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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1112942
異議申立番号 異議2003-71683  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-04 
確定日 2004-12-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3364266号「バンプの形成法」の請求項1,2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3364266号の請求項1,2に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
特許第3364266号の請求項1,2に係る発明は、平成5年3月17日に特許出願され、平成14年10月25日に特許権の設定登録がなされ、その後、池田美砂子より特許異議の申立てがなされ、平成16年7月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年10月5日に訂正請求がなされたものである。

【2】訂正及びその適否に関する判断
平成16年10月5日付けの訂正は次のとおりのものである。
【2-1】訂正事項
a.特許請求の範囲の請求項1中において、「電極パッド上に設けられた保護絶縁膜の開口部に対応する」という記載を、
「電極パッドのバンプ形成面上に該電極パッドより小さい開口部を有する保護絶縁膜を設け、該保護絶縁膜の開口部に対応する」と訂正する。
b.明細書の段落【0009】の「電極パッド上に設けられた保護絶縁膜の開口部に対応する」という記載を、
「電極パッドのバンプ形成面上に該電極パッドより小さい開口部を有する保護絶縁膜を設け、該保護絶縁膜の開口部に対応する」と訂正する。

【2-2】訂正の適否
訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
前記訂正事項aは、(1)保護絶縁膜の開口部の大きさが電極パッドより小さい点,(2)電極パッドのバンプ形成面上にすなわち電極パッドの表面上に保護絶縁膜を設ける点を限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、前記訂正事項bは、aの訂正に伴う特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項a,bは、ともに願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

【2-3】まとめ
以上のとおり、【2-1】の訂正は、特許法第120条の4第2項、および同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】本件特許発明
前記【2-3】で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1,2に係る発明(以下、「本件発明1,2」という)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたとおりの、
「【請求項1】電極パッドのバンプ形成面上に該電極パッドより小さい開口部を有する保護絶縁膜を設け、該保護絶縁膜の開口部に対応する孔を有するマスクを前記開口部に位置合わせして配設し、該マスク上からバンプ材料を供給したのち焼成することによりバンプを形成するバンプの形成法であって、前記保護絶縁膜の開口部を前記マスクの孔より小さく形成することを特徴とするバンプの形成法。
【請求項2】配線基板上に設けられた電極パッドと電子部品のチップに設けられた電極パッドとを接続する配線基板への電子部品の実装法であって、
前記配線基板の電極パッドまたは電子部品のチップの電極パッドの少なくとも一方に請求項1記載の方法によるバンプを形成し、該バンプを介して前記両電極パッドを接続する電子部品の実装法。」である。

【4】特許異議申立て理由の概要
特許異議申立人 池田美砂子は、甲第1〜3号証を提示し、本件の請求項1,2に係る発明は、前記甲第1号証ないし甲第3号証のいずれかに記載された発明と同一であるから、その特許は特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきである旨主張している。

【5】当審における取消理由通知の要点
本件発明1,2は、その出願前国内において頒布された下記の刊行物1,2のそれぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。したがって、その特許は取り消すべきものと認められる。

刊行物1;特開昭52-68366号公報(甲第2号証)
刊行物2;特開昭51-29867号公報(甲第3号証)

【6】前記刊行物1,2の記載事項及びその開示内容
【6-1-1】刊行物1の記載事項
第1頁左下欄第13,14行に、
(刊1a)「本発明は、半導体基板上の電極部に半田バンプを形成する方法に関する発明である」と記載され、
第1頁右下欄第4〜11行に、
(刊1b)「第1図に示すように、半導体基板1上のAl電極部2にCr-Cu-Auの金属をメタルマスクを使用して順次蒸着し、その後前記とは異なるメタルマスクを使用して半田を蒸着する。この半田をメタルマスクを使用して真空蒸着する方法において、蒸着半田量をコントロールすることは接続部の信頼性の面から非常に重要である」と記載され、
第1頁右下欄第16行〜第2頁左上欄第1行に、
(刊1c)「必要な半田量を得るため第2図に示すように、電極部のCr-Cu-Au蒸着膜の径より大きな穴径をもつメタルマスクにより半田を蒸着し、その後溶融させ、表面張力によりCr-Cu-Au蒸着膜上に半田が引きよせられる性質を利用して必要な半田量を得ている」と記載されている。
そして、第1図には、
(刊1d)「半導体基板1上に設けられたAl電極部2の半田バンプが形成される面(Al電極部2の上表面)を覆うように、当該Al電極部2よりも小さい開口部を有する絶縁膜3が設けられているとともに、前記開口部より大きな穴径をもつ半田蒸着用メタルマスク6の穴内に形成された半田蒸着膜7」が記載されている。
また、第2図には、
(刊1e)「半導体基板1上に蒸着された半田蒸着膜7を溶融させて、その表面張力により半田バンプを形成する過程」が記載されている。

【6-1-2】刊行物1の開示内容
前記(刊1a)〜(刊1e)の記載から刊行物1には、
(刊1z)「電極部のバンプ形成面上に該電極部より小さい開口部を有する絶縁膜を設け、該絶縁膜の開口部に対応する穴を有するメタルマスクを前記開口部に位置合わせして配設し、該メタルマスク上から半田を供給したのち半田蒸着膜を溶融することにより半田バンプを形成する半田バンプの形成法であって、前記絶縁膜の開口部を前記メタルマスクの穴より小さく形成する半田バンプの形成法」(以下、「刊行物発明1」という)が開示されている。

【6-2-1】刊行物2の記載事項
第2頁右上欄第12〜18行に、
(刊2a)「第1図は本発明によるコントロール・コラプス・ボンデングの実施された結果を示す断面図である。同図において、1は半導体チップであり、2はこのチップを接続する基板である。基板上には半田付性の良い導体である基板側電極3で配線が施してあり、所要の電気的特性が得られる様になつている」と記載され、
第2頁左下欄第2〜7行に、
(刊2b)「チップ側電極5は半田付性の悪い絶縁膜6および半田付性の良いパッド7によつて半田ボールの濡れる領域が定められている。こうして半田ボール8によつて基板側電極とパッドが接続され、その半田の量に従つてチップと基板とは定められた間隔例えば70μ以上に保持される」と記載され、
第2頁左下欄第8,9行に、
(刊2c)「ここで半田はチップにマスク蒸着して所定量とする」と記載され、
第2頁左下欄第10〜17行に、
(刊2d)「第2図に本発明の方法の過程において、蒸着後加熱前の半田形状を示す。すなわち、蒸着半田9はパッド7よりも十分大きな2倍〜5倍の面積を有し、厚さは蒸着の容易な例えば70μ以下にしておく。これを加熱溶融すればその底面は半田付性の良い金属でできているパッド7の部分だけが半田に濡れるので、半田の表面張力により蒸着厚さより高い半田ボールが形成できる」と記載され、
第2頁右下欄第9〜15行に、
(刊2e)「本発明により、例えば250μという狭いピッチのパッドに150μというような高い半田ボールを形成することができるようになり、半導体チップにおける高密度集積が可能となつた。すなわち、例えば3mm角の半導体チップの周辺に40バンプという多数の電極を設置して、半田ボールにより信頼性のある接続が可能になつた」と記載されている。
また、前記(刊2b)〜(刊2d)の記載を参照すれば、第1,2図には、
(刊2f)「半導体チップ1上に設けられたチップ側電極5の半田ボールが形成される面(チップ側電極5の上表面)を覆うように、当該チップ側電極5よりも小さい開口部を有する絶縁膜6が設けられているとともに、前記開口部よりも十分大きな面積の孔をもつマスクの孔内に形成された蒸着半田9を加熱溶融させて、その表面張力により半田ボール8を形成する過程」が記載されている。

【6-2-2】刊行物2の開示内容
前記(刊2a)〜(刊2f)の記載から刊行物2には、
(刊2z)「配線基板上に設けられた基板側電極と半導体チップに設けられたチップ側電極とを接続する配線基板への半導体チップの実装法であって、
半導体チップのチップ側電極に、
チップ側電極の半田ボール形成面上に該チップ側電極より小さい開口部を有する絶縁膜を設け、該絶縁膜の開口部に対応する孔を有するマスクを前記開口部に位置合わせして配設し、該マスク上から半田を供給したのち加熱溶融することにより半田ボールを形成する半田ボールの形成法であって、前記絶縁膜の開口部を前記マスクの孔より小さく形成することを特徴とする半田ボールの形成法による半田ボールを形成し、
該半田ボールを介して前記両電極を接続する半導体チップの実装法」(以下、「刊行物発明2」という)が開示されている。

【7】当審の判断
【7-1】本件発明1についての判断
[1]本件発明1と刊行物発明1との対比
本件発明1と刊行物発明1とを対比すると、
刊行物発明1の「電極部」,「穴」,「メタルマスク」,「半田」,「半田蒸着膜を溶融すること」,「半田バンプ」は、
本件発明1の「電極パッド」,「孔」,「マスク」,「バンプ材料」,「焼成すること」,「バンプ」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は「電極パッドのバンプ形成面上に該電極パッドより小さい開口部を有する絶縁膜を設け、該絶縁膜の開口部に対応する孔を有するマスクを前記開口部に位置合わせして配設し、該マスク上からバンプ材料を供給したのち焼成することによりバンプを形成するバンプの形成法であって、前記絶縁膜の開口部を前記マスクの孔より小さく形成するバンプの形成法」であることで一致し、次の点で形式上の相違がある。
本件発明1では「保護絶縁膜」と記載されているのに対して、刊行物発明1では「絶縁膜」となっている点。
なお、本件発明1で「電極パッドのバンプ形成面上に、マスクを介してバンプ材料を供給」するという点については、電極パッドを構成する金属上に「直接に」バンプ材料のハンダを供給・接合することに限るものではなく、電極パッド金属上に中間金属層を設けるものも当然に包含している。
[2]上記相違の検討
刊行物発明1の「絶縁膜」すなわち、絶縁膜3は、Al電極部2の一部および半導体基板1の上表面を覆い保護していることは、当業者において、自明の事項であるから、本件発明1の「保護絶縁膜」に相当する。
したがって、ここで検討対象とした相違は実質的な差異にはならない。
よって、本件発明1は、刊行物発明1と同一であると言わざるを得ない。

【7-2】本件発明2についての判断
[1]本件発明2の内容
まず、本件発明2は、本件発明1を引用する形式で記載されていると共に、「配線基板の電極パッドまたは電子部品のチップの電極パッドの少なくとも一方」というように択一的に記載されているところ、
本件発明2を引用形式ではなく、また「電子部品のチップの電極パッド」側にバンプを形成する態様に、その発明内容を記載すると、
本件発明2は、
「配線基板上に設けられた電極パッドと電子部品のチップに設けられた電極パッドとを接続する配線基板への電子部品の実装法であって、
電子部品のチップの電極パッドに、
電極パッドのバンプ形成面上に該電極パッドより小さい開口部を有する保護絶縁膜を設け、該保護絶縁膜の開口部に対応する孔を有するマスクを前記開口部に位置合わせして配設し、該マスク上からバンプ材料を供給したのち焼成することによりバンプを形成するバンプの形成法であって、前記保護絶縁膜の開口部を前記マスクの孔より小さく形成することを特徴とするバンプの形成法によるバンプを形成し、
該バンプを介して前記両電極パッドを接続する電子部品の実装法」ということになる。
[2]本件発明2と刊行物発明2との対比
本件発明2と刊行物発明2とを対比すると、
刊行物発明2の、「基板側電極」,「半導体」,「チップ側電極」,「半導体チップの実装法」,「半田ボール」,「半田」,「加熱溶融すること」は、
本件発明2の、配線基板上に設けられた「電極パッド」,「電子部品」,チップに設けられた「電極パッド」,「電子部品の実装法」,「バンプ材料」,「焼成すること」,「バンプ」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は「配線基板上に設けられた電極パッドと電子部品チップに設けられた電極パッドとを接続する配線基板への電子部品の実装法であって、
電子部品チップの電極パッドに、
電極パッドのバンプ形成面上に該電極パッドより小さい開口部を有する絶縁膜を設け、該絶縁膜の開口部に対応する孔を有するマスクを前記開口部に位置合わせして配設し、該マスク上からバンプ材料を供給したのち焼成することによりバンプを形成するバンプの形成法であって、前記絶縁膜の開口部を前記マスクの孔より小さく形成することを特徴とするバンプの形成法によるバンプを形成し、
該バンプを介して前記両電極パッドを接続する電子部品の実装法」であることで一致し、次の点で一応の相違がある。
本件発明2では「保護絶縁膜」と記載されているのに対して、刊行物発明2では「絶縁膜」となっている点。
なお、本件発明2で「電極パッドのバンプ形成面上に、マスクを介してバンプ材料を供給」するという点については、電極パッドを構成する金属上に「直接に」バンプ材料のハンダを供給・接合することに限るものではなく、電極パッド金属上に中間金属層を設けるものも当然に包含している。
[3]上記相違の検討
刊行物発明2の「絶縁膜」すなわち、絶縁膜6は、チップ側電極5の一部および半導体チップ1の上表面を覆い保護していることは、当業者において、自明の事項であるから、本件発明2の「保護絶縁膜」に相当する。
したがって、ここで検討対象とした相違は実質的な差異にはならない。
よって、本件発明2は、刊行物発明2と同一であると言わざるを得ない。

【8】むすび
以上のとおりであるから、本件発明1,2は、取消理由通知書で提示した刊行物1,2に、それぞれ記載された発明である。
したがって、本件発明1,2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
バンプの形成法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 電極パッドのバンプ形成面上に該電極パッドより小さい開口部を有する保護絶縁膜を設け、該保護絶縁膜の開口部に対応する孔を有するマスクを前記開口部に位置合わせして配設し、該マスク上からバンプ材料を供給したのち焼成することによりバンプを形成するバンプの形成法であって、前記保護絶縁膜の開口部を前記マスクの孔より小さく形成することを特徴とするバンプの形成法。
【請求項2】 配線基板上に設けられた電極パッドと電子部品のチップに設けられた電極パッドとを接続する配線基板への電子部品の実装法であって、
前記配線基板の電極パッドまたは電子部品のチップの電極パッドの少なくとも一方に請求項1記載の方法によるバンプを形成し、該バンプを介して前記両電極パッドを接続する電子部品の実装法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はバンプの形成法および電子部品の実装法に関する。さらに詳しくは、半導体チップなどの電子部品またはプリント基板などの配線基板の電極パッド上に、外部リードなどとの接続用に設けられた金属突起物であるバンプを形成するバンプ形成法および該形成法を用いた電子部品の実装法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、電子機器の小型化に伴ない、たとえば集積回路(IC)などを組み込んだ半導体装置も、樹脂でモールドしてリード線を導出したものではなく、COB(チップオンボード)やCOG(チップオングラス)などにみられるように、半導体チップ(以下、チップという)の電極パッドにバンプが形成されたいわゆるベアチップの状態で直接プリント基板などの配線基板(以下、基板という)の電極パッドに接続する方法が増えつつある。この方式では、一般にチップの電極パッド上にバンプが形成され、基板の電極パッドが直接バンプに接続される。また、他の方法として基板側の電極パッドにバンプを形成したり、または双方の電極パッドに形成する方法も行われている。バンプの形成法として、従来は主として、ディップ(浸漬)法で形成されたり、スクリーン印刷により形成する方法が検討されている。
【0003】
また、スクリーン印刷などの方法でバンプを形成した基板とチップの電極パッドを接続してチップを基板上に実装するばあい、図4(a)に示されるように、まずチップ21と基板22との各々の電極パッド24、25上にハンダなどからなるバンプ23a、23bを形成する。基板22は、図4(b)に示されるように、銅などからなる電極パッド25が設けられ、基板22の表面にソルダーレジスト26が塗布され、電極パッド25上に開口部27が形成されている。電極パッド25上にバンプ23bを形成するばあい、基板22の表面に前記開口部27と同一形状の孔28を有するマスク29を開口部27と孔28とが一致するように位置合わせをして配置したのち、スクリーン印刷または蒸着法などによりバンプ材料32を付着させ、そののち焼成することにより開口部27内にバンプ23bを形成する。バンプ材料を付着したのちまたはバンプ形成後、マスク29は除去される。また、他の方法として、ディップ法などでも形成される。
【0004】
また、図4(a)に示されるようにチップ21の表面には電極パッド24の周辺にチッ化ケイ素膜などからなるパッシベーション膜30が形成されており、パッシベーション膜30に設けられた電極コンタクト用の開口部31内にスクリーン印刷、蒸着法などでバンプ23aが形成される。ついでそれぞれのバンプを位置合わせし、それを突き合わせるように基板22とチップ21を平行に向かい合わせ、リフローすることにより基板側のバンプ23bを溶かして基板22とチップ21を接続させる。このときチップ側のバンプ23aとして高融点(290〜300℃)のハンダを用い、基板側のバンプ23bとして共晶ハンダ(融点183℃程度)を用いることによって基板側のバンプ23bのみを溶かし、接着する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらチップ21および基板22に形成されるバンプ23a、23bにはバンプ材料の体積にしたがって高さのバラつきが20%程度発生する。一般にチップおよび基板側の電極はともに一辺約100μm程度の正方形であり、バンプの高さとしてはチップ側に約50μm、基板側に20μm程度のバンプを形成する。これに20%程度のバラつきを考慮するとチップ側のバンプは最大60μm程度の高さであり、したがってチップと基板間隔(図5(a)中のx)も最大60μm以上になると考えられる。
【0006】
このとき他のバンプで図5(a)のように、チップ側と基板側のバンプの高さ(図5(a)のy、z)がともに最小値(各々約40μm、16μm)をとると、この箇所においてチップと基板のバンプは接続されない(オープン)状態となる。
【0007】
一方、オープン状態の発生を防止するためハンダの量を増加させてバンプを高くすると図5(b)のように隣接するバンプ同士が連結してショート不良が発生するという問題がある。
【0008】
本発明では、かかる問題を解消し、オープンやショートの不良が発生せず、かつ、通常のバンプ材料のバラツキがあってもバンプを接続できるようなバンプの形成法およびそれを用いた電子部品の実装法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明のバンプ形成法は、電極パッドのバンプ形成面上に該電極パッドより小さい開口部を有する保護絶縁膜を設け、該保護絶縁膜の開口部に対応する孔を有するマスクを前記開口部に位置合わせして配設し、該マスク上からバンプ材料を供給したのち焼成することによりバンプを形成するバンプの形成法であって、前記保護絶縁膜の開口部を前記マスクの孔より小さく形成することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の電子部品の実装法は、本発明の配線基板上に設けられた電極パッドと電子部品のチップに設けられた電極パッドとを接続する配線基板への電子部品の実装法であって、
前記配線基板の電極パッドまたは電子部品のチップの電極パッドの少なくとも一方に前記バンプ形成法によるバンプを形成し、該バンプを介して電子部品を接続するものである。
【0011】
【作用】
本発明のバンプ形成法によれば、バンプを形成するため電極パッド上に設ける絶縁膜の開口部を、それに対応するマスクの孔の大きさより小さくすることによって、従来のバンプ形成材料と同じ量のバンプ材料が各開口部およびその周囲の絶縁膜上にも供給され、バンプ材料を付着したのちに焼成することにより、開口部および絶縁膜上のバンプ材料が表面張力により開口部上に盛り上がり嵩高いバンプがえられる。すなわち、バンプ材料の絶対量を増すことなく、背の高いバンプがえられる。
【0012】
また、本発明の電子部品の実装法によれば、バンプ材料を増やすことなく背の高いバンプを介して接続しているため、接触不良とかバンプ材料の過剰による短絡などがなく、確実に各電極端子を接続することができる。
【0013】
【実施例】
つぎに図面を参照しながら本発明について説明する。
【0014】
図1は本発明のバンプの形成法の工程断面説明図であり、図2は本発明の電子部品の実装法の一工程を示す断面説明図であり、図3は同じ量のバンプ材料により底面積を変えたときのバンプの高さの変化を示した説明図である。
【0015】
本発明のバンプの形成法の一実施例を図1を参照しながら説明する。まずプリント基板など表面に電気回路が形成された基板1に図1(a)のように配線の保護および絶縁のため80μm程度の厚さのソルダーレジスト3などの絶縁膜が全面に塗布されており、これを電極パッド2のバンプ形成部分にエッチングを施して開口部4を設ける。さらに前記開口部4に対応した孔6を有するマスク5を図1(b)のように、基板1上に位置合わせをして配設する。開口部4は従来の大きさより1/4程度以下と小さくし、マスク5の孔は従来と同程度のままとする。基板とか電子部品などの種類によっても異なるが、通常は開口部の直径の大きさを50〜60μmφ、マスク5の孔の径を100〜110μm程度とする。
【0016】
ついでハンダペーストなどのバンプ材料となる金属ペーストをスクリーン印刷、蒸着法などの方法により孔6の内部に形成させる。たとえば、バンプ用材料のハンダペースト7を図1(c)のようにスクリーン印刷する。なお9はスキージである。ついで、マスク5を取り外したのち基板1をオーブン炉または環状炉などによって220〜230℃に加熱することによりハンダペースト7の焼成を行う。加熱後、基板1全体を約30分間放置し冷却する。その結果、図1(d)のようにバンプ8が開口部4の上に表面張力のため球形状にもりあがった形状で形成される。
【0017】
前記ハンダペースト7は、ソルダーレジスト3に対してなじまないため、図1(d)のごとくソルダーレジスト3上のハンダペースト7はすべて開口部4の上方に引き寄せられる。したがって嵩高いバンプ8を形成することができる。
【0018】
ここで、マスク5はステンレス、ニッケルやタングステンなどの薄板からなり、バンプを形成すべき基板1に設けられた電極パッド2に対応して孔6が形成されている。このマスク5は通常50〜300μmの厚さで形成されている。あまり厚すぎると孔6が垂直に形成されなくなり、薄すぎるとバンプの形成高さが低くなり、他の膜などから突出させることができなくなるからである。
【0019】
また、叙上のごとくバンプ8が形成された基板1に半導体チップなどの電子部品のチップを実装するばあい、該チップの電極パッドと基板の電極パッドが嵩高いバンプを介して接続されるため、オープン不良は発生しない。このばあい、本発明によるバンプは基板側の電極パッドに形成されることに限定されず、チップ側の電極パッドに形成してもよく、さらに双方の電極パッドにバンプを形成すれば、バンプの高さのバラツキを吸収しオープン不良の低減のため好ましい。
【0020】
つぎに本発明のバンプの形成法を用いた電子部品の実装法の具体例として、基板表面に半導体チップ(以下、チップという)をチップ表面の能動領域が基板側を向くように(フェイスダウン)実装する例について説明する。
【0021】
図2に示されるように、まずチップ10側に前述のバンプ形成法によりバンプ11を形成する。バンプ材料としては高融点(たとえば290〜300℃)のハンダを材料としたハンダペーストを用いる。チッ化ケイ素膜、酸化ケイ素膜などからなる絶縁膜13の開口部14は100×100μm程度で形成される。
【0022】
前記パッシベーション膜13の表面にステンレス、ニッケルやタングステンなどからなる厚さ約50μmで、かつ110×110μm程度の孔が前記チップ10の電極パッド12と同じ間隔で設けられたマスクを載置し、前述の高融点のハンダペーストをスクリーン印刷により各電極パッド12上に供給する。ついで、330〜340℃で約3分間焼成して高さが50±10μmのバンプを形成した。
【0023】
つぎに、基板側のバンプを形成する。バンプ材料として融点が約183℃である共晶ハンダのペーストを用いた。
【0024】
基板1の電極パッド2の上部のソルダーレジスト3の開口部を約50μmφで形成する。前記ソルダーレジスト3の表面にステンレス、ニッケルやタングステンなどからなる厚さ約30μmで、かつ直径が約100μmφ程度の孔が前記基板の電極パッドと同じ間隔で設けられたマスクを載置し、共晶ハンダからなるハンダペーストをスクリーン印刷により各電極パッドに塗布した。ついで前述のようにバンプを形成した基板1とチップ10とを図2のようにバンプ同士が接着するように位置あわせし、基板1とチップ10とを平行に保持しながら圧着する。圧着は、バンプの温度が220℃程度になるようリフロー炉の温度を設定し1〜2分間加熱すると共に、1チップあたり20〜100gfで加圧して基板1側のバンプのみを融解させ接着する。以上の操作により基板へのチップの実装が完了する。
【0025】
本発明によるバンプの形成法によれば、高いバンプを形成でき、しかも材料の量のバラつきがあっても余り高さが変動しない理由について説明する。
【0026】
たとえば従来の浸漬法で図3(a)〜(b)のように100×100μmの電極パッド16に高さ20μmのバンプ15を形成すると、上部のほとんどは球の一部のような形状のバンプとなるがそれと同量のバンプ材料で、本発明の方法により基板およびチップの電極パッドにバンプを形成すると、理論的には図3(c)〜(d)に示されるように上半分は半球状、下半分は開口部に一致する50μmφの底部をもつ、円柱状であり、47.8μmの高さとなる。また、ハンダの量(形成されるバンプの体積)には20%程度のバラつきが発生するとすれば本発明の方法により形成されたバンプの高さは42〜56μmの範囲であり、これは従来の方法によるバンプの高さのバラつきと比べると極めて小さなバラツキである。その結果、オープン不良が発生しなくなる。またバンプ材料全体の量は従来と変わっていないため、バラツキによりバンプが高く形成されても隣り同士のバンプで接触することもない。
【0027】
また、本実施例中ではスクリーン印刷によりバンプ材料を供給したがマスクを用いた蒸着法によっても同様である。すなわち、本発明では、ハンダなどの金属ペーストをマスキングを施すことにより電極パッドおよびその周辺部に選択的に形成することができる薄膜形成法であればいかなる方法も適用できる。また、基板1上のバンプ8は接続前に一度リフローを行い半球状にしておいてもよい。
【0028】
また、本実施例では半導体チップを実装する例で説明したが、本発明は半導体チップに限られず、リードレスで回路基板などに接続されるリードレスの抵抗、コンデンサー、配線などの他の電子部品にバンプを形成したり、実装するばあいにも適用することができる。さらに、バンプは電子部品以外にも回路基板などの接続部などにも形成されるばあいがあり、いずれのバンプの形成のばあいにも本発明を適用することができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、同量のハンダで水平方向に拡がらずに嵩高い、しかもバラツキの少ないバンプを形成することができる。そのため従来のディップ法に比べて電極間隔を大幅に縮小(1/4程度)することができ、近年のCOBの小型化、高密度化に対応できる。
【0030】
また、上述のバンプ形成法を用いればオープン不良、ショート不良がほとんど発生しないため、歩留りよく電子部品の実装を行うことができ、コストダウンに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のバンプの形成法を説明する工程断面説明図である。
【図2】
本発明の電子部品の実装法を説明する断面説明図である。
【図3】
同じ量のバンプ材料により、底面積を変えたときのバンプの高さの変化を説明する図である。
【図4】
(a)は従来の電子部品の実装法の説明図であり、(b)は基板にバンプ材料を供給する工程の断面説明図である。
【図5】
従来の電子部品の実装例を示す図で、(a)はオープン不良の説明図、(b)はショート不良の説明図である。
【符号の説明】
1 基板
2 電極パッド
3 ソルダーレジスト
4 開口部
5 マスク
6 孔
7 ハンダペースト
8 バンプ
10 チップ
11 バンプ
12 電極パッド
13 パッシベーション膜
14 開口部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-11-01 
出願番号 特願平5-56989
審決分類 P 1 651・ 113- ZA (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田中 永一  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 瀬良 聡機
川真田 秀男
登録日 2002-10-25 
登録番号 特許第3364266号(P3364266)
権利者 ローム株式会社
発明の名称 バンプの形成法  
代理人 河村 洌  
代理人 河村 洌  

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