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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1113933
審判番号 不服2003-7118  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-09-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-25 
確定日 2005-03-14 
事件の表示 平成 6年特許願第 51152号「軸移動型モーター」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 9月 5日出願公開、特開平 7-236250〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年2月23日の出願であって、平成15年3月13日付けで拒絶査定がなされ、平成15年4月25日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年5月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年5月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成15年5月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の明細書における特許請求の範囲の請求項1は、
「軸方向に中空のモーター軸に対し、該モーター軸の中空内の内周面に軸方向に向かう螺旋溝を有する樹脂材料製の筒状の駆動部材を圧入または接着により固定させることにより該駆動部材を前記モーター軸と一体に回転可能とさせ、更に、前記駆動部材の螺旋溝と係合する突条を外周に有する移動軸を前記駆動部材内を通るように配置させることにより、前記モーター軸、駆動部材内を通るように配置させることにより、前記モーター軸、駆動部材及び/又は移動軸の製造及び/又は組み立てを容易とすると共に、前記モーター軸の正逆回転に従って前記移動軸を軸方向に正逆移動させることを特徴とする軸移動型モーター。」
と補正された。
これは、補正前の請求項1に記載した発明の構成事項である「筒状の駆動部材」を、「樹脂材料製の筒状の駆動部材」に、同じく「固定」を、「圧入または接着により固定」に限定するものであり、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用発明
ア.原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開昭56-81058号公報(昭和56年7月2日公開、以下「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「第1図は原理図で、1は固定子で、例えば永久磁石が用いられ、2がコイルを巻装した回転子で、回転円筒3の外周に固定され、永久磁石1との電磁力作用によって回転する。回転円筒3は固定部4とベアリング5結合して回転自在に支持される。6は回転円筒3内に挿入固定されたナットで、円筒3とともに回転制御される。7はナット6内に挿入係合した送りネジで、このナット6とネジ7によって回転を直線運動に変換する。8は回転円筒3と回転ナット6との結合部に形成した圧力媒体ポケットで、油圧、弾性材等の圧力媒体が充満されナット6とネジ7の係合状態を調整する。」(1頁右下欄8〜20行)

(イ)「円筒3の回転によってこれに取付固定されたナット6が回転し、この回転に伴って係合する送りネジ7が軸方向に直線移動する。このネジ7の移動を機械装置のスピンドル等に伝達することによって送り制御をする。」(2頁左上欄13〜17行)

イ.引用文献に記載のものにおいては、送りネジ7の直線移動の送り制御をしていることから、回転円筒3及びナット6が正逆回転し、送りネジ7を正逆移動させることは明らかである。

ウ.以上から、引用文献には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「軸方向に中空の回転円筒3に対し、該回転円筒3の中空内の内周面に軸方向に向かう螺旋溝を有する筒状のナット6を固定させることにより該ナット6を前記回転円筒3と一体に回転可能とさせ、更に、前記ナット6の螺旋溝と係合する突条を外周に有する送りネジ7を前記ナット6内を通るように配置させることにより、前記回転円筒3、ナット6内を通るように配置させることにより、前記回転円筒3の正逆回転に従って前記送りネジ7を軸方向に正逆移動させる軸移動型モーター。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、後者の「回転円筒3」、「ナット6」、「送りネジ7」は、前者の「モーター軸」、「駆動部材」、「移動軸」にそれぞれ相当することから、両者は、
「軸方向に中空のモーター軸に対し、該モーター軸の中空内の内周面に軸方向に向かう螺旋溝を有する筒状の駆動部材を固定させることにより該駆動部材を前記モーター軸と一体に回転可能とさせ、更に、前記駆動部材の螺旋溝と係合する突条を外周に有する移動軸を前記駆動部材内を通るように配置させることにより、前記モーター軸、駆動部材内を通るように配置させることにより、前記モーター軸の正逆回転に従って前記移動軸を軸方向に正逆移動させる軸移動型モーター。」
である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
本願補正発明においては、駆動部材は樹脂材料製であり、モーター軸との固定は圧入又は接着によりなされており、モーター軸、駆動部材及び/又は移動軸の製造及び/又は組み立てを容易とされているのに対し、引用発明においては、そのような特定がされていない点。

(4)判断
ア.引用発明においては、駆動部材(ナット6)の材料についての特定はされていない。
しかしながら、一般に、部材の材質を樹脂材料製とすることは、ごく周知慣用の技術に過ぎない。しかも、原査定の拒絶の理由にも引用された実願平4-36382号(実開平5-96605号)のCD-ROMにも、引用発明及び本願補正発明と同じく、モーターの回転子とともに回転して、その内周に形成されたらせん条が、内部を挿通する軸のらせん条とネジ係合する部材(ナット2)を備えるものにおいて、該部材を樹脂材料製とすることが例示されるように、引用発明における駆動部材(ナット6)を本願補正発明のように樹脂材料製とすることに格別の創意工夫を要するとは認められない。

イ.また、引用発明においては、駆動部材(ナット6)とモーター軸(回転円筒3)との固定手段については特定されていない。
しかしながら、引用発明においては、上記2(2)ア(ア)のとおり、駆動部材(ナット6)はモーター軸(回転円筒3)内に挿入固定されており、一般に、部材を挿入固定するに際して、圧入又は接着することは、ごく周知慣用の技術に過ぎない。
しかも、原査定の拒絶の理由にも引用された実願昭53-79644号(実開昭54-180213号)のマイクロフィルムにも、引用発明及び本願補正発明と同じく、モーターの回転子とともに回転して、その内周に形成されたらせん条が、内部を挿通する軸のらせん条とネジ係合する部材(雌ネジ軸4)を備えるものにおいて、該部材を圧入により固定することが例示されている。さらに、樹脂材料性の部材を固定する場合には、接着によることが最も通常の固定方法である。
これらを考慮すると、引用発明における駆動部材(ナット6)をモーター軸(回転円筒3)に、本願補正発明のように、圧入又は接着により固定することに格別の創意工夫を要するとは認められない。

ウ.また、装置の設計に当たって、材料や固定方法については、製造や組み立てが容易になるように、適宜選択することは当然のことに過ぎない。
以上のとおり、本願補正発明のように、駆動部材は樹脂材料製であり、モーター軸との固定は圧入又は接着によりなされており、モーター軸、駆動部材及び/又は移動軸の製造及び/又は組み立てを容易とすることは、当業者であれば、適宜、なし得る程度の設計的事項に過ぎないものと認められる。

エ.なお、審判請求人は、引用文献に記載のものについて、引用文献に記載のものは、回転円筒3とナット6との間に圧力媒体ポケット8を設けたものであり、本願補正発明においては、そのような構成を備えるものではない旨の主張をしている。(平成15年7月7日付けの審判請求の理由の補正書第4頁)
しかしながら、本願補正発明においては、請求項1のとおり、駆動部材とモーター軸との間にポケット等を設けたものを排除するものとはされておらず、上記主張に理由はない。さらに、引用文献に記載のものにおいて、圧力媒体ポケットを設けているのは、ナット6と送りネジ7との係合状態を調整可能とするために工夫がなされているもので、そのような効果を必要としないのであれば、圧力媒体ポケットを設けないものとして設計することは、例えば、原査定の拒絶の理由にも引用された特開平1-311844号公報に、引用発明及び本願補正発明と同じく、モーターの回転子とともに回転して、その内周に形成されたらせん条が、内部を挿通する軸のらせん条とネジ係合する部材(ナット10)を備えるものにおいて、駆動部材に相当する該部材(ナット10)とモーター軸に相当するローターシャフト4との間に圧力媒体ポケットを設けることなく、互いに嵌合して形成したものが開示されているように、当然になし得ることに過ぎないものである。

オ.そして、本願補正発明の全体の作用効果としても、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)以上のとおり、平成15年5月22日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成15年2月14日付け手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。
「軸方向に中空のモーター軸に対し、該モーター軸の中空内の内周面に軸方向に向かう螺旋溝を有する筒状の駆動部材を固定させることにより該駆動部材を前記モーター軸と一体に回転可能とさせ、更に、前記駆動部材の螺旋溝と係合する突条を外周に有する移動軸を前記駆動部材内を通るように配置させることにより、前記モーター軸、駆動部材及び/又は移動軸の製造及び/又は組み立てを容易とすると共に、前記モーター軸の正逆回転に従って前記移動軸を軸方向に正逆移動させることを特徴とする軸移動型モーター。」

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献には、上記2(2)のとおりのものが記載されている。

(3)対比、判断
本願発明補正発明は、本願発明を限定したものであり、本願補正発明が、上記のとおり、引用文献に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-18 
結審通知日 2005-01-20 
審決日 2005-02-01 
出願番号 特願平6-51152
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 岩本 正義
安池 一貴
発明の名称 軸移動型モーター  

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