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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01R
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01R
管理番号 1112947
異議申立番号 異議2003-72065  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-11-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-14 
確定日 2004-12-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3377400号「差込プラグ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3377400号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.訂正の適否
(1)訂正の内容
平成16年11月15日付け訂正請求書において、特許権者が求めている訂正の内容は以下a〜fのとおりである。(なお、平成16年7月27日付け訂正請求は取下げられた。)
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載について、「電気機器の電源コード等に用いられる差込プラグで、コンセントの刃受穴に差し込まれる刃と、この刃とコードとの接続部を保護するとともに、刃を所定の位置関係で支持する絶縁材料製のプラグ本体からなる差込プラグにおいて、
プラグ本体から突出する刃の根元部に、この刃をコンセントの刃受穴に差し込んだ状態で刃の外周面と刃受穴の内周面との間に空く間隙を塞ぐための、スリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップが嵌め込まれているとともに、そのブレードキャップの一端には、上記刃を挟んだ両側にそれぞれフランジが一体形成されており、このフランジ形成部がプラグ本体中に埋め込まれていることを特徴とする差込プラグ。」とあるのを、
「電気機器の電源コードに用いられる差込プラグで、コンセントの刃受穴に差し込まれる複数の刃と、これら刃とコードとの接続部を保護するとともに、刃を所定の位置関係で支持する絶縁材料製のプラグ本体からなる樹脂モールド構造の差込プラグにおいて、
プラグ本体から突出する各刃の根元部に、これら刃をコンセントの刃受穴に差し込んだ状態で刃の外周面と刃受穴の内周面との間に空く間隙を塞ぐための、スリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップがそれぞれ嵌め込まれているとともに、それら各ブレードキャップの一端には、上記刃を挟んだ両側にのみ、角部分をカット又はアール状に加工してなるフランジが一体形成されており、これらフランジ形成部がプラグ本体中に埋め込まれていることを特徴とする差込プラグ。」と訂正する。
イ.訂正事項b
明細書の段落【0001】の記載について、「電源コード等」とあるのを、「電源コード」と訂正する。
ウ.訂正事項c
明細書の段落【0008】の記載について、「【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の差込プラグは、コンセントの刃受穴に差し込まれる刃と、この刃とコードとの接続部を保護するとともに、刃を所定の位置関係で支持する絶縁材料製のプラグ本体からなる差込プラグにおいて、図1〜図6に例示するように、プラグ本体2から突出する刃3A,3Bの根元部に、この刃3A,3Bをコンセント11の刃受穴11A,11Bに差し込んだ状態で、刃3A,3Bの外周面と刃受穴11A,11Bの内周面との間に空く間隙を塞ぐためのスリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップ5が嵌め込まれているとともに、そのブレードキャップ5の一端には、刃3A,3Bを挟んだ両側にそれぞれフランジ5Aが一体形成されており、このフランジ形成部がプラグ本体2中に埋め込まれていることによって特徴づけられる。」とあるのを、「【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の差込プラグは、コンセントの刃受穴に差し込まれる複数の刃と、これら刃とコードとの接続部を保護するとともに、刃を所定の位置関係で支持する絶縁材料製のプラグ本体からなる樹脂モールド構造の差込プラグにおいて、図1〜図6に例示するように、プラグ本体2から突出する各刃3A,3Bの根元部に、これら刃3A,3Bをコンセント11の刃受穴11A,11Bに差し込んだ状態で、刃3A,3Bの外周面と刃受穴11A,11Bの内周面との間に空く間隙を塞ぐためのスリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップ5がそれぞれ嵌め込まれているとともに、それら各ブレードキャップ5の一端には、刃3A,3Bを挟んだ両側にのみ、角部分をカット又はアール状に加工してなるフランジ5Aが一体形成されており、これらフランジ形成部がプラグ本体2中に埋め込まれていることによって特徴づけられる。」と訂正する。
エ.訂正事項d
明細書の段落【0014】の記載について、「フランジ5Aに角」とあるのを、「フランジ5Aの角」と訂正する。
オ.訂正事項e
明細書の段落【0022】の記載について、「難くく」とあるのを、「し難く」と訂正する。
カ.訂正事項f
明細書の段落【0030】の記載について、「フランジ5Aに角なる」とあるのを、「フランジ5Aの角となる」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項aのうち、「電源コード等」なる記載を、「電源コード」とする訂正は、差し込みプラグの用いられる対象を電源コードに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当しない。
イ.訂正事項aのうち、「差込プラグにおいて」なる記載を、「樹脂モールド構造の差込プラグにおいて」とする訂正は、差し込みプラグを樹脂モールド構造のものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
当該訂正に関しては、願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の段落【0011】に「本発明の差込プラグは、刃とコードとを接続するとともに、各刃にブレードキャップを嵌め込んでおき、その刃とコードの接続部及びブレードキャップの一端側の一部を、プラグ本体成形用の金型内に配置した状態で金型内に樹脂を射出する、という方法で製造される。」と記載されているため、特許明細書に記載されていたものと認められる。
ウ.訂正事項aのうち、「刃と、この刃」を「複数の刃と、これら刃」と、「刃の根元部に、この刃を」を「各刃の根元部に、これら刃を」と、「スリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップが嵌め込まれているとともに、そのブレードキャップの一端には、」を「スリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップがそれぞれ嵌め込まれているとともに、それら各ブレードキャップの一端には、」と、「このフランジ形成部」を「これらフランジ形成部」とする訂正は、刃が複数あり、これらの刃にブレードキャップがそれぞれ嵌め込まれていることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
当該訂正に関しては、特許明細書の段落【0018】に「この実施の形態においては、プラグ本体2から突出する刃3A,3Bの根元部に、それぞれブレードキャップ5を嵌め込んだところに特徴がある。」と記載され、図1及び2には複数の刃3A,3Bとそれらの刃にそれぞれ嵌め込まれたブレードキャップ5が示されているため、特許明細書に記載されていたものと認められる。
エ.訂正事項aのうち、「刃を挟んだ両側にそれぞれフランジが一体形成されており、」なる記載を、「刃を挟んだ両側にのみ、角部分をカット又はアール状に加工してなるフランジが一体形成されており、」とする訂正は、フランジの位置ないし形状を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
当該訂正に関しては、特許明細書の段落【0014】に「例えば図4に示すように、フランジ5Aに角となる部分をカットしたり、あるいは図7に示すように、フランジ15Aの角となる部分をアール状に加工する等、フランジの平面形状を工夫して、フランジ周辺での樹脂の流れを良くする方法が挙げられる。」と記載され、図3、4及び7には、フランジが刃を挟んだ両側にのみ形成され、そのフランジの角部分がカット又はアール状に加工されている構成が図示されているため、特許明細書に記載されていたものと認められる。
したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項を追加するものではない。
オ.訂正事項b及びcは、訂正事項aによる訂正に伴って、訂正後の請求項1と発明の詳細な説明の記載の整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。
カ.訂正事項d、e及びfは、文法上、不明りょうな記載を明りょうにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項a〜fは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

2.特許異議申立について
(1)本件発明
上記1.で示したように上記訂正が認められるから、特許第3377400号(平成9年4月30日出願、平成14年12月6日設定登録)の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
本件発明については、上記1.(1)ア.を参照。

(2)特許異議申立ての概要
特許異議申立人・黒岩保親は、証拠方法として
甲第1号証(特開平8-124622号公報)、
甲第2号証(特開平8-236189号公報)、
甲第3号証(実願昭57-22417号(実開昭58-125376号)のマイクロフイルム)、
甲第4号証(実公昭51-27019号公報)、
甲第5号証(実願昭61-59769号(実開昭62-171166号)のマイクロフイルム)、
甲第6号証(実願平4-11342号(実開平5-73871号)のCD-ROM)、
甲第7号証(実公昭54-7342号公報)、
甲第8号証(実願昭55-67746号(実開昭56-169378号)のマイクロフイルム)、
甲第9号証(特開平8-222308号公報)、及び
甲第10号証(実公平3-38770号公報)
を提出し、
本件発明は、甲1、4又は5号証に記載されているから特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである、又は甲第1〜5号証に記載されている発明及び甲第6〜10号証に記載されている周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。したがって、本件発明についての特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである、あるいは、
本件の請求項1には「電源コード等」と記載されていて、「等」という記載により発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。したがって、本件発明についての特許は特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである旨主張していると認める。

(3)各甲号証に記載の事項
1 甲第1号証には、「差込みプラグ」に関し、図1〜7とともに以下のような記載がある。
・記載1-1
「【請求項1】 一対の栓刃を表面より突出したプラグ本体と、前記栓刃の付根を囲繞するように設けた絶縁突出部とを備えた差込みプラグ。
【請求項2】 前記絶縁突出部は前記プラグ本体に一体に形成されている請求項1記載の差込みプラグ。
【請求項3】 前記絶縁突出部は前記プラグ本体内に着脱自在に位置決め固定される固定部を有する請求項1記載の差込みプラグ。」(特許請求の範囲)
・記載1-2
「【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の差込みプラグは、一対の栓刃を表面より突出したプラグ本体と、前記栓刃の付根を囲繞するように設けた絶縁突出部とを備えたものである。請求項2の差込みプラグは、請求項1において、前記絶縁突出部が前記プラグ本体に一体に形成されたものである。
【0006】請求項3の差込みプラグは、請求項1において、前記絶縁突出部が前記プラグ本体内に着脱自在に位置決め固定される固定部を有するものである。」(第2頁左欄第33〜42行)
・記載1-3
「【0009】
【実施例】この発明の第1の実施例を図1ないし図3により説明する。すなわち、この差込みプラグは、プラグ本体1と、絶縁突出部2とを有する。
プラグ本体1は、一対の栓刃3を表面より突出している。実施例のプラグ本体1は栓刃3を同時成形したビニル一体型の成形品や、一対の成形品の半体を組み合わせてその中に栓刃3を収納したものなどを用いている。4はコード、5はコード挿通孔である。
【0010】絶縁突出部2は、栓刃3の付根を囲繞するように設けている。実施例の絶縁体2はやわらかいゴム成形品、ポリエチレン成形品やポリプロピレン成形品等を用いた絶縁アダプタとし、図のように中心に中央孔部2aを有する。この絶縁突出部2の外形は、コンセントの差込孔7の開口縁に形成した栓刃3の引込みガイド凹部9に嵌合する形状をもつもので、中央孔部2aの一端側は引込みガイド凹部9に嵌合するように肉厚を大にし、他端側は差込孔7に進入可能となるよにう一端側から漸次肉厚を小さくして断面外形を断面略三角形に形成している。この際、差込みプラグのコンセントへの抜き差しに支障がないように栓刃3の先端側はたとえば厚み0.1mm〜0.3mm程度に成形している。そして絶縁突出部2の中央孔部2aを栓刃3に密着状態に通して栓刃3の付根に位置させる。」(第2頁右欄第8〜31行)
・記載1-4
「【0012】 この実施例によれば、絶縁突出部2が栓刃3の付根を囲繞しているので、ほこりや湿気が侵入しにくく、栓刃3の付根間の沿面距離を大きくすることができるため、栓刃3間に溜まったほこりが吸湿しても、従来例と比較して絶縁不良を防止することができる。
したがって、焼損防止効果を大きくでき、とくに長期間コンセントに差し込んだまま使用する差込みプラグに有益であり、コンセントの形状に関係なく効果が大きい。また絶縁突出部2はプラグ本体1と別体であるため従来のプラグ本体1にこの実施例を適用することができる。」(第2頁右欄第39〜48行)
・記載1-5
「【0013】この発明の第2の実施例を図4および図5に示す。すなわち、この差込みプラグは、第1の実施例において、絶縁突出部2をプラグ本体1に一体に形成している。実施例のプラグ本体1は一対の半体14a,14bからなり、絶縁突出部2はゴムを用いてプラグ本体1に同時成形している。1aは栓刃を突出する栓刃突出孔を形成する栓刃突出溝、13は栓刃3の電線接続ねじ、15は接続電線通路、16は連結孔で半体14aの表面側にナット(図示せず)を埋設している。17はナットにねじ込むため他の半体14bの連結孔に通されたねじである。また絶縁突出部2の中央溝部2bが栓刃突出溝1aに連通している。その他の構成は、第1の実施例と同様である。
【0014】・・・この発明の第3の実施例を図6および図7に示す。すなわち、この差込みプラグは、絶縁突出部2がプラグ本体1内に着脱自在に位置決め固定される固定部19を有するものである。実施例の絶縁突出部2はプラグ本体1と同様に合成樹脂により形成されている。またプラグ本体1は第2の実施例と同様な構造であるが、各半体14a,14bの前端部に固定部19を挿着することにより収納固定する絶縁突出部収納部18を形成している。また栓刃突出溝1aは栓刃3の断面形状よりも大きく形成し、これに絶縁突出部2が嵌合し、絶縁突出部2の中央溝部2bを栓刃3が貫通している。その他の構成は第2の実施例と同様である。」(第2頁右欄第49行〜第3頁左欄第27行)
2 甲第2号証には、「電源プラグ」に関し、図1〜10とともに以下のような記載がある。
・記載2-1
「【請求項1】 絶縁材料によって形成されたプラグ本体と、
このプラグ本体の内部に基端部が支持された一対の接続端子部材と、
これら接続端子部材のプラグ本体から突出した部分の根元部分に設けられて絶縁材料で形成された間隙充填手段とを備え、
この間隙充填手段は、接続端子部材が電源コンセントの電源プラグ接続口に差し込まれた状態において、これら接続端子部材の外周壁と電源プラグ接続口の内周壁との間に構成される間隙に充填されることを特徴とする電源プラグ。
【請求項2】 間隙充填手段は、プラグ本体に一体に突出形成されたことを特徴とする請求項1記載の電源プラグ。
【請求項3】 間隙充填手段は、接続端子部材が挿通される接続端子挿通穴が設けられた筒状に形成され、接続端子部材に対して着脱自在に設けられることを特徴とする請求項1記載の電源プラグ。」(特許請求の範囲)
・記載2-2
「【0009】
【課題を解決するための手段】この目的を達成した本発明に係る電源プラグは、絶縁材料によって形成されたプラグ本体と、このプラグ本体の内部に基端部が支持された一対の接続端子部材と、これら接続端子部材のプラグ本体から突出した部分の根元部分に設けられて、接続端子部材が電源コンセントの電源プラグ接続口に差し込まれた状態において、これら接続端子部材の外周壁と電源プラグ接続口の内周壁との間に構成される間隙に充填される絶縁材料で形成された間隙充填手段とを備える。
【0010】また、本発明に係る電源プラグは、間隙充填手段がプラグ本体と一体に突出形成されて構成される。
【0011】さらに、本発明に係る電源プラグは、間隙充填手段が、接続端子部材が挿通される接続端子挿通穴が設けられて筒状に形成され、接続端子部材に対して着脱自在に設けられて構成される。」(第2頁右欄第33〜49行)
3 甲第3号証には、「カバー付き差し込みプラグ」に関し、第1〜12図とともに以下のような記載がある。
・記載3-1
「図面中の(1)はプラグケース、(2)は接続片、(3)は絶縁カバー、(4)は絶縁カバーの穴、(5)は接続片のフック、(6)はプラグケース・ガードを示している。」(明細書第2頁第17〜20行)
・記載3-2
第7〜12図には、接続片2に筒状の絶縁カバー3をかぶせ、接続片のフック5が絶縁カバーの穴4を通り、接続片2と絶縁カバー3の後端がプラグケース内に配設されることが示されている。
4 甲第4号証には、「安全装置付さし込みプラグ」に関し、第1及び2図とともに以下のような記載がある。
・記載4-1
「器体1より突出したプラグ栓刃2,2を貫通するための貫通孔3を設けた脚体4,4と平板片5を合成樹脂絶縁物でもって一体形成した蓋体6をプラグ栓刃2,2の基端部7に嵌着したものである。
前記貫通孔3は強制的に嵌合させるために、プラグ栓刃2の断面寸法とほぼ同一か又は若干小さい寸法に設定されると共に貫通孔3の内面には挿入を容易にするためのガイド及び摩擦を少なくするための複数個の突起が形成され例えば装着後にプラグ栓刃2に設けた条溝8に係止するように設計してもよいのである。」(第1頁左欄第26行〜右欄第9行)
5 甲第5号証には、「プラグ・コンセントキャップ」に関し、第1〜10図とともに以下のような記載がある。
・記載5-1
「金属端子のための貫通孔を備えた基板に、一対のチューブを立設して略II状に形成したプラグ・コンセントキャップ」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)
・記載5-2
「基板3の裏面には、プラグ20に安定して付着するように剥離紙を被せた接着層や鋭利な小突起(プラグ前面に刺して固定する)31を設けることができる。」(明細書第4頁第8〜11行)
6 甲第6号証には、「差し込みモールドプラグ」に関し、図1〜14とともに以下のような記載がある。
・記載6-1
「耐熱性及び絶縁性を有する熱硬化性樹脂の中子を一対の栓刃に取り付け、該栓刃の内部接続部に電線を圧着して、上記中子より低温で成形される樹脂でモールドした差し込みプラグにおいて、
上記中子に、一対の栓刃導出口を形成した端面板部の中央部より略三角形状に突出して、一対の栓刃の内部接続部の間を通って電線の間まで突出する仕切部を一体に形成し、かつ、上記一対の栓刃の内部接続部は電線のワイヤとのみ圧着させる形状として、該圧着部を薄肉の外被体でモールドしていることを特徴とする差し込みモールドプラグ。」(実用新案登録請求の範囲)
・記載6-2
「【0017】
中子12には、さらに、モールドする外被体との密着性を良好とするために、端面板部12aの基部側の外周面にフランジ部12fを突設すると共に、枠部12cおよび仕切部12dの外周面に溝12g,12hを形成している。さらに、上記溝部12g,12hと連通させた穴12iを上記フランジ部12fに形成している。
【0018】
上記一対の栓刃11A,11Bは図4に示すように、長尺な平板からなるタブ形状の外部接続部11A-a,11B-aとワイヤバレル部からなる内部接続部11A-b,11B-bを夫々一体に形成している。上記外部接続部11A-a,11B-aの基端部には僅かに突出させたストッパ部11A-c,11B-cを形成し、該ストッパ部が栓刃導出口12b,12bの内面に係止することにより、中子12の端面板部12aからの栓刃の突出量を規定している。」(明細書第17〜18段落)
7 甲第7号証には、「二重成型差込プラグ」に関し、図1〜8とともに以下のような記載がある。
・記載7-1
「前記ボデイ1の各栓刃穴2内には、第2図に示すように所定巾及び長さの良導体金属板上位面上に、小径の掛り孔5を通貫穿設し、隣接上位面は、所定巾により両側に面域を拡げて各係止片6を突設するとともに、当該基板の最上位には、リード線7をスポット溶接またはかしめ等によりそれぞれ結線して成る各栓刃4を、刃先から挿通し、各係止片6がボデイの面部に到達するまで圧入して掛り孔5を当該孔2位置毎の各凸部3,3にそれぞれ嵌合係着させて、該栓刃4をボデイ1と一体組着する。」(第1頁右欄第17〜27行)
・記載7-2
「第5図に示すようにボデイ1の栓刃孔2内に各突出リブ3aを形成し、栓刃4側には各掛り切欠部5aを構設することにより、あるいは第6図に示すように栓刃孔2内の一方側壁に凸壁3を、また他方側壁には上方孔口へ連通した凹部3bを形成するとともに、栓刃4側には係止片6の下位直面を小型の円弧状に屈曲してタボ5bを構設することにより、また第7図に示すように直状孔の栓刃孔2を形成し、栓刃4の係止片6直下位置にそれぞれ鋭角状の各突起5cを構設することにより、さらに第8図に示すように同様の直状孔の栓刃孔2を形成し、栓刃4の一方面に下方傾斜状の係止片6aを、また他方面には上方傾斜状の圧入片5dをそれぞれ切起し突設するか、または該下方傾斜状係止片6aに代わり、前記通常の側方突出形の係止片6の下位一方面に、上方傾斜状の圧入片5dを切起し突設することにより、前述と同様に、各栓刃4をボデイ1の当該孔2毎に確実に固着して、しかも同様の効果が得られる特徴を発揮できるものである。」(第2頁左欄第4行〜右欄第2行)
8 甲第8号証には、「電源プラグ」に関し、第1〜12図とともに以下のような記載がある。
・記載8-1
「(1)左右一対の栓刃の基部が耐熱性硬質保持体に貫通保持され、該基部及び保持体が軟質合成樹脂製プラグ本体に埋没状態で固着されて成る電源プラグにおいて、前記保持体は左右方向で互いに離間して左右一対設けられ、該各保持体で挾まれた離間部分に前記プラグ本体と一体的な軟質合成樹脂製中間部が充填形成されたことを特徴とする電源プラグ。
(2)保持体は栓刃基部を包囲する筒形に形成されたことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の電源プラグ。」(実用新案登録請求の範囲)
9 甲第9号証には、「電源プラグ及びその端子構造」に関し、図1〜18とともに以下のような記載がある。
・記載9-1
「【0020】図13、図14に示す実施例は、絶縁層5を前もって形成したものであり、図14に示すようにモールド被覆3をなして電源プラグPを得る。このものは、絶縁層5の立ち上がり部が抜け止め作用をなす。図中、13はコンセント側の刃受けであり、接触状態を示す。
【0021】図15乃至図17に示す実施例は、前記の絶縁層5の立ち上がり部を端子片12′の一部でなしたものであり、図15に示すように、端子片12′の先端に起立片12d′を連結し、図16(a)、(b)に示すように、その起立片12dを端子片12′の折重ね時に起立状態とする。この状態で、図17に示すように、モールド被覆3をなして電源プラグPを得る。このものも、絶縁層5を別に形成してもよい。」(第3頁右欄第4〜17行)
10 甲第10号証には、「電源プラグ」に関し、第1〜5図とともに以下のような記載がある。
・記載10-1
「耐熱性の材料で構成された基体にてそれぞれの栓刃を個別に固定するものであって、
この基体を上部部材と下部部材とから構成し、当該上部部材と下部部材との接合面には、上記栓刃の電源コード接続側の端部及び電源コードの栓刃接続側の端部を嵌合する凹状の挟着部を設け、
上記基体の上部部材と下部部材との間に、上記挟着部を以て、それぞれ栓刃の電源コード接続側の端部及び電源コードの栓刃接続部を狭持し、
この基体の周囲を柔軟性の樹脂材料にて被覆して一体成型して成る電源プラグ。」(実用新案登録請求の範囲)
・記載10-2
「第5図に示す如く栓刃15の電源コード12との接続部21の近傍に設けた貫通孔22を下部部材16aの係合用突起19aに貫通させて栓刃15を挾着部18aに載置し、各突起19a及び20aに上部部材16bの係止孔19b及び係合孔20bを嵌合して栓刃15を下部部材16aと上部部材16bに挾着している。」(第2頁右欄第41行〜第3頁左欄第3行)

(4)対比・判断
ア.特許法第29条関係について
本件発明と甲第1号証記載の発明を対比すると、
両者は少なくとも以下の点で相違する。
相違点:本件発明は、「コンセントの刃受穴に差し込まれる複数の刃と、・・・刃を所定の位置関係で支持する絶縁材料製のプラグ本体からなる樹脂モールド構造の差込プラグにおいて、
プラグ本体から突出する刃の根元部に、この刃をコンセントの刃受穴に差し込んだ状態で刃の外周面と刃受穴の内周面との間に空く間隙を塞ぐための、スリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップが嵌め込まれているとともに、
それら各ブレードキャップの一端には、上記刃を挟んだ両側にのみ、角部分をカット又はアール状に加工してなるフランジが一体形成されており、これらフランジ形成部がプラグ本体中に埋め込まれていることを特徴とする差込プラグ。」であるのに対し、
甲第1号証記載の発明は、絶縁突出部を差込みプラグの刃に嵌めるもの、絶縁突出部をプラグ本体に一体に形成するもの、及び絶縁突出部を2つ割りのプラグ本体内に着脱自在にフランジ状の固定部18,19で固定するものである点。

以下、相違点について検討する。
甲第6号証には樹脂でモールドした差し込みプラグにおいて、栓刃11A,11Bの根元部に、中子12が取付けられ、かつ中子12には、端面板部12aの基部側の外周面にフランジ部12fを突設とともに、中子12の前面のみがプラグ本体の表面に表れるよう埋め込まれる差し込みモールドプラグが示されている。
しかしながら、本件発明は樹脂モールド構造の差込プラグにおいて、刃の外周面と刃受穴の内周面との間に空く間隙を塞ぐための、スリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップが複数の栓刃それぞれに嵌められており、かつ、それら各ブレードキャップの一端には、上記刃を挟んだ両側にのみ、角部分をカット又はアール状に加工してなるフランジが一体形成され、これらフランジ形成部がプラグ本体中に埋め込まれているのに対して甲第6号証の中子12は一体のものでありかつフランジの位置ないし形状についても本件発明のような構成を有していない。さらに、甲第1号証記載の絶縁突出部を差込みプラグの刃に嵌めるものの発明については、絶縁突出部を樹脂モールド時にプラグ本体中に埋め込まれるものではなく、絶縁突出部をプラグ本体に一体に形成するものの発明については、そもそも絶縁突出部を刃に嵌めるものではないのであるから、また、絶縁突出部を2つ割りのプラグ本体内に着脱自在に位置決め固定するものの発明についても2つ割りのプラグ本体内に固定するものであって、樹脂モールド時にプラグ本体中に埋め込まれるようにするものではないから、甲第6号証記載の発明を適用して本件発明の構成とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
また、甲第7、8及び10号証に記載の発明も、外周面と刃受穴の内周面との間に空く間隙を塞ぐための、スリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップが嵌められているものではなく、フランジの形状についても本件発明の構成を有していないのであるから、甲第1号証記載の発明に適用して本件発明の構成とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
甲第9号証記載の発明は端子片12に絶縁層5を前もって形成したものであるから、ブレードキャップを嵌めるものではなく、甲第1号証記載の発明に適用して本件発明の構成とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
以上のとおりであるから、本件発明は甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び甲第6〜10号証記載の周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

甲第2号証記載の発明はスリーブ状の絶縁突出部がプラグ本体に一体に突出成形されたもの及びプラグ本体とは別途成形されたブレードキャップを刃に差し込むものであるが、これらの絶縁突出部がプラグ本体に一体に突出成形されたものの発明及び別途成形されたブレードキャップを刃に差し込むものの発明についても、甲第1号証記載の発明について述べたとおりであって、甲第6〜10号証記載の周知・慣用技術を適用して本件発明の構成とすることが当業者にとって容易であるともいえない。
したがって、本件発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第6〜10号証記載の周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

甲第3号証記載の発明は、絶縁カバー3が接続片2に挿入され、絶縁カバー3の孔4に接続片のフック5が挿通され、それを2つ割りのプラグケース1に配置する差込みプラグであって、樹脂モールド構造のプラグ本体内に刃及びブレードキャップの後端部を埋め込むものではないから、甲第6〜10号証記載の周知・慣用技術を適用して本件発明の構成とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、本件発明は甲第3号証に記載された発明及び甲第6〜10号証記載の周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

甲第4及び5号証記載の発明は、器体1(プラグ20)より突出するプラグ栓刃2(金属端子21)に蓋体6(プラグ・コンセントキャップ)を嵌着するものであるから、甲第1号証記載の発明について述べたと同様に、本件発明は甲第4又は5号証記載の発明であるとも、甲第6〜10号証記載の周知・慣用技術を適用して本件発明とすることが当業者にとって容易であるともいえない。
したがって、本件発明は甲第4又は5号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第4又は5号証に記載された発明及び甲第6〜10号証記載の周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

さらに、甲第1〜5号証に記載の発明は、上記するように、いずれも各刃の根元部にブレードキャップをそれぞれ嵌め込み、これらブレードキャップの一端が埋め込まれる樹脂モールド構造とするものではないし、フランジの位置および形状についても本件発明の構成を有していない。したがって、甲第1〜5号証記載の発明を組み合わせても、本件発明を容易とすることはできないし、甲第1〜5号証記載の発明を組み合わせるとともに甲第6〜10号証記載の周知・慣用技術を適用して本件発明とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、本件発明は甲第1〜5号証に記載された発明及び甲第6〜10号証記載の周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

そして本件発明の構成とすることにより、本件明細書の段落【0032】、【0033】及び【0013】に記載の効果を奏するものと認められる。

イ.特許法第36条関係(記載不備)について
上記訂正により本件の請求項1の「電源コード等」は「電源コード」と訂正されたから、特許異議申立人の主張する記載不備は解消された。

(5)むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明の特許は、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
差込プラグ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気機器の電源コードに用いられる差込プラグで、コンセントの刃受穴に差し込まれる複数の刃と、これら刃とコードとの接続部を保護するとともに、刃を所定の位置関係で支持する絶縁材料製のプラグ本体からなる樹脂モールド構造の差込プラグにおいて、
プラグ本体から突出する各刃の根元部に、これら刃をコンセントの刃受穴に差し込んだ状態で刃の外周面と刃受穴の内周面との間に空く間隙を塞ぐための、スリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップがそれぞれ嵌め込まれているとともに、それら各ブレードキャップの一端には、上記刃を挟んだ両側にのみ、角部分をカット又はアール状に加工してなるフランジが一体形成されており、これらフランジ形成部がプラグ本体中に埋め込まれていることを特徴とする差込プラグ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電化製品やOA機器等の電気機器の電源コードの端部に設けられる差込プラグに関する。
【0002】
【従来の技術】電化製品やOA機器等の電気機器の電源コードに用いられる差込プラグは、一般に、電源コンセントに差し込まれる一対の刃と、この一対の刃とコードとの接続部を保護するとともに、刃を所定の位置関係で支持する絶縁材料製のプラグ本体によって構成されている。そのプラグ本体としては、従来、刃とは別の工程で製作された樹脂成形品を刃とコードとの接続部に装着するという構造のものが一般的であったが、最近では、射出成形等による樹脂モールド構造のものが殆どである。
【0003】この種の差込プラグにおいては、刃を電源コンセントの刃受穴への差し込みを可能とするため、図9に示すように、刃103A,103Bの外径寸法(厚み・幅)を電源コンセント11の刃受穴11A,11Bよりも僅かに小さい寸法としている。このため差込プラグの刃103A,103Bを電源コンセント11に差し込んだ際に、刃103A,103Bの外周面と刃受穴11A,11Bの内周面との間に間隙Cが空いてしまい、その隙間Cへの塵埃等の堆積による短絡が生じて、いわゆるトラッキング火災が発生する虞れがある。
【0004】また、そのような間隙Cがあると、差込プラグを電源コンセントに差し込んだ状態のときに、差込プラグがガタつき、電源コンセントに対して傾いてプラグの刃103A,103Bがコンセントの受刃穴11A,11Bから抜けやすい状態となることがあり、このような状況となると、電源コードに誤って足を引っかけた場合、差込プラグが簡単に抜け落ちて電気機器への電力供給が遮断されてしまうという問題が発生する。特に、電力供給を常時必要とするOA機器等においては、そのような不測の事態により電力供給が断たれると、内部データが破損・消滅するというような重大な問題を招くことになる。
【0005】以上のような問題を解消するため、従来、プラグ本体から突出する刃の根元部にスリーブ状の樹脂製ブレードキャップを嵌め込み、刃をコンセントの刃受穴に差し込んだ際に、刃の外周面と刃受穴の内周面との間の間隙をブレードキャップによって塞ぐという構造の差込プラグが提案されている(例えば特開平8-236189号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記提案の差込プラグによれば、プラグの刃にスリーブ状のブレードキャップを単に差し込んでいるだけの構造であるので、例えばプラグ本体に押し下げ力などが作用したり、差込プラグがコンセントから抜けかかった状態となったときに、ブレードキャップがプラグ本体の突当面から離れてしまい、本体の機能をはたさなくなる虞れがある。
【0007】本発明はそのような実情に鑑みてなされたもので、プラグの刃の外周面とコンセントの刃受穴の内周面との間に空く間隙を塞ぐためのブレードキャップが設けられ、しかもコンセントへの差し込み状態のときにプラグ本体に外力が作用してもブレードキャップの位置がずれない、安全性の高い差込プラグを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の差込プラグは、コンセントの刃受穴に差し込まれる複数の刃と、これら刃とコードとの接続部を保護するとともに、刃を所定の位置関係で支持する絶縁材料製のプラグ本体からなる樹脂モールド構造の差込プラグにおいて、図1〜図6に例示するように、プラグ本体2から突出する各刃3A,3Bの根元部に、これら刃3A,3Bをコンセント11の刃受穴11A,11Bに差し込んだ状態で、刃3A,3Bの外周面と刃受穴11A,11Bの内周面との間に空く間隙を塞ぐためのスリーブ状の絶縁材料製ブレードキャップ5がそれぞれ嵌め込まれているとともに、それら各ブレードキャップ5の一端には、刃3A,3Bを挟んだ両側にのみ、角部分をカット又はアール状に加工してなるフランジ5Aが一体形成されており、これらフランジ形成部がプラグ本体2中に埋め込まれていることによって特徴づけられる。
【0009】以上の構成の本発明の差込プラグによれば、刃3A,3Bをコンセント11の刃受穴11A,11Bに差し込んだ際に、刃3A,3Bの根元部に設けたブレードキャップ5が、刃3A,3Bの外周面と刃受穴11A,11Bの内周面との間隙C(図9参照)に嵌まり込んで間隙Cが塞がれるので、この部分に塵埃等が堆積することを防止できる。また、ブレードキャップ5の嵌まり込みにより、差込プラグの刃3A,3Bがコンセント11に対して確実に固定されるので、差込プラグのガタつきも防止できる。
【0010】しかも、本発明の差込プラグでは、以上の効果を有するブレードキャップ5の一端にフランジ5Aを一体形成し、このフランジ形成部をプラグ本体2中に埋め込んでいるので、フランジ5Aによるアンカー効果により、ブレードキャップ5がプラグ本体2に確実に保持される。その結果、ブレードキャップの位置ずれ・抜け落ち等が起こることがなくなる。
【0011】ここで、本発明の差込プラグは、刃とコードとを接続するとともに、各刃にブレードキャップを嵌め込んでおき、その刃とコードの接続部及びブレードキャップの一端側の一部を、プラグ本体成形用の金型内に配置した状態で金型内に樹脂を射出する、という方法で製造される。
【0012】そのため、ブレードキャップのプラグ本体中への埋め込み部分にフランジがあると、そのフランジが金型内を流れる樹脂に対して抵抗となってしまい、射出圧力によってはフランジの一部が破損する可能性がある。
【0013】これを解消するため、本発明では、ブレードキャップ5のフランジ5Aの形状を、プラグ本体の射出成形時に、フランジ5Aの周辺において樹脂が流れやすくなるような形状とする。
【0014】その具体的な手段としては、例えば図4に示すように、フランジ5Aの角となる部分をカットしたり、あるいは図7に示すように、フランジ15Aの角となる部分をアール状に加工する等、フランジの平面形状を工夫して、フランジ周辺での樹脂の流れを良くする方法が挙げられる。
【0015】また、他の手段として、例えば図8(a)または(b)に示すように、フランジ25Aまたは35Aの外面(流動樹脂が当たる面)の形状を傾斜面または湾曲面とすることにより、流動樹脂によりフランジに作用する力を緩和する方法が挙げられる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を、以下、図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態の構造を示す水平断面図、図2はその実施の形態の外観斜視図である。
【0017】まず、この例の差込プラグ1は、プラグ本体2と一対の刃3A,3Bを主として構成されている。一対の刃3A,3Bは、電源コンセント11の刃受穴11A,11Bに差し込まれる金属板で、その各後端部に設けられた接続用端子(図示せず)に、電源コード4の心線がカシメ(圧着)によって接続される。その各刃3A,3Bと電源コード4との接続部Jは、後述する方法によって樹脂モールドされたプラグ本体2によって保護されており、また、このプラグ本体2によって一対の刃3A,3Bが、図6に示す電源コンセント11の刃受穴11A,11Bに対応する位置関係で固定・支持されている。
【0018】さて、この実施の形態においては、プラグ本体2から突出する刃3A,3Bの根元部に、それぞれブレードキャップ5を嵌め込んだところに特徴がある。そのブレードキャップ5は、PS(ポリスチレン)等の樹脂をスリーブ状に成形した樹脂成形品で、図3〜図5に示すように、一端にフランジ5Aが一体形成されている。
【0019】各ブレードキャップ5のスリーブ部の肉厚は、プラグの刃3A,3Bを、電源コンセント11の刃受穴11A,11Bに差し込んだ状態で、その各刃3A,3Bの外周面と刃受穴11A,11Bの内周面との間に空く間隙C(図9参照)と同じ寸法かあるいは僅かに小さい寸法に加工されている。
【0020】そして、以上の構造のブレードキャップ5は、プラグ本体2の射出成形時において、フランジ形成部がプラグ本体2中に埋め込まれプラグ本体2と一体化される。
【0021】なお、ブレードキャップ5の先端部には、電源コンセント11の刃受穴11A,11Bへの差し込み時の挿入性を考慮して、30°程度の面取りが施されており、また、フランジ5Aは、プラグ本体2の射出成形時における樹脂の流れを考慮して角部をカットした形状としている。
【0022】以上の実施の形態によれば、刃3A,3Bを電源コンセント11の刃受穴11A,11Bに差し込んだ際に、刃3A,3Bの根元部に設けたブレードキャップ5が、刃3A,3Bの外周面と刃受穴11A,11Bの内周面との間隙C(図9参照)に嵌まり込んで間隙Cが塞がれ、この部分に塵埃等が堆積し難くなるので、短絡やトラッキング火災等を防止することができる。
【0023】また、ブレードキャップ5の嵌まり込みにより、差込プラグ1の刃3A,3Bが電源コンセント11に対して確実に固定されるので、差込プラグ1が簡単に抜けることもなくなる。
【0024】しかも、ブレードキャップ5の一端にフランジ5Aを一体形成し、このフランジ形成部をプラグ本体2中に埋め込んでいるので、フランジ5Aによるアンカー効果により、ブレードキャップ5がプラグ本体2に確実に保持される。その結果、ブレードキャップ5が、プラグ本体2の突当面2A(図1,図2)から離れたり、また刃3A,3Bから抜け落ちる等の不具合が発生することがなくなり、安全性を更に高めることができる。
【0025】次に、図1に示す構造の差込プラグ1の製造方法を以下に説明する。まず、電源コード4の端部の外被を剥がし心線をプラグの刃3A,3Bの接続用端子に圧着して各刃3A,3Bと電源コード4とを接続するとともに、各刃3A,3Bに、ブレードキャップ5を差し込んでおく。
【0026】次いで、プラグ本体2の成形を行う射出成形金型(図示せず)のキャビティ内に、各刃3A,3Bと電源コード4との接続部Jを配置するとともに、ブレードキャップ5のフランジ5Aの形成部を金型キャビティ内に配置する。
【0027】このとき、各刃3A,3B先端部の孔h(図2参照)に固定ピンを通して、各刃3A,3Bの金型に対する位置決めを行うことによって、プラグ本体2の突当面2Aに対する各刃3A,3Bの突出長さを規定しておき、またブレードキャップ5についても、金型に対する位置決めを行ってプラグ本体2の突当面2Aに対する突出長さを規定しておく。
【0028】そして、金型キャビティ内に溶融状態の樹脂(ポリ塩化ビニル)を射出して、各刃3A,3Bと電源コード4との接続部Jとブレードキャップ5のフランジ形成部をプラグ本体2中にインサート成形することによって、図1に示す構造の差込プラグ1すなわち刃3A,3Bと電源コード4との接続部Jがプラグ本体2で保護され、かつ、ブレードキャップ5がプラグ本体2に一体化された構造の差込プラグ1を得る。
【0029】ここで、以上のようなインサート成形を行う際、ブレードキャップ5のフランジ5Aが金型キャビティ内を流れる樹脂に対して抵抗となってしまい、射出圧力によってはフランジ5Aの一部が破損する可能性がある。
【0030】これを解消するため、本実施の形態では、例えば図4に示したように、フランジ5Aの角となる部分をカットしたり、あるいは図7に示すように、フランジ15Aの角となる部分をアール状に加工する等、フランジの平面形状を工夫して、フランジ周辺での樹脂の流れを良くする方法、また、図8(a)または(b)に示すように、フランジ25Aまたは35Aの外面(流動樹脂が当たる面)の形状を傾斜面または湾曲面とすることにより、流動樹脂によりフランジに作用する力を緩和する方法、あるいは図4(または図7)の構成と、図8の構成を組み合わせた方法を採用する。
【0031】なお、以上の実施の形態では、一対の刃3A,3Bをもつ2極の差込プラグに本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、3極またはそれ以外の任意の極数の接続器にも適用可能である。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の差込プラグによれば、プラグ本体から突出する刃の根元部にブレードキャップを嵌め込んでいるので、プラグの刃をコンセントの刃受穴に差し込んだ際に、刃の外周面と刃受穴の内周面との間に空く間隙を塞ぐことができる。これによりプラグの刃への塵埃等の堆積が原因となって発生する短絡やトラッキング火災等を防止することができる。
【0033】しかも、本発明の差込プラグにおいては、ブレードキャップの一端にフランジを一体形成し、このフランジ形成部をプラグ本体に埋め込んでいるので、そのフランジによるアンカー効果によって、ブレードキャップがプラグ本体に確実に保持され、これによりブレードキャップがプラグ本体の突当面から離れたり、また刃から抜け落ちる等の不具合が生じることがなくなる。その結果、安全性の高い差込プラグを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の構造を示す水平断面図
【図2】その実施の形態の外観斜視図
【図3】本発明の実施の形態に用いるブレードキャップ5の斜視図
【図4】同じくブレードキャップ5の正面図(a)及び背面図(b)
【図5】同じくブレードキャップ5の水平断面図
【図6】本発明の実施の形態の使用状態を示す図
【図7】本発明の差込プラグに用いるブレードキャップの変形例を示す図
【図8】同じくブレードキャップの変形例を示す図
【図9】従来の差込プラグの使用状態の一例を示す図
【符号の説明】
1 差込プラグ
2 プラグ本体
2A 突当面
3A,3B 刃
4 電源コード
5 ブレードキャップ
5A フランジ
11 電源コンセント
11A,11B 刃受穴
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-12-03 
出願番号 特願平9-113117
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01R)
P 1 651・ 537- YA (H01R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 内藤 真徳
平上 悦司
登録日 2002-12-06 
登録番号 特許第3377400号(P3377400)
権利者 行田電線株式会社
発明の名称 差込プラグ  
代理人 倉内 義朗  
代理人 倉内 義朗  

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