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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H03F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03F
管理番号 1114140
審判番号 不服2002-3206  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-25 
確定日 2005-03-22 
事件の表示 平成7年特許願第325421号「低電力において効率の増強されたRFパワー増幅器」拒絶査定不服審判事件〔平成8年8月30日出願公開、特開平8-222961〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年12月14日(パリ条約による優先権主張 1994年12月15日(US)米国)の出願であって、平成13年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年2月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年3月27日付けで手続補正がなされ、これらに対し、平成16年9月8日付けで審尋がなされ、同年10月13日付けで審尋に対する回答書が提出されたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年3月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
上記手続補正は、請求項1、5、6の記載を、以下のとおりに補正するものである。
「【請求項1】 RFパワー増幅器の効率を制御する装置において、
(A) 電圧可変減衰器(12)と、
(B) 多段式RFパワー増幅手段(14)と、
(C) 前記RFパワー増幅手段(14)を制御する動態電圧制御回路と、
からなり、
前記(C)動態電圧制御回路は、
(C1) 前記電圧可変減衰器(12)と前記RFパワー増幅手段(14)のRFパワー出力を制御する複数のゲートとの間の電圧比を決定する電圧比決定手段(50,70)を含み、
前記(C1)電圧比決定手段(50,70)は、前記RFパワー増幅器の複数のゲートバイアスの内の各ゲートバイアスを制御する比例制御信号の比部分を生成する演算増幅器(50,70)を有する多段式RFパワー増幅器(14)の駆動回路を含み、
前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の減少を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を減らし、
前記パワー要件の減少は、前記比例制御信号の電圧比部分が負に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出され、
前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の増加を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を増やし、
前記パワー要件の増加は、前記比例制御信号の比部分が正に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出される
ことを特徴とするRFパワー増幅器。」

「【請求項5】 前記制御信号の電圧比部分が、前記電圧可変減衰器(12)を制御することを特徴とする請求項1の装置。」

「【請求項6】 RFパワー増幅器の効率を制御する装置において、
(A) 電圧可変減衰器と、
(B) RFパワー増幅手段と、
(C) 前記RFパワー増幅手段を制御する動態電圧制御回路と、
からなり、
前記(C)動態電圧制御回路は、
(C1) 前記電圧可変減衰器と前記RFパワー増幅手段からのRFパワー出力を制御する前記RFパワー増幅手段の複数のゲートとの間の電圧比を決定する電圧比決定手段(50,70)と、
(C2) 前記RFパワー増幅手段の出力点におけるRF出力信号の一部を抽出する手段(24)と、
(C3) 多段パワー増幅器バイアス回路と、
(C4) 前記電圧可変減衰器(12)を制御する比例制御信号を生成する、演算増幅器(50)を含む、電圧可変減衰器回路(22)と
を有し、
前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の減少を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を減らし、
前記パワー要件の減少は、前記比例制御信号の電圧比部分が負に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出され、
前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の増加を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を増やし、
前記パワー要件の増加は、前記比例制御信号の比部分が正に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出される
ことを特徴とするRFパワー増幅器。」

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
そこで、まず、上記補正のうち、「前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の減少を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を減らし、」という構成について検討すると、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「出力の要求が最大値より小さい場合、電圧比はさらに負となり、DC電流が小さくなって、効率を改善する目的を達成する。必要なRF出力パワーが増大すると、この比はさらに正になり、PA14をその最大出力に達せさせる。」と記載されているだけで、「出力の要求が最大値より小さい」ことを何により検出するかは不明であり、また、どのような構成が「DC電流」を小さくさせるのかも不明である。一方、「演算増幅器(50)」は、例えば当初明細書の3頁3欄36〜39行目の「電圧Vcont53及び抵抗44、46、48を用いて、比例制御信号は演算増幅器50に出力され、制御電圧の比例部分はVVA12を制御する。」という記載によれば、VVA12(即ち、電圧可変減衰器)を制御するものであって、「DC電流」を小さくするためのものである旨の記載はない。
更に、原審の引用刊行物である特開平5-83041号公報の5頁7欄30〜34行目の「この第2の実施例でもゲートバイアス制御回路21によってゲートバイアスを制御するようにしているので、第1の実施例の場合と同様にわずかなゲート電圧の変化によってドレイン電流を大きく変化させることができる。」という記載によれば、ドレイン電流(即ち、直流電流、DC電流)はゲートバイアスを制御することにより自動的に増減するものである。
してみると、前記演算増幅器(50)は、「前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の減少を検出する」ものであるとしても、「前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を減ら」すためのものではない。
以上のとおりであるから、上記補正のうち、「前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の減少を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を減らし、」という構成は当初明細書等に記載されておらず、また、当該構成が当初明細書等の記載から自明であるとも認められない。
なお、この点について請求人が回答書で主張している「RF電力増幅器14への入力電流」は増幅すべき信号電流であり、この入力電流が仮に直流分を含んでいるとしても、当該直流分が上記効率を改善する目的を達成するための「DC電流」でないことは明らかであるから、上記回答書における請求人の主張は採用できない。
したがって、上記補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないので、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)独立特許要件
仮に、上記補正にかかる「前記演算増幅器(50)」がPA14のゲートバイアスを制御する「前記演算増幅器(70)」の誤記であるとした場合、当該補正は請求項1、6の構成を減縮する補正であり、また、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
したがって、当該補正は特許法第17条の2第3項(新規事項)及び同条第4項(補正の目的)の規定に適合している。
しかしながら、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正は、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第4項の規定により、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないところ、当該補正後の発明は、以下の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

[補正後の発明]
上記「1.補正の内容」の請求項1に記載されたとおりのものである。(なお、上記したように「前記演算増幅器(50)」は「前記演算増幅器(70)」の誤記であるとして扱っているが、番号の変更は行っていない。)

[引用発明]
これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開平5-83041号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
イ.「【請求項2】電界効果トランジスタで構成した増幅器において、
外部から印加された基準電圧を分割する分割抵抗と、
この分割抵抗に発生する電圧の1つを選択してゲートバイアスとするスイッチ手段とを具備することを特徴とするゲートバイアス制御回路。」(2頁1欄、【請求項2】)

ロ.「【0033】第2の実施例のゲートバイアス制御回路21では、出力電力の制御時に同期してコントロール線23から出力電力制御指令が送られてくると、負基準電圧と接地電位を電圧分割線251 、252 ……、25n で分割した合計n種類の電圧から1つの電圧が選択される。そして、その電圧がGaAs FET11のゲートGにチョークコイル48を介して印加される。
【0034】この第2の実施例でもゲートバイアス制御回路21によってゲートバイアスを制御するようにしているので、第1の実施例の場合と同様にわずかなゲート電圧の変化によってドレイン電流を大きく変化させることができる。」(5頁7欄23〜36行目、但し原文中の添字は表記の都合上半角通常字体で表記した。以下同様。)

ハ.「【0036】図3は、図6に示したQPSK方式の移動機に本発明を適用した場合を表わしたものである。図6と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この移動機では、図6におけるゲートバイアス回路63を制御回路31によって制御可能なゲートバイアス制御回路321 および322 に変更している。ここで一方のゲートバイアス制御回路321 は電力増幅器105のゲート電圧VG2を制御し、他方のゲートバイアス制御回路322 は、この電力増幅器105のゲート電圧VG1を制御するようになっている。これらの制御は、コントロール線33によって制御回路31から出力電力制御指令と同期した信号を受けることによって行われ、各出力電力に対応したゲート電圧VG1、VG2が対応するゲート端子に供給される。ゲートバイアス制御回路321 および322 にはバッテリまたは外部電源から負電圧発生回路37を介して電源が供給されるようになっている。
【0037】一方、電力増幅器105には送信通過フィルタ104の出力が可変減衰器34によって減衰された後に入力されるようになっている。すなわち、この移動機では出力電力の制御方法を、ドレイン電圧の制御による方法ではなく、電力増幅器105に入力する入力電力を制御する方法に変更している。したがって、出力電力は、比較回路132からの信号(電圧)を受けて可変減衰器34の減衰量を変えることによって制御される。比較回路132によって電圧の比較を行う方法は、図6で説明した従来の方法と同様である。」(5頁8欄7〜33行目)

ニ.「【0039】図9は、以上説明した本発明の効果を従来の出力電力制御と比較するためのものである。この図で縦軸は出力電力POUT を表わし、横軸は出力電力制御の状態を表わしている。出力電力P0 、ドレイン電流Id および効率ηについて、出力電力制御時のそれぞれの値が示されている。実線aはゲートバイアス制御を行ったときのドレイン電流Id と効率ηを示し、破線bはこの制御を行わなかったときのドレイン電流Id と効率ηを示している。これらのデータから分かるように、ゲートバイアス制御を行った方が、効率が5〜10%とかなり改善されている。」(5頁8欄38〜48行目)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「電力増幅器105」はいわゆる「RFパワー増幅器」であり、2つの増幅器を多段接続しているから「多段式RFパワー増幅手段」である。
また、上記「ゲートバイアス制御」は上記「電力増幅器」の効率を制御するものであり、上記「ゲートバイアス制御回路321、322」は「外部から印加された基準電圧を分割する分割抵抗と、出力電力制御指令により分割抵抗に発生する電圧の1つを選択するスイッチ手段と、このスイッチ手段によって選択された電圧をゲート電圧として出力する回路」であるから、当該回路は「電力増幅器を制御する制御回路」を構成しており、前記「スイッチ手段」は「制御指令」に応じて所定の「分割抵抗に発生する電圧を選択」してゲート電圧として出力している。したがって、「可変減衰器を制御するための比較回路からの信号(電圧)」と「前記選択されたゲート電圧」とは、所定の電圧比の関係となるから、前記「スイッチ手段」を含む上記「ゲートバイアス制御回路」は可変減衰器とゲート電圧との間の電圧比を決定する「電圧比決定手段」を構成している。
また、上記「可変減衰器34」は、比較回路132からの信号(電圧)を受けて減衰量を変えるものであるから、いわゆる「電圧可変減衰器」である。
また、上記「ドレイン電流」は電力増幅器の直流電流である。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「RFパワー増幅器の効率を制御する装置において、
電圧可変減衰器と、
多段式RFパワー増幅手段と、
前記RFパワー増幅手段を制御する制御回路と、
からなり、
前記制御回路は、
前記電圧可変減衰器と前記RFパワー増幅手段のRFパワー出力を制御する複数のゲートとの間の電圧比を決定する電圧比決定手段を含み、
前記電圧比決定手段は、出力電力制御指令により分割抵抗に発生する電圧の1つを選択するスイッチ手段と、このスイッチ手段によって選択された電圧をゲート電圧として出力するゲートバイアス制御回路を含み、
前記ゲート電圧は、RFパワー増幅手段の直流電流を同時に制御する
ことを特徴とするRFパワー増幅器。」

[周知技術]
例えば特開平4-156707号公報(以下、「周知例1」という。)には、次の事項が記載されている。
イ.「まず入力端の入力信号は可変減衰器1により所定の減衰量を得て、増幅素子のバイアス制御端子を有する増幅器2により増幅され、出力端から出力され、所望の出力レベルが得られる。定常伝搬の出力レベルが低くて良い場合には、可変減衰器1の減衰量を大きくして出力レベルを低くする。一方、増幅器2はバイアス制御端子2Aの制御信号により制御され、出力レベルが低いときには、バイアスを浅くし消費電力を低下させる。・・・また、この出力レベル制御信号は時定数回路3,4に入力される。時定数回路3の出力は可変減衰器1の減衰量制御端子1Aに接続され、・・・他方、時定数回路4の出力は増幅器2のバイアス制御端子に接続され、・・・消費電力の改善をはかる。
第3図は時定数回路3の回路を示し、第4図は時定数回路4の回路を示している。・・・時定数回路と並列に演算増幅器11A,11Bを有している。」(2頁右上欄20行目〜右下欄17行目)

また、例えば特開平3-76438号公報(以下、「周知例2」という。)には、次の事項が記載されている。
ロ.「これら温度検出器10,11で検出した電圧はそれぞれ可変電圧減衰器13,14で電圧を減衰させ、各出力を前記電圧加算器15に接続している。
この電圧加算器15には、演算増幅器12を接続し、この演算増幅器12によって前記送信電力可変減衰器9を制御し、出力電力の制御を行っている。」(2頁左上欄6〜12行目)

上記周知例1、2の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、「可変減衰器付電力増幅器の制御信号を所定量に減衰させるとともに減衰した制御信号を演算増幅器を介して出力すること」は周知である。

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、補正後の発明の「動態電圧制御回路」と引用発明の「制御回路」はいずれも移動体通信用端末の電力増幅器のゲート電圧を調整する制御回路であって、両者の間に実質的な差異はない。
また、補正後の発明の「前記RFパワー増幅器の複数のゲートバイアスの内の各ゲートバイアスを制御する比例制御信号の比部分を生成する演算増幅器を有する多段式RFパワー増幅器の駆動回路」と引用発明の「出力電力制御指令により分割抵抗に発生する電圧の1つを選択するスイッチ手段と、このスイッチ手段によって選択された電圧をゲート電圧として出力するゲートバイアス制御回路」はいずれも「ゲートバイアス回路」であるという点で一致している。
また、補正後の発明の「演算増幅器(50)」が「ゲートバイアス回路(多段式RFパワー増幅器の駆動回路)」を構成していること、及び引用発明の「ゲート電圧」が「ゲートバイアス回路(ゲートバイアス制御回路)」の出力であることを考慮すると、補正後の発明の「前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の減少を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を減らし、前記パワー要件の減少は、前記比例制御信号の電圧比部分が負に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出され、前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の増加を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を増やし、前記パワー要件の増加は、前記比例制御信号の比部分が正に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出される」という構成と引用発明の「前記ゲート電圧は、RFパワー増幅手段の直流電流を同時に制御する」という構成は、いずれも「前記ゲートバイアス回路はRFパワー増幅手段の直流電流も制御する」構成であるという点で一致している。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。
(一致点)
「RFパワー増幅器の効率を制御する装置において、
電圧可変減衰器と、
多段式RFパワー増幅手段と、
前記RFパワー増幅手段を制御する動態電圧制御回路と、
からなり、
前記動態電圧制御回路は、
前記電圧可変減衰器と前記RFパワー増幅手段のRFパワー出力を制御する複数のゲートとの間の電圧比を決定する電圧比決定手段を含み、
前記電圧比決定手段は、ゲートバイアス回路を含み、
前記ゲートバイアス回路はRFパワー増幅手段の直流電流も制御する
ことを特徴とするRFパワー増幅器。」
(相違点1)
「ゲートバイアス回路」に関し、補正後の発明は「前記RFパワー増幅器の複数のゲートバイアスの内の各ゲートバイアスを制御する比例制御信号の比部分を生成する演算増幅器を有する多段式RFパワー増幅器の駆動回路」であるのに対し、引用発明は「出力電力制御指令により分割抵抗に発生する電圧の1つを選択するスイッチ手段と、このスイッチ手段によって選択された電圧をゲート電圧として出力するゲートバイアス制御回路」である点。
(相違点2)
「前記ゲートバイアス回路はRFパワー増幅手段の直流電流も制御する」構成に関し、補正後の発明は、「前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の減少を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を減らし、前記パワー要件の減少は、前記比例制御信号の電圧比部分が負に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出され、前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の増加を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を増やし、前記パワー要件の増加は、前記比例制御信号の比部分が正に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出される」という構成であるのに対し、引用発明は「前記ゲート電圧は、RFパワー増幅手段の直流電流を同時に制御する」という構成である点。

そこで、まず、上記相違点1について検討すると、例えば上記周知例1、2に開示されているように、「可変減衰器付電力増幅器の制御信号を所定量に減衰させるとともに減衰した制御信号を演算増幅器を介して出力すること」は周知であるところ、「制御信号を所定量に減衰させる」ことは所定の減衰割合(即ち、比)を有する「比例制御信号」を生成することに他ならないものである。そして、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因はなんら見あたらないから、引用発明の「出力電力制御指令により分割抵抗に発生する電圧の1つを選択するスイッチ手段と、このスイッチ手段によって選択された電圧をゲート電圧として出力するゲートバイアス制御回路」の出力部分に「演算増幅器」を介するとともに「出力電力制御指令により分割抵抗に発生する電圧の1つを選択する」構成を「比例制御信号の比部分を生成する」という構成に変更することにより、本願発明のような「前記RFパワー増幅器の複数のゲートバイアスの内の各ゲートバイアスを制御する比例制御信号の比部分を生成する演算増幅器を有する多段式RFパワー増幅器の駆動回路」に変更する程度のことは当業者であれば容易に成しえたことである。
ついで、上記相違点2について検討すると、上記周知技術により制御信号を演算増幅器を介して電力増幅器に印加する構成とした場合に、制御信号を演算増幅器が受ける構成となることは自明のことであり、演算増幅器の出力がゲートバイアスを調整し、結果として、パワー増幅手段の直流電流を制御するものであることは引用例の記載から明らかである。してみると補正後の発明の「前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の減少を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を減らし、前記パワー要件の減少は、前記比例制御信号の電圧比部分が負に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出され、前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の増加を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を増やし、前記パワー要件の増加は、前記比例制御信号の比部分が正に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出される」という構成は、ゲート電圧がRFパワー増幅手段の直流電流も制御するという引用発明の構成を、単に「演算増幅器」に関連して記載しているに過ぎないものであり、引用発明の構成と何ら変わるところはない。したがって、上記相違点2に実質的な差異はない。

なお、請求人の回答書を見ても、上記判断を覆すに足りる根拠が見いだせない。

以上のとおりであるから、補正後の発明は上記引用例に記載された発明及び周知例1、2に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではなく、仮に願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとしても、補正後の発明が独立特許要件を満たしていないので、特許法第17条の2第3項の規定または特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願について
1.本願発明
平成14年3月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年10月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「RFパワー増幅器の効率を制御する装置において、
(A)電圧可変減衰器(12)と、
(B)多段式RFパワー増幅手段(14)と、
(C)前記RFパワー増幅手段(14)を制御する動態電圧制御回路と、
からなり、
前記(C)動態電圧制御回路は、
(C1)前記電圧可変減衰器(12)と前記RFパワー増幅手段(14)のRFパワー出力を制御する前記RFパワー増幅手段(14)の複数のゲートとの間の電圧比を決定する電圧比決定手段(22)を含み、
前記(C1)電圧比決定手段(22)は、前記RFパワー増幅器の複数のゲートバイアスの内の各ゲートバイアスを制御する制御信号の比を生成する演算増幅器(70)を有する多段式RFパワー増幅器(14)の駆動回路を含む
ことを特徴とするRFパワー増幅器。」

2.引用発明と周知技術
引用例と引用発明及び周知例1、2と周知技術は、上記「第2.2(2)[引用発明]及び[周知技術]」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明は上記補正後の発明から、「前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の減少を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を減らし、
前記パワー要件の減少は、前記比例制御信号の電圧比部分が負に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出され、
前記演算増幅器(50)は、前記多段式RFパワー増幅器(14)のパワー要件の増加を検出すると、前記多段式RFパワー増幅器(14)への直流電流の供給を増やし、
前記パワー要件の増加は、前記比例制御信号の比部分が正に増加すると、前記演算増幅器(50)により検出される」という構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に前記構成を付加した補正後の発明が上記「第2.2(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知例1、2に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.結語
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明ならびに上記周知例1、2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2004-10-26 
結審通知日 2004-10-27 
審決日 2004-11-09 
出願番号 特願平7-325421
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H03F)
P 1 8・ 561- Z (H03F)
P 1 8・ 121- Z (H03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長島 孝志板橋 通孝  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 浜野 友茂
野元 久道
発明の名称 低電力において効率の増強されたRFパワー増幅器  
代理人 高梨 憲通  
代理人 本宮 照久  
代理人 朝日 伸光  
代理人 藤野 育男  
代理人 岡部 正夫  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 臼井 伸一  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 三俣 弘文  
代理人 越智 隆夫  
代理人 産形 和央  

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