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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1112996
異議申立番号 異議2003-71041  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-21 
確定日 2004-12-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3337664号「残存触媒を実質的に含有しない皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3337664号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 【I】経緯
本件特許第3337664号に係る発明は、平成7年12月21日出願の特願平7-348981号の分割出願であり、平成14年8月9日に特許権の設定の登録がされた。その後、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社により特許異議の申し立てがされ、平成15年9月5日付けで当審から取消理由が通知され、その意見書提出期間内に特許異議意見書と共に訂正請求書が提出され、平成16年3月22日付けで訂正拒絶理由が通知され、その意見書提出期間内に特許異議意見書が提出され、平成16年10月28日付けで特許権者に対して審尋が通知され、その回答書提出期間内に回答書が提出された。
【II】訂正請求について
1.訂正の内容
訂正事項a:
特許請求の範囲の
「【請求項1】 末端に炭素-炭素二重結合を有するポリオキシアルキレンとヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に、水素添加反応を行った後、室温に冷却し、次いでけい藻土又は活性炭でろ過することにより該組成物中に残存する白金触媒を0.5ppm以下にまで除去し、その後、さらに該組成物に対して10〜1000ppmの酸化防止剤を添加することを特徴とする皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法。」を、
「【請求項1】 両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンと両末端ヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に、水素添加反応を行った後、室温に冷却し、次いでけい藻土又は活性炭でろ過することにより該組成物中に残存する白金触媒を0.5ppm以下にまで除去し、その後、さらに該組成物に対して10〜1000ppmの酸化防止剤を添加することを特徴とする皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法。」 と訂正する。

訂正事項b:
明細書の段落【0007】の、
「【発明の概要】
本発明は、水素添加反応からなる工程により生成した残存触媒を実質的に含有しない皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法に関するものである。
即ち、本発明によれば、末端に炭素-炭素二重結合を有するポリオキシアルキレンとヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に、水素添加反応を行った後、室温に冷却し、次いでけい藻土又は活性炭でろ過することにより該組成物中に残存する白金触媒を0.5ppm以下にまで除去し、その後、さらに該組成物に対して10〜1000ppmの酸化防止剤を添加することを特徴とする皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法が提供される。」を、
「【発明の概要】
本発明は、水素添加反応からなる工程により生成した残存触媒を実質的に含有しない皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法に関するものである。
即ち、本発明によれば、両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンと両末端ヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に、水素添加反応を行った後、室温に冷却し、次いでけい藻土又は活性炭でろ過することにより該組成物中に残存する白金触媒を0.5ppm以下にまで除去し、その後、さらに該組成物に対して10〜1000ppmの酸化防止剤を添加することを特徴とする皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法が提供される。」と訂正する。

2.訂正の適否について
訂正事項aは、「末端に炭素-炭素二重結合を有するポリオキシアルキレンとヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物」を「両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンと両末端ヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、本件特許明細書段落【0008】【0025】【0029】の記載に基づくものであるから、当該訂正は願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものである。
訂正事項bは、特許請求の範囲の訂正に対応して、明細書の発明の詳細な説明の欄の記載を整合させるものであるので、明りょうでない記載の釈明に該当し、当該訂正は願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項a〜bは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
したがって、上記訂正a〜bは、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、訂正を認める。

【III】異議申立てについて
1.異議申立ての概要
特許異議申立人東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社は、訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物(甲第1〜14号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものであり、取り消されるべき旨を主張している。

2.甲号証の記載
(1)甲第1号証:米国特許第5225509号明細書
「ポリシロキサンブロックがポリエーテルブロックとSiC結合により連結しているポリオキシアルキレンポリシロキサン混合ブロックポリマーは、白金触媒存在下でアルケンポリエーテル、特にはアリルポリエーテルとハイドロジェンシロキサンの付加反応によって製造される。・・・・・ポリオキシアルキレンポリシロキサン混合ブロックポリマーは一般に未反応アリルポリエーテルとプロペニルポリエーテルを含有している。・・・・・しかし、それらははっきりした不快な刺激臭を強く顕著に持っており、貯蔵中に強くなる傾向がある。この臭気は示された種類の用途、特に化粧品製造時の活性成分として使用されるときに障害となる。」(1欄15〜68行)
「本発明の目的は、ポリオキシアルキレンポリシロキサン混合ブロックポリマーの簡単であり、産業用に好適な脱臭方法を提供することにある。・・・該混合ブロックポリマーに、水素添加触媒存在下で20℃〜200℃の温度、1〜100バールの圧で0.5から10時間水素を作用させる。・・・・・周知の水素添加触媒が使用される。特にはニッケル、銅、クロム、白金族の金属が好適である。触媒は金属としてポリエーテルシロキサンに対して0.003〜1重量%使用する。・・・・水素を作用させた後、触媒は適当な方法で分離できる。例えば、ポリオキシアルキレンポリシロキサン混合ブロックポリマーからのろ過や遠心分離である。・・・・・本発明に従って処理されたポリオキシアルキレンポリシロキサン混合ブロックポリマーは不快臭がない。貯蔵中にも、化粧品組成に組み込まれた後も臭気が現れない。」(2欄45行〜3欄38行)
「実施例1 25〜30のケイ素原子、60〜70のオキシエチレン単位、10〜20のオキシプロピレン単位を有し、平均分子量が6000であるポリオキシアルキレンポリシロキサン混合ブロックポリマーについて実験した。ポリマーは使用したSiHから計算して40%過剰の、付加反応できないポリオキシエチレンを含有していた。このポリマー700グラムをニッケル触媒1グラムの存在下で水素添加した。窒素雰囲気下で120℃でろ過すると、無色透明な製品が得られた。不快な刺激臭はなく、2週間貯蔵後も同様であった。」(4欄6行〜29行)

(2)甲第2号証:特表平4-501741号公報
「発明の背景 有機シランと有機シリコーン重合体との合成はよく知られており、一般に、少量の酸性白金触媒、例えば、塩化白金酸の存在下、脂肪族の不飽和化合物と、反応性のシラン-水素(式を省略)単位及び/または水素-シロキシ(式を省略)単位を含むシランまたはシリコン重合体との触媒ヒドロシリル化を伴う。比較的高い有機シラン及び有機シロキサンへの転化率が達成されるが、その粗生成物は、極めて低いレベル(ppm)の残存白金触媒の連行により引き起こされる曇った外観または琥珀色の着色のため、多くの応用に適さない。このような製品は特に化粧品及び身辺用途への応用には適さない。・・・有機シラン/有機シリコーン製品の曇り及び着色を低減するために白金触媒を除去する他の方法がいくつか提案されている。このような方法は、時間のかかる液体による抽出、濾過、または粘土、珪酸マグネシウムまたは硫酸マグネシウム脱色剤または濾過助剤との反応混合物との接触を含む処理を含む。」(2頁右上欄4行〜同頁左下欄8行)
「本発明に従い、微量の酸性白金族触媒を含む液状の製品混合物は、・・・塩基性陰イオン交換樹脂と接触させることにより、中和、透明化及び脱色される。触媒除去のために処理される液状の製品混合物は、5000ppmまでの酸性白金族金属触媒、最も好ましくは白金または白金/パラジウム触媒を含む有機シランまたは有機シロキサン製品混合物であることが好ましい。しかしながら、本方法は、酸性白金属金属触媒存在下で脂肪または油を水素化すること、・・・から生じる液状製品混合物、及び他の製品に応用することも可能である。」(2頁右下欄下から3行〜3頁左上欄8行)
「ヒドロシリル化反応は、・・・、例えば約15ppmから約5000ppmの間、より多くの場合約20〜約200ppmの間の酸性白金触媒存在下、シリコーン重合体のシラン-水素または水素-シロキシ単位が、アルケンまたはアルキンの不飽和の炭素-炭素部位を介して付加され、この触媒は重合性有機シリコーン製品中に連行される。」(3頁右下欄8〜15行)
また、例2、例4〜例7には、市販のジメチルポリシロキサングリコール共重合体を粒状弱塩基性陰イオン交換樹脂と接触させることにより、白金含量が大幅に減少し(例2では、処理前77.40ppm、処理後0.39ppm。例4では、処理前15.30ppm、処理後0.24ppm。例5では、処理前8.22ppm、処理後<0.30ppm。)、曇りがあり琥珀色だったものが処理後には透明で無色になったことが記載されている。(4頁右下欄例2〜6頁右上欄例7)

(3)甲第3号証:ダウコーニング社発行のパンフレット「Information about Cosmetic Ingredients」(1979年)
「Dow Corning l90とl93界面活性剤は化学式・・・・・のシリコーングライコールコポリマーである。CTFA名はジメチコーンコポリオールである。Dow Corning l90と193界面活性剤は本質的に非毒性の液体であり、広範囲の化粧料およびパーソナルケア製品における界面張力低下剤、湿潤剤、乳化剤および起泡剤として作用する。・・・加えて、これらは泡の嵩を増し、スキンローション、ひげ剃りローションおよび皮革の湿潤性と潤滑性を改善する。」(1頁左欄2行〜下から22行)

(4)甲第4号証:特開昭61-60726号公報
「式:R3SiO1/2及びRHSiO の単位及び場合により式:R2SiO[式中Rは前記のものを表す]の単位を含むオルガノポリシロキサンを、一分子当り少なくとも1個の隣位エポキシ基を有し、・・・・かつ末端位の炭素-炭素二重結合を有する有機化合物と、脂肪族炭素-炭素結合へのSi結合水素の付加を促進する触媒の存在で反応させることによつて該オルガノポリシロキサンを製造する方法において、・・・・。」(2頁左上欄6行〜同頁左下欄2行)
「特定のオルガノポリシロキサンを製造するための本発明による方法の場合、脂肪族炭素-炭素二重結合へのSi結合水素の付加を促進する触媒としては、この種の任意の触媒を使用することができる。このような触媒の例はH2PtCl6・6H2Oである。」(5頁右上欄4〜9行)
「特定のオルガノポリシロキサンの本発明による製造方法の終了後、触媒を好ましくは該オルガノポリシロキサンから、例えば活性炭を加え、次いで濾別することによって除去して、Si結合水素の脱離を防止する。」(5頁左下欄1〜5行)

(5)甲第5号証:特開平5-179246号公報
「【請求項1】 白金化合物を触媒として用いたヒドロシリル化反応により高分子液晶を製造する際に、ヒドロシリル化反応を行なった反応混合物に活性炭を添加し、使用済の白金化合物を除去する工程を有することを特徴とする高分子液晶の精製法。」(請求項1)
「【0004】・・・。本発明はまた、着色がなく白金含量が低い(10ppm以下)高分子液晶を得ることができる高分子液晶の精製方法を提供することを目的とする。」
「【0018】 活性炭を添加した反応混合物は瀘紙等を用いて瀘過することが好ましい。・・・。」

(6)甲第6号証:特開昭60-18525号公報
「従来、ポリエーテル変性シリコーン油と称呼されているポリオキシアルキレン基を有するポリオルガノシロキサン液状物は、・・・、シャンプー、ハンドクリーム等の化粧品製剤及び香粧品などに対する配合材料として、幅広い産業上の利用分野を有するものである。・・・シリコーン中のポリオキシアルキレン部分が酸化を受けやすいため酸敗に起因する経時的着臭が不可避であり、・・・製造直後においてさえ若干の酸敗臭を帯びていた。
近年、・・・無臭もしくは極めて低臭気のものが要請されている。・・・、殊に水溶性ポリオルガノシロキサンの酸敗による経時的着臭の防止方法として、ビタミンEとして周知のトコフェロールを添加する方法が開示されている。」(2頁左上欄10行〜左下欄11行)
「実施例1〜7
平均分子量400のポリオキシエチレン基から成る片末端ヒドロキシル基封鎖ポリオキシエチレンモノアリルエーテル350部・・・に塩化白金酸のイソプロパノール溶液を加えた。・・・トリメチルシリル末端のメチル水素シロキサン単位を有するポリメチルハイドロジェンシロキサン200部を滴下ロートより滴下した。・・・ポリオキシアルキレン基を有するポリオルガノシロキサン(・・・)の試料を作成した。」(3頁右下欄15行〜4頁右上欄5行)

(7)甲第7号証:特開平5-331021号公報
「【0002】
【従来の技術】化粧料等においては、その原料として水溶性シリコーンが汎用されている。この水溶性シリコーンは、保存中に加水分解を受けて、ホルマリンやプロピオンアルデヒド等の低分子物質を生ずるが、これらの物質が変臭を放つことが問題となっている。
【0003】従来、このような変臭を防止するために、ジブチルヒドロキシトルエンやビタミンE等の抗酸化剤を配合することが行われているが、これらの変臭防止効果は十分なものではなかった。」
また、段落【0035】の【表6】には、水溶性シリコーン(5)(シリコーンSH3771E)を2%含有する乳液が記載されており、シリコーンSH3771Eはジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体であることが記載されている。(段落【0035】、平成9年10月23日付け手続補正書の段落【0011】)

(8)甲第8号証:特開平7-238472号公報
「【請求項1】A)25℃における粘度が3〜30センチストークスであるジメチルポリシロキサン 100重量部、
(B)一般式:・・・(省略)・・・で表わされるポリオキシアルキレン基含有ジオルガノポリシロキサン 0.5〜50重量部および
(C)アミン系酸化防止剤またはフェノール系酸化防止剤
0.003〜1重量部
からなることを特徴とする繊維糸状物用ストレート油剤組成物。」
「【0007】(C)成分のアミン系酸化防止剤またはフェノール系酸化防止剤は高温下での安定性を付与し、長期保存安定性を向上させる成分である。・・・。」

(9)甲第9号証:特公昭56-5414号公報
「ポリアルキレングリコール誘導体にフェノール系抗酸化剤を添加してから水蒸気または窒素ガスを用いて脱臭することを特徴とするポリアルキレングリコール誘導体の精製法。」(特許請求の範囲)
「特に化粧品用のポリアルキレングリコール誘導体は、用途の性質上きわめて高度に精製された製品が要求される。特に臭いに関する要求は厳しい。」(1頁1欄33行〜36行)
「・・・・・ポリプロピレングリコールが得られた。これに抗酸化剤として2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)1.6gを添加し、約30mmHg、90〜100℃で窒素ガスを吹き込んで脱臭を行い、精製ポリプロピレングリコール2020gを得た。」(2頁の実施例2)

(10)甲第10号証:特公昭61-5486号公報
「1.ポリオキシアルキレン化合物100重量部当り五酸化リン0.005〜0.5重量部を添加して50℃以下に保つたのち、70〜150℃に加熱処理することを特徴とするポリオキシアルキレン化合物の脱臭処理方法。
2.加熱処理を酸化防止剤の存在下で行う特許請求の範囲第1項記載の方法。」(特許請求の範囲)
「酸化防止剤の存在下で行うことにより、臭気の改良をさらに向上させることができる。」(2頁3欄39〜41行)
「この酸化防止剤の添加量は、ポリオキシアルキレン化合物100重量部に対し、通常0.001〜0.5重量部・・・である。」(2頁4欄4〜7行)
「BHTなどの酸化防止剤の共存下で行うことによって経時安定性の良好なポリオキシアルキレン化合物を得ることができる。」(2頁4欄18〜20行)

(11)甲第11号証:特開平2-302438号公報
「従来、ポリエーテルシリコーンはハイドロジェンシロキサンと末端二重結合有するポリオキシアルキレンとを、塩化白金酸等の貴金属触媒下に付加反応せしめることによって製造されている。しかしながら、このようにして得られたポリエーテルシリコーンを乳化系で使用した場合には経時によって着臭するので化粧料等の用途には、臭いの為に配合が難しいという欠点があった。・・・・・プロペニルエーテル化ポリエーテルが生ずる。このプロペニルエーテル化ポリエーテルはハイドロジェンシロキサンと反応しないので、正常な付加反応によって生成したポリエーテルシリコーン中に不純物として残存する上、未反応のアリル化ポリエーテルも不純物として前記ポリエーテル中に残存する。又、未反応のアリル化ポリエーテルは残存する白金触媒により徐々に異性化してプロペニルエーテル化ポリエーテルとなる。・・・。(1頁右下欄13行〜2頁右上欄10行)
「本発明のポリエーテルシリコーンは構造式・・・・・のハイドロジェンシロキサンの少なくとも1種と、・・・・・で表されるポリオキシアルキレン(ポリエーテル)の白金触媒下における付加反応によって製造される。」(2頁左下欄17行〜右下欄下から2行)
「実施例1
平均組成 (CH3)3SiO-[Si(CH3)2O]60-[SiH(CH3)O]3-Si(CH3)3で表されるハイドロジェンシロキサン717g、
平均組成 CH2=CHCH2O(CH2CH2O)9CH3で表されるアリル化ポリエーテル219g、エチルアルコール655g及び塩化白金酸のClを中和したものを白金がアリル化ポリエーテルに対して重量で5ppmとなるように秤量して、反応温度80℃で攪拌し5時間反応させた。」(5頁右上欄9行〜最下行)

(12)甲第12号証:特開平4-235122号公報
「【請求項1】分子量3500以下のポリエーテル変性シリコーンを含有する皮膚洗浄剤組成物。」

(13)甲第13号証:特開平5-229928号公報
「【請求項1】多価アルコール、水溶性高分子及びポリエーテル変性シリコーンオイルを含有することを特徴とする化粧水。」

(14)甲第14号証:特開平6-145524号公報
「【請求項1】(1)一般式(I)で示されるオルガノポリシロキサン (式省略)(2)25℃における粘度が1〜500センチストークスのオルガノポリシロキサン (3)HLB値が5〜12のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンを、重量比で・・・となるように水に乳化してなることを特徴とする水中油型シリコーン乳化組成物。」
「【0001】本発明は、使用感が良好で、かつ乳化安定性に優れ、シャンプー、リンス等の毛髪化粧料やクリーム、乳液などの皮膚化粧料・・・として好適に使用できる水中油型シリコーン乳化組成物に関する。」

3.訂正後の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)
訂正発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】 両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンと両末端ヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に、水素添加反応を行った後、室温に冷却し、次いでけい藻土又は活性炭でろ過することにより該組成物中に残存する白金触媒を0.5ppm以下にまで除去し、その後、さらに該組成物に対して10〜1000ppmの酸化防止剤を添加することを特徴とする皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法。」

4.対比・判断
甲第1号証には、アルケンポリエーテルとハイドロジェンシロキサンの付加反応によって合成されるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に、触媒存在下で水添を行い、触媒を濾過により除去する、不快な刺激臭のない化粧品用ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を製造する方法の発明が記載されている。
しかしながら、甲第1号証では、アルケンポリエーテルとしてアリルポリエーテルが記載されているだけであり、両末端にメタリル基を有するポリエーテルを用いることは記載も示唆もされていない。
一方、訂正発明は、両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンを用い、それに両末端ヒドロポリシロキサンを反応させた組成物を用いて、無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を製造しており、甲第1号証に記載の発明とは、原料が異なるために無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサンの構造が異なっている。
さらに、異議申立人が提出した甲第2〜14号証を検討しても、両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンと両末端ヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物については記載も示唆もなく、甲第1号証で使用するポリエーテル変性ポリシロキサンに代えて、両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンと両末端ヒドロポリシロキサンから無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を用いることは、当業者が容易になし得たとする根拠は見出せない。
そして、訂正発明は、両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンと両末端ヒドロポリシロキサンを反応さたものを用いることにより、特許明細書に記載の効果を奏するものである。
したがって、訂正発明は、甲第1〜14号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、訂正発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に訂正発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
残存触媒を実質的に含有しない皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンと両端末ヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に、水素添加反応を行った後、室温に冷却し、次いでけい藻土又は活性炭でろ過することにより該組成物中に残存する白金触媒を0.5ppm以下にまで除去し、その後、さらに該組成物に対して10〜1000ppmの酸化防止剤を添加することを特徴とする皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、残存触媒を実質的に含有しない皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、クレンジングクリーム、コールドクリーム、ハンドクリーム、パウダー、化粧水、ファンデーション、アイシャドー、ローション、マニキュア、口紅、リップクリーム、日焼け防止クリーム、制汗剤、洗顔剤、身体洗浄剤等の、臭気および刺激性等の非常に少ない、保存安定性に優れた皮膚化粧料に用いられる皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
皮膚化粧料には、使用目的によってクレンジングクリーム、コールドクリーム、ハンドクリーム、パウダー、化粧水、ファンデーション、アイシャドー、ローション、マニキュア、口紅、リップクリーム、日焼け防止クリーム、制汗剤、洗顔剤、身体洗浄剤等種々の種類がある。ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物は、各化粧料の原料成分の相溶性を向上させ、光沢性および滑らかさを改善することができ、また、湿潤性、起泡性、整泡性、乳化性、洗浄性、帯電防止能を向上させることができるので、各種皮膚化粧料に配合され広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年、無香料タイプの皮膚化粧料が普及するにつれて、皮膚化粧料の個々の成分の臭いが問題視されている。中でも、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物はその機能性とは逆に、臭いに関してはマイナスの影響を与えている。つまり、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物はヒドロシリル基をもつポリシロキサンと不飽和結合を有するポリオキシアルキレンとのヒドロシリル化反応によって合成されているため、皮膚化粧料の製造時および保存においてポリエーテル変性ポリシロキサン組成物中の未反応不飽和基含有ポリエーテルからアルデヒド等の臭い物質が生成し、製品が着臭する。
【0004】
また、臭いの問題に加えて、生成したアルデヒドは皮膚刺激性等の安全性等での問題が考えられるので、皮膚化粧料中にこのような物質が大量に生成した場合、皮膚への悪影響が懸念される。
係る欠点を解消するため、例えば、特開平2-302438号では未反応ポリオキシアルキレンを酸存在下で加水分解し、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を脱臭する方法が開示されており、これを皮膚化粧料の成分として用いることが考えられる。しかし、この方法で精製したポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の脱臭は完全ではなく、皮膚化粧料に配合した後に経時で着臭してしまう。また、この脱臭方法では工業的に安定して製造することは困難である。
【0005】
さらに、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を製造に使用する白金触媒が皮膚化粧料中に高濃度で残存した場合アレルギーを起こすなどの問題がある。係る欠点を解消するため、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物中の残留白金をけい藻土等で吸着させ除去しているが、その工程が長く生産性が悪くなっている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決すべくポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の脱臭方法について種々検討した結果、未精製のポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に、触媒存在下水素ガスを用い水素添加反応を実施することにより、加水分解および酸化反応等により臭気物質を発生することがなく、経時的にも安定な無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物が得られることを、さらには、この水素添加工程により、該ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物中に残存する白金触媒の量を殆どなくすことができることを見出した。そして、本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものである。
【0007】
【発明の概要】
本発明は、水素添加反応からなる工程により生成した残存触媒を実質的に含有しない皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法に関するものである。
即ち、本発明によれば、両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンと両末端ヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に、水素添加反応を行った後、室温に冷却し、次いでけい藻士又は活性炭でろ過することにより該組成物中に残存する白金触媒を0.5ppm以下にまで除去し、その後、さらに該組成物に対して10〜1000ppmの酸化防止剤を添加することを特徴とする皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を製造するためのヒドロシリル化反応に用いるヒドロポリシロキサンとしては、例えば次式:
【化1】

[ここで、R1は同一または異なる置換または非置換の1価の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1〜19のアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、ナフチル基、アルキルナフチル基、フェニルアルキル基、3-アミノプロピル基、3-(N-2-アミノエチルアミノ)プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等)または次式で表されるもの、
【化2】
-(R22SiO)qSiR23
{ここで、R2は同一または異なる置換または非置換の1価の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1〜19のアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、3-アミノプロピル基、3-(N-2-アミノエチルアミノ)プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等)または水素基、qは0または正の整数である。}
または水素基、nは0または正の整数である。但し、1分子中に少なくとも1つのケイ素原子に直接結合した水素基を有する。]
で表されるものや、次式:
【化3】

(ここで、R1は上で記載のものに同じ、mは3以上の整数である。但し、1分子中に少なくとも1つのケイ素原子に直接結合した水素基を有する。)で表されるものが挙げられる。
これらのヒドロポリシロキサンは単独で用いることもできるが、組合せで用いることも可能である。
また、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を製造するためのヒドロシリル化反応に用いるポリオキシアルキレンとしては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【化4】
R’O(R”O)x=R’
{ここで、R’は同一または異なる、不飽和置換または非置換の1価の炭化水素基(例えば、アリル基、メタリル基、3-ブテニル基、炭素原子数1〜19のアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、ナフチル基、アルキルナフチル基等)、アシル基または水素基、R”は同一または異なる、置換または非置換の2価の炭化水素基(例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基、フェニレン基、アルキル置換フェニレン基、フェニル置換アルキレン基、ナフチレン基、アルキル置換ナフチレン基等)、xは0または正の整数、ただし、1分子中のR’のうち少なくとも一つは不飽和置換基を有する炭化水素基である。}
これらのポリオキシアルキレンはそれぞれ単独で用いることもできるが組合せで用いることも可能である。
上記ヒドロシリル化反応は、公知の技術を用いて行うことができる。すなわち、この反応は、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、ジオキサン、THF等のエーテル系、脂肪族炭化水素系、塩素化炭化水素系の有機溶剤中または無溶媒で行われる。また、反応温度は通常50〜150℃であり、塩化白金酸等の触媒を用い反応させることができる。通常、ポリオキシアルキレンを過剰にして反応させる。
【0009】
通常のポリエーテル変性ポリシロキサン組成物は上記反応溶液から溶剤を留去することにより精製される。このため未反応のポリオキシアルキレンはポリエーテル変性ポリシロキサン組成物中に残存する。アリルエーテル化ポリオキシアルキレンは白金等の触媒の存在により異性化を起こす。例えば末端アリルエーテル化ポリオキシアルキレンの場合にはプロペニルエーテル化ポリオキシアルキレンが生成する。従って、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物中には過剰のプロペニルエーテル化ポリオキシアルキレンが残存する。このプロペニルエーテル化ポリオキシアルキレンはビニルエーテル型の化合物であるため容易に加水分解を起こし、軽質分を生成する。すなわちプロペニルエーテル化ポリオキシアルキレンは空気中の水分および僅かな酸の存在により徐々に加水分解し臭気物質であるプロピオンアルデヒドを生成する。
【0010】
また、未反応の末端アリルエーテル化ポリオキシアルキレンはポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に残存する白金触媒の作用で徐々にプロペニルエーテル化ポリオキシアルキレンを生成し臭気の原因となるばかりでなく、末端アリルエーテル化ポリオキシアルキレン自体酸化に対する安定性は通常の飽和炭化水素と比較しあまり良くないのでこの酸化物等が臭気の原因になりうる。また、ヒドロシリル化反応で副生するビニルシラン型の化合物ができる場合、この化合物は酸化安定性が悪いと考えられる。従って、加水分解および酸化により臭気物質を発生することがなく、経時的にも安定な組成物を得るには、プロペニルエーテル化ポリオキシアルキレンを除去するだけではなく、臭気原因となる不安定置換をもつ化合物をポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に残存させないようにすることが必要である。
【0011】
本発明では炭素-炭素二重結合等の不飽和置換基をもつ化合物、および加水分解および酸化に由来する化合物に水素添加反応を行い、精製したポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を皮膚化粧料の成分として用いた。
【0012】
水素添加反応としては公知の水素添加触媒が用いられる。例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、コバルト、クロム、銅、鉄等の単体または化合物がある。触媒担体は無くてもよいが、用いる場合は活性炭、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ゼオライト等が用いられる。また、ヒドロシリル化反応に使用した白金触媒をそのまま利用することもできる。これらの触媒は単独で用いることもできるがその組合せで用いることも可能である。
【0013】
水素添加反応の溶媒は使用しなくてもよいが、使用する場合は、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、ジオキサン、THF等のエーテル系、脂肪族炭化水素系、塩素化炭化水素系などの水素添加条件に不活性な有機溶剤中で行われ、ヒドロシリル化反応に使用した溶媒をそのまま使用することもできる。
【0014】
水素添加反応は、常圧および加圧下で行うことができる。現実的には水素加圧下で、即ち水素圧1〜200Kg/cm2で行う。
【0015】
水素添加反応は、0〜200℃で行うことができるが、反応時間の短縮のため、50〜170℃で行うことが望ましい。
【0016】
水素添加反応は回分式でも連続式でも良い。回分式の場合、反応時間は触媒量および温度等に依存するが概ね3〜12時間である。
【0017】
回分式の場合、水素添加反応の終点は、水素圧の減少がほとんど観測されなくなった時点からさらに1〜2時間反応させた時点とすることができる。反応途中で水素圧が減少した場合、水素を再び導入し水素圧を高く保つことが反応時間短縮のために望ましい。
【0018】
水素添加反応後は窒素加圧下にけい藻士または活性炭を用い、ろ過を行いヒドロシリル化反応および水素添加反応に使用した触媒を分離する。通常、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物中に残存する白金等の触媒は、組成物中に溶解するため、その除去、分離が困難を極めるが、本発明では、水素添加反応によって触媒中における白金等の金属原子のイオン価が下がり、その結果、触媒自体が非溶解性の微粒子になるものと推察されるから、その除去、分離が容易に行える。
【0019】
反応に溶媒を使用した場合および水素添加後に軽質分が存在する場合には必要に応じて、減圧下に窒素を吹き込みながらこれらの軽質分を留去しポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を精製する。また、この軽質分除去操作は水添反応を行う前処理として行ってもよく、さらに、水添反応前後で2回行ってもよい。
【0020】
精製されたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物は、フェノール類、ヒドロキノン類、ベンゾキノン類、芳香族アミン類、およびビタミン類等の酸化防止剤を入れ酸化に対する安定性を増加させることができる。このような酸化防止剤としては、例えば、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)、ビタミンCおよびビタミンEなどを用いることができる。このとき、使用する酸化防止剤の添加量は精製されたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に対し10〜1000ppm、好ましくは50〜500ppmである。
また、酸化防止剤の添加は、軽質分の留去操作前に行うこともできる。
【0021】
本発明の無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物は、皮膚化粧料として、様々な形態で使用できる。例えば、それらをアルコール類、炭化水素類、揮発性環状シリコーン類等に溶解または分散させて用いてもよいし、更には乳化剤を用いて水に分散させてエマルジョンの形態で用いることもできる。また、プロパン、ブタン、トリクロルモノフルオロメタン、ジクロルジフルオロメタン、ジクロルテトラフルオロエタン、炭酸ガス、窒素ガス等の噴射剤を併用してスプレーとして用いることもできる。それらの形態でクレンジングクリーム、ハンドクリーム、パウダー、化粧水、ファンデーション、アイシャドー、ローション、マニキュア、口紅、リップクリーム、日焼け防止クリーム、制汗剤、洗顔剤、身体洗浄剤等として使用できる。
【0022】
また、皮膚化粧料中の上記ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の配合量は限定されないが、好ましくは0.01重量%〜80重量%であり、特に好ましくは0.1〜50重量%である。
【0023】
本発明の無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を用いた皮膚化粧料には、通常皮膚化粧料に配合されている成分を製品の臭いに悪影響を与えない範囲で配合することができる。例えば、オイル、樹脂、ガム、ゴム、粉末等の形状のシリコーン化合物[例えば、ジメチルポリシロキサンやジメチルメチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリカプロラクトン変性ジメチルポリシロキサン等]、各種油分(例えばツバキ油、ナタネ油、ゴマ油、サフラワー油、綿実油、ヒマシ油、大豆油、ヤシ油、パーム油、ミツロウ、モンタンロウ、ラノリン、スクワレン等)、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、アルカンスルホン酸塩、アルキルエトキシカルボン酸塩、コハク酸誘導体、アルキルアミンオキサイド、イミダゾリン型化合物、ポリオキシエチレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物等)、高分子化合物(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カチオン化セルロース、カチオン化高分子、ポリビニルヒドリロン、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ビニルピロリドン-酢酸ビニル-アルキルアミノアクリレート共重合体、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体の低級アルキルハーフエステル、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、アクリル酸-アクリル酸エステル-N-アルキルアクリルアミド共重合体等)、アミノ酸(グリシン、セリン、プロリン)、粉体(セリサイト、シリカアルミナ、シリカゲル、カオリン、タルク、ベンガラ、グンジョウ、雲母、雲母チタン、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化アンチモン、一酸化亜鉛、二酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化クロム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ポリエチレン粉体等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、染料、顔料、色素、防腐剤、ビタミン剤、ホルモン剤、消臭剤、固着剤、消炎剤等を適量配合しても良い。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を合成例、実施例および応用例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものでなく、本発明の技術思想を利用する実施態様はすべて本発明の範囲に含まれるものである。
【0025】
合成例
次の平均組成
【化5】

を有するヒドロポリシロキサンと次の平均組成
【化6】

を有するアリルエーテル化ポリオキシアルキレンとをそれらのヒドロシリル基と不飽和基との当量比が1:1.2になるような原料比で、公知のヒドロシリル化反応を行い合成した変性ポリシロキサン組成物を化合物1とした。
また、次の平均組成
【化7】

を有するヒドロポリシロキサンと次の平均組成
【化8】
CH2=CHCH2O(CH2CH2O)10CH3
を有するアリルエーテル化ポリオキシアルキレンとをそれらのヒドロシリル基と不飽和基との当量比が1:1.2になるような原料比で、公知のヒドロシリル化反応を行い合成した変性ポリシロキサン組成物を化合物2とした。
さらに、次の平均組成
【化9】

を有する両末端ヒドロポリシロキサンと次の平均組成
【化10】

を有する両末端メタリルエーテル化ポリオキシアルキレンとをそれらのヒドロシリル基と不飽和基との当量比が1:1.2になるような原料比で、公知のヒドロシリル化反応を行い合成した(AB)n型変性ポリシロキサン組成物を化合物3とした。
【0026】
実施例1(参考例)
ガラス製の1Lの3つ口フラスコに化合物1、200gおよびトルエン500mlを加え、さらに活性炭担持パラジウム(5wt%)0.5gを加えた後、マグネチックスターラーで撹拌しながら、吹き込み管から水素を20ml/分で吹き込んだ。トルエンが緩やかに還流するようにオイルバスを用いてフラスコの温度を徐々に上げた。水素を吹き込み始めてから12時間後に水素の吹き込みおよび加温を止めた。室温に冷却するまで水素の代わりに窒素を吹き込みフラスコ内の余剰の水素を置換した。
反応溶液にフィルターセルを加え、窒素圧下でろ過を行った。ろ液にBHT(300ppm)を添加した後、減圧下で窒素を吹き込みながら蒸留し、トルエンおよび軽質分を除去した。収量170g。
この精製された変性ポリシロキサン組成物を化合物4とした。
化合物1および化合物4について白金含有量を原子吸光法にて測定した。結果を表1に示す。化合物4の含有量は測定限界以下であり、白金はほぼ残存していないといえる。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例2(参考例)
ステンレス製の1Lのオートクレーブに化合物2、545.5gおよびラネーニッケル25gを加え、水素で内部を置換した後、水素圧50Kg/cm2にまで加圧した。備え付けの撹拌機で撹拌しながら、130℃まで徐々に温度を上げた。約5時間同温度で反応させた後、冷却した。この時点での収量545.4g。反応液にフィルターセルを加え、窒素圧下でろ過を行った。ろ液にBHT(300ppm)を添加した後減圧下で窒素を吹き込みながら蒸留し、軽質分を除去した。収量535g。
この精製された変性ポリシロキサン組成物を化合物5とした。
【0029】
実施例3
化合物2の代わりに3を用いた以外は実施例2と同様な方法で行った。 この精製された変性ポリシロキサン組成物を化合物6とした。
【0030】
応用例1:ハンドクリーム
下記の表2に示す組成物を常法により混合し、ハンドクリームを調製した。
【0031】
【表2】

【0032】
評価:手に塗布すると、べとつき感はなく、皮膚感触がよくしっとりとしていた。本品40gを50mlのふた付きサンプル瓶に入れ上部空間を窒素で置換した後、密栓し1年間室温で保存した。化合物4の代わりに化合物1を用い上記処方により調製した比較品を同条件下で保存し、臭いの比較を行った。結果を表3に示す。化合物1を用いたハンドクリームではかなり着臭したが、化合物4では着臭は認められなかった。
【0033】
【表3】

【0034】
経時変化後のそれぞれの製品についてパッチテストを行った。
1)試験方法:健康な男女50名(男性25名、女性25名)を対象とし、上腕部内側皮膚面に、フィンチャンバー(大正製薬株式会社製)の円形金属部にてハンドクリームを接着した。24時間閉塞貼付後、試料を精製水にて除去し、除去1時間後および24時間後にそれぞれ負荷部の皮膚症状を肉眼的に観察し、評価した。(対照として、局方精製水を同様の方法にて接着した。)
2)評価方法:被験物質および対照物質負荷部の皮膚所見については、刺激症状(紅斑、浮種、丘疹、水疱)の有無を確認し、次の規準に準じて行った。
- 反応なし
± 軽い紅斑
+ 紅斑
++ 紅斑+浮種
+++ 紅斑+浮種+丘疹〜水疱
++++ 大水疱
結果を表4に示す。化合物1と比較して化合物4を使用したハンドクリームは皮膚に対する刺激が非常に少ないことが分かった。なお、精製水についての軽微な紅斑は金属による影響が考えられる。
【0035】
【表4】

【0036】
応用例2:日焼け防止クリーム
下記の表5に示す組成物を常法により混合し、日焼け防止クリームを調製した。
【0037】
【表5】

【0038】
評価:背中に塗布するときの伸びが良く、べとつき感がせずにしっとりとした好ましい感触であった。
本品40gを50mlのふた付きサンプル瓶に入れ上部空間を窒素で置換した後、密栓し4ケ月間室温で保存した。化合物4の代わりに化合物1を用い上記処方により調製した比較品を同条件下で保存し、臭いの比較を行った。結果を表6に示す。化合物1を用いた日焼け防止クリームではかなり着臭したが、化合物4では着臭は認められなかった。
【0039】
【表6】

【0040】
応用例3:ローション
下記の表7に示す組成物を常法により混合し、ローションを調製した。
【0041】
【表7】

【0042】
評価:肌に塗布するとき非常に滑らかに塗布でき、肌を滑らかでしっとりとした風合いに仕上げることができた。また、ローション乳液の相分離が起こらず安定であった。
本品40gを50mlのふた付きサンプル瓶に入れ上部空間を窒素で置換した後、密栓し4ケ月間室温で保存した。化合物5の代わりに化合物2を用い上記処方により調製した比較品を同条件下で保存し、臭いの比較を行った。結果を表8に示す。化合物2を用いたローションではかなり着臭したが、化合物5では着臭は認められなかった。
【0043】
【表8】

【0044】
応用例4:口紅
下記の表9に示す組成物を常法により混合し、口紅を調製した。
【0045】
【表9】

【0046】
評価:肌に塗布したが光沢がよく、しっとりとした好ましい感触であった。塗布した肌に水のシャワーを3分間あびせたが、シコニンの紫色はそのまま残存していた。本品40gを50mlのふた付きサンプル瓶に入れ上部空間を窒素で置換した後、密栓し3ケ月間室温で保存した。化合物6の代わりに化合物3を用い上記処方により調製した比較品を同条件下で保存し、臭いの比較を行った。結果を表10に示す。化合物3を用いた口紅ではかなり着臭したが、化合物6では着臭は認められなかった。
【0047】
【表10】

【0048】
応用例5:化粧水
下記の表11に示す組成物を常法により混合し、化粧水を調製した。
【0049】
【表11】

【0050】
評価:肌に塗布するとき非常に伸びが良く気持ちがよく、肌に光沢とひきしめ感を与え肌をしっとりした感じに仕上げた。本品40gを50mlのふた付きサンプル瓶に入れ上部空間を窒素で置換した後、密栓し2ケ月間室温で保存した。化合物6の代わりに化合物3を用い上記処方により調製した比較品を同条件下で保存し、臭いの比較を行った。結果を表12に示す。化合物3を用いた化粧水ではかなり着臭したが、化合物6では着臭は認められなかった。
【0051】
【表12】

【0052】
応用例6:デオドラントスティック
下記の表13に示す組成物を常法により混合し、デオドラントスティックを調製した。
【0053】
【表13】

【0054】
評価:肌に塗布するとき非常に伸びが良く、肌あたりが柔らかく、べとついた感じがなかった。本品40gを50mlのふた付きサンプル瓶に入れ上部空間を窒素で置換した後、密栓し2ケ月間室温で保存した。化合物5の代わりに化合物2を用い上記処方により調製した比較品を同条件下で保存し、臭いの比較を行った。結果を表14に示す。化合物2を用いたデオドラントスティックではかなり着臭したが、化合物5では着臭は認められなかった。
【0055】
【表14】

【0056】
応用例7:洗浄剤組成物
下記の表15に示す組成物を常法により混合し、洗浄剤組成物を調製した。
【0057】
【表15】

【0058】
評価:実際に、両手を洗浄したところ、洗浄中の泡立ちおよび乾燥後のしっとり感が良かった。本品40gを50mlのふた付きサンプル瓶に入れ上部空間を窒素で置換した後、密栓し2ケ月間室温で保存した。化合物5および6の代わりに化合物2および3を用い上記処方により調製した比較品を同条件下で保存し、臭いの比較を行った。結果を表16に示す。化合物2および3を用いた洗浄剤組成物ではかなり着臭したが、化合物5および6では着臭は認められなかった。
【0059】
【表16】

【0060】
応用例8:洗顔剤組成物
下記の表17に示す組成物を常法により混合し、洗顔剤組成物を調整した。
【0061】
【表17】

【0062】
評価:実際に、洗顔したところ、洗浄中の泡立ちおよび乾燥後のしっとり感が良かった。本品40gを50mlのふた付きサンプル瓶に入れ、上部空間を窒素で置換した後、密栓し、2ヶ月間室温で保存した。化合物4の代わりに化合物1を用いて上記処方により調整した比較品を同一条件下で保存し、臭いの比較を行った。結果を表18に示す。化合物1を用いた洗顔剤組成物ではかなり着臭したが、化合物4では着臭は認められなかった。
【0063】
【表18】

【0064】
【発明の効果】
本発明の残存触媒を実質的に含有しない皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物は、従来、皮膚化粧料の成分において、着臭の原因となっていたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を水素添加し精製したものである。これにより、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の経時による着臭および刺激性のあるアルデヒドの生成を著しく抑えることができ、さらに、冷却後にろ過することによりアレルギーの原因となる可能性のある残存触媒の白金を実質的になくし、それらに加えて、酸化防止剤を添加することにより保存安定性を著しく向上させたものである。この精製されたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を、クレンジングクリーム、コールドクリーム、ハンドクリーム、パウダー、化粧水、ファンデーション、アイシャドー、ローション、マニキュア、口紅、リップクリーム、日焼け防止クリーム、制汗剤、洗顔剤、身体洗浄剤等の皮膚化粧料の成分として用いることにより、化粧料の各原因成分の相溶性を向上させ、光沢性および滑らかさを改善でき、さらに、湿潤性、起泡性、整泡性、乳化性、および帯電防止等の優れた効果を損なうことなく、臭気および刺激性等の非常に少なく、かつ、保存安定性にも優れた製品を調製することができるので、産業上非常に有用である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-12-06 
出願番号 特願平11-179433
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塚中 直子中島 庸子福井 悟  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 佐野 整博
藤原 浩子
登録日 2002-08-09 
登録番号 特許第3337664号(P3337664)
権利者 日本ユニカー株式会社
発明の名称 残存触媒を実質的に含有しない皮膚化粧料用無臭化ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法  
代理人 河備 健二  
代理人 河備 健二  
代理人 久保田 芳譽  

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