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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D |
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管理番号 | 1112792 |
審判番号 | 不服2003-13310 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-11 |
確定日 | 2005-03-07 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第348425号「低温保存品輸配送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月30日出願公開、特開平 9-170860〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年12月18日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、平成15年5月23日受付の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 低温保存品を収納して輸送する断熱性を有する密閉容器の上部に、多孔板、メッシュ材、ネット材等のガス透過性資材で形成されるスノー受けと、アルミ箔、合成樹脂製シート又は薄板、金属製薄板、不織布等の薄手のガス不透過性資材で形成されるスノー受けの何れかのスノー受けを選択的に配し、その上に、液化炭酸ガス、液化チッ素ガス等の液化ガスの供給スペースを設け、そこに前記液化ガスを供給することにより前記容器内を急冷し、その後前記容器内温度を商品表面温度付近に維持させることを特徴とする低温保存品輸配送方法。」 2.引用文献に記載された発明 これに対して、原査定の拒絶理由に引用した、本願の出願前国内において頒布された刊行物である、特開昭61-31869号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。 「蓋2の内側には高圧管連結用開口部4からパイプ7が配設され、そのパイプ7には必要部分に孔8が設けられている。 またこの蓋2の内側は全面にわたって目の細かい金網、エキスパンダメタル,プラスチックネットまたはその他同等機能を有する材料9(以下「ネット類」)によって空間部を形成するが、必要に応じてこのネット類9は中間部を補強するために蓋に支持させても良い。 蓋2の内側を以上のように構成した装置に対して、第3図に示した如く、液体炭酸ガス加圧ボンベ10のバルブ11部分に減圧弁12を介して断熱性高圧管を接続し、他端の連結用金具15を開口部4に装着すればドライアイス製造準備は完了し、その後は所定圧力下で加圧液体に二酸化炭素を噴射してアイスボックス1の蓋2に設けられた空間部でドライアイススノーを順次形成させれば良い。」(第3頁左上欄6行〜右上欄4行) 「本発明の装置を使用することにより、ドライアイスが直接被冷却物に接触することがないので過冷却に対して組織が破壊され易い食品に対しても安全に冷却を行うことが可能であるのみならず、ドライアイスと氷と共用することにより、低コストで効率よく長時間保冷効果を得ることができる。」(第3頁右上欄18行〜左下欄4行) 上記記載及び図面からみて、引用文献1には、次の発明が記載されている。 「被冷却物を収納して保冷する断熱性を有するアイスボックスの上部に、目の細かい金網、エキスパンダメタル,プラスチックネットまたはその他同等機能を有するネット類を配し、その上に、液体二酸化炭素が供給される空間部を設け、そこに前記液化ガスを供給することにより前記容器内を急冷するアイスボックス、あるいは、該アイスボックスを用いた保冷方法。」 同じく、原査定の拒絶理由に引用した、本願の出願前国内において頒布された刊行物である、実願昭60-49346号(実開昭61-169372号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。 「蓄冷剤挿入室が上段に且つ商品挿入室が下段に設けられたコールドボックス本体と前記コールドボックス本体に開閉可能に取付けられた蓄冷剤挿入室扉および商品挿入室扉とを有するコールドボックスにおいて、前記蓄冷剤挿入室と前記商品挿入室との境に熱のみの移動を許す間仕切パネルと熱通過量を増減可能な熱移動量調整パネルとが取付けられていることを特徴とするコールドボックス。」(実用新案登録請求の範囲) 「蓄冷剤挿入室2内はドライアイス等の蓄冷剤を入れるのに適合する大きさにされ、その底部には蓄冷剤受皿11が設けられるとともに、蓄冷剤挿入室2と商品挿入室3との境に熱のみの移動を許す間仕切パネル12と熱通過量を増減可能な熱移動量調整パネル13とが取付けられている。間仕切パネル12は、第1図および第2図に明示されているように、蓄冷剤挿入室2と商品挿入室3との間に取付けられた金属製のパネルであって、両室間に熱のみの移動が可能で熱以外に空気の移動はないようになっている。」(明細書第5頁4〜14行) 「熱移動量調整パネル13は熱通過量を増減可能な構造になっているので、商品挿入室3内を大体において所望の温度に冷却し維持することができるのであって、間仕切パネル12があるため両室間には熱移動以外に空気の移動はない。 (考案の効果) 本考案によるコールドボックスは、上述のように構成されているので、コールドボックス内の商品を過冷却することなく大体において所望の温度に維持し蓄冷剤の使用量を低減することができ、またドライアイス使用時にドライアイスから発生するCO2ガスによるボックス内商品への悪影響を避けることができる。 また電気の要らない冷蔵庫として使用範囲を拡大することが可能となり、冷蔵機能を有する輸送手段として普通のトラックの使用が可能(冷蔵車とすると特殊車両となる)となり、品質を維持しながら長距離輸送が可能となり、低価格で製作することが可能となる。」(明細書第7頁5行〜第8頁4行) 3.対比・判断 本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明の「被冷却物」は、本願発明の「低温保存品」に相当し、以下同様に「アイスボックス」は、「断熱性を有する密閉容器」に、「目の細かい金網、エキスパンダメタル,プラスチックネットまたはその他同等機能を有するネット類」は「多孔板、メッシュ材、ネット材等のガス透過性資材で形成されるスノー受け」に、「液体二酸化炭素」は、「液化炭酸ガス、液化チッ素ガス等の液化ガス」に、「空間部」は、「液化ガスの供給スペース」に、それぞれ相当するから、 両者は、 「低温保存品を収納する断熱性を有する密閉容器の上部に、多孔板、メッシュ材、ネット材等のガス透過性資材で形成されるスノー受けを配し、その上に、液化炭酸ガス、液化窒素ガス等の液化ガスの供給スペースを設け、そこに前記液化ガスを供給することにより前期容器内を急冷する密閉容器、あるいは、該密閉容器を用いた低温保存品保冷方法。」 である点で一致し、次の点で相違している。 [相違点1]本願発明の密閉容器は、多孔板、メッシュ材、ネット材等のガス透過性資材で形成されるスノー受けと、アルミ箔、合成樹脂製シート又は薄板、金属製薄板、不織布等の薄手のガス不透過性資材で形成されるスノー受けの何れかのスノー受けを選択的に配するのに対して、引用文献1に記載された発明の密閉容器は、多孔板、メッシュ材、ネット材等のガス透過性資材で形成されるスノー受けを配する点。 [相違点2]本願発明は、密閉容器を使用し、容器内温度を商品表面温度付近に維持させる低温保存品輸配送方法であるのに対して、引用文献1に記載された発明は、低温保存品を保冷する密閉容器、あるいは、該密閉容器を用いた保冷方法の発明であって、引用文献1には、低温保存品の輸配送方法については記載されていない点。 上記相違点1について検討すると、引用文献2には、ドライアイスを蓄冷剤として使用して商品を保冷するコールドボックス(本願発明の「密閉容器」に相当。)において、蓄冷剤挿入室と商品挿入室との境に、本願発明のスノー受けの機能を有するガス不透過性資材である金属製のパネルを間仕切として取付けたものが記載されており、さらに、金属パネル下方に熱移動量調整パネルを取付けることにより、商品挿入室内の温度を商品の保存に適した所望の温度に調整することが記載されている。そして、引用文献2に記載された発明では、商品の過冷却防止、及び、CO2ガスによる商品への悪影響をさけるためガス不透過性のパネルを間仕切りとして設け、それとは別に、商品挿入室内を所望の温度に調整すべく、熱移動量調整パネルを設けているが、熱移動量調整パネルを別途設けることなく、間仕切りパネル自体の材質、厚さの変更、あるいはガス透過性の有無等によっても、熱移動量を調整でき、商品挿入室内温度を所望の温度に調整できることは当業者にとって明らかであり、しかも、低温保存品の種類に応じて保冷温度を調整するようなことは一般的に行われていることであるから、引用文献1に記載された密閉容器において、低温保存品が収納される容器内温度を所望温度に調整すべく、スノー受けとして、ガス透過性資材で形成されるスノー受けと、ガス不透過性資材で形成されるスノー受けの何れかのスノー受けを選択的に配して、上記相違点1における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 次に、上記相違点2について検討すると、引用文献1に記載された密閉容器に、低温保存品を収納するとともに、スノー受け上にドライアイスを形成して容器内を急冷すれば、その後必然的に商品表面温度が低下してゆくとともに、容器内温度は上昇してゆき、時間の経過とともに両者の温度は近づいてゆくことになる、換言すれば、容器内温度を商品表面温度付近に維持させることになるものと認められるし、引用文献2には、蓄冷剤として、ドライアイスを使用するコールドボックス内に商品を収納して普通のトラックを使用して長距離輸送することが記載されているから、引用文献1に記載されたアイスボックスを使用して相違点2における本願発明の低温保存品輸配送方法とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の効果は、引用文献1、2に記載された発明から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、本願の出願前に国内において頒布された引用文献1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-01-12 |
結審通知日 | 2005-01-12 |
審決日 | 2005-01-25 |
出願番号 | 特願平7-348425 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 丸山 英行 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
原 慧 櫻井 康平 |
発明の名称 | 低温保存品輸配送方法 |
代理人 | 斎藤 晴男 |