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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1114160
審判番号 不服2004-4715  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-08 
確定日 2005-03-22 
事件の表示 特願2002-359587「包まれたレンズ型逆行反射性シート及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月27日出願公開、特開2003-177224〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯及び本願発明
本願は、昭和61年11月17日(パリ条約による優先権主張1985年11月18日)に出願された特願昭61-273816号(以下、「原原原出願」という。)の特許出願の一部を平成11年1月18日に特願平11-045236号(以下、「原原出願」という。)として新たな特許出願とし、その後、その一部を平成13年12月14日に特願平2001-381698号(以下、「原出願」という。)とし、さらに、その一部を特願平2002-359587号として新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は、平成16年4月7日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
(i)実質的にレンズの単層をキャリヤーウエブへ部分的に埋め、(ii)前記キャリヤーウエブのレンズを有する表面の上に鏡面状反射性材料を付着させ、前記レンズ上及び前記レンズ間の前記キャリヤーウエブの表面上に鏡面状反射性材料を設け、(iii)レンズとレンズ上の鏡面状反射性材料とに接着するHMW熱可塑性結合剤フィルムを、前記キャリヤーウエブの前記露出したレンズ側に向かい合わせて合わせ、熱と圧力をかけて、前記(HMW熱可塑性)結合剤フィルムを、レンズ間の前記キャリヤーウエブの表面上にある鏡面状反射性付着物のどの部分とも接触させないようにしながら、レンズ上にある鏡面状反射性付着物の部分に接触させ、(iv)前記キャリヤーウエブを剥がし、前記結合剤フィルムは、前記キャリヤーウエブを剥がす際に前記レンズが結合剤フィルムに接触し続け、そして前記キャリヤーウエブから転移するように、前記レンズに接着し、(v)露出したレンズ上に覆いフィルムを置き、そして(vi)網目状結合部線に沿って熱と圧力をかけ、結合剤材料を軟化して変形し、覆いフィルムと接触させ、このようにして気密に密封したセルを形成し、それらのセル中にレンズが包まれ、且つ空気と接するようにする諸工程を含む、包まれたレンズ型逆行反射性シートの製造方法であって、
前記HMW熱可塑性結合剤フィルムが脂肪族ウレタン重合体を含み、少なくとも60,000の重量平均分子量及び750未満の溶融指数を有するレンズ型逆行反射性シートの製造方法。」

2.引用刊行物に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭57-189839号公報(以下、「刊行物1」という。」)には、次の(a1)〜(a7)に事項が記載されている。
(a1)「高輝度反射シート用オープンタイプ再帰反射シートは、例えば特公昭40-7870号公報の記載に従うと次のようにして製造される。」(第1頁右欄第5〜7行)、
(a2)「この発明はこのような従来の方法に比較して簡易安定に得させるオープンタイプ再帰反射シートの製造方法を提供するものである。」(第2頁左上欄18〜20行)、
(a3)「第1図に製造されたオープンタイプ反射シート(0)の断面を示す。このシートはポリエチレンテレフタレートフィルム(4)上の基体樹脂(3)にアルミニウム(2)を蒸着された半球面で転写定植されたガラスビーズ(1)を備えて成つている。このガラスビーズは屈折率1.90〜1.93直径30〜120μである。まず第2図の例えば120μのクラフト紙(6)に30μのポリエチレン(5)を積層したポリエチレンラミネートクラフト紙(56)を、温度むらを生じない様に100℃の完全保温室中でクラフト紙側からロールに巻き付ける。このロール温度を140℃前後になるように加熱して100℃前後に加熱されているガラスビーズを撒布する。この時ビーズ分布が最密充填になるようにする。140℃の保温炉中でこのビーズ(1)をポリエチレンラミネートクラフト紙のポリエチレン層に付着させる。そして第3図に示すようにこのガラスビーズ表面側から真空蒸着によりアルミニウム(2)を被着させておく。」(第2頁左下欄第7行〜右下欄第4行)、
(a4)「この一方で熱安定性の良いフィルムに乾燥膜厚100μとなる様にガラスビーズとの密着性のよい基体樹脂を塗工する。例えば、フィルムは厚さ50μのポリエチレンテレフタレートで良く、基体樹脂は東亜合成のアロンS-1006加熱残分50部、ルチル型酸化チタン50部、DOP7部、エチルセロソルブ20部、粘度調整にはトルエンを使用して混合したもので良い。塗工後50℃に5分間半乾燥し、第4図に示すように前記ガラスビーズ付着ポリエチレンラミネートクラフト紙(56)のガラスビーズ(1)の表面にポリエチレンテレフタレートフィルム(4)を背方におき、この基体樹脂(3)を対向配置させる。両者は100℃、ニップ圧2kg/cm2の加熱ロールにより第5図に示すように一体に貼り合される。」(第2頁右下欄第5〜19行)、
(a5)「このあとポリエチレンラミネートクラフトを剥離すればガラスビーズ(1)はポリエチレンテレフタレートフィルム(4)上の基体樹脂(3)に転写されて第1図製品となるのである。この発明はこの剥離工程を確実にさせることに係るものであって、ポリエチレンラミネートクラフト紙の紙質が湿潤になると膨張する点に着目してなされている。ポリエチレンにガラスビーズが良く埋没されている場合でも紙質が膨張するとポリエチレンのビーズ界面が押し広げられ、ガラスビーズ転写を容易にする。この効果は紙質を高湿潤状態におくことにより高められる。・・・剥離終了後ガラスビーズを転写定植させた基体樹脂を80℃10分間でキュアさせる。」(第2頁右下欄末行〜第3頁左下欄第2行)、
(a6)「このオープンタイプ再帰反射シートを全天候型にする場合には表面フィルムのアクリルフィルムとエンボスロールを用い、空気層が得られる様に加熱して部分接着させると良い。このようにすると第1図(4)のポリエチレンテレフタレートフィルムは容易にとり除かれ、接着剤を適用して使用に供することが出来る。」(第3頁左下欄第2〜9行)、
(a7)「このようなこの発明の方法によると、安価に得られるポリエチレンラミネート紙を利用し、ガラスビーズの仮植を良好にし、シート用基体樹脂にビーズの100%転写定植させ、基体樹脂での埋設度を任意に制御出来る。又基体樹脂は、ポリエチレンテレフタレートフィルムに直接塗工され、半乾燥された後に、ガラスビーズ付着ポリエチレンラミネート紙に加熱貼着されるため、この貼着に際して感圧型接着剤を用いる必要がなく安定に貼着される。」(第3頁左下欄第10〜19行)、

ここで、上記(a3)の「ビーズ(1)をポリエチレンラミネートクラフト紙のポリエチレン層に付着させる。」との記載及び刊行物1に係る第2図のビーズ(1)がポリエチレン層(5)に部分的に埋まっていることからみて、刊行物1に記載のものも「実質的にビーズの単層がポリエチレンラミネートクラフト紙へ部分的に埋め」られているものであり、また、同(a3)の「このガラスビーズ表面側から真空蒸着によりアルミニウム(2)を被着させておく。」との記載からみて、刊行物1に記載のものも「ビーズを有する表面の上にアルミニウムを付着し」ているものである。さらに、上記(a4)の「フィルムは厚さ50μのポリエチレンテレフタレートで良く、基体樹脂は東亜合成のアロンS-1006加熱残分50部、ルチル型酸化チタン50部、DOP7部、エチルセロソルブ20部、粘度調整にはトルエンを使用して混合したもので良い。」及び「ガラスビーズ(1)の表面にポリエチレンテレフタレートフィルム(4)を背方におき、この基体樹脂(3)を対向配置させる。両者は100℃、ニップ圧2kg/cm2の加熱ロールにより第5図に示すように一体に貼り合される。」との記載、さらには、第4図において、基体樹脂(3)とアルミニウム(2)とが接触しておらず、また、第5図において、基体樹脂(3)とアルミニウム(2)とが接触し、基体樹脂(3)とポリエチレン(5)とが接触していないことからみて、刊行物1のものも「ビーズとビーズ上のアルミニウムとに接着する基体樹脂を、露出したビーズ側に向かい合わせて合わせ、熱と圧力をかけて、フィルムを、ビーズ間のポリエチレンラミネートクラフト紙の表面上にあるアルミニウムのどの部分とも接触させないようにしながら、ビーズ上にあるアルミニウム部分に接触させ」ているものと認められる。
また、上記(a5)の「このあとポリエチレンラミネートクラフト紙を剥離すれば」との記載からみて、刊行物1のものも「ポリエチレンラミネートクラフト紙を剥がす」工程を有するものであり、そして、ポリエチレンラミネートクラフト紙を剥離する際は、第6図からもわかるように、ビーズは基体フィルムに接触し続け、基体フィルムはポリエチレンラミネートクラフト紙から転移するようにビーズに接着するものである。
さらに、上記(a6)の「このオープンタイプ再帰反射シートを全天候型にする場合には表面フィルムのアクリルフィルムとエンボスロールを用い、空気層が得られる様に加熱して部分接着させると良い。」との記載からみて、刊行物1のものも「露出したレンズ上にアクリルフィルムを置く」工程、及び「結合部線に沿って熱と圧力をかけ、結合剤材料を軟化して変形し、アクリルフィルムと接触させ、このようにして気密に密封したセルを形成し、それらのセル中にレンズが包まれ、且つ空気と接するようにする」工程が含まれるものである。
してみると、上記(a1)〜(a7)の記載及び上記認定から、刊行物1には、「(i)ビーズ(1)の単層をポリエチレンラミネートクラフト紙(56)へ部分的に埋め、(ii)前記ポリエチレンラミネートクラフト紙(56)のビーズ(1)を有する表面の上にアルミニウム(2)を付着させ、前記ビーズ上及びビーズ間のクラフト紙(56)の表面上にアルミニウムを設け、(iii)ビーズとビーズ上のアルミニウムとに接着する基体樹脂(3)を、露出したビーズ側に向かい合わせて合わせ、熱と圧力をかけて、前記基体樹脂(3)を、ビーズ(1)間の前記ポリエチレンラミネートクラフト紙(56)の表面上にあるアルミニウム(2)と接触させないようにしながら、ビーズ(1)上にあるアルミニウム(2)の部分に接触させ、(iv)ポリエチレンラミネートクラフト紙(56)を剥がし、ビーズは基体樹脂(3)に接触し続け、基体樹脂(3)はポリエチレンラミネートクラフト紙(56)から転移するようにビーズ(1)に接着し、(v)露出したビーズ(1)上に表面フィルムのアクリルフィルムを置き、そして(vi)結合部線に沿って熱と圧力をかけ、結合剤材料を軟化して変形し、アクリルフィルムと接触させ、このようにして気密に密封したセルを形成し、それらのセル中にビーズ(1)が包まれ、且つ空気と接するようにする諸工程を含む包まれたビーズ(1)型逆行反射性シートの製造方法」が開示されているものと認められる。

また、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-67902号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(b1)「次いで、ガラスビーズを埋設したポリエチレン張クラフト紙のガラスビーズの露出面にアルミニウムを真空蒸着してAl反射膜を形成した。つづいて、予め厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ベースフィルム)上にポリメチルメタクリレート(東亜合成社製商品名:アロンS-1006)50部、ルチル型酸化チタン50部及びジオクタルフタレート7部からなる基体樹脂用溶液を塗布し、40〜60℃で4〜7分間乾燥した半乾燥状態の基体樹脂層上に前記ポリエチレン張クラフト紙のAl反射膜が蒸着されたガラスビーズ側を100〜130℃に加熱した一対のロールを用いて重ね合わせた。」(4頁右上欄16行〜左下欄8行)

3.対比
そこで、本願発明と刊行物1に記載された発明とを比較すると、刊行物1に記載された発明の、「ポリエチレンラミネートクラフト紙(56)」、「ビーズ(1)」、「基体樹脂(3)」、「アルミニウム(2)」、「表面フィルムのアクリルフィルム」は、それぞれ本願発明に係る「キャリヤーウエブ」、「レンズ」、「結合剤層ないし結合剤フィルム」、「鏡面状反射性材料ないし鏡面状反射性付着物」、「覆いフィルム」に実質的に相当するから、結局、両者は、「(i)実質的にレンズの単層をキャリヤーウエブへ部分的に埋め、(ii)前記キャリヤーウエブのレンズを有する表面の上に鏡面状反射性材料を付着させ、前記レンズ上及び前記レンズ間の前記キャリヤーウエブの表面上に鏡面状反射性材料を設け、(iii)レンズとレンズ上の鏡面状反射性材料とに接着する結合剤フィルムを、前記キャリヤーウエブの前記露出したレンズ側に向かい合わせて合わせ、熱と圧力をかけて、前記結合剤フィルムを、レンズ間の前記キャリヤーウエブの表面上にある鏡面状反射性付着物のどの部分とも接触させないようにしながら、レンズ上にある鏡面状反射性付着物の部分に接触させ、(iv)前記キャリヤーウエブを剥がし、前記結合剤フィルムは、前記キャリヤーウエブを剥がす際に前記レンズが結合剤フィルムに接触し続け、そして前記キャリヤーウエブから転移するように、前記レンズに接着し、(v)露出したレンズ上に覆いフィルムを置き、そして(vi)結合部線に沿って熱と圧力をかけ、結合剤材料を軟化して変形し、覆いフィルムと接触させ、このようにして気密に密封したセルを形成し、それらのセル中にレンズが包まれ、且つ空気と接するようにする諸工程を含む、包まれたレンズ型逆行反射性シートの製造方法」である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は、結合剤フィルムが脂肪族ウレタン重合体を含み、少なくとも60,000の重量平均分子量及び750未満の溶融指数を有するHMW熱可塑性結合剤フィルムであるのに対して、刊行物1に記載の発明は、結合剤フィルムが東亜合成のアロンS-1006加熱残分50部、ルチル型酸化チタン50部、DOP7部、エチルセロソルプ20部、粘度調整にはトルエンを使用して混合した基体樹脂である点、
[相違点2]
本願発明は、網目状結合部であるのに対して、刊行物1に記載の発明は、網目状結合部についての記載はない点。

4.当審の判断
[相違点1]について;
刊行物1に記載の「アロンS-1006」は、刊行物2に係る上記3.(b1)の摘記事項によれば、「ポリメチルメタクリレート(東亜合成社製商品名:アロンS-1006)」に相当するものであり、一般成型用のポリメチルメタクリレートの平均分子量が6万以上であることは、従来周知であり、また、一般成型用のポリメチルメタクリレートの溶融指数が750未満であることも従来周知である。してみれば、刊行物1には、レンズ型逆行反射性シートの結合剤フィルムとして、重量平均分子量を少なくとも60,000、溶融指数を750未満のHMW熱可塑性結合剤を用いることが実質的に開示されている。そして、脂肪族ウレタン重合体をレンズ型逆行反射性シートのHMW熱可塑性結合剤フィルムとして用いることが平成15年12月3日付け拒絶査定の備考欄に記載された特開昭59-071848号公報に示されているように本願出願前周知であるから、脂肪族ウレタン重合体についても、重量平均分子量及び溶融指数を上記数値範囲とすることは、当業者であれば容易に想到することができたものである。
[相違点2]について;
刊行物1に記載の発明において、エンボスロールを用い、部分接着させると、その部分が網目状結合部となることは、技術常識であり、両者は実質的な差異は見いだせない(要すれば、特開昭60-67902号公報(刊行物1)のハニカム状の凹凸部を付与したエンボスロールにより形成される線接触部26、特公昭40-7870号公報(米国特許第3190178号明細書および図面)のダイス要素19によって形成される格子線10、特開昭60-194405号公報の平面網目状に連続する連結壁6を参照されたい。)。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物1、2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-13 
結審通知日 2004-10-19 
審決日 2004-11-01 
出願番号 特願2002-359587(P2002-359587)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 青木 和夫
末政 清滋
発明の名称 包まれたレンズ型逆行反射性シート及びその製造方法  
代理人 小林 純子  
代理人 片山 英二  

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