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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C09D |
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管理番号 | 1112553 |
審判番号 | 不服2003-15972 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-05-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-08-19 |
確定日 | 2005-03-02 |
事件の表示 | 平成6年特許願第284114号「カチオン電着水性塗料組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成8年5月14日出願公開、特開平8-120222〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年10月25日の出願であって、平成15年7月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付け手続補正書により明細書の補正がなされたものである。 2.平成15年8月19日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年8月19日付け手続補正を却下する。 [理由] 本件補正により、特許請求の範囲は、次のように補正された。 「【請求項1】ウレトジオン基とイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート化合物(a)、ビスフェノールA・ジグリシジルエーテル、ポリカーボネートポリオール又はポリカプロカクトンジオール、N-メチルエタノールアミンからなるアミン変性エポキシ樹脂からなる活性水素化合物(b)、及びブロック剤(c)を反応させて得られる、ブロックイソシアネート基と活性水素基を含有し、カチオン性基含有量がKOH(mg/g)単位で3〜30である自己硬化性樹脂、並びにウレトジオン基解離促進剤を主成分とするカチオン電着水性塗料組成物。」 一方、本件補正前の特許請求の範囲(平成15年7月7日付け手続補正書による補正)には、次のように記載されている。 「【請求項1】ウレトジオン基とイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート化合物(a)、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂のエポキシ基にカチオン化剤を反応させたものを含有する活性水素化合物(b)及びブロック剤(c)を反応させて得られる、ブロックイソシアネート基と活性水素基を含有し、カチオン性基含有量がKOH(mg/g)単位で3〜30である自己硬化性樹脂を主成分とするカチオン電着水性塗料組成物。 【請求項2】活性水素化合物(b)が、ビスフェノールA・ジグリシジルエーテル、ポリカーボネートポリオール又はポリカプロカクトンジオール、N-メチルエタノールアミンからなるアミン変性エポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1記載のカチオン電着水性塗料組成物。」 すなわち、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1において、カチオン電着水性塗料組成物の成分として、新たにウレトジオン基解離促進剤を追加することを含む補正であり、この組成物の成分として新たな成分を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮ではあるが、補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものではないので、特許法第17条の2第3項第2号の規定に該当するものではない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成15年8月19日付け手続補正が上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成15年7月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、下記のとおりである。 「【請求項1】ウレトジオン基とイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート化合物(a)、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂のエポキシ基にカチオン化剤を反応させたものを含有する活性水素化合物(b)及びブロック剤(c)を反応させて得られる、ブロックイソシアネート基と活性水素基を含有し、カチオン性基含有量がKOH(mg/g)単位で3〜30である自己硬化性樹脂を主成分とするカチオン電着水性塗料組成物。」 (2)引用刊行物 現査定の拒絶の理由に引用された、特開平2-11669号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「酸で部分的に中和されると水分散性を有するカチオン基及び活性水素含有樹脂(成分1)とイソシアネヌレート、アロハネート、及び又はビュウレット構造を有するポリイソシアネートとオキシム、アセチルアセトン、マロン酸ジエステル及び又はアセト酢酸エステルから選ばれるブロック剤との反応生成物(成分2)からなるカチオン電着塗料組成物。」(特許請求の範囲、請求項1)に係る発明が記載され、「本発明に用いる、成分1としては、たとえばエポキシ基含有樹脂にカチオン化剤を反応させたもの及び又は・・・・・が挙げられる。前記エポキシ基含有樹脂としては、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとから合成されるポリエポキシ樹脂、・・・・・が挙げられる。」(2頁右上欄13行〜左下欄9行)と、また、「本発明の成分2として用いられるものは、・・・ポリイソシアネート化合物の1種又は2種以上の混合物とブロック剤としてのオキシム・・・・とを反応させて得られる。」(3頁右下欄10行〜4頁左上欄4行)と記載されている。 同じく引用された、特開平4-305566号公報(以下、「刊行物2」という。)には、ウレトジオン基とイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート及びその製法に関し、「本発明はまた、これらのポリイソシアネートを、随意にイソシアネート基に対するブロック剤でブロックして、ポリウレタン被覆用組成物におけるイソシアネート成分として用いることに関する」(段落【0007】)と記載され、ブロック剤の一つとして「オキシム」が挙げられ(段落【0018】)、「それらは・・・一成分系又は二成分系のポリウレタン被覆用組成物の製造のための価値ある出発物質である」(段落【0016】)、「本発明により得られたポリイソシアネートが焼付けラッカーに用いられる場合、それらのNCO基は、適当なブロッキング剤との反応により・・・公知のやり方で完全に又は部分的にブロックされる。」(段落【0017】)と説明されている。 同じく引用された、特開昭53-23397号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「ウレトジオン基及びイソシアヌレート基をもち、そのイソシアネート基の一部に単官能性活性水素含有化合物を、残部に二官能性活性水素含有化合物をそれぞれ付加した脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートからなる自己硬化性液状ポリイソシアネート付加物」(特許請求の範囲第1項)が記載され、「本発明における単官能性活性水素含有化合物とは、水酸基、アミノ基及びカルボキシル基の中から選ばれる活性水素含有基1個を有する化合物であり、二官能性活性水素含有化合物とは水酸基及びアミノ基の中から選ばれる活性水素含有基2個を有する化合物である」(3頁左上欄9〜14行)とあり、好適な単官能性活性水素含有化合物としてメタノール、エタノール、n-ブタノールなどが(4頁右下欄)、二官能性活性水素含有化合物としてはエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられている(5頁左上欄13行〜右上欄9行)。さらに、「本発明は、塗膜物性特に硬度、耐薬品性、耐溶剤性を改善するために、ウレトジオン基に加えてイソシアヌレート基の所要量を導入した脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートを用いると共にそのイソシアネート基の一部にあらかじめ比較的分子量の小さい単官能性活性水素含有化合物を付加させることにより硬化温度を著しく低下させたものである。」(3頁左上欄末行〜右上欄7行)とあり、「さらに本発明の付加物は加熱によってウレトジオン基が開裂してイソシアネート基が再生されることによって硬化するので、特に硬化剤を加えることなく架橋硬化し、しかもブロック剤が脱離することなく有効に使用できる利点を有している。」(6頁左上欄下から5行〜右上欄1行)とあり、「プレブロック剤とはあらかじめ部分付加させる単官能性活性水素含有化合物のことであり、ブロック剤とはプレブロック剤を付加して得られたポリイソシアネート部分付加物に付加させる二官能性活性水素含有化合物のことである。」(6頁右上欄12〜17行)と説明されている。 また、拒絶査定時に周知技術を裏付けるものとして提示した本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-57184号公報(特に、段落【0044】参照)、特開平6-279715号公報(特に、段落【0046】参照)及び特開平5-320546号公報(特に、段落【0010】参照)(以下、まとめて「参考文献」という。)には、カチオン電着塗装法において、樹脂(主剤)と架橋剤の二剤を用いる方法(外部架橋タイプ)も、樹脂中にブロックイソシアネート基などの架橋性基を有する自己架橋型樹脂を主剤として用いる方法(自己架橋タイプ)も、いずれも選択可能であることが記載されている。 (3)対比、判断 本願発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、両者は、「イソシアネート基と、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂のエポキシ基にカチオン化剤を反応させたものを含有する活性水素化合物との反応により硬化皮膜を形成する、ブロックイソシアネート基の存在下に活性水素基を含有する前記樹脂を主成分とするカチオン電着水性塗料組成物」という点では一致するものの下記の点で相違している。 [相違点1]主成分が、本件発明は、一成分である、「ポリイソシアネート化合物(a)、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂のエポキシ基にカチオン化剤を反応させたものを含有する活性水素化合物(b)及びブロック剤(c)を反応させて得られる、ブロックイソシアネート基と活性水素基を含有する自己硬化性樹脂」であるのに対して、刊行物1に記載された発明は、ポリイソシアネートとブロック剤との反応生成物であるブロック化ポリイソシアネート化合物と、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンから得られるエポキシ樹脂のエポキシ基にカチオン化剤を反応させたものを含有する活性水素化合物との二成分の混合物である点。 [相違点2]ポリイソシアネート成分が、本件発明ではウレトジオン基とイソシアヌレート基を含有するものであるのに対して、刊行物1に記載された発明ではイソシアヌレート基を含有するものの、ウレトジオン基を含有していない点。 [相違点3]エポキシ樹脂のカチオン性基含有量が、本件発明は、KOH(mg/g)単位で3〜30であるのに対して、刊行物1に記載された発明では明記されていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 相違点1について カチオン電着塗装法において、樹脂(主剤)と架橋剤の二剤を用いる方法(外部架橋タイプ)も、樹脂中にブロックイソシアネート基などの架橋性基を有する自己架橋型樹脂を主剤として用いる方法(自己架橋タイプ)も、いずれも選択可能であることは、前記参考文献にみられるように当業者に周知のことであり、どちらのタイプを選択するかは当業者が他の要件を考慮して適宜に決め得る程度のことであり、刊行物1に記載された発明において、それを自己硬化性樹脂に変更することができないという特別の事情もみあたらず、刊行物1に記載された樹脂と架橋剤の二剤からなる発明を、それに対応する一成分である自己硬化性樹脂に変更することは当業者にとって格別困難なことではなく、それによる効果も知られている範囲のものである。 相違点2について 刊行物2には、ウレトジオン基とイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートが、一成分又は二成分系のポリウレタン被覆用組成物の出発物質であり、公知のやり方で完全に又は部分的にブロックされて使用されることが記載されている。また、刊行物3には、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基をもち、イソシアネート基の一部に本願発明でいうブロック剤に該当する単官能性活性水素含有化合物を、残部に硬化皮膜の樹脂の構成成分となる二官能性活性水素含有化合物をそれぞれ付加したポリイソシアネート付加物が示され、このポリイソシアネート付加物が加熱によってウレトジオン基が開裂してイソシアネート基が再生され硬化反応に寄与することが示され、かつ、ウレトジオン基を導入することにより分解離脱するブロック剤の量を減らすことができるという効果が示されている。刊行物2及び3にはエポキシ樹脂についての記載はないが、イソシアネート基と活性水素含有基との反応という点では同じであり、かつ刊行物2及び3の塗料は溶剤型で、刊行物1記載の水性型のものとは相違するが、イソシアネート基と活性水素含有基との反応においては溶剤型であろうと水性型であろうと格別の違いはないので、刊行物1記載の発明において、熱により分解離脱するブロック剤の量を減らしながら硬化反応に寄与するイソシアネート基の量を確保するために、使用するイソシアネート化合物として刊行物2及び3により公知のウレトジオン基とイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを用いることは当業者にとって容易なことである。 相違点3について エポキシ樹脂のカチオン性基含有量は、基本的には、樹脂が水に分散安定する程度に存在すればよいものであるから、電着塗装が好適なものとなるよう考慮して、当業者が適宜決めることができるものである。 さらに、刊行物3には、ウレトジオン基に加えてイソシアヌレート基の所要量を導入した脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートを用いるとともにそのイソシアネート基の一部にあらかじめ比較的分子量が小さい単官能性活性水素含有化合物を付加させることにより硬化温度を著しく低下させることできるという本願発明の効果が示され、かつ、本願明細書には、自己硬化性で、かつ水性であることにより奏される格別の効果の記載も存在しないから、本願発明の効果は予測しうる範囲を超えるものではない。 請求人は、刊行物3には、硬化反応に関与するイソシアネート基がブロックイソシアネート基の解離によるイソシアネート基をも用いることを示唆する記載がないと主張するが、刊行物3に記載された「イソシアネート基の一部に付加した単官能性活性水素含有化合物(プレブロック剤)」は、本願発明のブロック剤に相当し、剤自体も同じもので、硬化の温度条件も変わりがないので、加熱によりプレブロック剤の解離が起こり、そのイソシアネート基も硬化反応に関与しているものと解される(刊行物3でブロック剤といっているのは、二官能性活性水素含有化合物のことで、これは脱離することなく硬化皮膜の樹脂の構成成分となるものである。)。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1ないし刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができるものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできないので、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-12-27 |
結審通知日 | 2005-01-04 |
審決日 | 2005-01-18 |
出願番号 | 特願平6-284114 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(C09D)
P 1 8・ 121- Z (C09D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉住 和之 |
特許庁審判長 |
脇村 善一 |
特許庁審判官 |
後藤 圭次 佐藤 修 |
発明の名称 | カチオン電着水性塗料組成物 |