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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1113042
異議申立番号 異議2003-71017  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-15 
確定日 2005-03-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第3344235号「ワイヤボンディング方法」の請求項1、6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3344235号の請求項1、6に係る特許を維持する。 
理由 I.本件発明
本件特許第3344235号(平成8年10月7日出願、平成14年8月30日設定登録)の請求項1〜6のうち、請求項1、6に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、6に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 第1導体(3a)と第2導体(4)を有する回路基板(1)に対し、前記第1導体(3a)上に1次ボンディングを行った後、前記第2導体(4)上に2次ボンディングを行い、前記第1導体(3a)と前記第2導体(4)間をワイヤボンディングする方法において、
前記回路基板(1)上に半導体チップ(3)がダイマウントされている状態で、前記第2導体(4)上にボールボンディングを行ってバンプ(6)を形成し、そのウェッジボンディングを前記バンプ(6)に対し前記第1導体(3a)と反対側の位置にて行い、
前記1次ボンディングを行った後、前記バンプ(6)に対し前記第1導体(3a)側からワイヤ(5)をルーピングして前記バンプ(6)上に前記2次ボンディングを行うことを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項6】 前記第1導体(3a)は、前記半導体チップ(3)のボンディングパッドであることを特徴とする請求項1、4、5のいずれか1つに記載のワイヤボンディング方法。」

II.申立の理由の概要
申立人北條圭介は、証拠として下記の甲第1〜7号証を提出し、本件発明1、6は、甲第1〜6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また甲第7号証に記載された発明と同一であるから、本件発明1、6の特許は、特許法第29条第2項、また同法第29条の2の規定に違反してされたものであって、その特許を取り消すべき旨主張している。

甲第1号証:特開平3-183139号公報
甲第2号証:特開平2-94533号公報
甲第3号証:特開平2-114545号公報
甲第4号証:特開昭60-41236号公報
甲第5号証:特開平1-151182号公報
甲第6号証:特開昭63-304587号公報
甲第7号証:特開平8-340019号公報

III.当審が通知した取消理由において引用した刊行物、及びその記載事項
刊行物1:特開平3-183139号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平1-151182号公報(甲第5号証)

(1)刊行物1の記載事項
(1a)「本発明は・・・薄い銅箔をベースとする基板上のランドに確実に2次ボンディングができ、更にミスボンディングがあった場合やICの交換時の再ボンディングを容易に行うことのできるワイヤボンディング方法を提供することを目的とするものである。
〔課題を解決するための手段〕
前記の目的を達成するために本発明は、二つの接続電極間を導線で接続するワイヤボンディング方法において、予め2次側の接続電極に前記導線と同材質のボール状のバンプを形成し、1次ボンディングを行った後、前記ボール状のバンプ上に2次ボンディングを行うことを特徴とするものである。」(2頁右上欄7〜20行)
(1b)「第1図はワイヤボンディングを行う前の基板1及びダイボンドされたICチップ2の断面図である。基板1上に接続電極として設けられたランド3は基板1のファインパターン化に伴って5μm程度の薄さに形成され、この上にNi及びAuのメッキが施されている。
ワイヤボンディングを行うに際し、先ず第2図に示すように基板1のランド3上に通常の1次ボンディングと同様にAuボール5をボンディングする。このAuボール5のボンディング自体は接触部分の面積が大きいこともあって、ランド3の厚さが薄くても比較的簡単に行うことができる。続いてワイヤ6を上方に引っ張ってAuボール5の先端部でワイヤ6を切り放し、第3図に示すようにAuボール5のみをランド3上に残す。
次に、第4図に示すように、通常のワイヤボンディング法と同じくICチップ2上のパッド4にAuワイヤ6の1次ボンドを行い、その後キャピラリ7を右へ移動して先に形成したAuボール5上に2次ボンドを行う。最後に、このAuワイヤ6を切り放して第5図に示すようにワイヤボンディングを終了する。
このように2次側に予めワイヤ6とおなじ金属のボール状のバンプ5を形成しておくと、薄い銅箔に直接ボンディングを行うのに比べて超音波のエネルギーの伝播がよく、確実にボンディングされることが実験的に確かめられた。」(2頁左下欄19行〜3頁左上欄5行)と記載され、第2図から第5図には、ランド3のICチップ2側にAuボール5を形成することが図示されている。
(1c)「以上の説明では、基板1のランド3上にAuボールを予め形成する場合について説明したが、第9図に示すようにAuボール11を基板上ではなくICチップ2のパッド4上に形成することもできる。したがってこの場合には第10図に示すように基板1のランド3上に1次ボンディングを行い、ICチップ2のパッド4上に2次ボンディングを行うことによって第11図のようなワイヤボンディングが可能となる。」(3頁左下欄5〜13行)

(2)刊行物2の記載事項
(2a)「従来、電気マイクロ回路素子の接点領域と回路基板上の導体端子部との接続には、半田付けがよく利用されていた。近年たとえばICフラットパッケージ等の小型化と接続端子の増加により接続端子間、いわゆるピッチ間隔が次第に狭くなり、従来の半田付け技術で対処することが困難になってきた。また最近では電卓,電子時計あるいは、液晶ディスプレイ等にあっては、裸のICチップをガラス基板上の電極に直付けして実装面積の効率的使用を図ろうとする動きがあり、半田付けに代わる有効かつ微細な電気的接続手段が強く望まれている。裸のICチップを基板の電極と電気的に接続する方法としては、ボールボンディング法によりICチップの電極パッド上に形成した突出接点(バンプ)を用いたものが知られている。既知の突出接点の形成方法としては、・・・ICチップの電極パッド上にボールボンディング法を用いてボールを固着させ、その後ボールのネック部で金属ワイヤを引きちぎることにより突出接点を形成しようとする方法が提案されている。」(1頁右下欄2行〜2頁左上欄2行)
(2b)「しかしながら、かかる方法においては、金属ワイヤを固着したボール上方でクランプして引きちぎることによりワイヤを破断させて形成するというものである。このため金属ワイヤの切断箇所が一定せず、固着したボール上のワイヤの高さを一定に揃えることに困難さをともなうものであった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とする所は固着させたボールと一体に高さの揃った頂部を形成することにより均一な高さの突出部を備えた電気的接続接点を形成する方法を提供しようとするものである。」(2頁左上欄4〜15行)
(2c)「本発明の上記した方法によれば、固着した突起状接点の底部と一体に金属ワイヤからなる高さが揃った突起状接点の頂部を形成することから、均一な高さで安定した形状の2段状の突起部を備えた電気的接続接点を形成できることとなる。」(2頁右上欄10〜15行)
(2d)「電気的接続接点の形成方法について以下第1図、第2図、第3図を用いて説明する。
まず、第2図(a)に示すように・・・キャピラリ3の孔4に・・・金線を通し、その先端に・・・ボールを形成する。
次に第2図(b)に示すように前記金線5の先端に形成したボール6をキャピラリ3を介して半導体チップ1の入出力電極パッド2に当接し、・・・固着させて・・・突起状接点の底部7を形成する。
次に第2図(c)に示すように、前記した突起状接点の底部7とつながっている金線5をキャピラリ3の孔4に通した状態でキャピラリ3を第2図(d)のように突起状接点の底部7の上方で垂直方向にループ状軌道を描いて移動させる。つづいて第2図(e)のようにキャピラリ3を前記した突起状接点の底部7が固着されたものと同一の入出力電極パッド2に当接し、金線5を・・・固着切欠し突起状接点の底部7よりさらに・・・突出した逆U字型の形状の突起状接点頂部8を形成する。
上記方法によって形成した第1図に示す2段突出形状の電気的接続接点は、・・・高さのバラツキの少ないものが得られた。」(2頁左下欄10行〜右下欄17行)が記載され、第1図、第2図(e)には、突起状接点の底部7が形成された出力電極パッド2上の開いている一方の側に金線を固着したことが示されている。

IV.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1に記載のワイヤボンディング方法とを対比すると、刊行物1に記載の「パッド4」、「ランド3」、「Auボール5」は、本件発明1の「第1導体(3a)」、「第2導体(4)」、「バンプ(6)」に相当するから、両者は、「第1導体と第2導体を有する回路基板に対し、前記第1導体上に1次ボンディングを行った後、前記第2導体上に2次ボンディングを行い、前記第1導体と前記第2導体間をワイヤボンディングする方法において、前記回路基板上に半導体チップがダイマウントされている状態で、前記第2導体上にボールボンディングを行ってバンプを形成し、前記1次ボンディングを行った後、前記バンプに対し前記第1導体側からワイヤをルーピングして前記バンプ上に前記2次ボンディングを行うワイヤボンディング方法。」の点で一致するものの、次の点で相違する。
本件発明1が、「ウェッジボンディングをバンプに対し第1導体と反対側の位置にて行」うのに対し、刊行物1に記載のワイヤボンディング方法はこの点が記載されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
刊行物2には、ICチップ上の入出力電極パッドの一方の側に、金線のボールを固着して突起状接点底部を形成し、つづいて金線をループ状に移動させて入出力電極パッドの他方の側に金線を固着切欠し、突起状接点の底部より突出した逆U字型形状の突起状接点頂部を形成したものが記載され、この逆U字型形状の突起状接点頂部の形成は、本件発明1のウエッジボンディングに相当するものである。
しかしながら、刊行物2に記載の突起状接点は、ICチップを基板の電極と電気的に接続するために、ICチップの電極パッド上に突出接点(バンプ)を形成したものであって、刊行物1に記載のAuボールように、予め基板上のランドにAuボールを形成しておき、その後ワイヤをAuボールに2次ボンディングするものとは対象が異なるものである。
また、刊行物2に記載の突起状接点は、均一な高さで安定した形状の突出部を備えた電気的接続接点を形成するために、逆U字型形状の突起状接点頂部を形成する、即ちウエッジボンディングするものであるが、そのウエッジボンディングする方向については何の記載もない。一方、刊行物1に記載のAuボールは、薄くなったランドに厚みのあるAuボールを形成することにより、ワイヤとAuボールとの接触面積を大きくすることができるようにしたものであって、刊行物1に記載のボール状バンプの形成と刊行物2に記載の突起状接点の形成との間に課題の共通性もない。
そうすると、刊行物2の記載が逆U字型形状の突起状接点頂部を形成するウエッジボンディングであっても、その後2次ボンディングすることの示唆がなく、ウエッジボンディングする方向も何も問われないものである以上、刊行物1に記載のランドのICチップ側に形成したAuボールを、本件発明1のように「ウエッジボンディングをバンプに対して第1導体と反対側の位置にて行う」ようにすることは当業者といえども容易には想到し得ないものである。
そして、本件発明1は、バンプ形成時テールの発生が抑制され、その結果、バンプ上に2次ボンディングを行う場合にテールの発生が抑制でき、接合強度が変化するという問題が生じることなく、又配線材料がAuワイヤと接合性の悪い材料であっても、配線上に直接ボンディングできるという刊行物1、2の記載からは予測することのできない、顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明6について
本件発明6は、請求項1を引用する発明であって本件発明1を全て含むとともに、さらに「第1導体は、半導体チップのボンディングパッドである」点を追加したものであるから、本件発明1が刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明6は、刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、その他の異議申立の理由及び証拠は、本件発明1、6を取り消すべき理由として採用することはできない。

V.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由によっては、本件請求項1、6に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、6に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-02-24 
出願番号 特願平8-266372
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 北島 健次  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 瀬良 聡機
市川 裕司
登録日 2002-08-30 
登録番号 特許第3344235号(P3344235)
権利者 株式会社デンソー
発明の名称 ワイヤボンディング方法  
代理人 伊藤 高順  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 加藤 大登  

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