• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 判示事項別分類コード:812 訂正する A23L
管理番号 1113881
審判番号 訂正2004-39289  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-08-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-12-17 
確定日 2005-02-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3561708号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3561708号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由
1.請求の要旨

本件審判の請求の要旨は、特許第3561708号発明(平成14年2月20日出願、平成16年6月4日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記(1)ないし(2)のとおり訂正することを求めるものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の第2行目に係る記載、「海老の尾部筋肉の縦方向圧潰強さが15〜355℃N/cm2」を、「海老の尾部筋肉の縦方向圧潰強さが15〜35N/cm2」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の第3行目に係る記載、「熱処理老」を、「熱処理海老」と訂正する。

2.当審の判断

(1)訂正事項1について
「海老の尾部筋肉の縦方向圧潰強さが15〜355℃N/cm2」なる記載は、圧潰強さの単位は、「N/cm2」であるのにも拘わらず、「℃N/cm2」となっているから、誤記であることは明らかである。
そして、本件発明の詳細な説明の段落【0008】の記載「そして本発明の海老加工食品は、筋肉組織が生活反応を失わない状態を維持している生鮮海老を、85℃乃至99℃の熱水に、熱処理した後の海老の尾部筋肉の縦方向圧潰強さが15〜35N/cm2となるに必要な時間の範囲で接触させて熱処理した後、直ちに冷却して熱処理海老を得・・・」、段落【0020】の記載「・・・特には、処理された海老の尾部筋肉から横方向に平行切断して採取した厚さ5±0.2mmの試料の、平行板型加圧試験機による室温、特には22〜27℃での縦方向圧潰強さが、前記試料の断面積1cm 2当たり15〜35Nとなるに必要な時間の範囲で、接触させるのがよい。・・・」、段落【0029】の記載「・・・海老の尾部筋肉の縦方向圧潰強さ(N/cm2 )が15〜35、特に20〜30の範囲内となるように熱処理した海老が、最も美味しく、海老加工食品の原料とするに最も適していることが分かった。・・・」、段落【0041】の記載「本発明の海老加工食品は、活甘海老を85℃乃至99℃の熱水に、熱処理した後の海老の尾部筋肉の縦方向圧潰強さが15〜35N/c2mとなるに必要な時間の範囲で接触させて熱処理した後、直ちに冷却して熱処理甘海老を得、・・・」によれば、これが、「15〜35N/cm2」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項が、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、「熱処理老」の誤記を「熱処理海老」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項が、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

また、訂正後の特許請求の範囲に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3.むすび

以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第126条第1項及び3乃至5項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
海老加工食品およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋肉組織が生活反応を失わない状態を維持している生鮮甘海老を、85℃乃至99℃の熱水に、熱処理した後の海老の尾部筋肉の縦方向圧潰強さが15〜35N/cm2となるに必要な時間の範囲で接触させて熱処理した後、直ちに冷却して熱処理海老を得、次いで該熱処理海老から頭部等の食用不適な部分を除去する処理と加熱又は冷却による処理とを含む加工を加えて、蛋白質含有量P、遊離グリシン含有量Gl、遊離プロリン含有量Prが、下記A及びBの各条件を同時に満足する尾部筋肉部分を主として含む加工食品とするに当たり、前記縦方向圧潰強さが、尾部筋肉から横方向に平行切断して採取した厚さ5±0.2mmの試料について、室温で平行板型加圧試験機により測定した値であることを特徴とする海老加工食品の製造方法。
A:0.05≦(Gl+Pr)/P≦0.09
B:0.3≦Pr/(Gl+Pr)≦0.5
【請求項2】
前記加工は、切断処理を含む加工である、請求項1に記載の海老加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記加工は、乾燥処理を含む加工である、請求項1又は2に記載の海老加工食品の製造方法。
【請求項4】
前記加工は、磨砕処理を含む加工である、請求項1乃至3のいずれかに記載の海老加工食品の製造方法。
【請求項5】
熱処理甘海老の尾部筋肉を主として含み、蛋白質含有量P、遊離グリシン含有量Gl、遊離プロリン含有量Prが、下記A及びBの各条件を同時に満足することを特徴とする海老加工食品。
A:0.05≦(Gl+Pr)/P≦0.09
B:0.3≦Pr/(Gl+Pr)≦0.5
【請求項6】
前記甘海老の殻部分を含有している、請求項5に記載の海老加工食品。
【請求項7】
形態が粉状品、粒状品、片状品又は塊状品である、請求項5又は6に記載の海老加工食品。
【請求項8】
形態が擂り身状品である、請求項5又は6に記載の海老加工食品。
【請求項9】
形態が練加工品である、請求項5又は6に記載の海老加工食品。
【請求項10】
形態が乾燥品である、請求項5乃至9のいずれかに記載の海老加工食品。
【請求項11】
形態が冷蔵品又は冷凍品である、請求項5乃至10のいずれかに記載の海老加工食品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生鮮海老を材料とした保存性の良い加工食品に関するものであり、さらに詳しくは、生鮮海老の蛋白質成分が変質を起こすことで起こる、海老本来の食味の経時的劣化を抑制できるうえ、味の優れた新規な海老加工食品と、上記の海老加工食品を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に魚介類のうちで海老やカニ等の甲殻類は、捕獲水揚げすると死後の生活反応の停止により死後硬直が起き、続いて組織の酸化が始まって硫化水素の発生による褐変現象が進み、さらに軟化を経て腐敗に到る現象が見られる。水産食品におけるこのような好ましくない劣化現象の発生を遅らせ、または防止するためには、一般的に、食品を冷凍保存する方法が採用されているが、海老、特に甘海老や桜海老などを生で食する場合では、解凍した後に海老の筋肉組織に含まれる結合水の1部がドリップを起こし、筋肉組織の軟化が進んでしまうため、冷凍は食味の劣化を防ぐのに必ずしも有効ではない、とされていた。
【0003】
また、甘海老などの生の海老を冷蔵しておいて、腐敗に到らないうちに食する場合でも、味の劣化の進行を防ぐ有効な方法がなく、その一方で生の海老を加熱して結合水を細胞組織に固定しようとすると、生の味が失われて風味を損なうこととなり、生の海老の保存管理は極めて困難とされていた。
【0004】
そこで本発明者は、捕獲直後の生鮮な状態を維持している海老を、85℃以上の熱水又は飽和水蒸気に短時間接触させて熱処理し、次いで該熱処理後直ちに冷却して、海老の尾部筋肉が不透明化し、且つ該尾部筋肉から横方向に平行切断して採取した厚さ5±0.2mmの試料の平行板型加圧試験機による室温での縦方向圧潰強さを、前記試料の断面積1cm2当たり15〜30Nとすることにより、それ以後の海老の品質劣化を抑制できることを発見し、こうして得た保存性のよい熱処理海老について特許出願している(特願2001-209154)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の熱処理海老は、生の味を長期に維持できるものではあるが、例えば干し海老などの、新鮮な海老と風味は異なるが日持ちは良好である海老加工品と比較すると、保存性の点では全く比較する対象にもなるものではなかった。
そこで本発明は、上記の熱処理海老の製造の手法を利用して、従来の海老加工品に比べて格段に良好な食味を持ち、且つ日持ちの点でも見劣りがしない、新規な海老加工食品およびその製造方法を提供することを目的とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することができる本発明の海老加工食品は、熱処理甘海老の尾部筋肉を主として含み、蛋白質含有量P、遊離グリシン含有量Gl、遊離プロリン含有量Prが、下記A及びBの各条件を同時に満足することを特徴とするものである。
【0007】
A:0.05≦(Gl+Pr)/P≦0.09
B:0.3≦Pr/(Gl+Pr)≦0.5
【0008】
そして本発明の海老加工食品は、筋肉組織が生活反応を失わない状態を維持している生鮮甘海老を、85℃乃至99℃の熱水に、熱処理した後の海老の尾部筋肉の縦方向圧潰強さが15〜35N/cm2となるに必要な時間の範囲で接触させて熱処理した後、直ちに冷却して熱処理海老を得、次いで該熱処理海老から頭部等の食用不適な部分を除去する処理と加熱又は冷却による処理とを含む加工を加えて、蛋白質含有量P、遊離グリシン含有量Gl、遊離プロリン含有量Prが、下記A及びBの各条件を同時に満足する尾部筋肉部分を主として含む加工食品とするに当たり、前記縦方向圧潰強さが、尾部筋肉から横方向に平行切断して採取した厚さ5±0.2mmの試料について、室温で平行板型加圧試験機により測定した値である、本発明の海老加工食品の製造方法によって得ることができる。
【0009】
A:0.05≦(Gl+Pr)/P≦0.09
B:0.3≦Pr/(Gl+Pr)≦0.5
【0010】
本発明の海老加工食品を製造するための原料となる海老は、甘海老であることが好ましいが、ボタン海老や車海老などの、食味の良好な海老などを組み合わせて用いることもできる。
【0011】
また、上記の原料として用いられる海老は、生鮮海老であることが必要であるが、特に筋肉組織が生活反応を失わない状態、すなわち活状態を維持しているものを熱処理することが好ましい。
【0012】
そして、熱処理海老の加工は、頭部等の食用不適な部分を除去する処理と加熱又は冷却による処理とを含むが、更に乾燥処理や磨砕処理などを含めることができ、これらの種々の処理を組み合わせて加工することにより、後述するような種々の形態の海老加工食品を得ることができる。
【0013】
本発明の海老加工食品の形態を、最初に使用材料の材質の観点から分類すると、頭部だけを除去した後の、尾部の筋肉部分と尾や殻の部分との全てを用いたもの、頭部と殻だけを除いたもの、頭部と殻と尾を除いて筋肉部分だけとしたものなどに分けることができる。そしてまた、加工食品の形状の観点から分類すると、海老の形状をそのまま保った有姿品、大きく切り分けられた塊状品、細かく切断された片状品又は粒状品、磨砕した擂り身状品などに、分けることができる。
【0014】
更に、これらの材料の材質と形状とを組み合わせて得られた海老加工食品は、そのまま冷凍した食品とした場合、解凍後に生状態の食品として利用するか、又は2次的な調理を経て他の調理食品用の材料などとして利用することができ、或いは温風や赤外線などを利用して加熱乾燥し、塊状や粒状の乾燥食品としてそのまま利用するか、又は細粒状や粉末状の乾燥食品として調味料、或いは常温保存型のインスタント調理食品の材料などに、好適に利用することができる。
【0015】
また、磨砕して得た擂り身状食品は、冷凍保存しておいて蒲鉾様の食品の材料とすることができ、或いは適宜の形状に成形して蒸しあげるか、焙って火を通すなどの調理をした調理済の食品とすることもできる。しかしながら、本発明の海老加工食品の形態はこれらの例示に限定されるものではなく、適宜に任意の形態の食品に加工して利用できることは言うまでもない。そしてまた、本発明の海老加工食品を保存し、又は流通させるときには、冷蔵品又は冷凍品とすることが好ましいことも、当然である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の海老加工食品の製造方法を説明する。本発明の海老加工食品は、前段階の熱処理海老を製造する工程と、後段階の熱処理海老を加工する工程とからなる。そこで先ず、熱処理海老を製造する工程を説明する。この前段階の工程は、基本的には本発明の先願に当たる特願2001-209154の明細書に記載された方法に準ずるものであり、生鮮海老を選別する第1工程と、該選別された生鮮海老を計量部と、加熱部と、冷却部とを含む熱処理装置により熱処理する第2工程と、更に必要に応じて一時貯留又は移送するために熱処理海老を冷蔵又は冷凍する第3工程とからなる。
【0017】
前記の第1工程における生鮮海老の選別は、本発明の海老加工食品の品質を確保すると共に、処理作業の効率化を図るために行うもので、目的とする海老以外のものの混入防止、鮮度が低い海老や頭部が黒化した海老などの熱処理による改質効果が低い原料の排除、熱処理効果の均一性を確保するための海老のサイズによる分別などを実施する。なお、こうした選別は、以後の各工程段階などでも、必要に応じて実施することが好ましいことは、言うまでもない。
【0018】
前記第2工程を実施する熱処理装置における計量部は、次段の加熱部を回分処理方式とすることが好ましいため、1回に処理する原料海老の仕込み量を計測することで、熱処理効果の均一性を高めるのに有効な装置である。そして加熱部は、例えば真水乃至塩水などの熱水を入れた熱処理槽に、蒸気を供給して85℃乃至99℃に加熱し、且つ攪拌も行うようにしたものが用いられ、特に槽内の熱水の温度を均一にするために、循環ポンプと循環パイプとを用いて熱水を循環させるように構成したものが好ましい。更に、この熱処理槽には多孔板などで形成されたバスケットなどを予め沈置しておき、投入された原料海老の熱処理が所定の時間行われた後に、一挙に掬い上げることができるようにすることが好ましい。
【0019】
また、加熱部の後に設けた冷却部は、例えば真水乃至塩水などの冷水を入れた冷却槽で、槽内の冷水の温度を均一にするために、循環ポンプと循環パイプとを用いて冷水を循環させるように構成したものが好ましい。この冷却槽内の温度は、熱処理された海老を急速に冷却するために、30℃以下であることが良く、20℃以下、更には10℃以下であることが特に望ましい。しかし、冷水の使用量に制限があるときは、冷却部に2個の冷却槽を設けてそれを直列に配置し、初段の冷却槽の温度を例えば40〜30℃程度に設定し、次段の冷却槽の温度を例えば20℃以下に設定することにより、こうした冷水の使用量を節減するようにしてもよい。更にこれらの冷却槽には、熱処理槽の場合と同様に、多孔板などで形成されたバスケットなどを予め沈置しておき、冷却された熱処理海老を一挙に掬い上げるようにしてもよい。
【0020】
上記のようにして海老を熱処理すると海老の筋肉組織が改質されるが、その改質の度合いは処理温度と処理時間によって決まるので、熱水または水蒸気等の加熱媒体と海老との接触時間は、加熱媒体の種類や温度、海老のサイズ、加熱媒体量と海老の量との割合等により、適宜に調整する必要がある。特には、処理された海老の尾部筋肉から横方向に平行切断して採取した厚さ5±0.2mmの試料の、平行板型加圧試験機による室温、特には22〜27℃での縦方向圧潰強さが、前記試料の断面積1cm2当たり15〜35Nとなるのに必要な時間の範囲で、接触させるのがよい。このような接触時間は、通常1分から5分程度の間であり、しかも海老の筋肉組織の温度が少なくとも70〜75℃に達するように選択するのが好ましい。
【0021】
こうして熱処理された海老は、処理後に冷水により直ちに冷却されるが、該冷却工程においては、海老の筋肉組織の温度が速やかに65℃以下、好ましくは55℃以下となり、必要以上に筋肉組織の改質が進まないようにすることが望ましい。しかし、熱処理した海老の保存には更に完全に冷却することが好ましいので、冷水の温度は25℃以下、さらには20℃以下であることがより好ましく、10℃以下であってもよい。そして、完全に冷却したのちに冷凍すると、改質された筋肉組織の性質を更に長期間にわたって維持させることができる。
【0022】
このようにして得られた熱処理海老は、筋肉組織が改質されると共に、筋肉組織に含まれる遊離アミノ酸の組成が変化して、生の筋肉組織より一段と美味しい味を示すようになる。そこで本発明では、後段階の加工工程において以下のように加工処理を加える。すなわち、上記の熱処理海老に対して、頭部等の食用不適な部分を除去する処理と加熱又は冷却による処理と、更に乾燥処理や磨砕処理などを含む加工を加えて、多様な用途に用いるのに適した種々の海老加工食品を得るものである。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の海老加工食品を、実施例に基づいて説明する。
(参考例)
捕獲後に1kg当たり90〜120尾のサイズに選別して、水槽に入れておいた活甘海老aと、その水槽からすくい上げた活甘海老aを、直ちに97℃の2%食塩水中に投入して、約1分間熱処理した後直ちに掬い上げ、10℃の冷水中に投入冷却して熱処理甘海老b1を製造し、また熱処理時間をそれぞれ2、4、8分間としたほかは全く同様に処理した熱処理甘海老b2、b4、b8を製造した。そして更に、これらの熱処理甘海老b1、b2、b4、b8のそれぞれから約半数を取り分けて、直ちに-30℃の冷凍庫で冷凍し、それぞれ冷凍熱処理甘海老c1、c2、c4、c8を製造すると共に、水槽からすくい上げた活甘海老aを直ちに-30℃の冷凍庫で冷凍して、冷凍甘海老dを製造し、これらを冷凍保管した。
【0024】
次いで、これらの活甘海老aと熱処理甘海老b1、b2、b4、b8との中からそれぞれ10尾を取り出し、それぞれの殻を剥いて海老の尾部筋肉を軸に対して略直角方向に切断し、厚さ5±0.2mmの筋肉試料を作成すると共に、その直径を測定した。続いて、この筋肉試料を平行板型加圧試験機(サン科学、COMPAC-100、円板状アダプタ使用)に挟み、厚さが50%になるまで縦方向に圧し潰す間における最大荷重値(N)を求め、筋肉試料の断面積1cm2当たりの縦方向圧潰強さ(N/cm2)を計算したうえ、10個の筋肉試料について得た圧潰強さの平均値を算出した。そして、その試験結果を表1に示した。
【0025】
一方、冷凍保管した前記の冷凍甘海老dをポリエチレンの袋に入れて、5〜10℃の流水中に約10分間程度浸漬して解凍した後に、その中から約20尾程度を試験用試料として取り分け、残りを前記と同様に97℃の2%食塩水中に投入して約2分間熱処理し、熱処理冷凍甘海老e2を製造した。この熱処理冷凍甘海老e2の約半数を製造直後に取り分けて、-30℃の冷凍庫で冷凍して再冷凍熱処理甘海老f2を製造し、冷凍保管するのと平行して、上記の解凍した冷凍甘海老dと熱処理冷凍甘海老e2とから、前記と同様にして海老の尾部筋肉から筋肉試料をそれぞれ作成し、圧潰強さを測定して、その試験結果を表1に示した。
【0026】
また、これまでに冷凍保管されていた冷凍熱処理甘海老c1、c2、c4、c8と、上記の再冷凍熱処理甘海老f2とからそれぞれ10尾を取り出し、前記と同様にして解凍した後に、前記と同様にして海老の尾部筋肉から筋肉試料をそれぞれ作成し、圧潰強さを測定して、その試験結果を表1に示した。
【0027】
更に、上記の各甘海老a、b1、b2、b4、b8、c1、c2、c4、c8、d、e2、f2について、それぞれの尾部筋肉を試料として食品としての成分分析を行い、蛋白質含有量P、遊離グリシン含有量Gl、遊離プロリン含有量Prを測定し、これらの平均値から、(Gl+Pr)/Pの値と、Pr/(Gl+Pr)の値とを算出した。その一方で、5人の評価者によりそれぞれの尾部筋肉の味を評価し、その結果を平均して、秀、優、良、可、不可の5段階に整理した。これらの結果も表1に併せて示した。
【0028】
また比較のための海老として、生鮮なブラックタイガーとシマエビとを、それぞれ前記と同様に97℃の2%食塩水中で約2分間熱処理して、熱処理海老g及び熱処理海老hを製造し、上記と同様に尾部筋肉をついての成分分析を行うと共に味の評価を行い、結果を平均して、秀、優、良、可、不可の5段階に整理した。これらの結果も表1に併せて示した。
【0029】
表1を見ると、生鮮甘海老を熱処理して得た熱処理甘海老b1、b2、b4及び熱処理して冷凍保存した冷凍熱処理甘海老c1、c2、c4は、無処理の活海老aよりも、筋肉組織中の遊離アミノ酸であるグリシンの含有量が減少し、プロリンの含有量が増加しており、海老の尾部筋肉の縦方向圧潰強さ(N/cm2)が15〜35、特に20〜30の範囲内となるように熱処理した海老が、最も美味しく、海老加工食品の原料とするに最も適していることが分かった。その一方、冷凍した甘海老dを解凍し熱処理した熱処理冷凍甘海老e2及び当該熱処理冷凍甘海老e2を再冷凍した再冷凍熱処理甘海老f2は、遊離アミノ酸の含有量が増加していても、グリシンの含有量の増加に対してプロリンの含有量が低下し、味も低下している。熱処理による旨味の向上効果は活甘海老に対して特異的なものであり、一旦冷凍処理をした甘海老に対しては熱処理による効果がなく、また熱処理による効果は、その後の冷凍と解凍によっても余り影響を受けないことも分かった。
【0030】
【表1】

【0031】
(第1実施例)
参考例で用いた活甘海老aと、参考例で製造した冷凍甘海老d、及び冷凍熱処理甘海老c2とを原料として、それぞれ頭部と殻と尾とを除いて尾部の筋肉だけを残す加工を加え、それぞれ対照品の海老加工食品A*、B*、及び本発明品の海老加工食品Cを製造した。これらの海老加工食品の性状は表2に示す通りであって、本発明の海老加工食品Cは対照品の海老加工食品A*、B*に比べて味が優れている。また、長時間保存するときには、それぞれ2次加工としての冷凍加工を行うことができ、種々の料理などの調理用材料として利用することができる。
【0032】
(第2実施例)
第1実施例と同じく、活甘海老a、冷凍甘海老d、及び冷凍熱処理甘海老c2とを原料として、それぞれ頭部と殻と尾とを除いて尾部の筋肉だけを残す加工を加え、これを40℃の乾燥温風を流した温風乾燥機の棚の上に並べて乾燥させ、それぞれ対照品の海老加工食品D*、E*、及び本発明品の海老加工食品Fを製造した。これらの海老加工食品の性状は表2に示す通りであって、本発明の海老加工食品Fは、対照品の海老加工食品D*、E*に比べて味が優るとも劣らないものである。そして長期間の保存に適し、種々の料理などに用いる材料や、調味料などとして利用することができる。
【0033】
(第3実施例)
第2実施例で用いた、冷凍甘海老d及び冷凍熱処理甘海老c2を原料として、それぞれ頭部と殻と尾を除去して尾部の筋肉だけを残し、これを80℃の乾燥熱風を流した熱風乾燥機の棚の上に並べて乾燥させ、それぞれ対照品の海老加工食品G*、及び本発明品の海老加工食品Hを製造した。これらの海老加工食品の性状は表2に示す通りであって、本発明の海老加工食品Hは対照品の海老加工食品G*に比べて味が優れている。そして長期間の保存に適し、料理用材料や調味料、おつまみなどとして利用するのに好適なものである。
【0034】
(第4実施例)
第3実施例と同様に、冷凍甘海老d及び冷凍熱処理甘海老c2を原料として、それぞれ頭部と殻と尾を除去して尾部の筋肉だけを残し、これを厚さ5mm程度に細切りとして、40℃の乾燥温風を流した温風乾燥機の棚の上に並べて乾燥させ、それぞれ対照品の海老加工食品I*、及び本発明品の海老加工食品Jを製造した。これらの海老加工食品の性状は表2に示す通りであって、本発明の海老加工食品Jは、対照品の海老加工食品I*に比べて味が優れている。そして長期間の保存に適し、料理用材料や調味料、特におつまみなどとして利用するのに好適なものである。
【0035】
(第5実施例)
第4実施例で用いた冷凍熱処理甘海老c2を原料として、頭部を除去して殻付きの尾部の筋肉を残した。これを厚さ5mm程度に細切りして、40℃の乾燥温風を流した温風乾燥機の棚の上に並べて乾燥させ、本発明品の海老加工食品Kを製造した。この本発明の海老加工食品Kは、その性状が表2に示す通りであって、味が優れていて長期間の保存に適し、料理用材料や調味料として用いるのに適するほか、カルシウム等の補給にも有効であり、特におつまみやおやつなどとして用いるのに好適なものである。
【0036】
(第6実施例)
第5実施例と同様に冷凍熱処理甘海老c2を原料として、頭部を除去して殻付きの尾部の筋肉を残した。これを40℃の乾燥温風を流した温風乾燥機の棚の上に並べて乾燥させ、本発明品の海老加工食品Lを製造した。この本発明の海老加工食品Lは、その性状が表2に示す通りであって、味が優れていて長期間の保存ができ、料理用材料や調味料として用いるのに適するほか、カルシウム等の補給にも有効であり、おつまみやおやつなどとして用いるのにも適している。
【0037】
(第7実施例)
第5実施例と同様に冷凍熱処理甘海老c2を原料として、頭部を除去して殻付きの尾部の筋肉を残した。これを80℃の乾燥熱風を流した熱風乾燥機の棚の上に並べて乾燥させ、更に粉砕機により微粉砕して、本発明品の粉末状の海老加工食品Mを製造した。この本発明の海老加工食品Mは、その性状が表2に示す通りであって、味が優れていて長期間の保存ができ、料理用材料、特に調味料やふりかけ等として用いるのに適しており、カルシウム等の補給にも有効である。
【0038】
(第8実施例)
第7実施例で用いた冷凍熱処理甘海老c2を原料として、頭部と殻と尾を除去して尾部の筋肉のみを残し、これを適宜の大きさに刻んだ後、擂潰装置に投入して擂り潰し、擂り身状の本発明品の海老加工食品Nを製造した。この海老加工食品Nは、その性状が表2に示す通りで味が優れており、団子状などに纏めるなどして、蒸すか焙ることにより、蒲鉾状や、はんぺん状の食品とすることができ、特に料理用材料などに適しているばかりでなく、多種の食品を製造するための原料として利用することもできる。
【0039】
(第9実施例)
第4実施例で製造した、冷凍甘海老dを原料とした対照品の海老加工食品I*と、冷凍熱処理甘海老c2を原料とした本発明品の海老加工食品Jとを、略等量となるよう配合し、粉砕機を用いて微粉砕すると共に均一に混合して、本発明品の海老加工食品Oを製造した。この海老加工食品Oは、その性状が表2に示す通りであって、味がよくて長期の保存に適し、料理用材料や調味料などとして利用するのに好適な食品である。
【0040】
【表2】

【0041】
【発明の効果】
本発明の海老加工食品は、活甘海老を、85℃乃至99℃の熱水に、熱処理した後の海老の尾部筋肉の縦方向圧潰強さが15〜35N/cm2となるに必要な時間の範囲で、接触させた後直ちに冷却して熱処理甘海老を得、これを原料として加工を加えて製造したものであり、海老の筋肉が最も美味となる条件で熱処理したので、筋肉に含まれる遊離のアミノ酸の組成が特殊な範囲内にあることが特徴である。そして本発明の海老加工食品の製造方法は、活きた甘海老が有する本来の味よりも更にコクが加わった独特の食味を備え、しかも長期間にわたって劣化することがない、従来の海老加工食品とは比較にならないほど優れた新規な海老加工食品を、品質の揃った加工食品として量産できる、という優れた効果を現すものである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-01-25 
出願番号 特願2002-43661(P2002-43661)
審決分類 P 1 41・ 812- Y (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福井 悟  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
田中 久直
登録日 2004-06-04 
登録番号 特許第3561708号(P3561708)
発明の名称 海老加工食品およびその製造方法  
代理人 橘 哲男  
代理人 橘 哲男  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ