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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25B |
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管理番号 | 1112614 |
審判番号 | 不服2003-20535 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-01-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-23 |
確定日 | 2005-03-03 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第170430号「自動販売機の冷却装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月19日出願公開、特開平 8- 14677〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年6月30日の出願であって、平成15年9月12日付け(発送日:同月24日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月23日に審判請求がなされるとともに、同年11月25日に手続補正がなされたものである。 2.平成15年11月25日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年11月25日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に記載された発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。 「【請求項1】本体内部に隔離して形成された複数の商品収納室にそれぞれ配設された室温センサ及び蒸発器と、これらの蒸発器に分岐した冷媒配管を介して冷媒を供給する共通の圧縮器と凝縮器と電子膨張弁とを備え、前記各蒸発器への冷媒供給は前記各冷媒配管に設けられた各電磁弁の開閉により制御される自動販売機の冷却装置において、前記各室温センサからの温度情報に基づいて前記各商品収納室の温度が設定温度より低くなったことを検知した場合には前記各電磁弁を閉じる一方、全ての前記電磁弁を閉じる際には最後の前記電磁弁を閉じる前に前記圧縮器を先に停止させる制御部を備えたことを特徴とする自動販売機の冷却装置。」 上記補正は、「共通の圧縮器とを備え」を「共通の圧縮器と凝縮器と電子膨張弁とを備え」と、するものであって、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用した特開平5-325005号公報(以下、「引用例1」という。」)には、図面とともに次の記載がある。 ・「【0001】【産業上の利用分野】この発明は、互いに隔離された複数の商品用格納室それぞれに蒸発室と電磁弁との直列接続されたユニットが設けられ、この各ユニットが並列に接続され、これに共通な凝縮器および圧縮機が直列に接続され、前記各格納室の室温に基づいて前記各電磁弁の開,閉と、前記圧縮機の運転,停止とが制御される装置であって、(中略)自動販売機の冷却装置に関する。」 ・「【0002】【従来の技術】(中略)図3において、商品用の各格納室1,2,3は互いに隔離され、それぞれに温度センサ11,12,13と、蒸発器21,22,23と、電子膨張弁31,32,33と、電磁弁41,42,43とが設けられる。これらの各温度センサ、各電子膨張弁、各電磁弁は、各格納室ごとに直列接続され、この各直列接続されたものが並列接続され、これに共通な凝縮器6 および圧縮機7 が直列に接続される。」 ・「【0003】各制御部9,10は、(中略)各温度センサによって計測された各格納室の室温に基づいて、各電磁弁を開閉して室温制御をするとともに、各蒸発器の過熱度に基づいて、各電子膨張弁の開度を調節して冷媒分配制御をする。なお各蒸発器の過熱度は、その蒸発器の出入口の冷媒温度の差分であって、図示してない温度センサによって計測される。」 ・「【0004】(中略)室温制御は、全格納室に共通に定められる上限値,下限値、たとえば設定上限値8℃,設定下限値1℃に基づき、各格納室1,2,3の室温がそれぞれ独立にオン・オフ制御される。」 また、上記記載において、各温度センサからの温度情報に基づいて各商品用格納室の温度が設定温度より低くなったことを検知した場合には各電磁弁を閉じる一方、すべての電磁弁を閉じる際には圧縮器を停止させることは、明らかなことである。 したがって、引用例1には次の発明が記載されている(以下、「引用例1発明」という。」)。 「本体内部に隔離して形成された複数の商品用格納室にそれぞれ配設された温度センサ、蒸発器及び電子膨脹弁と、これらの蒸発器に分岐した冷媒配管を介して冷媒を供給する共通の圧縮器と凝縮器とを備え、前記各蒸発器への冷媒供給は前記各冷媒配管に設けられた各電磁弁の開閉により制御される自動販売機の冷却装置において、前記各温度センサからの温度情報に基づいて前記各商品用格納室の温度が設定温度より低くなったことを検知した場合には前記各電磁弁を閉じる一方、すべての電磁弁を閉じる際には圧縮器を停止させる制御部を備えた自動販売機の冷却装置。」 また、原査定の拒絶の理由に引用した実願昭61-131249号(実開昭63-37972号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。」)には、図面とともに次の記載がある。 ・「[考案の目的] (産業上の利用分野) 本考案は、一台の室外機に複数の室内ユニットを接続したマルチ空気調和機に係り、特にその室内ユニットの総てが停止されたとき、次の起動が支障なく行なえるマルチ空気調和機に関するものである。 (従来の技術) マルチ空気調和機は、一台の室外機に複数台の室内ユニットを接続したものである。これは第3図に示すように構成されている。bは圧縮機、dは窒外熱交換器、e1〜e3は複数台の室内熱交換器、g1〜g3は電動膨張弁である。 このマルチ空気調和機において、冷暖運転時、窒内熱交換器e1〜e3(室内ユニット)が同時に停止するとき、これらの室内熱交換器e1〜e3内に冷媒が寝込むのを防止するため、圧縮機bを停止させると共に電動膨張弁g1〜g3を閉じるようにしている。なお、f1〜f3は膨張弁で、h1〜h3は電磁弁である。 (考案が解決しようとする問題点) しかしながら、室内ユニットの停止に合せて圧縮機bを停止させて電動膨張弁g1〜g3を全閉とすると、冷凍サイクル内の高圧が下がっていないため第4図に示すように高圧カットされ、圧縮機b内圧力が高くなって、圧縮機bの高圧設定値より高くなり、次に再起動しようとしても圧縮機bの保護回路が働いて起動できなくなる問題が生じる。 本考案は、上記事情を考慮してなされたもので、上述したマルチ空気調和機において、室内ユットを総て停止するときに、室内ユニット内に冷媒が寝込ず、しかも圧縮機内圧力が高くなることがないマルチ空気調和機を提供することを目的とする。 [考案の構成] (問題点を解決するための手段及び作用) 本考案は上記の目的を達威するために、一つの室外機に複数の室内ユニットを接続すると共に、この各室内ユニットの冷媒出口と入口にそれぞれ電磁弁と電動膨張弁とを接続したマルチ空気調和機において、総ての室内ユニットの停止時に、圧縮機にその停止を命令すると共にその圧縮機の停止を検出する手段と、圧縮機の停止後遅延させて上記電動膨張弁にその全閉を命令すると共にその電動膨張弁の全閉を検出する手段と、電動膨張弁の全閉後上記電磁弁にその全閉を命令する手段とから成る遅延制制装置を設けたもので、圧縮機を停止したのちサイクル内の圧力が低くなったときに電磁弁と電動膨張弁を全閉にすることで圧縮機内圧力が高圧になることがなく再起動が支障なく行なえるようにしたものである。」(第1頁第17行ー第4頁第8行) (3)対比 本願補正発明と上記引用例1発明とを比較する。 引用例1発明の「商品用格納室」は本願補正発明の「商品収納室」に相当し、また、同様に「温度センサ」は「室温センサ」に相当する。 したがつて、両者は、 「本体内部に隔離して形成された複数の商品収納室にそれぞれ配設された室温センサ及び蒸発器と、これらの蒸発器に分岐した冷媒配管を介して冷媒を供給する共通の圧縮器と凝縮器とを備え、前記各蒸発器への冷媒供給は前記各冷媒配管に設けられた各電磁弁の開閉により制御される自動販売機の冷却装置において、前記各室温センサからの温度情報に基づいて前記各商品収納室の温度が設定温度より低くなったことを検知した場合には前記各電磁弁を閉じる一方、すべての電磁弁を閉じる際には圧縮器を停止させる制御部を備えた自動販売機の冷却装置。」の点で一致し、 次の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明では、共通の電子膨張弁を備えるのに対して、引用例1発明では、各商品収納室に対応した電子膨張弁を備える点。 [相違点2] 本願補正発明では、「全ての電磁弁を閉じる際には最後の電磁弁を閉じる前に圧縮器を先に停止させる」のに対して、引用例1発明では、単に「すべての電磁弁を閉じる際には圧縮器を停止させる」点。 (4)判断 相違点1について 各商品収納室に対応した電子膨張弁を備えることに代えて、共通の電子膨張弁を備えることは、単なる設計事項である。 相違点2について 引用例2には、マルチ空気調和機の冷凍回路において、すべての室内ユニット停止時に、室内熱交換器への冷媒の供給量を調整する電動膨脹弁の全閉と圧縮機の停止とをほぼ同時に行うと、冷凍サイクル内が高圧になり不都合が生じることから、該電動膨脹弁を閉じる前に圧縮機を先に停止させるようにした点が記載されている。 したがって、自動販売機の冷凍回路に関する引用例1発明において、すべての電磁弁を閉じ圧縮器を停止させるのに、「最後の電磁弁を閉じる前に圧縮器を先に停止させる」ことは、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1及び引用例2に記載された事項から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 本件補正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成15年11月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年12月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。 「【請求項1】 本体内部に隔離して形成された複数の商品収納室にそれぞれ配設された室温センサ及び蒸発器と、これらの蒸発器に分岐した冷媒配管を介して冷媒を供給する共通の圧縮器とを備え、前記各蒸発器への冷媒供給は前記各冷媒配管に設けられた各電磁弁の開閉により制御される自動販売機の冷却装置において、前記各室温センサからの温度情報に基づいて前記各商品収納室の温度が設定温度より低くなったことを検知した場合には前記各電磁弁を閉じる一方、全ての前記電磁弁を閉じる際には最後の前記電磁弁を閉じる前に前記圧縮器を先に停止させる制御部を備えたことを特徴とする自動販売機の冷却装置。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用した引用例、及びその記載事項は前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「共通の圧縮器と凝縮器と電子膨張弁とを備え」を「共通の圧縮器とを備え」としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-12-28 |
結審通知日 | 2005-01-04 |
審決日 | 2005-01-19 |
出願番号 | 特願平6-170430 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25B)
P 1 8・ 575- Z (F25B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川上 佳、長崎 洋一、小野 孝朗 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
櫻井 康平 原 慧 |
発明の名称 | 自動販売機の冷却装置 |
代理人 | 篠部 正治 |