらば色変換をすること」について、更に詳述するに、例えば、引用例1に記載された発明では、入力画像装置の色空間はRGB色空間であり、画像出力装置の色空間はYMCK色空間であり、画像処理装置で採用している色空間は、XYZ色空間及びL*a*b*色空間であり、RGB画像入力信号は、XYZ及びL*a*b*信号を仲立ちとしてYMCK画像出力信号に変換される。その色変換過程は、次のとおりである。 (i)RGB→XYZ→L*a*b* 圧縮写像の対象となる確定された範囲の入力画像(出力すべきとされた入力画像の領域)につき、画像入力装置から出力されるRGB画像信号は、3刺激値XYZに変換され、更に均等色空間値L*a*b*に変換され、該信号に対して画像処理装置において、必要とされる種々の処理が行われる。 (ii)L*a*b*→YMCK 画像処理装置で処理された均等色空間の画像信号L*a*b*は、更にYMCK画像出力信号に変換され、画像出力装置へ出力される。 (iii)RGB→YMCK 以上の(i)及び(ii)の変換過程を通して見ると、画像入力信号RGBが、画像処理装置において画像出力信号YMCKに直接変換されると見ることができる。』 さて、引用例1の次の記載 「画像処理装置102へ入力されたR,G,B画像信号のうちの分岐した他の1系統は、さらに、2系統に分岐し、1系統は、濃度変換回路112とマスキング回路113により、図4に示した従来技術で述べた対数変換回路402とマスキング回路403の処理と同様の処理が行われる。 【0021】即ち、カラー画像原稿の色空間を画像出力装置103の色再現領域より大きく取り、色空間を圧縮して再現し、色再現領域以外の色座標についても階調性のある画像を出力する処理が行われる。一方、画像信号は上記の色処理と同時に濃度変換テーブル105へも入力されている。濃度変換テーブル105は、R,G,B画像信号を入力とし、Y,M,C,K出力信号を出力値とする変換テーブルである。 【0022】以下、簡単に濃度変換テーブル105の作成方法を説明する。今、あるY,M,C,K出力信号の組(y,m,c,k)が画像出力装置103によつて印刷記録される場合の再現色は、L* a* b* 座標において(l* ,a* ,b* )であるということが予め既知であるとする。 【0023】一方、R,G,B画像読取り信号は式(1),(2)よりL* a* b* 座標が計算できる。よつて、R,G,B画像読取り信号は、L* a* b* 座標を介して測色的にYMCK出力信号と対応ずけることができる。ところで、一般にYMCK4色により印刷記録される画像記録装置においては、ある1つの出力信号(Y1 M1 C1 K1 )と、他の出力信号(Y2 M2 C2 K2 )で印刷される再現色が測色的に等色する場合がある。 【0024】これは、Y,M,C3色の混色による黒とKによる黒とが等色するからであり、1つの混色色座標(l* a* b* )に対してそれぞれ異なるY,M,C,K出力値が存在することを表わしている。本テーブルでは、互いに等色な複数組のY,M,C,K出力値の内、K信号の最も大きい組合せを出力値とする。これはUCR(下色除去)の効果を上げるためである。 【0025】以上の様に作成された変換テーブルは、色再現領域内において、カラー画像原稿と等色な色再現が可能である。この様にそれぞれの系統で変換された画像処理装置出力信号(Y1 ,M1 ,C1 ,K1 )及び(Y2 ,M2 ,C2 ,K2 )は、先の色座標判定回路110の判定結果に基づいて、カラー画像原稿が色再現領域を越えている時は圧縮された色空間による色再現処理による出力信号(Y1 ,M1 ,C1 ,K1 )を、又、カラー画像原稿が色再現領域内にある時、等色な色再現処理による出力信号(Y2 ,M2 ,C2 ,K2 )がセレクタ106によつて選択され、画像出力装置103へと出力される。 【0026】画像出力装置103では、この画像出力信号(Y,M,C,K)を、PWM法、デイザ法、誤差拡散法等それぞれの方式に合わせて印刷記録する。」(前記(エ)参照。) からみるに、引用例1に記載された発明は、画像入力装置のRGB色空間における抽出した色領域(出力対象の色領域)からL*a*b*色空間(知覚空間に相当)へ色変換処理をし、そして、L*a*b*色空間(知覚空間に相当)から画像出力装置のYMCK色空間における抽出した色領域(画像入力装置の色空間における抽出した色領域と一対一に対応するところの画像出力装置の色再現範囲内に写像される色領域)への色変換処理をしているから、本願発明と引用例1に記載された発明とは、 「該抽出色領域から知覚色空間への変換、あるいは知覚色空間から抽出色領域への変換処理」 を行っている点で差異はない。 そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、 (一致点) 「それぞれ予め設定された入力装置の再現色領域と出力装置の再現色領域とを比較して、その各色領域を抽出し、 該抽出色領域から知覚色空間への変換、あるいは知覚色空間から抽出色領域への変換を行う色画像補正方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 本願発明においては、抽出色領域から知覚色空間への変換、あるいは知覚色空間から抽出色領域への変換の少なくともいずれか一の変換にファジィ処理を用いているのに対し、引用例1に記載された発明においては、濃度変換テーブルを用いる変換処理及びマスキング演算による変換処理を行っている点。 4.当審の判断 上記相違点について判断するに、濃度変換テーブルによる変換または多項式近似演算であるマスキング演算による処理を、メンバーシップ関数を用いたファジィ処理とすることは、当業者において周知慣用されている技術事項である。この点については、例えば、引用例2及び特開平4-352569号公報を参照のこと。引用例2については、前記記載(2のア)〜(2のエ)を参照のこと。 したがって、引用例1に記載された発明の濃度変換テーブルによる変換および多項式近似演算であるマスキング演算による処理を引用例2及び特開平4-352569号公報に示されるファジィ処理に代えて、本願発明の如く構成することは、当業者が適宜なし得ることである。 なお、引用例2及び特開平4-352569号公報に記載された発明においては、いずれも明度、彩度、色相を表す補正量ΔL,ΔCab,ΔHab(δL,δS,δH)を、ファジィ処理しているが、引用例2及び特開平4-352569号公報に記載された発明においては、初めから明度、彩度、色相L,Cab、Hab(L、S、H)をファジィ処理するとあまりにもファジィに過ぎ、色変換の正確性を欠くことになるから、色変換の正確性を期すために、先ず濃度テーブル等(マスキング演算を含む。)を使用して正確な一次変換量を得て、その後にオペレータの曖昧な表現又は指示に応じて二次のオーダの微少量である補正量をファジィ処理しているのであって、引用例2及び特開平4-352569号公報に記載された発明は、全量L,Cab、Hab(L、S、H)又は補正量ΔL,ΔCab,ΔHab(δL,δS,δH)に拘わらず、ファジィ処理できることは、自明である。このことは、例えば、引用例2に記載された次の式 ΔL=Σ(μi×ΔLi)/Σμi ΔCab=Σ(μi×ΔCabi)/Σμi ΔHab=Σ(μi×ΔHabi)/Σμiにおいて、ΔL,ΔCab,ΔHabをL,Cab,Habに置き換え、和の記号Σを積分記号∫に置き換えることにより、次の式 L=Σi∫μiLidy/Σi∫μidy Cab=Σi∫μiCabidy/Σi∫μidy Hab=Σi∫μiHabidy/Σi∫μidy が直ちに得られることからも分かる。 そして、引用例2における次の記載「最終的な補正量は重み付け重心法により決定している。」(段落【0028】参照。)を考慮すると、これらの式は、本質的に本願明細書に記載されたメンバーシップ関数を用いる近似式と同値であるといえる。 而して、審決が引用したのは、全量L,Cab、Hab(L、S、H)であるか又は補正量ΔL,ΔCab,ΔHab(δL,δS,δH)であるか否かに拘わらず、目的とする量がファジィ処理されるというその点にある。つまり、技術思想そのものを引用したのである。しかもこの技術思想すなわちファジィ理論は、当業者には周知なものである。 以上のとおり、本願発明は、i)色再現領域の不一致の解消、ii)色変換処理をファジィ処理とすることを発明の構成要件とするものであるが、先に述べた如くそのいずれもが当業者には良く知られている技術事項であり、しかも本願特許請求の範囲の第6項には、i)色再現領域の不一致の解消に係る新規な手法が記載されてはおらず、またii)色変換ファジィ処理に係る新規な手法も記載されていない。したがって、本願発明は、引用例1に記載発明と周知技術との基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明と周知技術とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-12-09 |
結審通知日 | 2004-12-14 |
審決日 | 2005-01-04 |
出願番号 | 特願平5-340394 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 手島 聖治、真木 健彦、▲広▼島 明芳 |
特許庁審判長 |
関川 正志 |
特許庁審判官 |
江頭 信彦 大野 弘 |
発明の名称 | 色画像補正方法及びその装置 |
代理人 | 河合 典子 |
代理人 | 佐藤 卓也 |
代理人 | 河合 典子 |
代理人 | 河合 典子 |
代理人 | 佐藤 卓也 |
代理人 | 小島 高城郎 |
代理人 | 佐藤 卓也 |
代理人 | 小島 高城郎 |
代理人 | 小島 高城郎 |