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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1112473
審判番号 不服2004-7764  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-03-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-15 
確定日 2005-02-24 
事件の表示 特願2003- 39546「保護用薄板状材料及び薄板状材料積層体並びに有機膜の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 88061〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成15年2月18日(優先権主張平成14年7月5日)の出願であって、平成15年6月13日付で拒絶理由が通知され、同年7月22日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成16年3月18日付で拒絶査定がなされたので、同年4月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同日付で手続補正書が提出されたものである。

II.平成16年4月15日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月15日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】被保護薄板状材料構成体を保護する薄板状材料本体を備えた保護用薄板状材料であって、
前記薄板状材料本体の少なくとも相対向する両端部に、該端面側を開放され、且つ、前記被保護薄板状材料構成体の主面に対して略平行になる頭頂部及びその周囲において前記端面側の開放された部分を除く部分に側壁部を有する突起が、前記薄板状材料本体に連続して、且つ、該薄板状材料本体の端部に沿う方向に間隙部をおいて交互に互いに異なる方向に突出して設けられていることを特徴とする保護用薄板状材料。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載された発明の、発明特定事項である「その周囲の側壁部」を、「その周囲において前記端面側の開放された部分を除く部分に側壁部」と限定するとともに、請求項1の記載について、明りょうでない記載の釈明を行うものであって、特許法第17条の2第4項第2号、第4号に該当する。
次に、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物、その記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-206140号公報(以下、「引用例1」という。)、実願平2-38103(実開平3-128940号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。
2-1.引用例1
「(1)長尺の可撓性プラスチックフィルムの両側端に沿ってフィルムの両面に交互にエンボス加工による突起を設けたフィルムキャリア用エンボススペーサフィルムにおいて、前記突起の頂部を平坦な略矩形としたことを特徴とするフィルムキャリア用エンボススペーサフィルム。」(第1頁左下欄5〜11行)、
「〔実施例〕第1図(a)、(b)、(c)は本発明のフィルムキャリア用エンボススペーサフィルムの一実施例を示し、巾35mm、厚さ0.18mmの長尺のポリエチレンテレフタートフィルムの両側端部に沿って、熱プレスで、高さ1.2mmで平坦な矩形形状の頂部10a(長さ3mm×巾2mm)を有する突起10をフィルム両面に交互に形成し、フィルムキャリア用エンボススペーサフィルム1を作成した。」(第2頁右下欄8〜16行、第1図)、
「このようにして作成したポリエチレンテレフタートフィルム1(実施例)・・中略・・を、それぞれ第3図および第4図に示すように・・中略・・フィルムキャリア3と、交互に巻張力1kgfにてリールに巻回し、常温・常湿で1ヶ月間保管した後、フィルムキャリア3の変形状況を調べた。・・中略・・実施例のフィルムキャリア用エンボススペーサフィルム1を用いたものではポリイミドフィルムの変形は0.1mm以下であり、リードパターン部分のうねりは認められなかった。」(第3頁左上欄5行〜右上欄2行、第3図、第4図)、
「〔発明の効果〕以上説明した通り、本発明のフィルムキャリア用エンボススペーサフィルムによれば、・・中略・・フィルムキャリアの平坦度低下を起こさないようにすることができた。」(第3頁右上欄3〜10行)
と記載されている。

2-2.引用例2
「(1)テープオートメイテッドボンディング用テープキャリア(以下TABという)をリールに巻く際にTABと巾および長さがほぼ同じであり、TABに重ね合わせて用いるスペーステープであって、その両側縁部に連続的に設けたエンボスした凹凸の突起の頂部がTABの両側縁部の送り孔に入り込んだ時に四角の送り孔径で係止させて、その係止点から頂点までの高さtが、TABテープ厚さt’との関係が(0≦t≦t’+0.3)mmの高さの凹凸を有することを特徴とするTAB用スペーステープ。」(明細書第1頁5〜15行)、
「すなわち、本考案は・・中略・・TABに重ね合わせて用いるプラスチック製のスペーステープであって、その両側縁部にそれぞれ1列又は複数列の半球形又は半楕円球形又は台形的形状の突起をテープ表裏交互に連続してエンボス形成した形状構造がTABの両側縁部に損傷を与えることを防止するのに優れている」(明細書第5頁9〜17行)、
「又、以上の他にエンボスされた凹凸の突起の形状は第5図〜第9図に示したものも、本考案のTAB用スペーステープとして使用できる。」(明細書第13頁10〜12行、第5図〜第9図)と記載され、
そして、第8図には、スペーステープの両側縁部に、該スペーステープの幅方向端部にまで突起を設けたTAB用スペーステープが図示されている。

3.対比
引用例1の第1図(a)〜(c)の記載によれば、引用例1に記載された突起10は、フィルムキャリア用エンボススペーサフィルム1に連続して、且つ、該スペーサフィルム1の端部に沿う方向に間隙部をおいて設けられていることは明らかであり、また、引用例1の第1図(c)、第3図の記載によれば、引用例1に記載された突起10の頂部10aが、フィルムキャリアの面に対して略平行であるものと認められる。
したがって、引用例1の記載を総合すれば、引用例1には、
「フィルムキャリアを保護するスペーサフィルムを備えたフィルムキャリア用エンボススペーサフィルムであって、
前記スペーサフィルムの少なくとも相対向する両側端部に沿って、フィルムキャリアの面に対して略平行で平坦な矩形形状の頂部及びその周囲において側壁部を有する突起が、前記スペーサフィルムに連続して、且つ、該スペーサフィルムの端部に沿う方向に間隙部をおいて交互に互いに異なる方向に突出して設けられていることを特徴とするフィルムキャリア用エンボススペーサフィルム。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
そして、引用発明における「フィルムキャリア」、「スペーサフィルム」、「フィルムキャリア用エンボススペーサフィルム」及び「フィルムキャリアの面に対して略平行で平坦な矩形形状の頂部」は、それぞれ、本願補正発明の「被保護薄板状材料構成体」、「薄板状材料本体」、「保護用薄板状材料」及び「被保護薄板状材料構成体の主面に対して略平行になる頭頂部」に相当する。
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「被保護薄板状材料構成体を保護する薄板状材料本体を備えた保護用薄板状材料であって、
前記薄板状材料本体の少なくとも相対向する箇所に、前記被保護薄板状材料構成体の主面に対して略平行になる頭頂部及びその周囲に側壁部を有する突起が、前記薄板状材料本体に連続して、且つ、該薄板状材料本体の端部に沿う方向に間隙部をおいて交互に互いに異なる方向に突出して設けられていることを特徴とする保護用薄板状材料。」で一致する。
しかしながら、
(1)本願補正発明では、薄板状材料本体の「両端部に」突起を設けるとしているのに対して、引用発明では、薄板状材料本体の両側端部に沿って突起が設けられているものの、「端部に」突起を設けるとはされていない点(以下、「相違点1」という。)
(2)本願補正発明では、突起は、「端面側を開放され」、かつ、「端面側の開放された部分を除く部分に側壁部を有する」ものであるのに対して、引用発明の突起は、全周囲に側壁部を有しており端面側が開放されていない点(以下、「相違点2」という。)
で、両者は相違する。

4.判断
相違点1について;
引用例2には、TABに重ね合わせて用いるプラスチック製のスペーステープであって、その両側縁部にそれぞれ1列又は複数列の半球形又は半楕円球形又は台形的形状の突起をテープ表裏交互に連続してエンボス形成することが記載され、そして、具体的な態様の一つとして、その第8図には、スペーステープの幅方向端部にまで(即ち、スペーステープの両側縁部の端部に)突起を設けたTAB用スペーステープが図示されている。
そして、引用例2に記載された「TAB」、「スペーステープ」及び「TAB用スペーステープ」は、それぞれ、本願補正発明の「被保護薄板状材料構成体」、「薄板状材料本体」及び「保護用薄板状材料」に相当するものであるから、引用例2には、被保護薄板状材料構成体を保護する薄板状材料本体を備えた保護用薄板状材料であって、薄板状材料本体の両側縁部の端部に突起を設けた保護用薄板状材料が開示されているといえる。
そうすると、引用発明において、薄板状材料本体の両側端部に沿って突起を設けるにあたり、薄板状材料本体の「端部に」突起を設けることは、引用例2の開示から当業者が容易に想到し得ることと認められる。
相違点2について;
引用例2の第8図に記載された突起の構造に関し、その端面側が開放されているか否か、また、その端面側に側壁部を有するか否かについては、引用例2に明確な記載はない。
しかしながら、薄板状材料本体の少なくとも相対向する両端部に突起を設けた、被保護薄板状材料構成体を保護する保護用薄板状材料において、端部に設けた突起の端面側を開放し、かつ、突起端面側の開放された部分に側壁を設けないことは本願出願前から周知(例えば、実公平6-44939号公報、特開平3-171747号公報、特開平3-85277号公報、特開昭59-205745号公報)である。
そうすると、引用例2の第8図に記載された突起は、薄板状材料本体の両側縁部の端部に設けられているのであるから、前記周知技術を併せ考慮すれば、該突起の端面側は開放されており、しかも、その開放された部分には側壁が設けられていないものであるといえる。言い換えれば、引用例2の第8図に記載された突起は、「端面側を開放」し、かつ、「端面側の開放された部分を除く部分に側壁部を有する」ものであるといえる。
なお、仮に、引用例2の第8図に記載された突起が、上記の如き構造を有さないものであったとしても、前記周知技術を考慮すれば、該突起として、「端面側を開放され」、かつ、「端面側の開放された部分を除く部分に側壁部を有する」構造のものを採用することは、当業者の任意設計事項であって、格別の困難性を要するものではない。

上記のとおり、相違点1、2は、引用例2に記載された発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、そして、本願補正発明による効果も、当業者が当然に予想し得る程度のものであって、格別顕著であるとはいえない。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、請求人は、審判請求書の「(iii)請求項1に係る発明の効果」、「(v)請求項1に係る発明と引用文献との対比」の欄で、「本願補正発明は、突起の端面側が開放されているので、被保護薄板状材料構成体の両端面間の中央部の有効利用領域の寸法(幅)を大きくでき、エンボス加工金型の型離れを良くすることができる」旨、本願補正発明による効果を主張する。
しかしながら、中央部の有効利用領域の寸法(幅)を大きくできるという効果は、所定幅の被保護薄板状材料構成体・薄板状材料本体を用い、さらに、突起として、予め定められ所定サイズ(例えば、薄板状材料の幅方向にわたる頭頂部の長さ)の突起を用いた場合に得られる効果であるところ、本願の(補正された)請求項1には、突起のサイズ等所定の条件について何ら特定されているわけではない。また、エンボス加工金型の型離れを良くすることができるとの効果も、突起をエンボス加工で形成することを前提としたものであるところ、本願の(補正された)請求項1では、突起の成形手段が特定されているわけでもない。
したがって、請求人が主張する“本案補正発明による効果”は、何れも本願の(補正された)請求項1に記載されるところを発明特定事項とする発明により奏される効果であるとはいえないから、請求人の主張は採用しない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成16年4月15日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜27に係る発明は、平成15年7月22日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜27に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】被保護薄板状材料構成体を保護する薄板状材料本体を備えた保護用薄板状材料であって、
前記薄板状材料本体の少なくとも相対向する両端部に、該端面側を開放され、前記被保護薄板状材料構成体の主面に対して略平行になる頭頂部及びその周囲の側壁部を有する突起が前記薄板状材料本体に連続して且つ該薄板状材料本体の端部に沿う方向に間隙部をおいて交互に互いに異なる方向に突出して設けられていることを特徴とする保護用薄板状材料。」

2.引用刊行物、その記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「II.2.引用刊行物、その記載事項」に記載したとおりである。

3.判断
本願発明は、実質的に、前記II.で検討した本願補正発明の「側壁部」についての限定事項である「前記端面側の開放された部分を除く部分」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項の全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「II.4.判断」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

IV.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の請求項2〜27に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-21 
結審通知日 2004-12-28 
審決日 2005-01-11 
出願番号 特願2003-39546(P2003-39546)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 永一  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 市川 裕司
城所 宏
発明の名称 保護用薄板状材料及び薄板状材料積層体並びに有機膜の形成方法  
代理人 花輪 義男  
代理人 花輪 義男  

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