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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1112634
審判番号 不服2002-820  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-17 
確定日 2005-03-04 
事件の表示 平成11年特許願第256532号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年2月29日出願公開、特開2000-61101〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯・本願発明
本願は、平成2年12月17日に出願した特願平2-411544号の一部を平成11年9月10日に特願平11-256532号として新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年3月13日付の手続補正書及び平成16年11月15日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「単一の玉タンクと、該単一の玉タンクと連通し且つ遊技者が借り受ける貸出玉と入賞に基づく景品玉を排出する単一の玉排出装置と、該単一の玉排出装置から排出された貸出玉又は景品玉を発射位置へ一個づつ導くための上皿と、該上皿に貯留できない余剰の景品玉を溜める下皿と、を備えたパチンコ機において、
前記貸出玉と景品玉とを前記単一の玉排出装置の下方で並列状に形成される別々の通路を介して別々の出口より前記上皿に排出されるように形成されると共に、前記景品玉が排出される通路のみが前記下皿に連通するように形成されていることを特徴とするパチンコ機。」

2.引用例に記載の発明
当審は、平成16年9月6日付の拒絶理由で、本願発明は、刊行物である下記の第1乃至7引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨通知した。
第1引用例:特開昭64-34390号公報
第2引用例:特開昭63-102783号公報
第3引用例:特開昭62-120866号公報
第4引用例:特開平1-136681号公報
第5引用例:実願昭62-3090号(実開昭63-111184号)
のマイクロフイルム
第6引用例:実願昭63-112709号(実開平2-32889号)
のマイクロフイルム
第7引用例:特開平1-280488号公報

(1)第1引用例に記載の発明
i.第1引用例〔特開昭64-34390号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「遊技用媒体を払出す遊技用媒体払出手段を備えた遊技機であって、該遊技機は、所定の遊技用カードが挿入可能なカード挿入口と、前記カード挿入口から挿入されたカードが遊技用媒体の貸出し可能なカードか否かを判別するカード判別手段と、前記カード判別手段が貸出し可能なカードを判別した出力に応答して、所定数量の遊技用媒体を前記遊技用媒体払出手段から払出し、遊技機の賞態様に応じて所定数量の遊技用媒体を前記遊技用媒体払出手段から払出すことを特徴とする、遊技機。」(第1頁左欄第5〜18行)、
「パチンコ遊技機300の前面枠302には、遊技盤304が形成されており、その遊技盤304により遊技領域305が形成されている。前面板330には、打球供給皿324が設けられており、景品玉出口323から払出された遊技用媒体の一例であるパチンコ玉を一時貯留するとともに、パチンコ玉を1つずつ打球発射装置372(第9図参照)に送り込み、遊技者による操作ハンドル336の操作により、パチンコ玉を1つずつ前記遊技領域305に打込み得るように構成されている。また、パチンコ遊技機300の下方部分には、余剰玉受皿332が設けられており、前記打球供給皿324に貯留されているパチンコ玉が満杯になった場合に、その一部を余剰玉出口334から放出し余剰玉受皿332により貯留できるように構成されている。」(第6頁右上欄第1〜16行)、
「前面枠302には、貸玉中表示器338が形成されており、玉を貸出すための装置が駆動中である旨を表示する。またその下方には、カード挿入口340が設けられており、パチンコカードを垂直方向に挿入し得るように構成されている。さらにその下方には、金額表示器342および貸玉信号指令ボタン344が設けられている。金額表示器342は、パチンコカードに記憶されていた貸玉可能な金額を表示するためものである。貸玉信号指令ボタン344は、「1,000円」「500円」「300円」「200円」「100円」の5つのボタンを含み、いずれかのボタンが押されることにより、表示金額に応じた金額分のパチンコ玉の貸出表示をするものである。そして、パチンコカードを挿入し貸玉信号指令ボタン344を操作することにより、パチンコ玉が景品玉出口323から貸出されるように構成されている。なお、貸玉信号指令ボタンは、上記実施例に限らず、単一の金額ボタン(100円,200円など)を設け、金額ボタンの押圧毎に対応した貸玉を払出すようにしてもよい。」(第6頁右下欄第18行〜第7頁左上欄第18行)、
「これら入賞玉検出器の検出出力に基づいて、遊技用媒体払出手段の一例である景品玉払出装置352が駆動制御され、景品玉払出装置内のパチンコ玉を景品玉通路354側に送り出し、所定量の景品玉を景品玉出口323から打球供給皿324(第8図参照)に所定量払出すように構成されている。景品玉通路354には、その途中箇所に切換弁358が設けられており、玉抜きソレノイド356によりこの切換弁358が切換えられ、パチンコ玉の落下径路が景品玉通路360または玉抜き通路362のどちらかに択一的に切換えられるように構成されている。この玉抜き通路362は、遊技場の終了時などにパチンコ遊技機内に残っているパチンコ玉を抜取るためのものである。図中、372は打球発射装置であり、打球モータ374と、それによって駆動される打球杆376とで構成されており、打球供給皿324(図8参照)から1つずつ送られてきたパチンコ玉を遊技領域内に打込めるように構成されている。図中、340はカード挿入口であり、346はカード制御ボックス、348は選択制御ボックスであり、貸玉信号指令ボタン344(第8図参照)に対応しているものである。このカード挿入口340からカードを挿入し、貸玉信号指令ボタン344(第8図参照)を操作することにより、後述するように、景品玉払出装置352が駆動制御され、所定量のパチンコ玉が貸出されるように構成されている。」(第7頁右上欄第18行〜右下欄第6行)、
「取付基板558に形成された景品玉連絡口572から転がり出た景品玉は、搬送ベルト562の景品玉載置用凹部570へ順次1個ずつ載り、搬送ベルト562の移動に伴って主回転プーリ564側へ送られる。主回転プーリ564近傍には景品玉検出器574が取付けられており、搬送ベルト562によって搬送されて景品玉出口576へ放出される景品玉を1個ずつ検出可能になっている。したがって、景品玉払出開始信号に基づいて駆動モータ568の回転を開始し、この景品玉検出器574によって払出される景品玉数を計数しながら所定数になったときに駆動モータ568を停止するようにすれば、任意の数の景品玉を払出すことが可能である。なお、貸玉指令の信号によっても、上記景品玉払出装置を駆動させて対応した貸玉を払出すようにしている。払出される景品玉は景品玉出口576を通って下方へ落下する。なお、578は、搬送ベルト562によって送られる景品玉を、1つの景品玉載置用凹部570に対して必ず1個になるように規制するための、言わば玉をならすための景品玉整流突起である。なお、第14図に示すように、景品玉出口576を落下する景品玉は、景品玉通路544へ至る。なお、景品玉払出装置は上記実施例に限らず種々の変形例が考えられる。」(第10頁左上欄第16行〜左下欄第3行)。
ii.上記の摘記事項及び図面第8図〜第14図の記載からみて、第1引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「玉タンク350と、該玉タンク350と連通し且つ遊技者が借り受ける貸玉と入賞に基づく景品玉を排出する景品玉払出装置352と、該景品玉払出装置352から排出された貸玉又は景品玉とからなるパチンコ玉を発射位置へ一個づつ導くための打球供給皿324と、該打球供給皿324に貯留できない余剰の貸玉と景品玉とからなるパチンコ玉を溜める余剰玉受皿332と、を備えたパチンコ遊技機において、
前記貸玉と景品玉とからなるパチンコ玉が前記景品玉払出装置352の下方で形成される景品玉通路354を介して景品玉出口323より前記打球供給皿324に排出されるように形成されると共に、前記貸玉と景品玉とからなるパチンコ玉が排出される景品玉通路354が前記余剰玉受皿332に連通するように形成されているパチンコ遊技機。」

3.本願発明と引用発明との対比検討
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における、「玉タンク350」、「貸玉」、「景品玉払出装置352」、「打球供給皿324」、「余剰玉受皿332」、「パチンコ遊技機」は、それぞれ、本願発明における、「単一の玉タンク」、「貸出玉」、「単一の玉排出装置」、「上皿」、「下皿」、「パチンコ機」に相当する。
そして、引用発明における「貸出玉と景品玉とからなるパチンコ玉を単一の玉排出装置の下方で形成される景品玉通路354を介して景品玉出口323より上皿に排出されるように形成される」構成は、本願発明における「貸出玉と景品玉とを前記単一の玉排出装置の下方で並列状に形成される別々の通路を介して別々の出口より前記上皿に排出されるように形成される」構成と対比して、「貸出玉と景品玉とを単一の玉排出装置の下方で形成される通路を介して出口より上皿に排出されるように形成される」構成において共通する。
また、引用発明における「上皿に貯留できない余剰の貸出玉と景品玉とからなるパチンコ玉を溜める下皿」及び「貸出玉と景品玉とからなるパチンコ玉が排出される景品玉通路354が下皿に連通するように形成される」構成は、本願発明における「上皿に貯留できない余剰の景品玉を溜める下皿」及び「景品玉が排出される通路のみが下皿に連通するように形成される」構成と対比して、それぞれ、「上皿に貯留できない余剰のパチンコ玉を溜める下皿」及び「パチンコ玉が排出される通路が下皿に連通するように形成される」構成において共通する。
そうすると、本願発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点.「単一の玉タンクと、該単一の玉タンクと連通し且つ遊技者が借り受ける貸出玉と入賞に基づく景品玉を排出する単一の玉排出装置と、該単一の玉排出装置から排出された貸出玉又は景品玉を発射位置へ一個づつ導くための上皿と、該上皿に貯留できない余剰のパチンコ玉を溜める下皿と、を備えたパチンコ機において、
前記貸出玉と景品玉とを前記単一の玉排出装置の下方で形成される通路を介して出口より前記上皿に排出されるように形成されると共に、前記パチンコ玉が排出される通路が前記下皿に連通するように形成されているパチンコ機。」
相違点A.貸出玉と景品玉とを単一の玉排出装置の下方で形成される通路を介して出口より上皿に排出されるように形成される構成として、本願発明は、貸出玉と景品玉とを並列状に形成される別々の通路を介して別々の出口より上皿に排出されるように形成されているのに対して、引用発明は、貸出玉と景品玉とを共通の通路を介して共通の出口より上皿に排出されるように形成されている点。
相違点B.上皿に貯留できない余剰のパチンコ玉を下皿に連通するように形成される通路が、本願発明は、景品玉が排出される通路のみが下皿に連通するように形成されているのに対して、引用発明は、貸出玉と景品玉とが排出される共通の通路が下皿に連通するように形成されている点。

(2)相違点Aの検討
前記相違点Aに係る本願発明の技術的意義は、貸出玉と景品玉のうち、いずれの玉が上皿に排出されたかを確認できるようにすることにある。
ところで、貸出玉と景品玉とを別々の通路を介して別々の出口より上皿に排出することで、遊技者が貸出玉と景品玉のうち、いずれの玉が排出されたかを視認できるようにしたパチンコ機は、周知(例えば、第5、6引用例を参照。)である。
また、貸出玉と景品玉とを排出する通路を並列状に形成することは、別々の通路の配置として単なる設計的事項にすぎない。
そうすると、引用発明に示される、貸出玉と景品玉を排出する単一の玉排出装置を備えたパチンコ機において、その通路及び出口の構成について前記周知技術に基づいて、前記相違点Aに係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

(3)相違点Bの検討
前記相違点Bに係る本願発明の技術的意義は、貸出玉は直ちに遊技に使用するために排出される可能性が高いから、その個数を確認することを含めて上皿に排出されるように形成するとともに、上皿に貯留できない程の余剰が通常景品玉により生じることを踏まえて、余剰の貸出玉が排出される通路のみを下皿に連通するように形成することにあるものと認められる。
ところで、前記相違点Aの検討にて示したように、貸出玉と景品玉とを別々の通路を介して別々の出口より上皿に排出する構成のパチンコ機は、周知(第5、6引用例)であるところ、該周知のパチンコ機においては、その図面に記載されるように、基本的構成として景品玉が排出される通路のみが下皿に連通するように形成するという当時の従来技術がそのまま採用されているものと認められる。
また、引用発明は、貯留できない程の余剰の貸出玉又は景品玉が上皿に貯留されていない限りは、貸出玉は下皿に排出されることなく上皿に排出されるとともに、その後の遊技によって余剰の景品玉が生じたときに、それが下皿に排出される作用機能のものとして、本願発明と同様の技術的意義を有するものである。
そうすると、引用発明に示される、貸出玉と景品玉とが排出される共通の通路が下皿に連通するように形成されている構成に代えて、前記周知のパチンコ機(第5、6引用例)に示される従来技術の構成、あるいは、引用発明に示される前記作用機能に特化させるべく、景品玉が排出される通路のみが下皿に連通するように形成する構成を採用して、前記相違点Bに係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

(4)本願発明の作用効果の検討
本願発明の作用効果は、引用発明に前記周知技術を適用したものにおいて当業者が容易に予測できるものである。

(5)まとめ
よって、本願発明は、第1引用例に記載された発明(引用発明)及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、第1引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-07 
結審通知日 2004-12-15 
審決日 2005-01-17 
出願番号 特願平11-256532
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 白樫 泰子
鉄 豊郎
発明の名称 パチンコ機  
代理人 今崎 一司  

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