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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1112832
審判番号 不服2002-24383  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-19 
確定日 2005-03-09 
事件の表示 平成10年特許願第100704号「干渉チェック装置およびそのプログラム記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月29日出願公開、特開平11-296571〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年4月13日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年11月30日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項1】計算機利用設計システムにおいて干渉チェック対象として複数の部品の要素群を設定可能に構成された部品間の干渉をチェックする干渉チェック装置であって、
干渉チェック対象となる部品群を表示する手段と、
前記部品群の表示においてポインティングデバイスの第1のボタンのクリックによって指定された部品を第1の対象の要素と設定し、第2のボタンのクリックによって指定された部品を第2の対象の要素と設定し、さらに前記第1のボタンを用いたドラッグ操作によって指定された領域に含まれる部品を抽出して前記第1の対象の要素と設定し、前記第2のボタンを用いたドラッグ操作によって指定された領域に含まれる部品を抽出して前記第2の対象の要素と設定する処理を、設定終了の指示があるまで繰り返す手段と、
前記設定された第1の対象の要素群と第2の対象の要素群との間で干渉をチェックする手段とを備える
ことを特徴とする干渉チェック装置。」

2.引用例
(1)引用例1
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成6年7月に頒布された「“FUJITSU S ファミリー ICAD/MXオペレーション手引書 3次元編(設計・製造支援システム) 53AR-6010-2”、富士通株式会社、pp.248〜253」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
「b 着目画素に対する対象要素の干渉をチェックする
アセンブリ内のあるモデルに着目して(着目要素)、着目要素と対象要素との組合せについて、干渉している箇所をチェックします。
着目要素および対象要素は、複数指定することができます。
着目要素を複数指定した場合は、指定した着目要素すべての組み合わせについても、干渉している箇所をチェックします。
操作手順
[1]『処理選択メニュー』上で、特定モデルに着目を選択します。
[2]着目要素として部品またはサブアセンブリを指定します。指定した着目要素は、再度指定することにより、指定を解除することができます。
→指定した部品またはサブアセンブリがエコー表示されます。
[3]『操作補助メニュー』内の次操作(GO)を選択します。
→対象要素の指定方法を選択する『ポップアップメニュー』が表示されます。
[4]『ポップアップメニュー』上で、対象要素の指定方法を選択します。
全体指定:アセンブリ内の、指定した着目要素以外のすべての部品を対象要素とする。部品単位で指定を解除することができる。
要素指定:アセンブリ内の、指定した着目要素以外の指定した部品またはサブアセンブリを対象要素とする。
→全体指定を選択した場合は、アセンブリ内の、指定した着目要素以外のすべての部品が指定状態となり、エコー表示されます。
[5]対象要素を指定します。指定した対象要素は、再度指定することにより、指定を解除することができます。対象要素の指定/解除は連続して行うことができます。
全体指定を選択した場合は、部品単位で指定/解除します。
要素指定を選択した場合は、部品またはサブアセンブリを指定し、指定した単位で指定解除します。
→指定した部品またはサブアセンブリがエコー表示されます。
[6]『操作補助メニュー』内の次操作(GO)を選択します。
→干渉箇所がない場合は、メッセージが表示されます。
干渉箇所がある場合は、干渉箇所がエコー表示され、以下の情報が表示されます。
・・・(中略)・・・ 」(引用例1の250頁13行〜252頁22行)
この記載事項によると、引用例1には、
・アセンブリ内のあるモデルに着目して(着目要素)、着目要素と対象要 素との組合せについて、干渉している箇所をチェックすること。
・着目要素および対象要素は、複数指定することができること。
・着目要素を複数指定した場合は、指定した着目要素すべての組み合わせ についても、干渉している箇所をチェックすること。
・操作手順として、
[1]『処理選択メニュー』上で、特定モデルに着目を選択する。
[2]着目要素として部品またはサブアセンブリを指定する。
指定した部品またはサブアセンブリがエコー表示される。
[3]『操作補助メニュー』内の次操作(GO)を選択する。
→対象要素の指定方法を選択する『ポップアップメニュー』が表示さ れる。
[4]『ポップアップメニュー』上で、対象要素の指定方法を選択する。
[5]対象要素を指定する。対象要素の指定/解除は連続して行うことが できる。
→指定した部品またはサブアセンブリがエコー表示される。
[6]『操作補助メニュー』内の次操作(GO)を選択する。
→干渉箇所がない場合は、メッセージが表示されること。
干渉箇所がある場合は、干渉箇所がエコー表示され、情報が表示さ れる。
と、着目要素に対する対象要素の干渉をチェックする時の一連の操作手順が記載されている。
さらに、この一連の操作手順を実現するための機器は存在してるものと認められる。

(2)引用例2
当審の拒絶の理由に引用された、特開平6-314329号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「【0005】このような問題点の解決を図るために、最近の図形処理装置では、マウス操作に従って回転角度や移動距離を直接入力させるという構成を採っている。すなわち、立体図形を移動させるときには、図6に示すように、ユーザに対して、先ず最初に、マウスでメニュー項目の移動モードを選択させ、次に、移動対象の立体図形上でマウスボタンを押し下げさせ、続いて、移動方向へ移動距離分マウスドラグさせることで移動情報を収集するという構成を採っている。また、立体図形を回転させるときには、図7に示すように、ユーザに対して、先ず最初に、マウスでメニュー項目の回転モードを選択させ、次に、回転対象の立体図形上でマウスボタンを押し下げさせ、続いて、回転方向へ回転角度分マウスドラグさせることで回転情報を収集するという構成を採っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このマウス操作に従う図形処理装置では、ユーザは移動情報や回転情報を直接入力できることから、数値入力を行うことなく立体図形の幾何学的変更処理を実行できるようになるものの、先ず最初に、メニュー項目を選択しなくてはならないことから、操作性が悪いという問題点があった。」(引用例2の2頁2欄11〜25行)
(b)「【0030】また、この実施例では、マウス押下位置の指す立体図形の図形要素に従って幾何学的変更処理モードを決定していく構成を採ったが、この方法に従うと幾何学的変更処理モードの種類が限られる。そこで、マウス22が右ボタンと左ボタンという2種類のボタンを備えるときには、例えば、左ボタンを直接的な図形操作に使用し、右ボタンを幾何学的変更処理モードの決定に使用する構成を採ったり、左ボタンが操作されるときには上述の実施例の処理を実行し、左ボタンと右ボタンの双方が操作されるときには、割り付けられる別の幾何学的変更処理を実行する構成を採ることで、この問題点の解決を図ることができる。」(引用例2の4頁6欄18〜29行)

(3)引用例3
当審の拒絶の理由に引用された、特開平6-60151号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「【課題を解決するための手段】本発明の目的は、設計に基づいた配置状態での対象物の形状データを作成するCAD手段と、記憶された前記形状データのうち前記設計の前後で変わった部分の前記形状データに基づいて干渉チェックの対象となる第1対象物を選定する手段と、選定された前記第1対象物の周囲に、前記第1対象物毎に別の前記チェック対象領域を設定する領域設定手段と、前記チェック対象領域内に含まれる前記形状データに基づいて、該当する前記第1対象物との干渉チェックの対象となる第2対象物を選定する手段と、選定された前記第1及び第2対象物の各前記形状データを用いてこれらの対象物の干渉チェックを行なう手段とを備えることによって達成できる。」(引用例3の4頁6欄11〜23行)
(b)「【0033】図9は、被対象物認識手段15で実行される処理手順を示している。メモリ8から呼び出した干渉チェック領域内に含まれる全構造物のレイアウト形状データをメモリ7から読み込む(ステップ15A)。読み込まれたレイアウト形状データを被干渉チェック対象データとして選定する(ステップ15B)。この選定されたレイアウト形状データにて特定される構造物が、干渉チェック被対象物である。選定された干渉チェック被対象物が属するエリア22毎にその選定された被干渉チェック対象データの名称(干渉チェック被対象物の名称)を登録する(ステップ15C)。この名称は、メモリ8に記憶される。干渉チェック領域を前述したように決定できかつ元のレイアウト形状データに更新フラグが付与されていないので、干渉チェックに必要な干渉チェック被対象物を自動的に簡単に特定できる。干渉チェック対象物との干渉の相手となる干渉チェック被対象物は、被対象物認識手段15によって設計者が意識してして指定することなく特定できる。干渉チェック手段16は、干渉チェック対象物と干渉チェック被対象物との間で干渉チェックを行なう。」(引用例3の8頁13欄18〜37行)

3.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、
引用例1は機器の操作手順についての記載であるが、干渉チェック装置は周知のものであるから、引用例1の干渉チェックを行うための操作手順から、計算機利用設計システムにおいて干渉チェック対象として複数の部品の要素群を設定可能に構成された部品間の干渉をチェックする干渉チェック装置を想定することに何の困難性もない、
引用例1記載の発明では、着目要素および対象要素を複数指定することが記載されているから、引用例1の操作手順を用いる装置においては、着目要素および対象要素、すなわち干渉チェック対象となる部品群を表示する表示手段は存在しているものと認められ、
引用例1記載の発明では、着目要素の指定/解除は連続して行うことが、また、対象要素の指定/解除は連続して、次操作(GO)が選択されるまで行われることが記載されているから、引用例1の操作手順を用いる装置においては、以下の相違点をのぞいて、要素を設定する処理を、設定終了の指示があるまで繰り返す手段に相当するものがあることが認められ、
引用例1記載の発明では、操作手順の[6]で、『操作補助メニュー』内の次操作(GO)を選択すると、干渉箇所がある場合は、干渉箇所がエコー表示され、情報が表示されることが記載されているから、引用例1の操作手順を用いてる装置においては、本願発明の干渉をチェックする手段に相当するものがあることが認められるから、
両者は
「計算機利用設計システムにおいて干渉チェック対象として複数の部品の要素群を設定可能に構成された部品間の干渉をチェックする干渉チェック装置であって、
干渉チェック対象となる部品群を表示する手段と、
前記部品群の表示において第1の対象の要素と、第2の対象の要素とを設定する処理を、設定終了の指示があるまで繰り返す手段と、
前記設定された第1の対象の要素群と第2の対象の要素群との間で干渉をチェックする手段とを備える
ことを特徴とする干渉チェック装置。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
設定する処理を、設定終了の指示があるまで繰り返す手段が、本願発明では、部品群の表示においてポインティングデバイスの第1のボタンのクリックによって指定された部品を第1の対象の要素と設定し、第2のボタンのクリックによって指定された部品を第2の対象の要素と設定し、さらに前記第1のボタンを用いたドラッグ操作によって指定された領域に含まれる部品を抽出して前記第1の対象の要素と設定し、前記第2のボタンを用いたドラッグ操作によって指定された領域に含まれる部品を抽出して前記第2の対象の要素と設定する処理を、設定終了の指示があるまで繰り返すのに対して、
引用例1記載の発明では、『処理選択メニュー』上で、特定モデルに着目を選択し、着目要素として部品またはサブアセンブリを指定し、その着目要素の指定/解除は連続して行い、次に、『操作補助メニュー』内の次操作(GO)を選択して、『ポップアップメニュー』が表示されると、『ポップアップメニュー』上で、対象要素の指定方法を選択して、対象要素を指定する、その対象要素の指定/解除は連続して行い、『操作補助メニュー』内の次操作(GO)を選択すると、干渉箇所がある場合は、干渉箇所がエコー表示され、情報が表示されることは記載されているが、ポインティングデバイスの第1のボタンのクリック、第2のボタンのクリックにより着目要素、対象要素を指定すること、さらに、第1のボタンを用いたドラッグ操作、第2のボタンを用いたドラッグ操作により、指定された領域に含まれる、着目要素、対象要素を指定することに関しては記載されていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討すると、
マウスの右ボタンと左ボタンの操作を有効に利用すること一般的なことであり、マウスの左右のボタン操作により、メニュー選択などを行わずに、簡単に図形処理を実行することは、例えば、上記引用例2により公知である。また、領域を設定し、そこに含まれるものを干渉チェック対象物とすることは、例えば、上記引用例3等により公知である。さらに、マウスのボタンのドラッグ操作により範囲を指定するすることは一般的によく行われていることである。これらの公知の技術、及び、周知事項から、引用例1の操作手順を用いた干渉チェック装置において、着目要素の指定、対象要素の指定を、マウスの右ボタンと左ボタンを用いて行い、さらに、マウスボタンのドラッグ操作ににより領域を指定しその中の要素を、着目要素あるいは対象要素とすることは当業者が容易に考えられることと認められる。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2、3に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-21 
結審通知日 2005-01-04 
審決日 2005-01-17 
出願番号 特願平10-100704
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加舎 理紅子田中 幸雄  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 江頭 信彦
深沢 正志
発明の名称 干渉チェック装置およびそのプログラム記録媒体  
代理人 森田 寛  
代理人 小笠原 吉義  
代理人 長谷川 文廣  

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