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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G08B
管理番号 1112928
異議申立番号 異議2003-73063  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-04-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-12 
確定日 2004-12-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3419167号「遠隔試験機能付火災監視システム」の請求項1、4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3419167号の請求項1、4に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3419167号の請求項1及び4に係る発明についての出願は、平成7年9月26日に出願がなされ、平成15年4月18日に設定登録され、その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年6月8日に訂正請求がなされたものである。

2. 訂正の適否
(1) 訂正の内容
訂正請求は、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書(以下「訂正明細書」という。)のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。

ア. 訂正事項1
特許請求の範囲における請求項1の「住戸の玄関先などに配設された試験用ターミナルに、遠隔試験器を接続して、住宅用受信機に接続された火災感知器を試験発報させて、火災感知器の動作試験と、住宅用受信機の機能試験を行うようにした火災監視システムにおいて、上記試験用ターミナルには、住宅用受信機に接続されている火災感知器の個数を表示する表示部を設けた」を「住戸の玄関先など、警戒区域等の近くに配設された試験用ターミナルに、遠隔試験器を接続して、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置された火災感知器を試験発報させて、火災感知器の動作試験と、住宅用受信機の機能試験を行うようにした火災監視システムにおいて、上記試験用ターミナルには、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置されている、試験対象となる火災感知器の個数を表示する表示部を設けた」と訂正する。

イ. 訂正事項2
明細書の段落【0008】の「請求項1に記載の遠隔試験機能付火災監視システムは、住戸の玄関先などに配設された試験用ターミナルに、遠隔試験器を接続して、住宅用受信機に接続された火災感知器を試験発報させて、火災感知器の動作試験と、住宅用受信機の機能試験を行うようにした火災監視システムにおいて、試験用ターミナルには、住宅用受信機に接続されている火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたことを特徴とする」を「請求項1に記載の遠隔試験機能付火災監視システムは、住戸の玄関先など、警戒区域等の近くに配設された試験用ターミナルに、遠隔試験器を接続して、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置された火災感知器を試験発報させて、火災感知器の動作試験と、住宅用受信機の機能試験を行うようにした火災監視システムにおいて、上記試験用ターミナルには、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置されている、試験対象となる火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたことを特徴とする」と訂正する。

ウ. 訂正事項3
明細書の段落【0010】の「試験用ターミナルに、住宅用受信機に接続されている火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたので、」を「試験用ターミナルに、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置されている、試験対象となる火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたので、」と訂正する。

エ. 訂正事項4
明細書の段落【0021】の「試験用ターミナル4は、図1に示すように、ターミナルパネル5と、試験器接続コネクタ部6と、ターミナルパネル5の表面上に設けられ、住宅用受信機1に接続されている火災感知器2・・・の個数を表示する表示部7とを備える」を「試験用ターミナル4は、図1に示すように、ターミナルパネル5と、試験器接続コネクタ部6と、ターミナルパネル5の表面上に設けられ、住宅用受信機1に接続されている、試験対象となる火災感知器2・・・の個数を表示する表示部7とを備える」と訂正する。

オ. 訂正事項5
明細書の段落【0041】の「請求項1に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、試験用ターミナルに、住宅用受信機に接続されている火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたので、試験者は、表示部より住宅用受信機に接続されている火災感知器の個数を知ることができる。」を「請求項1に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、試験用ターミナルに、住宅用受信機に接続され、警戒区域等内に設置されている、試験対象となる火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたので、試験者は、表示部より住宅用受信機に接続され警戒区域等の試験者が立ち入ることのできない区域に設置されている火災感知器の個数を知ることができる。」と訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
ア. 訂正事項1
訂正事項1は、請求項1において、試験用ターミナルが警戒区域等の近くに配設されること、及び、個数が表示される火災感知器は、警戒区域等内に設置され、試験対象となるものであることを限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、本件特許明細書の段落【0020】の「この遠隔試験機能付火災監視システムAでは、試験用ターミナル4は、警戒区域等の試験者が立ち入ることのできない区域の近くの入口付近の壁面に設けられる。」、段落【0022】の「したがって、試験者は、表示部7から警戒区域等内に5台の火災報知器が設置されていることが容易に判る。」、段落【0025】の「この遠隔試験機能付火災監視システムAでは、試験用ターミナル4に、住宅用受信機1に接続されている火災感知器2・・・の個数を表示する表示部7を設ける構成としたので、試験者は、表示部7より住宅用受信機1に接続されている火災感知器2・・・の個数を知ることができるので、表示部7に記載されている警戒区域等に設けられた火災感知器2・・・の総数と同数の表示ランプが点灯すれば、警戒区域等内の火災感知器2・・・の全てが正常であるということを容易に判断することができる。」、段落【0026】の「また、試験用ターミナル4に記載表示された表示部7には、警戒区域等に設置されている火災報知器2・・・の設置個数が記載されているので、試験者は、遠隔試験を行う際に、設備設計図面を持ち歩いたりして、遠隔試験を行う区域に何個の感知器が設けられているのかを、予め、設備設計図面等で調べる必要があるといった煩わしい作業から解放されるという効果がある。」の記載に基づくものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでない。
また、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、異議申立てがされていない、請求項1を引用する請求項2,3及び5ないし7が訂正されたが、これらの請求項にされた訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするもので、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでなく、これらの請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができない発明でもない。

イ. 訂正事項2ないし5
訂正事項2ないし5は、上記訂正事項1の訂正に、発明の詳細な説明の記載を整合させるもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでない。

(3) むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する特許法第126条第2項ないし第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3. 取消理由についての判断
(1) 訂正明細書の請求項1及び4に係る発明
訂正明細書の請求項1及び4に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

請求項1
「住戸の玄関先など、警戒区域等の近くに配設された試験用ターミナルに、遠隔試験器を接続して、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置された火災感知器を試験発報させて、火災感知器の動作試験と、住宅用受信機の機能試験を行うようにした火災監視システムにおいて、上記試験用ターミナルには、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置されている、試験対象となる火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたことを特徴とする、遠隔試験機能付火災監視システム。」

請求項4
「上記遠隔試験器に、火災感知器の試験結果表示部を更に設けた構成としたことを特徴とする、請求項1、2または3に記載の遠隔試験機能付火災監視システム。」

(2) 引用刊行物1
(2)-1
当審が通知した取消しの理由に引用した刊行物1(特開平1-197899号公報)には、次の事項が記載されている。
ア.「従来の方法では各火災感知器を1個、1個加熱しなければならず、非常に能率が悪かった。又直接火災感知器を加熱する必要があるから、被チェック感知器を設置している建物の管理人が居なければチェックすることができないという問題があった。特に集合住宅のような場合には各戸別にチェックを行うわけでが、留守宅等が多く、全戸をチェックするの困難であった。
本発明は上述の問題点に鑑みて成されたもので、複数の火災感知器を自動的順次遠隔より検査することができて検査能率も向上し、更に戸外からでも検査することが可能な火災感知器のリモートチェックシステムを提供することを目的とし、又検査を行った全火災感知器が正常なときに受信機により発報動作を行わせて確実に検査人に検査結果を示す事ができる火災感知器リモートチェックシステムを提供する」(第3頁左上欄第11行〜同頁右上欄第7行)

イ.「上記チェック回路及び検知表示手段は可搬型のテスターに組み込みチェック用電源は受信機より得るようにしても良い。又上記チェック回路及び検知表示手段をドアホン子器に付設しても良い。」(第3頁右下欄第7行〜第10行)

ウ.「上記検知表示手段をドアホン子器に付設してあれば玄関ドアの外、つまり戸外からチェックが行えることになる。
上記チェック回路及び検知表示手段を火災表示灯に付設してある場合或いはチェック回路及び検知表示手段を戸外に設けたキー付き専用ボックス内に配設してある場合も同様である。」(第4頁左下欄第8行〜第14行)

エ.「この接続は本実施例では第5図に示すようにチェック回路5及びチェック用電源Vccを内蔵した可搬自在なテスター21に導出したコード22の先部に設けてあるコネクタ23を第6図(a)(b)に示す住戸の外に設けてあるドアホン子器23のカバーの中に設けてあるソケット24に差し込むことにより接続する事ができるようにしてある。
勿論ドアホン子器23以外に第7図に示すように住戸の外部に設けてある火災表示灯25にソケット24を設けてもよく、又、第8図に示すようキー付きカバーを設けた専用ボックス26を設置してそのボックス26内にソケット24を設けてもよい。
いずれにしても住戸の外からテスター21を外部から接続する事ができるようにしてある。
勿論チェック用電源Vccを受信機4から第9図に示すように得る場合には第10図に示すようにチェック回路5をドアホン子器23内に内蔵してチェックスイッチ19及び表示用の発光ダイオードLEDをカバー23a表面に露出させ、外部からチェックスイッチ19を操作する事ができるようにしてもよい。同様に火災表示灯25や、専用ボックス26にチェック回路5を内蔵するようにしてもよい。」(第6頁左下欄第15行〜右下欄第18行)

オ.「ところで上記チェック回路5,5’はメータや発光ダイオードでチェック終了を表示しているが、第20図(a)に示すように始端側の火災感知器11の発熱回路2から送り出される電源出力で駆動されるトランジスタからなるスイッチ回路32を設けて、このスイッチ回路32を回線La,Lbの間に接続することにより、最終的に回線短絡による受信機4の発報動作で正常動作表示を行うようにしてもよい。」(第9頁左上欄第15行〜右上欄第3行)

(2)-2
刊行物1に記載されたものにおいて、以下の点が明らかである。
ア.(2)-1ア.より、火災感知器は戸内に設置されるものであり、戸外から遠隔的に検査されるものである。

イ.(2)-1ウ.及びエ.より、ドアホン子器は、玄関ドアの外などに配設され、可搬自在なテスターを接続するものである。

ウ.(2)-1ア.及びオより、全火災感知器が正常なときに受信機により発報動作を行わせるものであるから、一連の検査工程には、受信機の機能確認も含まれており、受信機の機能試験をおこなっているといえる。

エ.(2)-1イ.より、テスターには検知表示手段が備えられている。

以上から刊行物1には、次の2つの発明が記載されていると認められる。

「玄関ドアの外などに配設されたドアホン子器23に、テスター21を接続して、受信機4に接続され戸内に設置された火災感知器11…1nを試験発報させて、火災感知器11…1nの動作試験と、受信機4の機能試験を行うようにした火災感知器リモートチェックシステム。」(以下、「引用発明1」という。)

「テスター21に、火災感知器11…1nの動作状態を表示する検知表示手段を更に設けた引用発明1の火災感知器リモートチェックシステム。」(以下、「引用発明2」という。)

(3)引用刊行物2
(3)-1
当審が通知した取消しの理由に引用した刊行物2(実願昭63-154036号(実開平2-123159号)のマイクロフィルム)には、次の事項が記載されている。
ア.「従来のこの種の集合住宅監視通話システムは、第5図に示したような構成となっており、管理人室などには警報監視盤100を設置し、共同玄関には住戸呼出スイッチを有したロビーインターホン101を設置し、各住戸にはドアホン子器102や、火災センサーなどの防災センサー(不図示)を接続した住宅情報盤103を設置し、これらの相互間を多重信号線l,通話線(不図示)で接続して、相互の通話、共同玄関の電気錠制御及び各住戸のセキュリティー監視制御を行なう基本構成とされており、来客などがロビーインターホン101の住戸呼出スイッチを操作して、特定の住戸を呼出すと、呼び出された住戸の住宅情報盤103が応答し、その住戸人が電気錠制御盤(不図示)に解錠信号を送り出して共同玄開が開放される。また、104は集合住宅の各階に設けた階別出力端末器であり、火災などの異常の発生した階を表示し、警報を出力するようになっており、105は設備用端末器であり、例えば、郵便ポストなどに設けられて郵便物の投函の有無を検知するものが代表的である。更に、106は管理人の居室などに置かれて、システム内の異常を監視する副警報監視盤である。
ところで、このような従来のシステムでは、システム内の各端末機器の動作状態を試験する場合、警報監視盤100より、ロビーインターホン101,住宅情報盤103などの各端末機器に実際に呼出操作を行なって、警報監視盤側で呼出音のバックトーンを確認しているのが通例となっているが、システムの規模が大きくなると、このような呼出の操作が面倒となる。
また、呼出すべき端末機器の数が多い場合には、リストを元に呼出を行なう必要があり、一部の端末機器に呼出漏れを生じても分からないといった問題があった。」(第2頁第17行-第4頁第11行)

イ.「本考案は、従来のシステムが上記事情にあるのに鑑みてなされたもので、警報監視盤側に、システム内の端末機器に割り当てられたアドレスコードを登録させ、端末機器の種別に応じた総数と、アドレスコードを表示させる機能を付加するとともに、表示されたアドレスコードを視認しながら、自動的に呼出を行なうことによって、システム内の端末機器の動作状態を試験できるようにした監視通話システムを提供することを目的としている。」(第4頁第13行-第5頁第1行)

ウ.「本考案システムによれば、警報監視盤の自動モニタスイッチを操作すると、表示手段の表示部には、システム内の各端末機器の種別毎の総数と、登録されたアドレスコードが表示され、アドレスコードの表示された各端末機器に対しては自動的に呼出がなされて、動作状態が試験される。」(第6頁第6行-第11行)

エ.「本考案の警報監視盤は、以上のような基本構成に、呼び出しすべきシステム内の端末機器のアドレスコードを登録するアドレスコード記憶手段17と、このアドレスコード記憶手段17に登録されたアドレスコードを読出しするアドレスコード読出手段18と、自動モニタスイッチ19aを有した自動呼出試験手段19を付加して構成されている。」(第7頁第9行-第16行)

(3)-2
刊行物2に記載されたものにおいて、以下の点が明らかである。
ア.(3)-1ア.より、管理人室などに設置された警報監視盤100は、システム内のロビーインターホン101、住宅情報盤103などの各端末機器の動作状態を試験するものである。

イ.(3)-1ウ.及びエ.より、警報監視盤の自動呼出試験手段19の自動モニタスイッチ19aを操作すると、表示手段の表示部にシステム内の各端末機器の種別毎の総数が表示される。

以上から刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。

「管理人室などに設置された警報監視盤100の自動呼出試験手段19を操作して、各端末機器の動作状態を試験する集合住宅用監視通話システムにおいて、上記警報監視盤100には、システム内の各端末機器の種別毎の総数を表示する表示部16を設けた集合住宅用監視通話システム。」(以下、「引用発明3」という。)

(4) 本件発明1について
(4)-1.対比
本件発明1と刊行物1に記載された引用発明1とを対比すると、引用発明1の「玄関ドアの外」、「ドアホン子器23」、「テスター21」、「受信機」は、それぞれ本件発明1の「住戸の玄関先」、「試験用ターミナル」、「遠隔試験器」、「住宅用受信機」に相当する。また、引用発明1において、戸内が警戒区域であることは明らかであり、引用発明1のドアホン子器は玄関ドアの外、すなわち、警戒区域である戸内の近くに配設されるものであるから、両発明は、

「住戸の玄関先など、警戒区域等の近くに配設された試験用ターミナルに、遠隔試験器を接続して、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置された火災感知器を試験発報させて、火災感知器の動作試験と、住宅用受信機の機能試験を行うようにした火災監視システム。」

である点で一致し、次の点において相違している。

【相違点】
本件発明1は、試験用ターミナルには、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置されている、試験対象となる火災感知器の個数を表示する表示部を設けているのに対し、刊行物1に記載された引用発明1は、そのような表示部を備えていない点

(4)-2.判断
引用発明3は、管理人室などに設置された警報監視盤から、多重信号線、通話線で接続された火災センサー等の各端末機器の動作状態を試験する際に、呼出すべき端末機器の数が多い場合には、一部の端末機器に呼出漏れを生じてもわからないという問題を解決するために、警報監視盤に各端末機器の種別毎の総数を表示する表示部を設けたものである。なお、引用発明3と本願発明を対比すると、引用発明3の「警報監視盤」は本件発明1の「試験用ターミナル」に相当し、また、引用発明3の「端末機器」は警報監視盤の操作により遠隔的に試験されるものであるから、本件発明1の「火災感知器」に対応するものと認められる。
そして、引用発明1も複数の火災感知器の試験を行うものであるから、火災感知器等の端末機器の動作を遠隔的に検査する監視システムという同一技術分野に属する引用発明3を適用して、火災感知器を遠隔的に検査する際に、火災感知器の数を確認するための表示部を設けることは、当業者が容易に想到することができたものであり、その際に、火災感知器の数を表示する表示部をどこに設けるかは、例えば、引用刊行物1にも、上記(2)-1イ.のとおり、検知表示手段をテスター又はドアホン子器のいずれに設けてもよい旨が記載されており、火災感知器の数を表示する表示部についても、上記検知表示手段と同様に検査人が確認しながら検査を行うものであるから、これをドアホン子器(試験用ターミナル)とテスター(遠隔試験器)のいずれに設けるかは当業者が適宜選択し得る事項である。そして、表示部をドアホン子器に設けて、検査人がドアホン子器に表示された火災感知器の数を確認し、テスターの操作により検査を行うことを妨げる理由もないことから、相違点に関する本件発明1の構成とすることは、容易に想到し得たことと認められる。
さらに、本件発明1の全体としても、引用発明1及び引用発明3に記載された発明から予測される以上の格別の効果を奏するものとも認められない。

(5) 本件発明2について
(5)-1.対比
本件発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「検知表示手段」は、本件発明2の「試験結果表示部」に相当するから、両発明は、
「遠隔試験器に、火災感知器の試験結果表示部を更に設けた構成とした引用発明1の遠隔試験機能付火災監視システム。」
である点で一致し、上記【相違点】において相違している。

(5)-2.判断
【相違点】に対する判断は上記(2)-2.と同様であることから、本件発明2は、引用発明2及び引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1及び2についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遠隔試験機能付火災監視システム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】住戸の玄関先など、警戒区域等の近くに配設された試験用ターミナルに、遠隔試験器を接続して、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置された火災感知器を試験発報させて、火災感知器の動作試験と、住宅用受信機の機能試験を行うようにした火災監視システムにおいて、
上記試験用ターミナルには、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置されている、試験対象となる火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたことを特徴とする、遠隔試験機能付火災監視システム。
【請求項2】上記試験用ターミナルに、住宅用受信機に接続されている火災感知器の設備個数を設定入力する設定スイッチを更に設けた構成としたことを特徴とする、請求項1に記載の遠隔試験機能付火災監視システム。
【請求項3】上記遠隔試験器に、上記遠隔試験器が上記試験用ターミナルに接続されたときに、上記設定スイッチによって設定されている火災感知器の設備個数を表示する表示部を更に設けた構成としたことを特徴とする、請求項2に記載の遠隔試験機能付火災監視システム。
【請求項4】上記遠隔試験器に、火災感知器の試験結果表示部を更に設けた構成としたことを特徴とする、請求項1、2または3に記載の遠隔試験機能付火災監視システム。
【請求項5】上記火災感知器の試験結果表示部を、複数の火災感知器試験結果表示ランプとしたことを特徴とする、請求項3に記載の遠隔試験機能付火災監視システム。
【請求項6】上記遠隔試験器が、試験すべき火災感知器のアドレスを指定するキー操作部と、試験開始スイッチを更に備える構成としたことを特徴とする、請求項1、2、3、4または5に記載の遠隔試験機能付火災監視システム。
【請求項7】上記遠隔試験器が、上記キー操作部によって指定されたアドレスの火災感知器に発報指令信号を送出して、火災感知器から返信される発報信号の有無によって試験結果を判別する構成としたことを特徴とする、請求項6に記載の遠隔試験機能付火災監視システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遠隔試験機能付火災監視システムに関し、特に、警戒区域等に設けられた火災報知器の全てが正常であることを容易に判断できるようにした、遠隔試験機能付火災監視システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動火災報知システムの火災感知器の点検は、通常は、試験者が、火災感知器の下で、煙を、直接、発生させて、火災感知器が正常に動作するか否かを試験する、直接試験(あぶり試験)が主に行われているが、火災感知器が、試験者が立ち入ることのできないような区域(以下、警戒区域という)に設けられている場合には、遠隔試験が行われている。
【0003】
図6は、従来の遠隔試験機能付火災監視システムを説明するための概略的な構成図であり、1は、住宅用受信機を、2は、住宅用受信機1に接続された火災感知器を、43は、遠隔試験を行うための遠隔試験器を、又、44は遠隔試験器を接続するために設けられた試験用ターミナルを各々示している。従来の遠隔試験では、図6に示すように、試験用ターミナル44に遠隔試験器43を接続して、遠隔試験器43から複数の火災感知器2・・・に対しアドレス順に自動的に発報指令信号を送出し、火災感知器2・・・から発報信号が返信されると、これを正常と判断して、正常に動作する火災感知器2・・・に対応する表示LEDを点灯表示させることにより、火災感知器の動作試験と、住宅用受信機の機能試験を行うようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6に示すような従来の遠隔試験では、試験者は、遠隔試験器43を試験用ターミナル44に接続するときに、警戒区域等内に何個の火災感知器2・・・が設定されているかが判らないため、何個の表示LEDが点灯すれば、警戒区域内の火災感知器2・・・の全てが正常なのかを判断することができないという問題があった。
【0005】
図7は、従来の遠隔試験の試験結果を例示的に示す図であり、試験器43の表示LEDの点灯の様子を示している。図7(a)の場合は、4個の表示LEDが連続して点灯しているが、点灯していない5番以降の表示LEDについては、試験者が警戒区域に全部で何個の火災感知器が設けられているのかを予め知っていないと、5番以降に対応する火災感知器が故障しているのか、それとも、火災感知器が元々無いのかを、判断できない。
【0006】
また、図7(b)の例では、3番と5番以降の表示LEDが点灯していないが、3番の表示LEDに対応する火災感知器が故障していることは判るが、5番以降については、試験者が警戒区域に全部で何個の火災感知器が設けられているのかを予め知っていないと、5番以降に対応する火災感知器が故障しているのか、それとも、火災感知器が元々無いのかを、判断できない。
【0007】
このため、従来の遠隔試験では、試験者が、遠隔試験を行う際には、設備設計図面を持ち歩いたりして、遠隔試験を行う区域に何個の火災感知器が設けられているのかを、予め、設備設計図面等で調べる必要があるといった煩わしい作業を要するものであった。本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであって、特に、遠隔試験を行う際に、試験者が対象試験区域に何個の火災感知器があるかを容易に判るようにした、遠隔試験機能付火災監視システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の遠隔試験機能付火災監視システムは、住戸の玄関先など、警戒区域等の近くに配設された上記試験用ターミナルに、遠隔試験器を接続して、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置された火災感知器を試験発報させて、火災感知器の動作試験と、住宅用受信機の機能試験を行うようにした火災監視システムにおいて、上記試験用ターミナルには、住宅用受信機に接続され警戒区域等に設置されている、試験対象となる火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたことを特徴とする。
【0009】
表示部は、試験者が容易に見える場所であれば、特に限定されることはないが、試験者の視認性を考慮した場合には、試験用ターミナルの近傍に設けるのが好ましく、表示部には、通常は、不滅インク等の耐候性の良いインク等で火災感知器の設置個数を記載する。また、火災監視システムは、長年に渡って使用するものであり、そのような長年の使用によって、不滅インキ等に手等が触れる等して、火災感知器の設置個数が消えてしまうこともあるので、このような事態を予め想定した場合には、表示部に火災感知器の個数を不滅インクで記入した後、表示部を透明なラミネートフィルム等のシール部材により覆っておくのが好ましい。
【0010】
請求項1に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、試験用ターミナルに、住宅用受信機に接続され警戒区域等内に設置されている、試験対象となる火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたので、試験者は、表示部より住宅用受信機に接続されている火災感知器の個数を知ることができる。請求項2に記載の遠隔試験機能付火災監視システムは、請求項1に記載の遠隔試験機能付火災監視システムの試験用ターミナルに、住宅用受信機に接続されている火災感知器の設備個数を設定入力する設定スイッチを更に設けた構成としたことを特徴とする。
【0011】
設定スイッチとしては、例えば、ディップスイッチを好ましい例として挙げることができる。そして、設定スイッチは、壁側に埋め込まれる位置に設け、火災報知器を設置する工事の際に、設備設計図面に基づいて、設置する火災報知器の数に対応するように設定し、試験用ターミナルを設置する工事の後は、設定スイッチの設定が、いたずら等により不用意に変更されないように、壁面内に埋め込んでしまうのが好ましい。
【0012】
請求項2に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、設定スイッチにより火災感知器の設備個数が判るようにしたので、火災感知器の設備個数を変更する際に、設定スイッチを操作するだけでよいので、火災感知器の設備個数を変更する際の手間が、試験用ターミナルに火災感知器の設備個数を記載表示する場合に比べ、作業が容易になる。
【0013】
請求項3に記載の遠隔試験機能付火災監視システムは、請求項2に記載の遠隔試験器に、遠隔試験器が試験用ターミナルに接続されたときに、設定スイッチによって設定されている火災感知器の設備個数を表示する表示部を更に設けた構成としたことを特徴とする。表示部は、試験者の見やすい位置に設け、表示部に不滅インク等で火災感知器の個数を記載する構成としてもよいが、設定スイッチを設ける場合には、請求項3に記載してように、表示部を遠隔試験器に設け、遠隔試験器を試験用ターミナルに接続すると、遠隔試験器の表示部に、設定スイッチから読み取った火災報知器の設定台数を表示するようにしてもよい。
【0014】
請求項3に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、設定スイッチを設け、且つ、遠隔試験器に表示部を設け、遠隔試験器の表示部に、設定スイッチから読み取った火災報知器の設定台数を表示するようにしたので、表示部を試験用ターミナルの近傍に設け、表示部に不滅インク等で、火災報知器の設置個数を記載する必要がない。
【0015】
請求項4に記載の遠隔試験機能付火災監視システムは、請求項1または2に記載の遠隔試験機能付火災監視システムの遠隔試験器に、火災感知器の試験結果表示部を更に設けた構成としたことを特徴とする。請求項4に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、遠隔試験器に、火災感知器の試験結果表示部を更に設けたので、表示部に表示される火災報知器の設置個数との比較により、試験者は、火災報知器が故障しているのか、または、火災報知器が元々無いのかについて、判断に迷うことがない。
【0016】
請求項5に記載の遠隔試験機能付火災監視システムは、請求項4に記載の遠隔試験機能付火災監視システムの遠隔試験器の火災感知器の試験結果表示部を、複数の火災感知器試験結果表示ランプとしたことを特徴とする。請求項5に記載の遠隔試験機能付火災監視システムは、火災感知器の試験結果表示部の好ましい試験結果表示部を規定しており、火災感知器の試験結果表示部を、視認性に優れる、複数の火災感知器試験結果表示ランプとしたので、表示部に表示される火災報知器の設置個数との比較により、試験者は、容易に、火災報知器の全てが正常なのか、故障しているものがあるのかを容易に知ることができる。
【0017】
請求項6に記載の遠隔試験機能付火災監視システムは、請求項1、2、3、4または5に記載の遠隔試験機能付火災監視システムの遠隔試験器が、試験すべき火災感知器のアドレスを指定するキー操作部と、試験開始スイッチを更に備える構成としたことを特徴とする。請求項6に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、遠隔試験器に、試験すべき火災感知器のアドレスを指定するキー操作部と、試験開始スイッチを更に設けたので、火災報知器を特定して、火災報知器毎に動作試験を行うことができる。
【0018】
請求項7に記載の遠隔試験機能付火災監視システムは、請求項6に記載の遠隔試験機能付火災監視システムの遠隔試験器が、キー操作部によって指定されたアドレスの火災感知器に発報指令信号を送出して、火災感知器から返信される発報信号の有無によって試験結果を判別する構成としたことを特徴とする。請求項7に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、キー操作部でアドレスを指定する毎に試験開始スイッチを操作して、動作試験を行いたい火災報知器を特定して、動作試験を行うことができる他、火災報知器の複数のアドレスを指定した後、試験開始スイッチを操作すれば、火災感知器には、アドレスを付加した発報指令信号が順次送出されるので、アドレスが指定された火災感知器の動作が正常か否かを確認できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明について、発明の実施の形態に基づいて、更に、詳しく説明する。
(発明の実施の形態1)
図1は、本願発明の要部を示す試験用ターミナルを中心に示す図であり、図2は、本願発明に係る遠隔試験機能付火災監視システムを概略的に示す全体構成図である。
【0020】
尚、図2中、1は、住宅用受信機を、2は、住宅用受信機1に接続された火災感知器を、3は、遠隔試験を行うための遠隔試験器を、又、4は遠隔試験器を接続するために設けられた試験用ターミナルを各々示している。この遠隔試験機能付火災監視システムAでは、試験用ターミナル4は、警戒区域等の試験者が立ち入ることのできない区域の近くの入口付近の壁面に設けられる。
【0021】
そして、試験用ターミナル4は、図1に示すように、ターミナルパネル5と、試験器接続コネクタ部6と、ターミナルパネル5の表面上に設けられ、住宅用受信機1に接続されている、試験対象となる火災感知器2・・・の個数を表示する表示部7とを備える構成となっている。この例では、表示部7は、ターミナルパネル5の表面上の試験器接続コネクタ部6の上方近傍の試験者が見やすい位置に設けられている。
【0022】
したがって、試験者は、表示部7から警戒区域等内に5台の火災報知器が設置されていることが容易に判る。尚、表示部7に記載された火災報知器の設備個数を示す数字(この例では「5」)は、例えば、不滅インク等の耐候性の良いインクで記載されており、更に、数字(「5」)が記載された部分は、火災監視システムAが、長年に渡って使用するものである点を考慮して、不滅インキ等により記載された数字が消えてしまうことのないように、透明なラミネートフィルム等のシール部材(図示せず)により覆われている。
【0023】
尚、火災報知器2・・・の設置個数を表示する表示部7は、ラミネートフィルム等のシール部材が貼り易いように、その表面を滑らかに加工しておくことが好ましい。一方、遠隔試験器3は、試験用コネクタ部6に接続するケーブル線Lを有しておりケーブル線Lの先端Ldには、試験用コネクタ部6に差し込む差込みプラグ8が取り付けられている。
【0024】
また、この遠隔試験器3には、火災感知器2・・・の動作試験の試験結果を表示する試験結果表示部9として、複数の火災感知器試験結果表示ランプが設けられている。そして、複数の火災感知器試験結果表示ランプの各々の上方には、火災報知器のアドレスとして、数字が1から昇べき順に記載されている。この遠隔試験器3を用いて、火災監視システムAの火災報知器2・・・の動作試験を行う際には、遠隔試験器3の差込みプラグ8を試験用コネクタ部6に接続する。すると、遠隔試験器3から、多重伝送によって、複数の火災報知器2・・・に対して、アドレスの低い順に、自動的に、発報指令信号が送出され、火災感知器2・・・の各々から発報信号が返信されれば、これを正常として、試験結果表示部9の火災報知器2・・・の各々に対応する表示ランプが、1から昇べき順に点灯するようになっている。
【0025】
一方、火災感知器2・・・から発報信号が返信されなければ、該当する火災報知器が故障していると判断し、対応する表示ランプが点灯しないようになっている。この遠隔試験機能付火災監視システムAでは、試験用ターミナル4に、住宅用受信機1に接続されている火災感知器2・・・の個数を表示する表示部7を設ける構成としたので、試験者は、表示部7より住宅用受信機1に接続されている火災感知器2・・・の個数を知ることができるので、表示部7に記載されている警戒区域等に設けられた火災感知器2・・・の総数と同数の表示ランプが点灯すれば、警戒区域等内の火災感知器2・・・の全てが正常であるということを容易に判断することができる。
【0026】
また、試験用ターミナル4に記載表示された表示部7には、警戒区域等に設置されている火災報知器2・・・の設置個数が記載されているので、試験者は、遠隔試験を行う際に、設備設計図面を持ち歩いたりして、遠隔試験を行う区域に何個の感知器が設けられているのかを、予め、設備設計図面等で調べる必要があるといった煩わしい作業から解放されるという効果がある。
(発明の実施の形態2)
図3は、本願発明に係る遠隔試験機能付火災監視システムの他の一形態を、本願発明の要部を示す試験用ターミナルを中心に示す図であり、図3(a)は、正面図を、図3(b)は側面図を示している。
【0027】
尚、全体構成図は、遠隔試験機能付火災監視システムAと同様であるので、以下の説明においては、理解容易とするため、相当する部材には、相当する参照符号を付して説明する。この遠隔試験機能付火災監視システムBでは、図3に示すような試験用ターミナル14が、警戒区域等の近くの入口付近の壁面Wに設けられている。試験用ターミナル14は、ターミナルパネル5と試験器接続コネクタ部6と壁面Wに埋め込まれる側壁15を備えて構成されており、側壁15は、ボックス工事によって壁面Wに埋め込まれるようになっている。
【0028】そして、側壁15には、住宅用受信機1に接続されている火災感知器2・・・の設備個数を設定入力する設定スイッチ16として、ディップスイッチが取り付けられており、ディップスイッチを操作することにより、警戒区域等に設けられる火災報知器の設置個数を設定できるようになっている。尚、図3では、設定スイッチ16として、オンオフを設定する複数のスイッチを使用することにより火災報知器の設置個数を設定できるようにしたディップスイッチを用いているが、ディップスイッチは、この形式に限定されることはなく、火災報知器2・・・の設置個数を設定できるものであれば、種類を問わず、例えば、ロータリー式ディップスイッチ等を用いてもよい。
【0029】
ディップスイッチは、この火災監視システムBを設置する工事の際に、設備設計図面に基づいて、警戒区域等に設置する火災報知器の数に対応するように設定し、試験用ターミナル4を設置する工事の後は、このディップスイッチの設定が、いたずら等により不用意に変更されないように、壁面W内に埋め込むようにされている(図3(b)を参照)。
【0030】
また、図4は、試験用ターミナル14の試験器接続コネクタ部6に、遠隔試験器23を接続した状態を示す図である。この遠隔試験器23には、火災感知器の試験結果を表示する試験結果表示部9として、図示するような複数の火災感知器に対応して設けられた、複数の火災感知器試験結果表示ランプ(表示LED)が採用されている。そして、複数の火災感知器試験結果表示ランプ(表示LED)の各々の上方には、火災報知器のアドレスとして、数字が1から昇べき順に記載されている。
【0031】
また、この遠隔試験器23には、試験結果表示部9の下方に、設定スイッチ(図3(b)に示す設定スイッチ16)から読み取った火災報知器の設定個数を表示する表示部24が設けられている。表示部24は、例えば液晶表示になっており、設定スイッチ16から読み取った火災報知器の設定個数を数字として表示できるようになっている。
【0032】
この遠隔試験器23を用いて、火災報知器の動作試験を行う際には、遠隔試験器23を試験用コネクタ部6に接続する。すると、遠隔試験器23の表示部24には設定スイッチ16から読み取った、警戒区域等の火災報知器個数が数字で表示される(この例では、火災報知器が5台設けられているので、表示部24に数字「5」が表示されている)。
【0033】
また、遠隔試験器23は、複数の火災報知器に対して、多重伝送によって、アドレスの低い順に、自動的に、発報指令信号を送出して、火災感知器から発報信号が返信されれば、これを正常として、火災報知器に対応する表示ランプが、1から昇べき順に点灯するようになっており、火災感知器から発報信号の返信がなければ、該当する火災報知器が故障していると判断し、該当する表示ランプが点灯しないようになっている。
【0034】
この遠隔試験機能付火災監視システムBでは、遠隔試験器23に、住宅用受信機1に接続されている火災感知器の個数を表示する表示部24を設ける構成としたので、試験者は、表示部24より住宅用受信機1に接続されている火災感知器の個数を知ることができるので、試験者は、表示部24に記載されている警戒区域等内に設けられた火災感知器の数と同数の表示ランプが点灯すれば、警戒区域等内の火災感知器の全てが正常であるということを容易に判断することができる。
【0035】
また、試験者は、表示部24には警戒区域等内に設置されている火災報知器の設置個数が表示されているので、遠隔試験を行う際に、設備設計図面を持ち歩いたりして、遠隔試験を行う区域に何個の火災感知器が設けられているのかを、予め、設備設計図面等で調べる必要があるといった煩わしい作業から解放されるという効果がある。
【0036】
また、この遠隔試験機能付火災監視システムBでは、遠隔試験器23の表示部24に、警戒区域等内の火災報知器の個数が数字で表示されるようにしたので、試験用ターミナル14に警戒区域等内の火災報知器個数を、敢えて、記載表示する必要が無い。
(発明の実施の形態3)図5は、本願発明に係る遠隔試験機能付火災監視システムの他の一形態を、本願発明の要部を示す遠隔試験器を中心に示す図である。
【0037】
図5を参照して説明すると、この遠隔試験器33は、遠隔試験機能付火災監視システムBに使用するものであり、設定スイッチ16によって設定されている火災感知器の設備個数を表示する表示部24及び火災感知器の試験結果表示部9の他に、更に、試験すべき火災感知器のアドレスを指定するキー操作部(テンキー)35と、試験開始スイッチ36とを備える構成となっている。
【0038】
この遠隔試験器33を用いて火災報知器の動作試験を行う際には、遠隔試験器23を試験用コネクタ部6に接続する。すると、表示部24に設定スイッチ16から読み取った、警戒区域等内の火災報知器の個数が数字で表示される。また、この遠隔試験器33では、キー操作部(テンキー)35より、動作試験を行いたい火災報知器のアドレスを入力し、その後、試験開始スイッチ36をオンにすれば、キー操作部35によって指定されたアドレスの火災感知器に、多重伝送によって、発報指令信号が送出され、火災感知器から発報信号が返信されれば、アドレスに対応する表示ランプが点灯し、発報信号が返信されなければ、アドレスに対応する表示ランプが点灯しないようになっている。
【0039】
したがって、この遠隔試験器33を用いれば、動作試験を行いたい火災報知器を特定して、動作試験を行うことができる。また、この遠隔試験器33では、火災報知器の複数のアドレスを指定した後、試験開始スイッチ36を操作すれば、アドレスが指定された火災感知器に、アドレスを付加した発報指令信号が順次送出されるようにしてある。
【0040】
したがって、この遠隔試験器33を用いれば、アドレスが指定された複数の火災感知器の動作が正常か否かを確認することができる。尚、発明の実施の形態3では、遠隔試験機能付火災監視システムBに使用する遠隔試験器について説明したが、遠隔試験機能付火災監視システムAに使用する遠隔試験器(図2に示す遠隔試験器3)に、更に、試験すべき火災感知器のアドレスを指定するキー操作部(テンキー)と、試験開始スイッチとを設ける構成としてもよい。
【0041】
【発明の効果】
請求項1に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、試験用ターミナルに、住宅用受信機に接続され、警戒区域等内に設置されている、試験対象となる火災感知器の個数を表示する表示部を設けた構成としたので、試験者は、表示部より住宅用受信機に接続され警戒区域等の試験者が立ち入ることのできない区域に設置されている火災感知器の個数を知ることができる。
【0042】
請求項2に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、設定スイッチにより火災感知器の設備個数が判るようにしたので、火災感知器の設備個数を変更する際に、設定スイッチを操作するだけでよいので、火災感知器の設備個数を変更する際の手間が、試験用ターミナルに火災感知器の設備個数を記載表示する場合に比べ、作業が容易になるという効果がある。
【0043】
請求項3に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、設定スイッチを設け、且つ、遠隔試験器に表示部を設け、遠隔試験器の表示部に、設定スイッチから読み取った火災報知器の設定台数を表示するようにしたので、表示部を試験用ターミナルの近傍に設け、表示部に不滅インク等で、火災報知器の設置個数を記載する必要がないという効果がある。
【0044】
請求項4に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、遠隔試験器に、火災感知器の試験結果表示部を更に設けたので、表示部に表示される火災報知器の設置個数との比較により、試験者は、火災報知器が故障しているのか、または、火災報知器が元々無いのかについて、判断に迷うことがない。請求項5に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、火災感知器の試験結果表示部を、複数の火災感知器試験結果表示ランプとしたので、視認性に優れており、表示部に表示される火災報知器の設置個数との比較により、試験者は、容易に、火災報知器の全てが正常なのか、故障しているものがあるのかを容易に知ることができるという効果がある。
【0045】
請求項6に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、遠隔試験器に、試験すべき火災感知器のアドレスを指定するキー操作部と、試験開始スイッチを更に設けたので、アドレスが指定された火災報知器を特定して、火災報知器毎に動作試験を行うことができるという効果がある。請求項7に記載の遠隔試験機能付火災監視システムでは、キー操作部でアドレスを指定する毎に試験開始スイッチを操作して、動作試験を行いたい火災報知器を特定して、動作試験を行うことができる他、火災報知器の複数のアドレスを指定した後、試験開始スイッチを操作すれば、火災感知器には、アドレスを付加した発報指令信号が順次送出されるので、アドレスが指定された火災感知器の動作が正常か否かを確認できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の要部を示す試験用ターミナルを中心に示す図である。
【図2】本願発明に係る遠隔試験機能付火災監視システムを概略的に示す全体構成図である。
【図3】本願発明に係る遠隔試験機能付火災監視システムの他の一形態を、本願発明の要部を示す試験用ターミナルを中心に示す図であり、図3(a)は、正面図を、図3(b)は側面図を示している。
【図4】試験用ターミナルの試験器接続コネクタ部に、遠隔試験器を接続した状態を示す図である。
【図5】本願発明に係る遠隔試験機能付火災監視システムの他の一形態を、本願発明の要部を示す遠隔試験器を中心に示す図である。
【図6】従来の遠隔試験機能付火災監視システムを説明するための概略的な構成図である。
【図7】従来の遠隔試験の試験結果を例示的に示す図であり、(a)、(b)は、試験器の表示LEDの点灯の様子を示している。
【符号の説明】
A、B 遠隔試験機能付火災監視システム
1 住宅用受信機
2 火災感知器
3、23、33 遠隔試験器
4、14 試験用ターミナル
5 ターミナルパネル
6 試験器接続コネクタ部
7、24 表示部
8 差込みプラグ
9 試験結果表示部
15 側壁
16 設定スイッチ
35 キー操作部(テンキー)
36 試験開始スイッチ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-10-19 
出願番号 特願平7-248082
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (G08B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岩田 洋一  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 岩本 正義
佐々木 芳枝
登録日 2003-04-18 
登録番号 特許第3419167号(P3419167)
権利者 松下電工株式会社
発明の名称 遠隔試験機能付火災監視システム  
代理人 中井 宏行  
代理人 中井 宏行  
代理人 杉山 一夫  

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