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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25B
管理番号 1112829
審判番号 不服2002-15407  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-12 
確定日 2005-03-09 
事件の表示 平成 9年特許願第206657号「フランジカバーをフランジの上に巻き付け圧着する圧着工具」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月23日出願公開、特開平10-166280〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成9年7月31日(パリ条約による優先権主張1996年7月31日、アメリカ合衆国、1997年5月22日、アメリカ合衆国)の特許出願であって、その請求項1ないし請求項15に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、一部明らかな誤記を除いてその特許請求の範囲の請求項1ないし請求項15に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は次のとおりである。
「フランジカバーをフランジの上に巻き付け圧着する圧着工具にして、
本体と、
前記本体から伸長する第一の軸に支持され且つ固定された第一のローラであって、該第一のローラ及び前記第一の軸の各々が互いに一致する軸線を有する前記第一のローラと、
前記本体から伸長する第二の軸に支持され且つ固定された第二のローラであって、該第二のローラ及び前記第二の軸の各々が互いに一致する軸線を有する前記第二のローラと、
前記第一のローラ及び前記第二のローラを互いの方向に付勢する第一の偏倚手段と、
前記第一の軸及び前記第二の軸を回転可能に駆動する手段とを備え、
前記軸の少なくとも一方が、前記本体に関して可動であり、これにより、前記第一の偏倚手段の作用を受けたとき、前記第一のローラ及び前記第二のローラが互いの方向に動くのを許容するようにした、圧着工具。」
(なお、請求項1には、第二のローラに関して「前記本体から伸長する第一の軸に支持され且つ固定された第二のローラであって、・・・」と記載されているが、第二のローラが支持され且つ固定されている軸は、第一の軸ではなく第二の軸であることが明らかであるので本件発明1を上記のように認定した。)

第2 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平1-228779号公報(以下「引用例」という。)の記載内容は以下のとおりである。
1 引用例記載の事項
引用例には「密封又は仕上げ帯装着装置」に関連して以下の事項が記載されている。
(1)第2頁左下欄第15行〜同頁右下欄第2行
「〔産業上の利用分野〕
本発明は密封帯又は縁取り帯を適合させる装置に関する。このような帯の例としては自動車のボディ開口部周りを密封するための溝形密封、又は縁取り帯がある。このような開口部には、隣接するボディ部の結合されたエッジによって形成されるフランジが設けられ、溝形帯はフランジの上に包むように取り付けられ、把持される。」
(2)第7頁左上欄第16行〜同頁左下欄第20行
「第6図に示すように工具125は本体126とハンドル128を有する。本体126は電気ケーブル130を介して駆動される電気モータを収納する。モータをオンオフするスイッチは図示しないがハンドルに組み込まれている。モータの出力軸は適当なベベルギヤを介してギヤボックス132に連結され、ここでシャフト134(第7図参照)が回転することになる。シャフト134はギヤボックス側壁136及び138内にある軸受に支持され、べベルギヤ142及び142Aを携え、それらはべベルギヤ144及び144Aを夫々駆動する。べベルギヤ144及び144Aは、ギヤボックス132の下壁147の軸受に支えられ垂直に配置されたシャフト146及び146Aに固着される。
電気モータは矢印148の方向にシャフト134を回転させる。これにより矢印149の方向にシャフト146が回転し、シャフト146Aはこれと逆方向に回転する。
第6図に示すようにシャフト146及び146Aはギヤボックス132より下方に延び、夫々フレキシブルな継手、或いはユニバーサルジョイント150,150A(図中、部分的に示してある)に連結される。シャフトは夫々、ギヤボックス132の側壁136,138の下方に従属する延長部により支持される肩部151,151Aへと下方に延び、肩部の軸受を通過する。シャフト146はローラ152を携え、シャフト146Aはローラ152Aを携える。
肩部151は実際には3つの部分から成る。即ち、下方に従属する側壁136に固着された2つの外方部分154及び156と、外方部分154,156に対し垂直方向に固定されるが矢印Cの方向でこれら外方部分に対してスライド可能な中央部分158とがそれである。好ましくは、部分154及び156の対向側縁は中央部分158の側部の整合キーを受容するキーウェィを携え、中央部分の滑動を強制する。下方に従属する壁136の外側には握り160が設けられ、その内部にはぎざぎざのノブ162により回動されるシャフト(図示せず)が延びる。シャフトは、中央部158を通って部分的に延びるボア内に形成されかつシャフトのナットとして作用する整合ねじと螺合することにより、ノブ162が回転した際中央部は矢印Cの方向に移動する。このようにしてローラ152をローラ152Aの軸に対し平行な状態を維持しつつローラ152Aに接近離反させることが可能になる。移動可能な距離はフレキシブルな継手150により容易に調整可能となる。」
(3)第7頁右下欄第4行〜第8頁左上欄第3行
「第6図にはフランジ22上の密封帯が示してある。使用時、密封帯は第1A図、及び第6図部分Dに示す広がった側壁を以ってフランジ22上に置かれる。次いで工具は、ローラ152及び152Aが把持部5の広がった側壁の外側に隣接するようにフランジ上の密封帯の上に置かれる。先端のローラ168はこの時封止部6に接触する。ノブ162により作業者はローラ152,152A間距離を調整し、広がった側壁が第1B図の形になるように付勢される。モータ駆動によりローラ152及び152Aが回転し工具は矢印Eの方向に移動する。作業者は工具がフランジに沿って矢印Eの方向に移動するように工具をガイドし、工具が動いた分だけサイドローラは把持部5の広がった側壁を一括して付勢し、第1B図に示す形、即ちフランジに対し堅固に把持係合する形へと変化させる。工具がフランジに沿って動く際、先端のローラ168は封止部6を一時的に平坦にする。第6図の部分Fにおいて、最終的にフランジ22上に取り付けられた密封帯の一部が示されている。」
(4)第6図
工具125の本体126とギヤボックス132とは一体的に形成されていること。
2 引用例記載の発明
上記した引用例記載の事項(1)〜(4)を本件発明1に照らして整理すると引用例には次の発明が記載されていると認める。
密封帯をフランジ22の上に巻き付け圧着する工具125にして、
本体126と一体的に形成されているギヤボックス132と、
前記ギヤボックス132から伸長し中間にフレキシブルな継手150Aを備えたシャフト146Aに支持され且つ固定されたローラ152Aと、
前記ギヤボックス132から伸長し中間にフレキシブルな継手150を備えたシャフト146に支持され且つ固定されたローラ152と、
ローラ152を支持し且つ固定するシャフト146のフレキシブルな継手150より下方の部分に連結され、ローラ152をローラ152Aの軸に対し平行な状態を維持しつつローラ152Aに接近離反させる手段と、
前記シャフト146A及びシャフト146を回転可能に駆動する手段とを備え、
前記ローラ152を支持し且つ固定するシャフト146のフレキシブルな継手150より下方の部分が、前記ギヤボックス132に関して可動であり、これにより、前記接近離反させる手段の作用を受けたとき、前記ローラ152をローラ152Aに接近離反させるようにした、圧着工具。(以下「引用例記載の発明」という。)

第3 対比
本件発明1と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「密封帯」は、本件発明1の「フランジカバー」に相当することが明らかである。
ところで、引用例記載の発明では、本体126とギヤボックス132とを分けて呼称しているが、両者は一体に形成されていることからみて、両者を合わせて「本体」ということができるものである。そうすると、引用例記載の発明の「ギヤボックス132から伸長し中間にフレキシブルな継手150Aを備えたシャフト146A」及び「ギヤボックス132から伸長し中間にフレキシブルな継手150を備えたシャフト146」は、本体から伸長する第一の軸及び第二の軸であるという限りで、それぞれ本件発明1の「第一の軸」及び「第二の軸」と共通しており、また、引用例記載の発明の「シャフト146Aに支持され且つ固定されたローラ152A」及び「シャフト146に支持され且つ固定されたローラ152」は、第一の軸に支持され且つ固定された第一のローラ及び第二の軸に支持され且つ固定された第二のローラであるという限りで、それぞれ本件発明1の「第一のローラ」及び「第二のローラ」と共通している。
さらに、引用例記載の発明の「ローラ152をローラ152Aの軸に対し平行な状態を維持しつつローラ152Aに接近離反させる手段」は、第一のローラ及び第二のローラを互いの方向に動かすための手段であるという限りで、本件発明1の「第一の偏倚手段」と共通している。
したがって、本件発明1と引用例記載の発明とは、以下の点で一致しているということができる。
フランジカバーをフランジの上に巻き付け圧着する圧着工具にして、
本体と、
前記本体から伸長する第一の軸に支持され且つ固定された第一のローラと、
前記本体から伸長する第二の軸に支持され且つ固定された第二のローラと、
前記第一のローラ及び前記第二のローラを互いの方向に動かすための手段と、
前記第一の軸及び前記第二の軸を回転可能に駆動する手段とを備え、
前記軸の少なくとも一方が、前記本体に関して可動であり、これにより、前記第一のローラ及び前記第二のローラを互いの方向に動かすための手段の作用を受けたとき、前記第一のローラ及び前記第二のローラが互いの方向に動くのを許容するようにした、圧着工具、である点。
そして、本件発明1と引用例記載の発明とは、以下の2点で相違している。
1 相違点1
本件発明1では、第一のローラ及び第一の軸並びに第二のローラ及び第二の軸の各々が互いに一致する軸線を有しているのに対して、引用例記載の発明では、第一の軸及び第二の軸が中間にフレキシブルな継手を備えており、第一のローラ及び第一の軸の継手より下方の部分並びに第二のローラ及び第二の軸の継手より下方の部分は、常に各々が互いに一致する軸線を有しているものの、第一の軸及び第二の軸の継手より上方の部分の軸線は、それぞれ第一のローラ及び第二のローラの軸線と常に一致するとは限らない点。
2 相違点2
第一のローラ及び第二のローラを互いの方向に動かすための手段が、本件発明1では、各ローラを互いの方向に付勢する第一の偏倚手段であるのに対して、引用例記載の発明では、各ローラを互いの方向に付勢する偏倚手段であるのかどうか明らかでない点。

第4 相違点についての検討
1 相違点1について
引用例記載の発明において、第一の軸及び第二の軸の中間のフレキシブルな継手を省略して第一のローラ及び第一の軸並びに第二のローラ及び第二の軸の各々が互いに一致する軸線を有するように構成するためには、本体に関して固定位置にある軸(シャフト146A)については単にフレキシブルな継手を備えていないものに置換えればよいだけであり、また、本体に関して可動である軸(シャフト146)については、例えば、そのための回転駆動源を個別に設けてこの駆動源を軸と一緒に動かすように構成すればよいことは当業者が格別の創意を要することなく容易に想到するところである。
2 相違点2について
原査定の際にもその旨指摘しているように、可動ローラを偏倚手段によって付勢するように構成することは、例えば、特開平7-132327号公報に示されているように従来周知であり、この従来周知の事項を引用例記載の発明に適用して、その第一のローラ及び第二のローラを互いの方向に動かすための手段を、各ローラを互いの方向に付勢する偏倚手段とすることに格別の困難性は見当たらない。
3 本件発明1の効果について
本件発明1の採用する構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。

第5 むすび
したがって、本件発明1は、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
よって、本件出願の請求項2ないし請求項15に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-05 
結審通知日 2004-10-08 
審決日 2004-10-28 
出願番号 特願平9-206657
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 勇  
特許庁審判長 宮崎 侑久
特許庁審判官 岡野 卓也
豊原 邦雄
発明の名称 フランジカバーをフランジの上に巻き付け圧着する圧着工具  
代理人 今井 庄亮  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 増井 忠弐  
代理人 安瀬 正敏  

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