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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1114135
審判番号 不服2002-20843  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-07-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-28 
確定日 2005-03-22 
事件の表示 平成10年特許願第276296号「適応的な通信のフォーマット化」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月13日出願公開、特開平11-191789〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年9月30日(パリ条約による優先権主張 1997年9月30日 (US)アメリカ合衆国)の出願であって、平成14年7月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年10月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成14年11月27日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年11月27日付けの手続補正についての検討
[結論]
平成14年11月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】通信網を介してデータを送信するための方法であって、
該データについてのデータの種類を自動的に識別するステップと、
該識別されたデータの種類を用いて、複数のトランスコーディング技法および複数のエラー制御スキームの中から1つのトランスコーディング技法および1つのエラー制御スキームを自動的に選択するステップと、
該選択されたトランスコーディング技法を用いて該データを符号化するステップと、
該トランスコーディング技法により符号化されたデータに対して、該符号化されたデータにエラー制御情報を付加する該選択されたエラー制御スキームを適用するステップとを含むことを特徴とする方法。」と補正された。
本件補正は、「データのタイプを判別するステップ」を、「データの種類を自動的に識別するステップ」と限定するものを含むが、このような限定は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件補正は、「トランスコーディング技法及びエラー制御スキームを選択するステップ」を、「1つのトランスコーディング技法および1つのエラー制御スキームを自動的に選択する」と限定するものを含み、このような限定は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、本件補正は、「該選択されたエラー制御スキームを、該符号化されたデータに適用するステップ」を、「該トランスコーディング技法により符号化されたデータに対して、該符号化されたデータにエラー制御情報を付加する該選択されたエラー制御スキームを適用するステップ」と限定するものを含むが、このような限定は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内になされたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-245600号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】 要求される品質あるいは容量の異なる複数の種類のディジタル信号を同一伝送路で伝送する場合の信号に施す誤り訂正方式であって、
信号の種類を識別する手段と、
伝送する信号の種類に応じて、異なる誤り訂正符号を選択する手段とを設けたことを特徴とする誤り訂正方式。
【請求項2】 リアルタイム性を要求される信号とリアルタイム性を要求されないディジタル信号を同一伝送路で伝送する場合に、信号に施す誤り訂正方式において、
当該信号がリアルタイム性を要求されるものであるか否かを識別する手段と、
リアルタイム性を要求される信号に対しては符号化利得の大きい誤り訂正を施し、リアルタイム性を要求されない信号に対しては符号化効率の大きい誤り訂正を施す手段とを設けたことを特徴とする誤り訂正方式。
【請求項3】 画像通信信号とデータ転送信号を同一伝送路で伝送する場合に、信号に施す誤り訂正方式において、
当該信号が画像通信信号であるかデータ転送信号であるかを識別する手段と、
画像通信に対しては符号化利得の大きい誤り訂正を施し、データ転送信号に対しては符号化効率の大きい誤り訂正を施す手段とを設けたことを特徴とする誤り訂正方式。」(第2頁第1欄第2行〜第25行)

ロ.「【0029】
【作用】図1は本発明の基本的構成を示す図である。以下、同図に基づいて、本発明の作用について説明する。
【0030】同図において送信側110では、送信すべき情報信号111を信号種類識別回路112によって識別する。この出力である信号種類識別信号113を誤り訂正符号器114に転送し、誤り訂正符号器は、信号種類識別信号に従って誤り訂正符号を選択のうえ、符号化を行ない、符号化信号115を出力する。復号側120では、受信符号化信号121は、誤り訂正復号器122での誤り訂正符号を認識し、誤り訂正復号を行ない復号信号123を出力する。」(第4頁第6欄第23行〜第34行)

ハ.「【0051】一例として、ATMを用いたマルチメディア伝送について効果を説明する。ATMでは、信号を固定長のセルに分割して伝送し、その品質を評価する手段として、セル廃棄率がある。伝送する信号を音声、画像、データ転送の3種類のメディアに分類した場合、それぞれのメディアの要求するセル廃棄率は音声で10-3、画像で10-12、データ転送で10-8といわれる(参考文献;馬場健一他”ATM網におけるマルチチャネルを考慮した帯域管理方式の比較評価”電子情報通信学会論文誌B-I vol.J76-B-I No.3 pp231-238 1993年3月)。伝送路での誤り率が10-4であるとした場合、符号長63の符号の場合で、音声に1ビット誤り訂正、画像に5ビット誤り訂正、データ転送に3ビット誤り訂正符号がそれぞれ必要となる。」(第6頁第9欄第22行〜第36行)

ニ.図3には、情報ビットに冗長ビットを付加することが記載されている。

以上の記載を総合すると、引用例には、
「同一伝送路で情報信号を送信するための方法であって、送信すべき情報信号を信号種類識別回路によって識別し、信号種類識別信号によって、誤り訂正符号を選択し、音声に1ビット誤り訂正、画像に5ビット誤り訂正、データ転送に3ビット誤り訂正符号の冗長ビットを付加する方法」の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例に記載された発明」という。)

例えば、特開昭62-123843号公報(以下、「周知例1」という。)には、以下のことが記載されている。

イ.「第1図にこの発明の実施例を示し、第5図と対応する部分には同一符号を付けてある。この例では時分割多重通信装置内の符号化則を変更できる符号化部21として符号化則の異なる複数の符号器31〜3mを設けた場合であり、これら符号器31〜3mを切替スイッチ22で端末インタフェース回路12に切替え接続できるようにされる。端末インターフェース回路12に入力された信号は状態検出回路23でその信号の性質が検出され、この検出した性質に応じて制御回路24は切替スイッチ22を制御して、符号器31〜3m中のその入力信号の符号化に適した符号化則をもつものを端末インタフェース回路12に接続する。制御回路24は制御回線25を介して選択した符号器を示す制御信号を相手方時分割多重通信装置へ伝送し、相手方の制御回路26はその制御信号を受信し、これに応じて復号化部27中の切替スイッチ28を制御して復号化器41〜4mの1つを選択して端末インタフェース回路18に接続する。
符号化部21に設ける符号器としては、例えば64kb/s帯域分割適応差分パルス符号器(SB-ADPCM)、64kb/sPCM符号器、32kb/s可変量子化レベル符号器(VQL)、32kb/s適応差分パルス符号器(ADPCM)、16kb/s適応ビット割当適応予測符号器(APC-AB)、8kb/sベクトル量子化適応変換符号器(ATC-VQ)などが考えられる。これらに対し、入力される信号としては音楽信号又は高品質音声信号、通常の電話音声信号、14.4kb/sモデム信号、9.6kb/sモデム信号(高速ファクシミリ信号)、4.8kb/sモデム信号(ファクシミリ信号も含)などがあり、これら入力信号の性質に応じて符号器31〜3m の選択は例えば後記のように行う。
つまり通常の電話信号の場合は32kb/sADPCM又は16kb/sAPC-CBあるいは8kb/sATC-VQを用い、9.6kb/sモデム信号の場合は32kb/sVQLを用いる。通常の電話音声信号の場合これら三つの符号器の選択は要求される品質に応じて決定される。」(第2頁左下欄第3行〜右下欄第20行)

したがって、例えば、周知例1に示されるように、「入力信号の性質を状態検出回路で検出し、この検出した性質に応じて、複数の異なる符号化則の符号器の内、入力信号の符号化に適した符号化則を持つ符号器を選択して、符号化する」こと(以下、「周知技術1」という。)は、周知である。

(3)対比
本願補正発明と引用例に記載された発明を対比する。
ア)引用例に記載された発明の「伝送路」は、通信網の一つであり、本願補正発明の「通信網」に相当し、引用例に記載された発明の「情報信号」は、本願補正発明の「データ」に相当する。
イ)引用例に記載された発明の「送信すべき情報信号を信号種類識別回路によって識別」することは、ロ.の記載及び図1を見ると、自動的に識別していることが明らかであるから、前記ア)を考慮して、本願補正発明の「データについてのデータ種類を自動的に識別するステップ」に相当する。
ウ)引用例に記載された発明の「信号種類識別信号によって、誤り訂正符号を選択」することは、上記と同様、自動的に選択を行っており、引用例では、音声に1ビット誤り訂正、画像に5ビット誤り訂正、データ転送に3ビット誤り訂正と異なる誤り訂正を行っており、引用例の「誤り訂正」と、本願補正発明の「エラー制御スキーム」とは、エラー制御の方法の点で、一致するから、引用例に記載された発明の「信号種類識別信号によって、誤り訂正符号を選択」することと、本願補正発明の「識別されたデータの種類を用いて、複数のエラー制御スキームの中から1つのエラー制御スキームを自動的に選択するステップ」とは、「識別されたデータの種類を用いて、複数のエラー制御の方法の中から1つのエラー制御方法を自動的に選択するステップ」を有することで、一致する。
エ)引用例に記載された発明の「音声に1ビット誤り訂正、画像に5ビット誤り訂正、データ転送に3ビット誤り訂正符号の冗長ビットを付加する」における、引用例の「冗長ビット」が、本願補正発明の「エラー制御情報」に相当し、前記引用例に記載された発明の「音声、画像、データ転送」は、音声データ、画像データ、データ転送データのことであるから、前記ウ)を考慮すると、引用例に記載された発明の「音声に1ビット誤り訂正、画像に5ビット誤り訂正、データ転送に3ビット誤り訂正符号の冗長ビットを付加する」ことと、本願補正発明の「データに対して、エラー制御情報を付加する該選択されたエラー制御スキームを適用するステップ」とは、「データに対して、エラー制御情報を付加する該選択されたエラー制御の方法を適用するステップ」を有する点で、一致する。

してみれば、本願補正発明と引用例に記載された発明を比較すると、両者は、「通信網を介してデータを送信するための方法であって、
該データについてのデータの種類を自動的に識別するステップと、
該識別されたデータの種類を用いて、複数のエラー制御の方法の中から1つのエラー制御の方法を自動的に選択するステップと、
データにエラー制御情報を付加する該選択されたエラー制御の方法を適用するステップとを含むことを特徴とする方法」で一致し、以下の点で相違する。

[相違点a]
本願補正発明が、選択するステップが、更に、「識別されたデータの種類を用いて、複数のトランスコーディング技法の中から、1つのトランスコーディング技法を選択する」機能を有し、「該選択されたトランスコーディング技法を用いて該データを符号化している」ステップを持つのに対して、引用例には、それについての記載がない点。

[相違点b]
本願補正発明では、エラー制御の方法として、「エラー制御スキーム」を採用しているのに対して、引用例では、異なる「誤り訂正」を行っている点。

[相違点c]
本願補正発明では、エラー制御の方法を適用するステップにおいて、「トランスコーディング技法により符号化されたデータに対してエラー制御情報を」付加しているのに対して、引用例に記載された発明では、データに選択された誤り訂正符号のビットを付加している点。

(4)判断
[相違点a〜cについて]
引用例に記載された発明では、誤り訂正符号が付加されるデータ(音声・画像・動画等)は、デジタルデータであるから、誤り訂正符号が付加される前に、音声データであれば、ADPCM、PCM、画像データであれば、JPEGなどのデータ種別毎に選択された符号化処理(本願補正発明における「トランスコーディング技法」に相当)を行うことは、当業者が普通に行っていることであり、「入力信号の性質を状態検出回路で検出し、この検出した性質に応じて、複数の異なる符号化則の符号器の内、入力信号の符号化に適した符号化則を持つ符号器を選択して、符号化する」ことも、周知例1に示されるように周知であるから、引用例に記載された発明において、選択するステップが更に、「識別されたデータの種類を用いて、複数のトランスコーディング技法の中から、1つのトランスコーディング技法を選択する」機能を有し、「該選択されたトランスコーディング技法を用いて該データを符号化している」ステップを有するものとすることは、当業者が容易になし得たことであり(相違点aについて)、その際、エラー制御の方法として、BCH誤り訂正符号、データについて、再送制御(ARQ)、音声について、ミューティング、すなわち、エラー制御スキームの異なるエラー制御の方法は良く知られていることで、音声であれば、少しの誤りを許容でき、少しの誤りを許容するエラー制御方法、データは、誤りがあると、情報を正しく伝送することができず、誤りの許容できないエラー制御の方法を採ることは、当然の事であるから、引用例に記載された発明において、識別されたデータの種類を用いて、複数のエラー制御方法の中から、1つのエラー制御スキームを選択し(相違点bについて)、該選択されたトランスコーディング技法を用いて符号化されたデータに、該選択されたエラー制御スキームにより、エラー制御情報を付加すること(相違点cについて)は、当業者が容易になし得ることと認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例に記載された発明、及び、周知例1に示される周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明、及び、周知例1に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明

(1)本願発明について
平成14年11月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年5月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】データを通信網を通じて伝送する方法であって、
データに対してデータのタイプを判別するステップと、
該データのタイプに基づいて該データをフォーマット化するためにトランスコーティング技法およびエラー制御スキームを選択するステップと、
該選択されたトランスコーティング技法を用いてデータを符号化するステップと、
該選択されたエラー制御スキームを、該符号化されたデータに適用するステップとを含むことを特徴とする方法。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例に記載された発明
引用例に記載された発明は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「データの種類を識別するステップ」の限定事項である「自動的に」の構成を省き、「1つのトランスコーディング技法および1つのエラー制御スキームを選択する」の限定事項である「自動的に」を省き、「該トランスコーディング技法により符号化されたデータに対して、該符号化されたデータにエラー制御情報を付加する該選択されたエラー制御スキームを適用するステップ」から「該符号化されたデータにエラー制御情報を付加する」を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加した構成を有する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知例1に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知例1に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知例1に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-26 
結審通知日 2004-10-27 
審決日 2004-11-09 
出願番号 特願平10-276296
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 玉木 宏治小林 紀和吉田 隆之  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 望月 章俊
衣鳩 文彦
発明の名称 適応的な通信のフォーマット化  
代理人 岡部 正夫  
代理人 産形 和央  
代理人 藤野 育男  
代理人 臼井 伸一  
代理人 本宮 照久  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 越智 隆夫  
代理人 高梨 憲通  
代理人 朝日 伸光  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 加藤 伸晃  

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