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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1112486
審判番号 不服2002-5139  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-12-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-27 
確定日 2005-02-24 
事件の表示 平成 4年特許願第149705号「オートクレーブ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年12月21日出願公開、特開平 5-337170〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成4年6月9日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成14年4月23日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、必要に応じて「本願発明」という)。
「【請求項1】 高温及び高圧の蒸気のもとで収納部の内部に収納された医療機器に対して滅菌処理を行うオートクレーブ装置において、前記収納部の内部に収納される医療機器に対して所定の時間の洗浄処理を行う洗浄機構と、前記収納部に設けられ、前記洗浄に用いられた流体を排出する排出部と、前記排出部の開閉を行う開閉手段と、前記医療機器に対して前記高温及び高圧の蒸気により所定の時間の滅菌処理を行う滅菌機構と、少なくとも滅菌処理時に前記開閉手段を閉状態になるように制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするオートクレーブ装置。」

2.引用刊行物の記載内容
原査定の拒絶理由に引用された引例の記載内容は次のとおりである。
(1)引例1:特開平2-41161号公報
(a)「被清浄化器具を保持する容器と、該容器内に保持された器具を液体洗浄する洗浄手段と、前記容器内に蒸気を供給する蒸気供給手段とを具備することを特徴とする器具清浄化装置。」(請求項2)
(b)「本発明は、器具類、特に医療分野における使用済の汚染器具類、たとえば歯科医療分野で用いられる比較的小型の器具類の洗浄および滅菌を連続的に行うことができる簡便な器具清浄化方法およびその装置に関する。」(第1頁左下欄第15〜19行)
(c)「この器具清浄化装置1は、本体ケース2内にタンク状の容器3を収納し、本体ケース2の上部には操作ボックス4を設けてなる。容器3は上に開口する円筒形に形成され、その開口部3aは、蓋枠6に設けたハンドル7によって締め付けられる蓋5によって密閉される。容器3の中間部には、圧力安全弁9のパイプ9a,圧力検知器11のパイプ11a,減圧口12のバルブ12aつきのパイプ、圧力計13のパイプ13a等が接続されている。圧力検知器11はA,Bの2種があり、Aは制御温度T1(例えば121℃)用であり、BはT2(例えば132℃)用である。また、容器3の底部には、回転式のノズル15、環状のヒータ17、温度計19が設けられている。ノズル15は液通路を兼ねた支持具20によって水平面内で回転自在に支持されている。このノズル15は、中空体として形成され、その上面部に複数の噴出口21,・・・が設けられるとともに、回転時に後側となるその側面部には回転駆動用噴出口22,・・・が設けられている。容器3の下方にはモータ付きの循環用ポンプ25と排液用ポンプ27が設置されており、循環用ポンプ25はソレノイドバルブ29を介して容器3内の前記支持具20の液通路に接続されている。また、排液用ポンプ27はソレノイドバルブ30を介して容器3の底部に連通している。容器3には注水弁32を介して外部の水道から水を供給する注水管33が設けられている。また、必要に応じて外部のボイラ(図示せず)から高温の蒸気を供給することのできる開閉弁34付きの蒸気供給管35が接続される。さらに、容器3には圧力開放用のパイプ36が接続されており、このパイプ36は温度センサつき圧力開放弁37を介して水位計39内に導かれている。水位計39は容器3内の水位を表示するもので、前記排液ポンプ27の排水管40とバルブ41を介して接続されている。操作ボックス4には前記モータ、ヒータ、バルブ類の動作を制御する制御装置が収納されており、一連の清浄化工程が自動的かつシリーズ的に行なわれるようになっている。図中43は圧力計および温度計、44は電源スイッチ、45は洗浄のみを行う場合の選択スイッチ、46は滅菌のみを行なう場合の選択スイッチ、47は洗浄と滅菌を含む清浄化工程を連続的に行なう場合の選択スイッチ、46はスタート・一時停止スイッチである。」(第2頁右上欄第6行〜右下欄第10行)
(d)「この清浄化装置1の使用に際しては、先ず清浄化すべき器具を例えば脚つきのかご等に入れて容器3内に装入保持し、洗浄用の薬液をその上からふりかける。そして、容器3の蓋5を密閉し、内部に水を所定の水位WLまで注入する。スタートスイッチ48を押すと、循環ポンプ25が作動して容器3内の液を吸い込んではノズル15から噴出する。このとき、ノズル15の噴出口21,・・・から上方に保持されている器具に向って噴射が行なわれるとともに、側部噴出口22,・・・からも横向きに噴射されるので、その反動によってノズル15が回転する。噴出された液は落下して容器の底部に溜り、再度噴出される。このようにして、洗浄液を循環させつつ所定時間(例えば20分間)洗浄を行なったら、循環ポンプ25を停止して排液ポンプ27を作動させ、排水を行う。このとき、排水開始より少し(例えば5秒)遅らせて注水弁を開き、注水しつつ排水を行う。このように、一方で注水しつつ他方で排水するので、容器内の汚れた液が効率よく排出されるのである。排水が進行したら排水ポンプを27を停止し、再度所定のレベルになるまで給水し、循環ポンプ25を作動させて噴水によるすすぎを所定時間(例えば1分間)行なう。しかるのち、前記と同様に排水と給水を行ない、同様なすすぎを繰り返す。通常、すすぎは2回程度でよい。」(第2頁右下欄第11行〜第3頁左上欄第16行)
(e)「すすぎが終了すると、一旦容器内の液の排水を行ない、引続き高温の蒸気による減菌を行なう。この手順は、先ず所定のレベルまで新鮮な水を供給し、蒸気供給手段として働くヒータに通電して加熱する。このとき、圧力開放弁37は開いているので、加熱によって発生した水蒸気と空気の混合物はパイプ36を通って容器外に排出される。パイプ36は水位計39の中を通って開口しているので、排出された蒸気は冷却されて水滴となり、水位計内に排出される。場合によっては、このようにパイプ36を冷却することなく、蒸気をそのまま外気中に排出するようにしてもよい。容器3内の水が沸とうすると容器内の温度がほぼ100℃となるので、圧力開放弁37の温度センサがこれを感知し、圧力開放弁37を閉じさせる。このため容器3内の圧力は上昇し、水の沸とう点も上昇する。容器3内の圧力が2気圧となり、蒸気温度が132℃となると、制御装置がその温度を維持するように作動する。この温度で所定時間(例えば15分間)保持し高温蒸気による滅菌が行なわれる。なお、滅菌条件はこれに限らず他の適当な条件とすることができる。」(第3頁左上欄第17行〜右上欄第18行)
(f)「また、本実施例のように容器3内で蒸気を発生させるかわりに、外部のボイラーから蒸気を容器内に供給してもよく、両者を併用してもよい。」(第3頁右上欄第18行〜左下欄第1行)
(g)「蒸気による減菌工程が終了したら、減圧口12のバルブ12aを開いて容器内の蒸気を逃がし減圧するとともに、底部の水を排出する。これにより清浄化された器具が乾燥するが、必要な場合はさらにヒータで加熱して乾燥を促進してもよい。」(第3頁左下欄第2〜6行)
(h)「この器具清浄化装置は、同一の容器内で汚れた器具の洗浄と減菌を連続的に行なうことができるので、実用上きわめて便利であり、安全性の高いものである。」(第3頁左下欄第7〜10行)
(i)第4頁第3図には、管端の開口部から排水することが矢印とともに図示されている。
(2)引例2:実願昭59-161698号(実開昭61-77039号)のマイクロフィルム
(a)「ラック内に収納された医療器具に対し、高圧ジェット噴流による洗浄工程と、純水によるすすぎ工程と、高温高圧蒸気による滅菌工程と、温風による乾燥工程の4工程を同一容器内でシーケンシャルに実行することを特徴とする医療用洗浄装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(b)「本考案は医療用の各種器具を洗浄及び滅菌処理するための洗浄装置に関し、特に中小医院向の小型洗浄装置に関する。」(第1頁第12〜14行)
(c)「第2図は本考案装置の概略構成を示す正面図であり、8は本考案装置が収容される容器で、上面の蓋部801、円筒二重缶体803を主体とする上部室802、下部室804よりなり、円筒二重缶体803内には取出し可能なラック9が収納されている。下部室804内には図示されていないが洗剤タンク、純水タンク、蒸気供給装置、温風供給装置、ポンプ、真空装置、排水装置、シーケンス制御手段等が収納されている。10,11は給水,排水管を示す。12は蓋部の裏面に取付けられた洗浄水,すすぎ水の噴射機構、13は上部室802の底部に設けた同様な洗浄水,すすぎ水の噴射機構である。」(第4頁第6〜17行)
(d)「洗浄と滅菌空間はラック9を収納した円筒二重缶802であり、蓋部及び上部室底部の噴射機構12及び13よりの高圧ジェット噴流15,16を空間内に導入する機能を有する。17は洗浄水供給装置で、60℃〜70℃に昇温したお湯を供給する機構と噴射機構12,13へ洗浄水を高圧送水するポンプと、洗剤を湯に供給する機構とよりなる。18はすすぎ水供給装置で、純水タンクと純水を噴射機構12,13へ高圧送水するポンプよりなる。19は滅菌用の高温高圧蒸気20の噴射機構で、130℃で2気圧の蒸気を802内に一定時間(約30秒)供給する機能を有する。21は蒸気発生装置でボイラ手段、蒸気供給用制御弁とよりなる。22は真空装置であり、滅菌用蒸気の供給に先立って空間802内の空気23を引き抜く機能を有する。24は排水装置で、滅菌用蒸気の供給に先立って空間802内の洗浄,すすぎ水25を排水させるためのポンプ機能を有する。26は乾燥用の温風27を空間802内に供給する温風噴射機構、28はヒータ及びポンプよりなる温風供給装置である。29は上記各装置17,18,21,22,24,28の動作のタイミングと動作時間を含めた装置全体の管理を行なうシーケンス制御装置、30はこのシーケンス制御装置に動作タイミング,動作時間等を設定する設定装置である。」(第5頁第15行〜第6頁第18行)
(e)「第6図は動作のシーケンスを示し、(A)は時刻t1で一定時間発生するスタート信号、(B)はt1に同期してt3までの一定時間発生する予備洗浄信号で、この期間に洗浄水が噴射機構12,13を介して洗浄水供給装置17より空間802内に供給される。(C)はt1より一定時間遅れてt2よりt4までの期間に発生する本洗浄信号で、この期間内は洗浄水中に洗剤が供給される。(D)はt4のタイミングに同期してt5までの一定期間発生するすすぎ信号で、この期間に噴射機構12,13を介してすすぎ水供給装置18より空間802内に純水が供給される。(E)はt5のタイミングに同期してt6までの一定時間発生する真空,排水信号で、真空装置22,排水装置24を駆動し空間802内より湿った空気,残水を排出させる。(F)は滅菌用蒸気信号で、t6のタイミングに同期して蒸気供給装置21より蒸気噴射機構19を介して高温高圧蒸気が空間802内に供給される。この蒸気が2気圧,温度が130℃になったタイミングt7より一定時間通常は30秒間接続させてt8のタイミングまで供給する。」(第6頁第18行〜第7頁第18行)
(f)「2気圧,130℃は大腸菌が完全に死滅する気圧,温度として一般のオートクレーブで標準化されている数値である。」(第7頁第18〜20行)
(g)第2図には、管端が開口した排水管11が図示されている。
(3)引例3:特開平3-68331号公報
(a)「内視鏡を槽内に設置してこの内視鏡を温水により洗浄し、この後にオゾンにより消毒を行う内視鏡用洗浄消毒装置において、内視鏡を温水により洗浄する工程を行う手段と、オゾンにより消毒する工程を行なう手段と、上記洗浄工程と消毒工程との間で上記槽内を冷却する工程を行う手段とを設けたことを特徴とする内視鏡用洗浄消毒装置。」(請求項1)

3.対比・判断
(1)引例1を主引例とする対比・判断
引例1の上記(1)(b)には、「医療分野における使用済の汚染器具類の洗浄および滅菌を連続的に行なうことができる簡便な器具清浄化装置」が記載されていると云える。
そして、この器具清浄化装置は「被清浄化器具を保持する容器と、該容器内に保持された器具を液体洗浄する洗浄手段と、前記容器内に蒸気を供給する蒸気供給手段とを具備する」(上記(1)(a))というものである。
上記蒸気について、「容器3内の圧力が2気圧となり、蒸気温度が132℃となると、制御装置がその温度を維持するように作動する。この温度で所定時間(例えば15分間)保持し高温蒸気による滅菌が行なわれる。」(上記(1)(e))と記載されており、引例1には、132℃、2気圧の蒸気により滅菌処理を行うことが記載されていると云える。
また、上記洗浄について、「洗浄用の薬液をその上からふりかける。そして、容器3の蓋5を密閉し、内部に水を所定の水位WLまで注入する。スタートスイッチ48を押すと、循環ポンプ25が作動して容器3内の液を吸い込んではノズル15から噴出する。・・・このようにして、洗浄液を循環させつつ所定時間(例えば20分間)洗浄を行ったら」(上記(1)(d))と記載されており、引例1には、所定時間の洗浄処理を行う洗浄機構が記載されていると云える。
ここで洗浄液の排出について、「循環ポンプ25を停止して排液ポンプ27を作動させ、排水を行う。」(上記(1)(d))、「排液用ポンプ27はソレノイドバルブ30を介して容器3の底部に連通している。」(上記(1)(c))と、排水を排液用ポンプによりソレノイドポンプを介して行うことが記載されていると云え、その際、排水を行う以上、排出部が存在するものと解され(上記(1)(i))、ソレノイドバルブが排出部を開閉していると解される。
また、上記蒸気供給手段について、「容器3の中間部には、圧力安全弁9のパイプ9a,圧力検知器11のパイプ11a,減圧口12のバルブ12aつきのパイプ、圧力計13のパイプ13a等が接続されている。圧力検知器11はA,Bの2種があり、・・・BはT2(例えば132℃)用である。また、容器3の底部には、回転式のノズル15、環状のヒータ17、温度計19が設けられている。」(上記(1)(c))、「先ず所定のレベルまで新鮮な水を供給し、蒸気供給手段として働くヒータに通電して加熱する。・・・容器3内の圧力が2気圧となり、蒸気温度が132℃となると、制御装置がその温度を維持するように作動する。この温度で所定時間(例えば15分間)保持し高温蒸気による滅菌が行なわれる」(上記(1)(e))、あるいは「外部のボイラ(図示せず)から高温の蒸気を供給することのできる開閉弁34付きの蒸気供給管35が接続される。」(上記(1)(c))、「外部のボイラーから蒸気を容器内に供給してもよく」(上記(1)(f))と記載されており、引例1には、132℃、2気圧の蒸気により所定の時間の滅菌処理を行う滅菌機構が記載されていると云える。
また、「操作ボックス4には前記モータ、ヒータ、バルブ類の動作を制御する制御装置が収納されており、一連の清浄化工程が自動的かつシリーズ的に行われるようになっている。」(上記(1)(c))と、バルブ類の動作を制御する制御装置が記載されていると云える。
これら記載を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引例1には「132℃、2気圧の蒸気のもとで容器の内部に収納された医療器具に対して滅菌処理を行う清浄化装置において、前記容器の内部に収納される医療器具に対して所定時間の洗浄処理を行う洗浄機構と、前記容器に設けられ、前記洗浄に用いられた洗浄液を排出する排出部と、前記排出部の開閉を行うソレノイドバルブと、前記医療器具に対して前記132℃、2気圧の蒸気により所定時間の滅菌処理を行う減菌機構と、バルブ類の動作を制御する制御装置を備えた清浄化装置」という発明(以下、必要に応じて「引例1発明」という)が記載されていると云える。
そこで本願発明と引例1発明とを対比すると、引例1発明の「132℃、2気圧」、「容器」、「ソレノイドバルブ」は、本願発明の「高温高圧」「収納部」、「開閉手段」にそれぞれ相当し、また本願発明の「医療機器」と引例1の「医療器具」は、「医療物品」とも云えるから、両者は「高温及び高圧の蒸気のもとで収納部の内部に収納された医療物品に対して滅菌処理を行う装置において、前記収納部の内部に収納される医療物品に対して所定の時間の洗浄処理を行う洗浄機構と、前記収納部に設けられ、前記洗浄に用いられた流体を排出する排出部と、前記排出部の開閉を行う開閉手段と、前記医療物品に対して前記高温及び高圧の蒸気により所定の時間の滅菌処理を行う滅菌機構とを備えた装置」という点で一致し、次の点で相違している。
相違点(イ):本願発明では、医療物品が「医療機器」であるのに対して、引例1発明では、「医療器具」である点
相違点(ロ):本願発明では、装置が「オートクレーブ装置」であるのに対して、引例1発明では、「清浄化装置」である点
相違点(ハ):本願発明では、「少なくとも滅菌処理時に前記開閉手段を閉状態になるように制御する制御手段」を備えているのに対して、引例1発明では、「バルブ類の動作を制御する制御装置」を備えている点
先ず相違点(イ)について検討する。
本願発明で云う「医療機器」のうちの「機器」については、一般に「器具・器械・機械の総称」とされ、「器具」という概念も包含されるから、この相違点(イ)は実質的な相違点とは云えない。
仮に、医療機器は内視鏡を意味し、引例1における歯科医療分野の比較的小型の医療器具類とは、大きさが相違しているとしても、内視鏡を使用後に、洗浄したり、滅菌したりすることは普通に行われていることであるから(例えば、引例3、特開平2-124438号公報参照)、比較的小型の医療器具類を洗浄したり、滅菌したりする装置を大型化し、内視鏡を対象とすることは当業者が容易に想到し得るものである。
次に相違点(ロ)について検討すると、130℃、2気圧の蒸気はオートクレーブで標準化されている数値であるから(例えば上記(2)(f)参照)、相違点(ロ)は実質的な相違点とは云えない。
次に相違点(ハ)について検討する。
引例1には、「・・・容器内の温度がほぼ100℃となるので、圧力開放弁37の温度センサがこれを感知し、圧力開放弁37を閉じさせる。このため容器3内の圧力は上昇し、水の沸とう点も上昇する。容器3内の圧力が2気圧となり、・・・」(上記(1)(d))と記載されているとおり、100℃になるまで開けておいた圧力開放弁を、圧力を2気圧にするために、閉じているのであるから、その際には、当然、容器を密閉状態にするために、ソレノイドバルブも閉状態にするものと解される。そして、さらに、続けて132℃、2気圧の蒸気で滅菌処理する際に、ソレノイドバルブを開いたりしては2気圧が維持できないから、引例1において、滅菌処理時にソレノイドバルブを閉状態になるようにすることは格別のこととは云えない。
加えて、引例1発明において、バルブ類の動作を制御する制御装置を備えているのであるから、この制御装置で行う制御として、滅菌処理時にソレノイドバルブを閉状態になるよう制御することは当業者が格別の創意力を必要とするものとは云えない。
そして、本願発明の「滅菌に使用する高温高圧の蒸気が排出部より漏れることがない」という効果(審判請求書)は、密閉状態にすることにより圧力を高め、高圧を維持するという点で、当業者が予測できる範囲のことであると云える。
したがって、本願発明は、引例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)引例2を主引例とする対比・判断 引例2の記載を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引例2には、「130℃、2気圧の蒸気のもとで円筒二重缶体の内部に収納された医療器具に対し滅菌処理を行う医療用洗浄装置において、前記円筒二重缶体の内部に収納される医療器具に対して所定時間の洗浄処理を行う洗浄機構と、前記円筒二重缶体に設けられ、前記洗浄に用いられた洗浄水を排出する排出部と、前記医療器具に対して130℃、2気圧の蒸気により所定時間の滅菌処理を行う滅菌機構と、シーケンス制御装置とを備えた医療用洗浄装置」という発明(以下、必要に応じて「引例2発明」という)が記載されていると云える。
そこで本願発明と引例2発明とを対比すると、引例2発明の「130℃、2気圧」、「円筒二重缶体」は、本願発明の「高温高圧」「収納部」にそれぞれ相当し、また本願発明の「医療機器」と引例1の「医療器具」は、「医療物品」とも云えるから、両者は「高温及び高圧の蒸気のもとで収納部の内部に収納された医療物品に対して滅菌処理を行う装置において、前記収納部の内部に収納される医療物品に対して所定の時間の洗浄処理を行う洗浄機構と、前記収納部に設けられ、前記洗浄に用いられた流体を排出する排出部と、前記医療物品に対して前記高温及び高圧の蒸気により所定の時間の滅菌処理を行う滅菌機構とを備えた装置」という点で一致し、次の点で相違している。
相違点(イ):本願発明では、医療物品が「医療機器」であるのに対して、引例2発明では、「医療器具」である点
相違点(ロ):本願発明では、装置が「オートクレーブ装置」であるのに対して、引例2発明では、「医療用洗浄装置」である点
相違点(ハ):本願発明では、「排出部の開閉を行う開閉手段」を備え、かつ「少なくとも滅菌処理時に前記開閉手段を閉状態になるように制御する制御手段」を備えているのに対して、引例2発明では、排出部に開閉手段が付設されているか不明であり、かつ「シーケンス制御装置」を備えている点
先ず相違点(イ)、(ロ)について検討すると、上記(1)で相違点(イ)、(ロ)について述べたことと同じことが云える。
次に相違点(ハ)について検討すると、引例2発明において滅菌処理時に2気圧を維持しており、その際に円筒二重缶体内が密閉状態にある方がよいことは明らかであるから、排出部に開閉手段を付設し(引例1からみて当然のことである)、またシーケンス制御装置として滅菌処理時に前記開閉手段を閉状態になるように制御することは格別の創意力を必要とすることとは云えない。
したがって、本願発明は、引例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-14 
結審通知日 2004-12-14 
審決日 2005-01-11 
出願番号 特願平4-149705
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 克夫  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 野田 直人
西村 和美
発明の名称 オートクレーブ装置  

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