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関連判例 | 平成16年(行ケ)27号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C |
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管理番号 | 1112846 |
審判番号 | 不服2001-19812 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-11-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-11-05 |
確定日 | 2005-03-16 |
事件の表示 | 平成10年特許願第508806号「高効率磁気シールド」拒絶査定に対する審判事件[平成10年2月5日国際公開、WO98/04884、平成11年11月9日国内公表、特表平11-513126]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件は、1997年6月26日に国際特許出願され(優先権主張 1996年7月26日 米国)、平成11年3月2日付けで審査請求され、平成13年7月25日付けで拒絶査定(謄本発送日は同年8月7日)がなされ、これを不服として平成13年11月5日に審判請求がなされ、同年12月4日に明細書を補正する手続補正書が提出された事案である。 第2 平成13年12月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成13年12月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成13年12月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載について以下の(a)〜(d)のとおり補正するものである。 (a)請求項1について、 「【請求項1】 光ジャイロスコープアセンブリであって、光電子磁気エネルギーを伝導することが可能であるクローズドパスを限定すると共に、該パスに囲まれた内側開口部を含む本体部分と、該本体部分を完全に囲む容器とを含み、該容器は、該本体部分を支持すると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるスプールと、該内側開口部内に延在する高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる部材と、該スプールと該部材と共に該本体部分の磁気遮蔽容器を形成するように配置されると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるカバーとを含む光ジャイロスコープアセンブリ。」 を、 「【請求項1】 光ジャイロスコープアセンブリであって、光電子磁気エネルギーを伝導することが可能であるクローズドパスを限定すると共に、該パスに囲まれた内側開口部を含む本体部分と、該本体部分を完全に囲む容器とを含み、該容器は、該本体部分を支持すると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるスプールと、該内側開口部内に延在する高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる部材と、該スプールと該部材と共に該本体部分の磁気遮蔽容器を形成するように配置されると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるカバーとを含み、該光ジャイロスコープアセンブリは、さらに、該容器の周囲に配置されると共に、高い比透磁率を有する強磁性体材料からなる外側ケースと、該容器と該外側ケースとの間に配置されると共に、低透磁率材料からなるスペーサとを含む光ジャイロスコープアセンブリ。」 とする。 (b)請求項11について、 「【請求項11】 光ファイバジャイロスコープの磁気遮蔽アセンブリであって、中央穴を備える基部を含むと共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるスプールと、該スプールを覆うように配置されると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるカバーと、該基部と該カバーとの間で垂直に延在すると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる管状壁とを含み、該基部と該カバーと該管状壁は、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるリング形状の容器を形成し、リング形状の光ファイバジャイロスコープコイルは、該容器内の該管状壁の周囲に配置されると共に該スプールによって支持されて、高い比透磁率の材料に包まれる磁気遮蔽アセンブリ。」 を、 「【請求項11】 光ファイバジャイロスコープの磁気遮蔽アセンブリであって、中央穴を備える基部を含むと共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるスプールと、該スプールを覆うように配置されると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるカバーと、該基部と該カバーとの間で垂直に延在すると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる管状壁とを含み、該基部と該カバーと該管状壁は、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるリング形状の容器を形成し、リング形状の光ファイバジャイロスコープコイルは、該容器内の該管状壁の周囲に配置されると共に該スプールによって支持されて、高い比透磁率の材料に囲まれており、該磁気遮蔽アセンブリは、さらに、該リング形状の容器の周囲に配置されると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる外側ケースと、該容器と該外側ケースの間に配置されると共に、低透磁率材料からなるスペーサとを含む磁気遮蔽アセンブリ。」 とする。 (c)請求項18について、 「【請求項18】 光ジャイロスコープアセンブリであって、内側開口部を有する光ファイバコイルと、該コイルと同一形状を有して該コイルを完全に収容すると共に、該内側開口部内に延在する強磁性体材料の容器とを含み、該容器の材料は、該コイルの材料と釣り合う熱膨張係数を有することにより、該コイルに生じる応力を最小化する光ジャイロスコープアセンブリ。」 を、 「【請求項18】 光ジャイロスコープアセンブリであって、内側開口部を有する光ファイバコイルと、該コイルと同一形状を有して該コイルを完全に収容すると共に、該内側開口部内に延在する強磁性体材料の容器とを含み、該容器の材料は、該コイルの材料と釣り合う熱膨張係数を有することにより、該コイルに生じる応力を最小化し、該光ジャイロスコープアセンブリは、さらに、該容器の周囲に配置されると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる外側ケースと、該容器と該外側ケースとの間に配置されると共に、低透磁率材料からなるスペーサとを含む光ジャイロスコープアセンブリ。」 とする。 (d)請求項20について、 「【請求項20】 光電子磁気エネルギーを伝導することが可能であるクローズドパスを限定すると共に該パスに囲まれた内側開口部を含む本体部分と、該本体部分を支持するスプールと該本体部分を覆うカバーとを備える光ジャイロスコープにおいて、該本体部分を磁気的に遮蔽する方法であって、部材を該内側開口部内に配置するステップと、それぞれ強磁性体材料からなる該スプールと該部材と該カバーとを構成して、強磁性体材料で該本体部分を完全に囲むステップとを含む方法。」 を、 「【請求項20】 光電子磁気エネルギーを伝導することが可能であるクローズドパスを限定すると共に該パスに囲まれた内側開口部を含む本体部分と、該本体部分を支持するスプールと該本体部分を覆うカバーとを備える容器と、該容器の周囲に配置されると共に高い比透磁率の材料からなる外側ケースと、該容器と該外側ケースとの間に配置されると共に低透磁率の材料からなるスペーサとを含む光ジャイロスコープにおいて、該本体部分を磁気的に遮蔽する方法であって、部材を該内側開口部内に配置するステップと、それぞれ強磁性体材料からなる該スプールと該部材と該カバーとを構成して、強磁性体材料で該本体部分を完全に囲むステップとを含む方法。」 とする。 そして、上記(a)〜(d)の補正事項は、いずれも、各請求項における発明特定事項を「容器の周囲に配置されると共に、高い比透磁率 を有する強磁性体材料からなる外側ケースと、該容器と該外側ケースとの間に配置されると共に、低透磁率材料からなるスペーサとを含む」と限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項に係る発明が、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 2.独立特許要件について 2-1.本願補正発明 本件補正後の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その記載は次のとおりである。 【請求項1】 光ジャイロスコープアセンブリであって、光電子磁気エネルギーを伝導することが可能であるクローズドパスを限定すると共に、該パスに囲まれた内側開口部を含む本体部分と、該本体部分を完全に囲む容器とを含み、該容器は、該本体部分を支持すると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるスプールと、該内側開口部内に延在する高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる部材と、該スプールと該部材と共に該本体部分の磁気遮蔽容器を形成するように配置されると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるカバーとを含み、該光ジャイロスコープアセンブリは、さらに、該容器の周囲に配置されると共に、高い比透磁率を有する強磁性体材料からなる外側ケースと、該容器と該外側ケースとの間に配置されると共に、低透磁率材料からなるスペーサとを含む光ジャイロスコープアセンブリ。(以下、「本願補正発明」という。) 2-2.引用刊行物及び引用発明 2-2-1.引用発明1について 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-214615号公報(以下、引用例という。)には、図面とともに、以下の(ア)〜(ク)の事項が記載されている。 (ア)「回転角速度を測定すべき回転軸の回りに2本の光ビームを時計回り方向と反時計回り方向の相反方向にそれぞれ伝搬させる光伝搬路と、良好な熱伝導、低熱膨張係数の物質でなり、前記光伝搬路を覆う二重壁構造体と、前記光伝搬路を囲む磁気シールドと、からなる回転角速度検出部を備えてなる光ファイバジャイロ。」(第1頁左下欄第5〜12行:特許請求の範囲の請求項1) (イ)「〔産業上の利用分野〕 この発明は、光ファイバジャイロに関するものであり、さらに詳しくいうと、回転軸と共動する光伝搬路に、一定の波長の光を時計回り方向と反時計回り方向に同時に伝搬させ、サニヤク(Sagnac)効果による光の位相差を検出して回転軸回りの回転角速度に比例した信号を得るための光ファイバジャイロに関するものである。」(第2頁右上欄第6〜13行) (ウ)「以上のような・・・従来の光ファイバジャイロでは、光伝搬路(101)の外壁が外気にさらされているため、時計回り(反時計回り)光入射端(1)と反時計回り(時計回り)光入射端(2)の間に温度差が発生し易く、かつ、この温度差に変動が生じ易い状況であった。このため、ドリフトスタビリティの良好な光ファイバジャイロが得難かった。さらに・・・に述べられているように、地球磁場により2本の光ビーム間にSagnac効果による位相差以外の位相差が生じる。このとき回転角速度検出部の回転角速度入力軸が地球磁場の方向から偏移することにより、前記の位相差が変化しドリフトとなる。従来の回転角速度検出部では、地球磁場の遮蔽がなされていないためドリフトスタビリティの良好な光ファイバジャイロが得難いなどの問題点があった。この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、光伝搬路の時計回り光入射端と反時計回り光入射端の温度差を低減し、さらに地球磁場変動に伴う位相誤差を低減し、ドリフトスタビリティの良好な光ファイバジャイロを得ることを目的とする。(第3頁右上欄第3行〜同頁左下欄第11行) (エ)「第1図はこの発明の一実施例における回転角速度検出部(20)を示し、回転角速度を測定すべき回転軸回りに2本の光ビームを時計回りと反時計回りの相反方向に同一伝搬定数でそれぞれ伝搬させる円環状の光伝搬路(3)は、断面コ字状で外周面が開口した第1の円筒体(4)と、第1の円筒体(4)の開口部を閉止している第2の円筒体(5)によって囲まれている。光伝搬路(3)には、時計回り光の光入射端(1)および反時計回り光の光入射端(2)に端部を有する偏波面保存の単一モード光ファイバ(図示せず)が回転軸(22)に垂直な面に沿って整列巻きに巻回されている。(第3頁右下欄第8〜19行) (オ)「第1、第2の円筒体(4)、(5)の外周は、断熱材(6)、(7)を介して第1、第2の蓋体(8)、(9)および第3の円筒体(10)で覆われている。」(第4頁左上欄第4〜6行) (カ)「さらに、第1、第2の蓋体(8)、(9)の外周面は、断熱材(12)を介在して第1、第2の磁気シールド(13)、(14)で覆われている。この磁気シールド(13)、(14)は断面コ字状のものを上下から合わせたもので、高透磁率、低保磁力でなる物質、たとえばパーマロイで形成されており、互いの外周接合部は第4の円筒体(15)で結合されている。」(第4頁右上欄第4〜10行) (キ)「さらに磁気シールドで地球磁場が遮蔽されるのでジャイロとしてドリフトスタビリティの非常に良好な状態で動作させることができる。」(第4頁右下欄第19行〜第5頁左上欄第2行) (ク)図1の記載によれば円環状の光伝搬路(3)の内側に開口部がある。 これらによれば、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 時計回り光の光入射端(1)および反時計回り光の光入射端(2)に端部を有する偏波面保存の単一モード光ファイバが回転軸(22)に垂直な面に沿って整列巻きに巻回され、回転軸回りに2本の光ビームを時計回りと反時計回りに同一伝搬定数でそれぞれ伝搬させ、内側に開口部がある円環状の光伝搬路(3)と、断面コ字状でかつ良好な熱伝導、低熱膨張係数の物質からなる外周面が開口した第1の円筒体(4)および第1の円筒体の開口部を閉止している第2の円筒体(5)からなり光伝搬路(3)を囲む二重壁構造体と、該二重壁構造体の外周を断熱材(6)、(7)を介して覆う第2の蓋体(8)、(9)と、断面コ字状のものを上下から合わせたもので、高透磁率、低保磁力でなる物質、たとえばパーマロイで形成されており、該蓋体の外周を断熱材(12)を介して覆う磁気シールド(13)、(14)と、からなる回転角速度検出部を備えた光ファイバジャイロ。 2-3.対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の光ファイバジャイロは、光伝搬路等の部品を組み立てて作られたものであることは明らかであり、また、「ジャイロ」は「ジャイロスコープ」の略語であるから、引用発明の「光ファイバジャイロ」は、本願補正発明の「光ジャイロスコープアセンブリ」に相当する。 (2)引用発明の「光」は、本願補正発明の「光電子磁気エネルギー」に相当する。 (3)上記2-2.において認定したように、引用発明の「光伝搬路(3)」は、回転軸回りに2本の光ビームを時計回りと反時計回りに同一伝搬定数でそれぞれ伝搬させるものであり、また、内側に開口部があるものであるから、本願補正発明の「光電子磁気エネルギーを伝導することが可能であるクローズドパスを限定すると共に、該パスに囲まれた内側開口部を含む本体部分」に相当する。 (4)引用発明の「磁気シールド(13)、(14)」は、断面コの字状のものを上下から合わせて、二重壁構造体、断熱材(6)、(7)、第2の蓋体(8)、(9)、断熱材(12)を介して光伝搬路(3)を覆うものであるから、本体部分を完全に囲むという点で本願補正発明の「本体部分を完全に囲む容器」と共通している。 (5)引用発明の「磁気シールド(13)、(14)」は、高透磁率、低保磁力でなる物質で形成されているので、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる部分を含むものである点で、本願補正発明の「本体部分を完全に囲む容器」と共通している。 上記(1)〜(5)を勘案すると、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 光ジャイロスコープアセンブリであって、光電子磁気エネルギーを伝導することが可能であるクローズドパスを限定すると共に、該パスに囲まれた内側開口部を含む本体部分と、該本体部分を完全に囲む容器とを含み、該容器が高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる部分を含む光ジャイロスコープアセンブリ。 [相違点] 相違点1:本願補正発明の「容器」は、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる部分が、 ・本体部分を支持するスプールと、 ・内側開口部内に延在する部材と、 ・該スプールと該部材と共に本体部分の磁気遮蔽容器を形成するように配置されるカバー であるのに対して、引用発明の「磁気シールド(13)、(14)」の高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる部分が、上記のようなスプール、部材、カバーを含むことは、引用例には明記されていない点。 相違点2:本願補正発明は、容器の周囲に配置されると共に高い比透磁率を有する強磁性体材料からなる外側ケースと、容器と外側ケースとの間に配置されると共に低透磁率材料からなるスペーサとを含むものであるのに対して、引用発明は、このような外側ケースとスペーサとを備えていない点。 2-4.相違点についての判断 2-4-1.相違点1について (1)一般に「スプール」とは、巻き付けられた細長い線状体や帯状体を保持するものを意味するが、本願明細書の全記載を見ても本願補正発明の「スプール」が特別な意味を持つものであるとの記載はないので、本願補正発明における「スプール」は、本体部分を支持するという一般的な意味のスプールであると解するのが相当である。 他方、引用発明の磁気シールド(13)、(14)は、断面コ字状のものを上下から合わせて、二重壁構造体、断熱材(6)、(7)、第2の蓋体(8)、(9)、断熱材(12)を介して光伝搬路(3)を覆うものである。特に、断面コ字状の下側の磁気シールド(14)の底辺部分は、他の部材を介しているので間接的ではあるが、整列巻きに巻回された光ファイバを含む光伝搬路(3)を下から支持しているということができ、また、引用例の図面の記載からみて明らかに、巻き付けられた細長い線状体(光ファイバ)を保持するものということができるから、本願補正発明の「スプール」に該当する。 したがって、引用発明の磁気シールド(13)、(14)は、「本体部分を支持すると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるスプール」を含むものである。 (2)引用発明の磁気シールド(13)、(14)は断面コ字状であるが、その下側の磁気シールド(14)の内側側面は、引用例の図面の記載からみて明らかに、円環状の光伝搬路(3)の内側開口部内に延在している。 したがって、引用発明の磁気シールド(13)、(14)は、「内側開口部内に延在する高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる部材」を含むものである。 (3)引用発明の断面コ字状の上側の磁気シールド(13)は、本願補正発明の「本体部分を支持するスプール」と「内側開口部内に延在する部材」に相当するものを含む下側の磁気シールド(14)と合わせて磁気シールドを構成している。 したがって、引用発明の断面コ字状の上側の磁気シールド(13)は、該スプールと該部材と共に本体部分の磁気遮蔽容器を形成するように配置されるものである。 また、上側の磁気シールド(13)は、光伝搬路(3)等を覆うものであるから、「カバー」といえる。 したがって、引用発明の磁気シールド(13)、(14)は、「スプールと該部材と共に該本体部分の磁気遮蔽容器を形成するように配置されると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるカバー」を含むものである。 以上(1)〜(3)のとおり、引用発明の「磁気シールド(13)、(14)」は、それぞれ高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる、本体部分を支持するスプールと、内側開口部内に延在する部材と、スプールと部材と共に本体部分の磁気遮蔽容器を形成するように配置されるカバーとを含むものであるということができるから、上記相違点1は、実質的な相違ではない。 (4)なお、上記(1)において、「断面コ字状の下側の磁気シールド(14)の底辺部分は、他の部材を介しているので間接的ではあるが、整列巻きに巻回された光ファイバを含む光伝搬路(3)を下から支持している」と指摘した。 他方、本願の図面に記載された「スプール」は、本体部分を直接的に支持するものであり、仮に、本願補正発明の「スプール」が、本体部分を間接的に支持するものを含まない、すなわち、直接的に支持するものに限定されると解釈した場合(但し、本願補正発明にはそのような明示的な限定はない。)についても、以下に予備的に検討する。 引用発明において、光伝搬路(3)と磁気シールド(13)、(14)との間には、二重壁構造体、断熱材(6)、(7)、第2の蓋体(8)、(9)、断熱材(12)が介在している。引用発明がこのように多層構造を採用している理由は、引用発明のもう一つの目的である「光伝搬路の時計回り光入射端と反時計回り光入射端の温度差を低減」するためであり、そのために、良好な熱伝導、低熱膨張係数の物質からなる二重壁構造体や断熱材を設けているのである。 すなわち、引用発明においては、二重壁構造体、断熱材(6)、(7)、第2の蓋体(8)、(9)、断熱材(12)が、光入射端間の温度差低減効果を担い、磁気シールド(13)、(14)が、地球磁場変動に伴う位相誤差低減効果を担っているといえる。 そうすると、引用発明において、地球磁場変動に伴う位相誤差低減効果のみを達成しようとした場合に、光伝搬路(3)と磁気シールド(13)、(14)との間に介在する、二重壁構造体、断熱材(6)、(7)、第2の蓋体(8)、(9)、断熱材(12)を排除し、磁気シールド効果をもつもので光伝搬路(3)を直接支持すればいいことは明らかであるから、引用発明において、磁気シールドで光伝搬路(3)を直接的に支持するようにすること、あるいは、光伝搬路(3)を直接支持する部材を磁気シールド効果を持つ物質で形成することにより、「本体部分を支持すると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるスプール」を得ることは、当業者であれば容易にできる程度の設計変更にすぎない。 したがって、仮に、本願補正発明の「スプール」が本体部分を直接的に支持するものに限定されるとしても、そのようなスプールとすることは、当業者にとって格別困難なことではない。 2-4-2.相違点2について 地磁気などの磁気の影響を遮蔽するために囲いを2重構造とすること、及び、2重構造の外側ケースと内側ケースの間に低透磁率材料からなるスペーサを配置することは、従来周知である(例えば、特開平7-131178号公報、特開平5-183288号公報、実願昭54-97585号(実開昭56-16748号)のマイクロフィルム参照)。 したがって、引用発明において、「磁気シールド」の外側に高い比透磁率を有する強磁性体材料からなるケースを設け、磁気シールドと該ケースとの間に低透磁率材料からなるスペーサを配置することは当業者が容易に考えつくことであり、かつ、そのようにしたことによる効果も当業者が予測し得ることである。 2-5.本願補正発明の独立特許要件についてのまとめ したがって、本願補正発明は、本件特許出願の出願前に頒布された引用例に記載された引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、補正後の請求項11,18,20に係る発明の独立特許要件や他の補正事項について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本件補正前の発明について 1.本願発明 平成13年12月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許を受けようとする発明は、平成13年5月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至25に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりのものである。 【請求項1】 光ジャイロスコープアセンブリであって、光電子磁気エネルギーを伝導することが可能であるクローズドパスを限定すると共に、該パスに囲まれた内側開口部を含む本体部分と、該本体部分を完全に囲む容器とを含み、該容器は、該本体部分を支持すると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるスプールと、該内側開口部内に延在する高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなる部材と、該スプールと該部材と共に該本体部分の磁気遮蔽容器を形成するように配置されると共に、高い比透磁率 (μ/μ0) を有する強磁性体材料からなるカバーとを含む光ジャイロスコープアセンブリ。(以下、「本願発明」という。) 2.引用刊行物及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、その記載事項及び引用発明は、上記第2の2-2.に記載したとおりである。 3.本願発明と引用発明との対比及び判断 本願発明は、上記第2の2-3.及び2-4.で検討した本願補正発明における発明特定事項を限定する事項である「該容器の周囲に配置されると共に、高い比透磁率を有する強磁性体材料からなる外側ケースと、該容器と該外側ケースとの間に配置されると共に、低透磁率材料からなるスペーサ」を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の2-5.に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、本願の出願前に頒布された引用例に記載された引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願発明が特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-08-22 |
結審通知日 | 2003-08-25 |
審決日 | 2003-09-05 |
出願番号 | 特願平10-508806 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大和田 有軌、岡田 卓弥、有家 秀郎 |
特許庁審判長 |
瀧 廣往 |
特許庁審判官 |
荒巻 慎哉 中塚 直樹 |
発明の名称 | 高効率磁気シールド |
代理人 | 臼井 伸一 |
代理人 | 藤野 育男 |
代理人 | 高梨 憲通 |
代理人 | 本宮 照久 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 産形 和央 |
代理人 | 高橋 誠一郎 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 吉澤 弘司 |