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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1114064
審判番号 不服2004-10225  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-05-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-14 
確定日 2005-03-18 
事件の表示 平成10年特許願第310459号「軒樋継手」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月16日出願公開、特開2000-136608〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年10月30日の出願であって、平成16年4月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年9月24日付けで当審より拒絶の理由が通知され、同年11月29日受付けで手続補正がなされた。
本願の請求項1に係る発明は、平成16年11月29日受付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりものと認める。
「接続される軒樋の内周面とほぼ同じ形状の外周面を有する軒樋接続部が両端部に設けられた軒樋継手において、前記軒樋接続部には、軒樋の長さ方向に直交して、底部と側壁部の外周全長にわたって接着剤が塗布される窪部が設けられ、この窪部の幅は、コーナー部が他の部分より幅広になされていることを特徴とする軒樋継手。」
(以下、「本願発明」という。)

【2】本願出願前に頒布された刊行物に記載された事項
(1)当審の拒絶の理由に引用された、実願平4-46003号(実開平6-1553号)のCD-ROM(以下、「刊行物1」という。)には次の記載がある。
「【請求項1】連接せんとする軒樋Cの外周面と内周面を略同じくする外継手本体1の両側部に耳縁保持部2を設けてなる外装継手Aと、上記軒樋Cの内周面と外周面を略同じくする内継手本体3の外周面に幅方向に沿う溝4を少なくとも2条刻設するとともに該溝4上に接着剤Dを注入すべき注入孔5および該接着剤を排出すべき排出孔6を各々穿設してなる内装継手Bとからなる軒樋継手。」、
「【0001】
【産業上の利用分野】本考案は軒樋継手、特に、内外装継手をもって軒樋の接合部を挟着し、内外両面からの接着により固定し得るようになした軒樋継手に係るものである。」、
「【0007】
【作用】本考案の軒樋継手は内外装継手で軒樋を挟着する軒樋継手において、少なくとも内装継手の内継手本体の外周面に幅方向に沿う溝を少なくとも2条刻設するとともに該溝上に接着剤を注入すべき注入孔および該接着剤を排出すべき排出孔を各々穿設してなる構成よりなり、上記注入孔に接着剤を充填してなるチューブのノズルを嵌入して該接着剤を注入することにより該接着剤が接着を必要とする溝部に流入されるため、軒樋を接合した後に必要な箇所に必要な量の接着剤を塗布することができる。」、
「【0010】図中、Bは上記軒樋Cの内周面に当接される内装継手であって、外周面が該軒樋Cの内周面と略同じくなるように形成された内継手本体3の外周面に幅方向に沿う溝4を少なくとも2条刻設するとともに該溝4上に接着剤Dを注入すべき注入孔5および注入された余剰の接着剤Dを排出すべき排出孔6を各々穿設してなるものである。
【0011】上記注入孔5は図1に示すように内装継手Bの底板の略中央部に位置するように穿設され、また、上記排出孔5は両側壁の上端部近傍に位置するように各々穿設されている。」
「【0013】尚、図中、符号7は内継手本体3の裏面略中央部に幅方向に沿うように穿設されたストッパーであって、連接せんとする軒樋Cの当接の用に供されるものである。」。
また、図1を参照すると、側壁の上端部近傍に溝4上に穿設された排出孔6があることから、溝4は両側壁の上端部近傍にわたって刻設されており、図4を参照すると、内継手本体3は、両端に、二つの軒樋Cが接続される部分を有することが示されている。
上記記載から刊行物1には、図面とともに以下の発明が記載されていると認められる。
「連接せんとする軒樋Cの内周面とほぼ同じ形状の外周面を有する内継手本体3の軒樋Cが接続される部分が両端部に設けられた軒樋継手において、前記軒樋が接続される部分には、軒樋の長さ方向に直交して、底板と両側壁の上端部近傍にわたって接着剤が注入・塗布される外周面に沿う溝4が設けられている軒樋継手。」
(2)同じく、特開平8-27969号公報(以下、「刊行物2」という。)には次の記載がある。
「【請求項2】略直角状に折曲され、両端に軒といを差し込んで接続するとい曲りの接続部構造に於て、差込み端部の内周面に隙間を設けて配置した押え板の隅部分に、内方に突出した膨出部を差込み方向に、形成してなる、軒とい継手の接続部構造。」、
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は軒といの隅部での接続に使用するとい曲り、あるいは軒とい同士を接続する継手などの雨といの接続部構造に関するものである。」、
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記したような従来よりの接続方法では、とい曲りの端部内周面に塗布されたシ-ル剤のが十分に回らず、接続施工に支障をきたすことがあった。すなわち塗布するシール剤の量がばらつくため、部分によっては軒といとの隙間を十分満たしきれず、隙間を生じて水漏れを起こすことがあり、特に隅部分はシ-ル剤の量が不足しがちだった。そのため隅部分では特に注意深くシ-ル剤を塗布する必要があり、このため施工には手間が掛かるものであった。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記したような課題を解決するため、本願に係る雨といの接続部構造は、とい曲がりに適用した時、接続部分に配置した押え板に、シ-ル剤等の溜り部を形成することにより、塗布したシ-ル剤の調整するものである。すなわち押え板の隅角部分などに内方に膨出した溜り部を、軒とい差込み方向に形成して課題の解決を図るものである。
【0006】
【作用】このように押え板に設けた溜り部によってシ-ル剤の量が十分となり、軒といを差し込んだときにそのシ-ル剤が押し出されて不十分だった箇所に回り、接続施工の際に接着剤が不足して水漏れを起こすこともなくなるものである。すなわち軒といととい曲りの隙間にシ-ル剤が十分に充填でき、水漏れも起こさずその機能を十分に果たせるものである。」、
「【0009】また押え板2の折曲した隅部分には一端が開口したビ-ド状の溜り部22が内面に膨出して複数個設けられており(図2)、この溜り部22の断面は高さ2mm幅5mm程度の半円形状となっている。なお、この溜り部22の断面形状は図示例に限定されるものではなく加工上の問題を考慮して適宜に設計できるものである。この溜り部22を設ける場所は、底板12と側板11の隅部や、側板12を折曲して形成した段差部分などの隅部に軒といの流れ方向に沿って差込み部21の長さと同程度(図示例では20mm程度)に形成するのが適当である。
【0010】接続するに際しては押え板2と本体1の隙間の差込み部21に図1に示す如くシ-ル剤Eを塗布し、その後軒といDを差し込んで接続するものである。(図3)この時シ-ル剤Eは溜り部22の内部にまで充填され、軒といDを差し込めば隙間を十分に充填され、水漏れ等の恐れもなく確実に接続施工できるものである。
【0011】すなわちこの溜り部22に溜ったシ-ル剤が、軒といを差し込むことにより押し出されて足りなくなり易い隅部まで十分に回り、確実にシ-ル効果を発揮出来るものとなる。」。

【3】対比・判断
(1)本願発明と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明の「連接せんとする」、「内継手本体3の軒樋Cが接続される部分」、「底板」、「側壁」、「溝4」は、本願発明の「接続される」、「軒樋接続部」、「底部」、「側壁部」、「窪部」にそれぞれ相当するから、両者は、「接続される軒樋の内周面とほぼ同じ形状の外周面を有する軒樋接続部が両端部に設けられた軒樋継手において、前記軒樋接続部には、軒樋の長さ方向に直交して、底部と側壁部の外周に接着剤が塗布される窪部が設けられた軒樋継手。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明の窪部が、外周全長にわたって設けられているのに対し、刊行物1記載の発明は、底部と側壁部の上端部近傍にわたって設けられている点。
[相違点2]
本願発明の窪部の幅は、コーナー部が他の部分より幅広になされているのに対し、刊行物1記載の発明はそのような構成を有しない点。
(2)上記相違点について検討する。
[相違点1]について
刊行物1記載の発明の窪部も上端部近傍にわたって設けられているものであり、軒樋と軒樋継手の接続部からの漏水を考慮し、外周全長にわたって窪部を設けることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

[相違点2]について
刊行物2には、押え板2の折曲した隅部分には一端が開口したビード状の溜り部22が内面に膨出して設けられており(本願発明の「他の部分より幅広になされている」に相当)、溜り部22に溜ったシール剤(同「接着剤」に相当)が、軒といを差し込むことにより押し出されて足りなくなり易い隅部まで十分に回り、確実にシール効果を発揮出来る発明が開示されており、刊行物1記載の発明の窪部のコーナー部に、刊行物2記載の「他の部分より幅広になされている」点を適用し、本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは、刊行物1、2記載の発明が共に、軒樋継手という同一の技術分野に属するものであるから、何ら困難性はなく、当業者が容易に想到することにすぎない。
なお、仮に、刊行物1記載の発明が、接着剤を注入孔5から注入するものであり、塗布するものでないとしても、注入にかえて接着剤を塗布することは、当業者が容易に想到する程度の事項にすぎない。
そして、本願発明が奏する作用効果も刊行物1、2記載の発明から当業者が予測しうる範囲を超えるような格別な作用効果を奏するものではない。

【3】むすび
以上のように、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-14 
結審通知日 2005-01-19 
審決日 2005-02-01 
出願番号 特願平10-310459
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渋谷 知子  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 南澤 弘明
斎藤 利久
発明の名称 軒樋継手  

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