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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66F
管理番号 1112773
審判番号 不服2002-19789  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-10 
確定日 2005-03-07 
事件の表示 平成 6年特許願第319316号「膜モジュール用手動運搬作業装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 6月11日出願公開、特開平 8-151197〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年11月29日の出願であって、平成14年9月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年11月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年11月7日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「膜モジュールの胴体の両側を挟んで締め付ける締付機構と、該締付機構の膜モジュール挟み込み部チャッキプレートにチャッキプレートクッションを有し、該締付機構と共に該膜モジュールを任意の角度に回転させて該膜モジュールの姿勢を変える姿勢変更機構とを車両台車に積載してなることを特微とする膜モジュール用手動運搬作業装置。」と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明の構成に欠くことができない事項である「締付機構」について「締付機構の膜モジュール挟み込み部チャッキプレートにチャッキプレートクッションを有し」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭57-151716号(実開昭59-57498号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「車輪を備え人力により移動可能なリフトの昇降枠(Z)に基板(10)を設けて、該基板(10)に、互いに対向して回動する一組の紙リール把持アーム(1a),(1b)と、それぞれの把持アームに連結されこれを駆動する一組の油圧シリンダー(3a),(3b)と、油圧シリンダーに圧力油を供給する手動油圧ポンプ(4)とを備えたアタッチメント(7)を回転軸(6)を介して回動自在に取付け、該基板(10)にストッパー(8)を設ける一方、アタッチメント(7)にストッパー係止孔(9)を回転軸センターに対し90°間隔に設けたことを特徴とする紙リールのハンドリング装置。」(明細書第1頁第5〜16行)
イ.「図において(L)は、車輪を備え人力により移動可能なリフトであって、(H)はリフトを移動させるとき握って操作するハンドルである。リフト(L)に設けられた左右一組の支柱(Ba),(Bb)の間には、手動又は電動の油圧ポンプと油圧シリンダーによって上下する昇降枠(Z)がそれ等の支柱に跨って設けられている。而して、昇降枠(Z)には基板(10)が設けられ、該基板(10)には、互いに対向して回動する一組の紙リール把持アーム(1a),(1b)が回転中心の間隔を離して設けられている矩形枠のアタッチメント(7)が、第7図に示すように回転軸(6)を介して回動自在に取付けられている。」(同第3頁第18行〜同第4頁第11行)
ウ.「上記アタッチメント(7)を形成する矩形枠の長辺側に沿って手動油圧ポンプ(4)が一体的に取付けられており、矩形枠の両側部には油圧シリンダー(3a),(3b)の端部がそれぞれ回動自在に設けられて、シリンダーのピストン側の端部は、上記把持アーム(1a),(1b)の基部に近い個所でそれぞれ該アームに回動自在に連結されている。上記の手動油圧ポンプ(4)はレバー(5)を握って揺動操作により油圧を与えるもので、・・(略)・・。また、上記アームの先端にはそれぞれ把持片(2a),(2b)が回動自在に設けられ、円形のリールに沿い確実に把持できるようになっている。」(同第4頁第12行〜同第5頁第8行)
エ.「昇降枠(Z)に取付けられた基板(10)には、上記の回転軸(6)に近接した位置に、ばねでアタッチメント方向に付勢されたストッパー(8)が設けられており、アタッチメント(7)の枠の背板に、ストッパー(8)の先端部と対応する位置にストッパー係止孔(9)が回転軸のセンターに対し90°間隔に設けられており、アタッチメント(7)を90°毎に位置決めすることができるようになっている。即ち水平に保持された紙リールを90°回転して垂直にして運搬することができる。」(同第5頁第15行〜同第6頁第5行)
オ.「本考案のハンドリング装置を用いて紙リールを運搬操作するときは、第2図に示すようにリールが横積みされているパレット(P)の下の枕木の間にリフト(L)の前方の脚を挿入するようにハンドル(H)を操作して〔第4図参照〕、水平に位置せしめたアタッチメント(7)のアーム(1a),(1b)を手動油圧ポンプ(4)のレバー(5)を揺動操作し紙リールを把持した後、支柱背後の昇降用レバーを操作してこれを持上げる。このとき、レバー(5)の揺動操作により油圧を与えられた圧力油は油圧シリンダーのピストンを作動せしめてアームを回動せしめて紙リールを堅固に把持するのである。次に水平に持ち上げたリールを90°転回させて垂直位置とするが、このときは水平状態に保持していたストッパー(8)を引いてアタッチメントのストッパー係止孔(9)からストッパー(8)の先端部を離脱させ、アタッチメント(7)を手動で90°転回させて90°間隔に設けられた次の係止孔(9)に該先端部を嵌入係止せしめる。次にハンドル(H)を操作して運搬し、紙リールの巻芯にスタンドの軸を通してスタンドに掛けるのである。又は、この逆に、スタンドに掛けてある紙リールを上記と同様に手動油圧ポンプ(5)のレバー(5)を操作して把持して外した後、運搬して90°回転してパレット上に横積みするのである。」(同第6頁7行〜同第7頁第13行)
上記記載事項ア.〜オ.によると、引用例1には、
「紙リールを把持する紙リール把持アーム(1a,1b),把持片(2a,2b),油圧シリンダー(3a,3b),手動油圧ポンプ(4),レバー(5)と、該紙リール把持アーム(1a,1b),把持片(2a,2b),油圧シリンダー(3a,3b),手動油圧ポンプ(4),レバー(5)と共に該紙リールを90°毎に回転させて該紙リールの姿勢を変えるストッパー(8),ストッパー係止孔(9)とをリフト(L)に積載してなる紙リール用ハンドリング装置。」
の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく引用された、実願昭57-114231号(実開昭59-18795号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
カ.「先端部にクランプパッドを枢結する一対のクランプアームを相対向させて設けるとともにその少くとも一方のアームを他方のアーム方向に向けて回動自在に設け、同アームの回動を介して両クランプパッド間にロール状荷役物をクランプする如く設けて成るロールクランプ機構」(明細書第1頁第5〜10行)
キ.「(1)はフォークリフトトラックの本体部であって、同本体部(1)の前部にはマスト(2)がティルトシリンダー(2)′を介して前後傾可能に設けられる。同マスト(2)にはリフトブラケット(3)が昇降自在に吊設され、同リフトブラケット(3)の前面には旋回座(4)が固着される。同旋回座(4)はリフトブラケット(3)側に固着する固定盤(4a)と、同固定盤(4a)に対して遊転自在に支承される回転盤(4b)より成り、同回転盤(4b)にはクランプアーム(5)が取付けられる。同クランプアーム(5)は回転盤(4b)に固着する固定アーム(5a)と、同固定アーム(5a)の基部に対して油圧シリンダー(8)を介して固定アーム(5a)方向に向けて回動自在に支承するスイングアーム(5b)より成り、アーム(5a)(5b)の先端部にはクランプパッド(6)(7)が相対状に枢結される。」(同第5頁第19行〜同第6頁第14行)

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「把持する」は、その作用,機能からみて、本願補正発明の「胴体の両側を挟んで締め付ける」に相当し、以下同様に、「紙リール把持アーム(1a,1b),把持片(2a,2b),油圧シリンダー(3a,3b),手動油圧ポンプ(4),レバー(5)」は「締付機構」に、「把持片(2a,2b)」は「締付機構の挟み込み部チャッキプレート」に、「ストッパー(8),ストッパー係止孔(9)」は「姿勢変更機構」に、「リフト(L)」は「車両台車」に、「ハンドリング装置」は「手動運搬作業装置」に、それぞれ相当する。また、引用例1記載の発明の「紙リール」と本願補正発明の「膜モジュール」とは、「外周面円形の重量物」である点で共通する。
してみると、両者は、
「外周面円形の重量物の胴体の両側を挟んで締め付ける締付機構と、該締付機構の外周面円形の重量物挟み込み部チャッキプレートを有し、該締付機構と共に該外周面円形の重量物を回転させて該外周面円形の重量物の姿勢を変える姿勢変更機構とを車両台車に積載してなる外周面円形の重量物用手動運搬作業装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願補正発明においては、締付機構の外周面円形の重量物挟み込み部チャッキプレートにチャッキプレートクッションを有しているのに対し、引用例1記載の発明においては、締付機構の外周面円形の重量物挟み込み部チャッキプレートにチャッキプレートクッションを有していない点。
[相違点2]本願補正発明の「姿勢変更機構」においては、締付機構と共に外周面円形の重量物を任意の角度に回転させて該外周面円形の重量物の姿勢を変える姿勢変更機構であるのに対し、引用例1記載の発明の「姿勢変更機構」においては、締付機構と共に外周面円形の重量物を90°毎に回転させて該外周面円形の重量物の姿勢を変える姿勢変更機構である点。
[相違点3]本願補正発明においては、外周面円形の重量物が膜モジュールであって、手動運搬作業装置が膜モジュール用であるのに対し、引用例1記載の発明においては、外周面円形の重量物が紙リールであって、手動運搬作業装置が紙リール用である点。

(4)判断
[相違点1]について
フォークリフトトラックにおけるロールクランプ機構において、傷付け防止,滑り止め等を目的として、クランプ対象物をパッド材,ゴムパッド,ラバーパッド等を介在してクランプすることは、周知の技術[必要なら、実願昭54-175984号(実開昭56-92698号)のマイクロフィルム,実願昭56-46374号(実開昭57-158691号)のマイクロフィルム,実願昭61-56709号(実開昭62-171596号)のマイクロフィルム、参照。]である。そうすると、引用例1記載の発明において、上記周知の技術を適用して、締付機構の外周面円形の重量物挟み込み部チャッキプレートにチャッキプレートクッションを有するように構成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項と認められる。
[相違点2]について
引用例2には、上記記載事項カ.キ.によると、フォークリフトトラックにおけるロールクランプ機構において、「旋回座(4)はリフトブラケット(3)側に固着する固定盤(4a)と、同固定盤(4a)に対して遊転自在に支承される回転盤(4b)より成り、同回転盤(4b)にはクランプアーム(5)が取付けられる」技術が開示されている。そして、引用例2には姿勢変更機構について明示されていないが、上記技術のクランプ機構が、クランプ対称物を任意の角度に回転させて該クランプ対象物の姿勢を変える姿勢変更機構を具備することは、周知の技術[必要なら、実公昭61-21517号公報,実願昭56-19590号(実開昭57-135598号)のマイクロフィルム,実願昭56-25152号(実開昭57-138895号)のマイクロフィルム、参照。]である。そうすると、引用例1記載の発明において、引用例2記載の上記技術,周知の技術を勘案して、締付機構と共に外周面円形の重量物を任意の角度に回転させて該外周面円形の重量物の姿勢を変える姿勢変更機構を採用することは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。
[相違点3]について
引用例1記載の発明は、上記記載事項エ.,オ.によると、外周面円形の重量物である紙リールを水平に保持した状態での,若しくは垂直に保持した状態での運搬作業を行うことを目的として、引用例1記載の発明の構成を具備するものと認められる。一方、外周面円形の重量物である膜モジュールの運搬作業についてみても、膜モジュールを水平に保持した状態での,若しくは垂直に保持した状態での運搬作業が行われるものである。そうすると、引用例1記載の発明に接した当業者は、引用例1記載の発明の「紙リール用手動運搬作業装置」を膜モジュールに適用することを、格別困難なく想到し得るものと認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1記載の発明,引用例2記載の技術,周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明,引用例2記載の技術,周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年11月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜4に係る発明は、平成8年2月28日付け,平成14年8月9日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
「膜モジュールの胴体の両側を挟んで締め付ける締付機構と、該締付機構と共に該膜モジュールを任意の角度に回転させて該膜モジュールの姿勢を変える姿勢変更機構とを車両台車に積載してなることを特微とする膜モジュール用手動運搬作業装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明1は、前記2.で検討した本願補正発明から「締付機構」の限定事項である「該締付機構の膜モジュール挟み込み部チャッキプレートにチャッキプレートクッションを有し」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1記載の発明,引用例2記載の技術,周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1記載の発明,引用例2記載の技術,周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1記載の発明,引用例2記載の技術,周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-21 
結審通知日 2005-01-04 
審決日 2005-01-17 
出願番号 特願平6-319316
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 長谷川 一郎
清田 栄章
発明の名称 膜モジュール用手動運搬作業装置  
代理人 三浦 良和  
代理人 三浦 良和  

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