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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1112563
審判番号 不服2001-19261  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-06-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-29 
確定日 2005-03-02 
事件の表示 平成 9年特許願第526147号「香料を担持するマイクロカプセル接着剤を備えた衛生ナプキン」拒絶査定不服審判事件〔平成9年7月24日国際公開、WO97/25955、平成11年 6月15日国内公表、特表平11-506690〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、1997年(平成9年)1月16日(パリ条約による優先権主張1996年1月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成13年7月18日付で拒絶査定がなされ、同年10月29日に上記拒絶査定を不服とする審判請求がなされるとともに、同年11月28日付で明細書についての手続補正がなされたものである。
上記の補正は、特許請求の範囲の記載が疑義を生じさせる可能性がある事項を誤記として、それらの事項を、願書に最初に添付された明細書の記載の範囲内で補正するものにすぎないものと認められるので、本願請求項1〜16に係る発明は、平成13年11月28日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜16に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。
「縦軸、横軸、縦端、終端及び中心部分を有する衛生ナプキンであって、
液体透過性トップシート、
トップシートに接合され外側表面と内側表面とを有する液体不透過性バックシート、
トップシートとバックシートとの間に配置された吸収性コア、
着用者の下着に衛生ナプキンを固定するためにバックシートの外側表面に固定され、衛生ナプキンが着用者の下着に係合する前に接着剤層を保護するためにその上にリリース裏当てを有する接着剤層を備えた取付システム、及び
取付システムに少なくとも部分的に埋め込まれ、着用者の下着と衛生ナプキンとの係合の間に定常状態で香気を放出し拡散させる複数の香料充填マイクロカプセルを備えた、着用者の下着に配置するための衛生ナプキン。」(以下、「本願発明1」という。)

2.引用文献等
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、米国特許第4186743号明細書(1980年2月5日特許、以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)本発明は接着による取り付け手段を有し、使用中にナプキンに吸収保持される体液の不快な臭気をマスキングし、あるいは減少させるための香料あるいは消臭剤を備える衛生ナプキンに関する。(第1欄第5〜10行の記載参照)
(b)本発明によれば、香料あるいは他の消臭剤が使用時にのみ放出され、それ以前には放出されないようにされた衛生ナプキンが提供される。(第2欄第38〜41行の記載参照)
(c)衛生ナプキン10は、吸収体またはパッド12、液体透過性カバー14、液体不透過性バリヤーシート20を備え、バリヤーシート20とカバー14とは吸収体を包むように周知のやり方で接合されている。(第3欄第22〜64行の記載参照)
(d)バリヤーシート20の外側表面に感圧接着剤の層がナプキンの長手方向に帯状に延びる少なくとも1つの細幅要素22を形成して設けられており、この接着剤はナプキンを着用者の下着の股下部に接着し、使用の間、適切な位置に保持する。(第3欄第65行〜第4欄第4行の記載参照)
(e)接着要素は、帯状接着剤22の上を被覆する剥離可能な保護ストリップ24によって使用前に接着剤が汚れたり、好ましくない接着をすることから保護されており、使用の直前に保護層24が剥離される。(第4欄第17〜31行の記載参照)
(f)保護ストリップ24の接着要素22に接する表面30には香料のような消臭構成物を含有する多数の小さな壊れやすいカプセルすなわちマイクロカプセルを備えている(第4欄第33〜45行の記載参照)
(g)第4図の右側には、ストリップ24が使用前の保護位置にあるとき少なくともいくつかのマイクロカプセル34が接着剤22に埋設され保持されている態様が示され、第4図の左側には、剥離動作によってマイクロカプセルが破裂し消臭剤36が放出される態様が示されている。(第4欄第55〜第5欄第2行の記載参照)
したがって、引用文献1には、下記の発明が記載されているということができる。
「液体透過性カバーシート14、カバーシートに接合される液体不透過性バリヤーシート20、カバーシートとバリヤーシートとの間に配置された吸収体12、着用者の下着に衛生ナプキンを固定するためにバリヤーシートの外側表面に設けられ、使用前に接着剤を保護するためにその上にリリース可能な保護ストリップ24を有する接着剤層22、及び接着剤層22に少なくとも部分的に埋め込まれ、香気を放出する複数の香料充填マイクロカプセルを備えた衛生ナプキン」(以下、「引用発明」という)

3.対比・判断
本願発明1と上記引用発明とを対比する。
引用発明における「液体透過性カバーシート14」、「液体不透過性バリヤーシート20」、「吸収体12」及び「保護ストリップ24」はそれぞれ本願発明1の「液体透過性トップシート」、「液体不透過性バックシート」、「吸収性コア」及び「リリース裏当て」にそれぞれ相当し、引用発明における接着剤層22は、ナプキンを下着に取り付けるためのものであるから、本願発明1の「接着剤層を備えた取付システム」を構成するものであり、衛生ナプキンが「縦軸、横軸、縦端、終端及び中心部分を有する」こと、シートが「外側表面と内側表面とを有すること」は自明のことであり、引用発明の衛生ナプキン及び、バリヤーシートもそのようなものであることは、第1図からみても明らかである。また、引用発明においてマイクロカプセルから放出された香料は当然香気を発散するので、本願発明1と引用発明とは、
「縦軸、横軸、縦端、終端及び中心部分を有する衛生ナプキンであって、
液体透過性トップシート、
トップシートに接合され外側表面と内側表面とを有する液体不透過性バックシート、
トップシートとバックシートとの間に配置された吸収性コア、
着用者の下着に衛生ナプキンを固定するためにバックシートの外側表面に固定され、衛生ナプキンが着用者の下着に係合する前に接着剤層を保護するためにその上にリリース裏当てを有する接着剤層を備えた取付システム、及び
取付システムに少なくとも部分的に埋め込まれ、香気を放出し拡散させる複数の香料充填マイクロカプセルを備えた、着用者の下着に配置するための衛生ナプキン。」
である点で一致しており、本願発明1が、香料充填マイクロカプセルについて、「着用者の下着と衛生ナプキンとの係合の間に定常状態で」香気を放出し拡散させるとしているのに対し、引用発明では、そのようことが直接言及されていない点でのみ一応の相違がある。
しかしながら、一般に、衛生ナプキンにおいて、使用時の不快臭の隠蔽や爽快感の発生のために芳香作用を付与する場合、該作用が衛生ナプキンの使用時を通じて定常的に生じるようにすることは、自明の要求であり、芳香作用の継続期間について、芳香剤の種類や量、配置の仕方などによって適宜コントロールすることも本願出願前各種試みられていることから見て、当業者が引用文献1に接したとき、引用発明においても、使用直前に保護層を剥離され、放出可能とされた香料が使用時を通じて芳香作用を発揮するようにされているものと解釈するのが普通であるものと認められるので、本願発明1が「定常状態で」香気を放出し発散させると規定した点で引用発明と別異の発明を構成するとは認められない。
なお、審判請求人は引用文献1の「insuring that a controlled amount of a deodrant material is made available only just prior to use」の記載をもって、使用の直前のみに一定量の防臭剤の利用を確保するものであり、定常的に常に放出することを教示するものではなく示唆するものでもないばかりか、その必要性乃至課題を示すものではない旨を主張しているが、上記の記載は引用文献1全体の記載から判断して、香料の放出の開始が使用の直前であり、それ以前には放出が生じないことを意味しているが、使用中の放出を何ら排除するものではなく、上記摘示した(a)(b)の記載からは、使用中すなわち着用者の下着と衛生ナプキンの係合の間中、香料が放出発散されていることが推測され、また、衛生ナプキンにおいて、使用中定常的に香料が放出され発散されることの必要性あるいは課題が、当該分野において自明のものであることは上記の通りであるので、請求人の主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるので本願発明1は、引用文献1に記載された発明と認められ、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての検討を行うまでもなく、本願は原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-27 
結審通知日 2004-10-05 
審決日 2004-10-20 
出願番号 特願平9-526147
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上條 のぶよ  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 溝渕 良一
渡邊 豊英
発明の名称 香料を担持するマイクロカプセル接着剤を備えた衛生ナプキン  
代理人 橋本 良郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 坪井 淳  
代理人 風間 鉄也  
代理人 白根 俊郎  

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