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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1112601
審判番号 不服2002-24048  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-12 
確定日 2005-03-03 
事件の表示 平成9年特許願第47522号「リモコン信号受信装置とこれを備えた電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成10年9月11日出願公開、特開平10-243481〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成9年3月3日の出願であって、平成14年11月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成14年12月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正は、請求項2に記載された発明を、
「電子機器の筐体内部に配設された受光装置の前方に導光管を配置して入射光が前記導光管を介して前記受光装置に伝送されるように構成され、前記導光管の入射光側を台形状または円錐台状の内いずれか一方とするとともに、前記導光管の出射光側端面に凹部からなる集光機能を形成し、前記導光管の前記出射光側の凹部内に少なくとも前記受光装置の頭部を収納したことを特徴とするリモコン信号受信装置。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更して新たな請求項1とすることを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正の内、「受光装置」に関する構成は願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されておらず、また、当初明細書等に記載されている「受光素子」と全く同じものであるともいえず、当該受光素子を新規な構成である受光装置に変更する必然性も自明性もないから、補正前の「受光素子」を「受光装置」に変更する補正は、当初明細書等に記載されていた事項の範囲内においてなされたものではない。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合していない。
また、仮に、上記補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとしても、補正前の「受光素子」を「受光装置」に変更する補正は、発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、特許請求の範囲の減縮にはあたらず、誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明でないことは明らかである。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項(補正の目的)のいずれの規定にも適合していない。

(2)独立特許要件
仮に、上記補正にかかる「受光装置」が「受光素子」の誤記であるとすると、上記補正は「受光装置」の構成に「電子機器の筐体内部に配設された」という限定を付加し、また、「リモコン信号受信装置」全体の構成に「入射光が前記導光管を介して前記受光装置に伝送されるように構成され」という限定を付加することにより、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、以下、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて検討する。
[補正後の発明]
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

[引用発明及び周知技術]
A.原審の拒絶理由に引用された実願平1-86733号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開平3-25121号参照、以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「少なくとも、フロントパネルに遠隔操作用赤外光などの操作光の受光部を備えるAV機器において、受光角の広い広角レンズをもつ受光部を備えて構成したことを特徴とするリモコン光受光装置。」(実用新案登録請求の範囲第1項)
ロ.「以下、この考案の実施例を添付した図面の第1図ないし、第5図に沿って説明する。これらの図において符号10は機器のフロントパネルを示し、このフロントパネル10の適当な場所にリモコン信号である赤外線などの到来光の受光部としての受光レンズ11がはめ込まれ、受光レンズ11を透過した赤外光などの到来光は機器内部の受光素子12に対して集光されるようになっている。この受光レンズ11はフロントパネル10の表面から突出して、表面が球面、あるいは部分球面などの曲面を描いており、受光範囲が立体的に180度近くになるようになっている。
例えば、第2図のように基本的には円筒形のレンズを形成して受光端部11Aを球面として、他端面11Bを凹面とし、その中間部を導光部11Cとしたものが用いられる。」(明細書4頁末行〜5頁15行目)
ハ.「そしてまた、第5図に示されるものは受光端面11Aが4角錐形をしたものであり、受光素子12に対する入射角度は広いものにしてある。なお、この角錐は4角錐に限定されるものではない。」(明細書6頁5〜8行目)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「AV機器」はいわゆる「電子機器」であり、「受光レンズ11を透過した赤外光などの到来光は機器内部の受光素子12に対して集光されるようになっている」のであるから「受光素子12」は「機器内部」に配置され、「到来光(即ち、入射光)」は「受光レンズ」を透過して「受光素子」に伝送されるものである。
また、上記「リモコン光受光装置」はいわゆる「リモコン信号受信装置」である。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「電子機器の筐体内部に配設された受光素子の前方に受光レンズを配置して入射光が前記受光レンズを介して前記受光素子に伝送されるように構成され、前記受光レンズの入射光側を球形または角錐形とするとともに、前記受光レンズの出射光側端面に凹部を形成し、前記受光レンズの前記出射光側に前記受光素子を配置したリモコン信号受信装置。」

B.また、同じく原審の拒絶理由に引用された実願平2-96165号の願書に添付した明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開平4-52761号参照、以下、「周知例1」という。)には、以下の事項イ.が記載されており、また例えば特開平2-162897号公報(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項ロ.が記載されている。。
イ.「受光素子と、該受光素子をモールドして成り上部に第一集光レンズを有するモールド樹脂体と、該モールド樹脂体が収納され上部に第2集光レンズを有するケースとを備えた2重レンズ構造を有する光半導体装置において、前記第二集光レンズの外周面が凸面状に形成され、内周面が凹面状に形成され、第二集光レンズが第一集光レンズの同一中心軸上に配置され、第一集光レンズと第二集光レンズとの間に空隙が設けられ、前記両集光レンズは、可視光カツト樹脂から成ることを特徴とする光半導体装置。」(明細書1頁、実用新案登録請求の範囲)
ロ.「(1)受光素子の前方に受光レンズが配設された受光器において、受光素子と受光レンズとの間に透光性を有する充填物が介装されて成ることを特徴とする受光器。
(2)充填物は、透光性材料よりなり受光素子側の一面が受光素子の表面に沿う形状に形成された光屈折部品と、光屈折部品を受光レンズに接着する透光性を有する接着剤とであることを特徴とする請求項1記載の受光器。
(3)充填物は、受光レンズと一体に形成されて成ることを特徴とする請求項1記載の受光器。」(1頁左下欄、特許請求の範囲)

上記周知例1、2の記載によれば、「受光レンズの出射光側の凹部内に受光素子の突部を収納する」ことは周知である。

C.また、例えば実願昭58-53434号の願書に添付した明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭59-161045号参照、以下、「周知例3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「受光素子における受光面の上方に、任意方向からの入射光をプリズム作用で前記受光面に屈折集光するための円錐体または偶数角の多角錐体の何れかからなる集光体を配設したことを特徴とする無指向性光センサ。」(明細書1頁5〜9行目)

上記周知例3の記載によれば、「集光体の入射光側を円錐台状とする」ことは周知である。

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「受光レンズ」は「導光部11C」を備えた「円筒形」のレンズであるから、当該構成は補正後の発明の「導光管」に対応し、また、引用発明の「受光素子」は補正後の発明の「受光装置」に対応している。
また、補正後の発明の「台形状または円錐台状の内いずれか一方」という構成と引用発明の「球形または角錐形」という構成はいずれも「所定の形状」という構成の点で一致している。
また、補正後の発明の「前記導光管の前記出射光側の凹部内に少なくとも前記受光装置の頭部を収納した」構成と引用発明の「前記受光レンズの前記出射光側に前記受光素子を配置した」構成はいずれも「前記導光管の前記出射光側の所定部位に所定形状を有する前記受光装置を配置した」構成であるという点で一致している。
したがって、補正後の発明と引用発明は、
「電子機器の筐体内部に配設された受光装置の前方に導光管を配置して入射光が前記導光管を介して前記受光装置に伝送されるように構成され、前記導光管の入射光側を所定の形状とするとともに、前記導光管の出射光側端面に凹部を形成し、前記導光管の前記出射光側の所定部位に所定形状を有する前記受光装置を配置したことを特徴とするリモコン信号受信装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)「所定の形状」に関し、補正後の発明は「台形状または円錐台状の内いずれか一方」であるのに対し、引用発明は「球形または角錐形」である点。
(相違点2)「凹部」の機能に関し、補正後の発明にかかる凹部は「集光機能」を備えているものであるのに対し、引用発明はその点の構成が不明である点。
(相違点3)「前記導光管の前記出射光側の所定部位に所定形状を有する前記受光装置を配置した」構成に関し、補正後の発明は「前記導光管の前記出射光側の凹部内に少なくとも前記受光装置の頭部を収納した」構成であるのに対し、引用発明は「前記受光レンズの前記出射光側に前記受光素子を配置した」構成である点。

そこで、まず、上記相違点1の「所定の形状」について検討するに、例えば上記周知例3の記載によれば、「集光体の入射光側を円錐台状とする」ことは周知であるところ、当該周知の構成を引用発明の導光管(受光レンズ)の入射光側の形状として採用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の導光管(受光レンズ)の入射光側の形状を、補正後の発明のような、円錐台状を含む概念である「台形状または円錐台状の内いずれか一方」という構成に変更する程度のことは当業者であれば適宜成し得る単なる設計的事項に過ぎないものである。
ついで、上記相違点2の「凹部」の機能について検討するに、引用発明にかかる「凹部」が「集光機能」を備えているか否かは不明であるが、引用発明の「受光レンズ」は上記引用例の記載によれば「受光レンズ11を透過した赤外光などの到来光は機器内部の受光素子12に対して集光されるようになっている」ものであるところ、当該受光レンズの出射光側の端面である凹部が凹レンズの出射光側の機能を有していることは自明のことであり、当該レンズ作用をレンズ本来の目的である集光に利用し、補正後の発明のように「集光機能」を備えるように構成する程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。
ついで、上記相違点3の「前記導光管の前記出射光側の所定部位に所定形状を有する前記受光装置を配置した」構成について検討するに、例えば上記周知例1、2によれば、「受光レンズの出射光側の凹部内に受光素子の突部を収納する」ことは周知であり、当該周知の構成を引用発明に適用することを阻害する要因は何ら見あたらないから、引用発明の「受光素子」に突部を設けるとともに、引用発明の「前記受光レンズの前記出射光側に前記受光素子を配置した」構成を補正後の発明のような「前記導光管(即ち、「導光部11C」を備えた「円筒形」の「受光レンズ」)の前記出射光側の凹部内に少なくとも前記受光装置の頭部(即ち、突部)を収納した」構成とする程度のことは当業者であれば容易なことである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知例1〜3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項(補正の目的)の規定に適合しておらず、また、また仮に適合しているとしても、補正後の発明は独立特許要件を満たしていないので、同法同条第5項の規定により準用する同法第126条第4項の規定に違反するから、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成14年12月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年7月1日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「受光素子の前方に導光管を配置し、前記導光管の出射光側端面に凹部からなる集光機能を形成し、該導光管の前記出射光側の凹部内に少なくとも前記受光素子の頭部を収納したことを特徴とするリモコン信号受信装置。」

2.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は、上記「第2.2.(2)[引用発明及び周知技術]」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から、「受光装置」に関し「電子機器の筐体内部に配設された」という構成を省き、また「リモコン信号受信装置」全体の構成から「入射光が前記導光管を介して前記受光装置に伝送されるように構成され」という構成及び「前記導光管の入射光側を台形状または円錐台状の内いずれか一方とする」という構成を省くとともに、「受光装置」を「受光素子」としたものである。
そうすると、本願発明の構成に前記構成を付加した補正後の発明が上記「第2.2(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知例1〜3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明ならびに上記周知例1〜3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-21 
結審通知日 2005-01-05 
審決日 2005-01-18 
出願番号 特願平9-47522
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
P 1 8・ 575- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 浜野 友茂
衣鳩 文彦
発明の名称 リモコン信号受信装置とこれを備えた電子機器  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  

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