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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G07G
管理番号 1114167
審判番号 不服2002-8313  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-10 
確定日 2005-03-25 
事件の表示 平成11年特許願第285647号「現金管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月20日出願公開、特開2001-109959〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成11年10月6日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年12月20日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項1】 営業店舗に対して準備する現金を管理する資金センタを有する現金管理システムにおいて、前記資金センタは、前記営業店舗で釣銭として準備する現金を金種毎の数量で表した現金管理情報を記録する釣銭管理テーブルと、前記営業店舗における売上を記録した売上管理テーブルとを記憶した記憶装置と、前記釣銭管理テーブルに記録された現金管理情報に基づいて、前記営業店舗で釣銭として準備する現金の金種と数量を決定する現金決定手段とを有するコンピュータ・システムと、前記コンピュータ・システムから、前記営業店舗に事前に提供された釣銭の金額と、当該釣銭運用日の前記営業店舗の売上金を受信し、前記営業店舗から回収された回収金から、前記釣銭の金額を減算した減算結果が前記売上金に等しいか否か精査し、回収金の中から、以降で用いる釣銭用棒金を差し引く精査端末とを備え、前記回収金から釣銭用棒金を差し引いた金額を金融機関に対する納金とすることができることを特徴とする現金管理システム。」

2.引用例

(1)当審の拒絶の理由に引用した特開平11-195156号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「【0001】【発明の属する技術分野】本願の発明は、商店等の事業所の売上金を集金し、売上金額を精査したうえ、金庫室等に売上金を一時保管するとともに、各事業所が予め指定した金種とその金額にしたがって釣り銭を当該事業所に供給する精査システム及び釣銭作成システムに関する。」

・「【0003】精査システムの工程(プロセス)は、次の順により行なわれる。商店や事務所等の事業所から売上金を収集してきた係員(収集員)は、現金(紙幣や硬貨)および収集先からの入金伝票を精査室の窓口へ引き渡す。この精査室は、紙幣および硬貨の数量を計数する精査機と、収集した現金を保管する金庫室からなる。」

・「【0023】10および11はそれぞれ、入力部および表示部で、収集員が事業所から受取った入金伝票に記載された金額(金種およびその金額)を入力するとともに、精査機1および紙幣精査機12が計数した金額(金種およびその金額)を表示することにより、精査員は両者を比較し、照合する。」

・「【0034】200は、棒金作成機で、金種に対応して複数台用意されている。棒金作成機200は、公知の技術によるもので、同一金種の硬貨を所定枚集めて棒状に形成し、その表面を紙またはプラスチックフィルムで巻き付けて棒金71を作成する。なお、釣銭作成機200は、事業所からの釣銭データ(コンピュータシステムによる通信手段やフロッピディスク等の記録媒体、または事業所が発行する伝票により入手したもの)を入力して釣銭作成を制御する制御部700と接続されている。」

・「【0040】(略)釣銭データは、少なくとも釣銭パックを供給する宛先、棒金71の種類とその金額(または本数)からなっている。」

・「【0048】そこで、本願発明による第3の実施例では、精査システムが精査した硬貨または紙幣の全部または一部をそのまま釣銭作成システムへ供給するようにした。」

また、精査機、釣銭用棒金作成機、及び金庫等を備えた部署は、「資金センタ」といえる。

したがって、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明」という。)。

「事業所に対して準備する現金を管理する資金センタを有する精査システム及び釣銭作成システムにおいて、前記資金センタは、前記事業所で釣銭として準備する現金を金種毎の数量で表した事業所からの釣銭データを入力して釣銭作成を制御する制御部に接続された釣銭用棒金作成機と、前記事業所から集金された売上金と入金伝票に記載された金額とが等しいか否かを精査する精査機とを備え、精査した売上金から釣銭用棒金を作成する精査システム及び釣銭作成システム」

(2)同じく、当審の拒絶の理由に引用した特開平11-110644号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、釣銭準備金を迅速かつ正確で容易に管理することのできる釣銭準備金管理装置および方法並びに釣銭準備金管理プログラムを記憶したコンピュータで読取り可能な記憶媒体に関する。」

・「【0002】【従来の技術】例えば、商品登録機能,会計処理機能等を有する複数(例えば、150台)の電子キャッシュレジスタと、これら電子キャッシュレジスタとデータ通信可能に接続されかつ各電子キャッシュレジスタを一括管理するストアコントローラと、このストアコントローラとデータ通信可能に接続されかつ本部内に配設されたホストコンピュータとを具備する商品販売データ処理装置(POSシステム)は、公知かつ一段と普及拡大している。」

・「【0028】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)本釣銭準備金管理方法を実施するために好適な釣銭準備金管理装置は、図1に示す如く、釣銭パターンごとの金種別釣銭準備金額を記憶可能な釣銭パターンテーブル13Pと供給先ごとの各釣銭使用日と釣銭パターンとを対応させた釣銭モードを記憶可能な釣銭モードテーブル13Mとを有する釣銭準備金管理機10と,釣銭使用日を入力する釣銭使用日入力手段(25)と,金種別貯蔵庫42を有する自動釣銭準備金仕訳機40とを具備し、釣銭準備金管理機10が釣銭使用日入力手段(25)から発せられた釣銭使用日を受けた場合に釣銭モードテーブル13Mを検索して当該釣銭使用日に対応する釣銭パターンを抽出しかつ釣銭パターンテーブル13Pを参照して当該釣銭使用日の金種別内訳を集計するとともに自動釣銭準備金仕訳機40へ出力可能に形成され、しかも自動釣銭準備金仕訳機40が釣銭準備金管理機10から出力された集計金種別内訳にしたがって自動仕訳可能に形成されている。」

・「【0029】図1において、釣銭準備金管理機10は、CPU11,ROM12,RAM13,HDD14および各インターフェイス(I/F)15・16・17を含み、この実施形態ではチェーン店の本部に配設されかつ上記従来例で述べたPOSシステム(複数の電子キャッシュレジスタ、ストアコントローラ、ホストコンピュータ)全体についての釣銭準備金の管理機能を有する。」

・「【0030】RAM13には、釣銭パターンテーブル13Pと釣銭モードテーブル13Mとが設けられている。これらは、HDD14でバックアップされている。」

・「【0031】釣銭パターンテーブル13Pは、釣銭パターンごとの金種別釣銭準備金額を記憶させるメモリである。例えば、図2に示すように釣銭パターン(SA)の金種別釣銭準備金額は、千円札の枚数が4000枚で、500円用硬貨の棒金本数が100本,100円用硬貨の棒金本数が200本である。なお、釣銭パターンSAは、1店舗(ストアー“S”)についての “A”パターンを示す。つまり、この第1の実施形態では店舗(ストアー“S”)ごとに管理する場合について説明する。」

3.対比

本願発明と引用例1発明とを対比する。

引用例1発明の「事業所」は本願発明の「営業店舗」に相当し、以下同様に、「事業所から集金された売上金」は「営業店舗から回収された回収金」に、また、「精査システム及び釣銭作成システム」は「現金管理システム」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、

「営業店舗に対して準備する現金を管理する資金センタを有する現金管理システムにおいて、前記資金センタは、営業店舗で用いる釣銭を準備する機能と、営業店舗から回収された回収金を精査する機能とを備え、前記回収金から釣銭用棒金を差し引く現金管理システム。」

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では、資金センタは、営業店舗で釣銭として準備する現金を金種毎の数量で表した現金管理情報を記録する釣銭管理テーブルと、前記営業店舗における売上を記録した売上管理テーブルとを記憶した記憶装置と、前記釣銭管理テーブルに記録された現金管理情報に基づいて、前記営業店舗で釣銭として準備する現金の金種と数量を決定する現金決定手段とを有するコンピータシステムを備えるのに対して、引用例1発明では、資金センタは、営業店舗で釣銭として準備する現金を金種毎の数量で表した営業店舗からの釣銭データを入力して釣銭作成を制御する制御部に接続された釣銭用棒金作成機を備える点。

[相違点2]
本願発明では、資金センタが、上記コンピュータ・システムに加えて、当該コンピュータ・システムから、営業店舗に事前に提供された釣銭の金額と、当該釣銭運用日の前記営業店舗の売上金を受信し、前記営業店舗から回収された回収金から、前記釣銭の金額を減算した減算結果が前記売上金に等しいか否か精査し、回収金の中から、以降で用いる釣銭用棒金を差し引く精査端末を備えるのに対して、引用例1発明では、資金センタが、営業店舗から回収された回収金と入金伝票に記載された金額とが等しいか否かを精査する精査機を備え、精査した回収金から釣銭用棒金を作成する点。

[相違点3]
本願発明では、回収金から釣銭用棒金を差し引いた金額を金融機関に対する納金とすることができるのに対して、引用例1発明では、精査した回収金から釣銭用棒金を作成するが、金融機関に納金するとの限定はない点。

4.判断

上記相違点について検討する。

相違点1について、

引用例2に、店舗で釣銭として準備する現金を金種毎の数量で表した現金管理情報を記録する釣銭パターンテーブル及び釣銭モードテーブルを記憶した記憶装置と、前記釣銭パターンテーブル及び釣銭モードテーブルに記録された現金管理情報に基づいて、前記店舗で釣銭として準備する現金の金種と数量を決定する現金決定手段とを有するコンピュータシステムが記載されている。

また、引用例2に記載された、上記コンピュータシステムは、POSシステムに設けられたものであって、POSシステムにおいて、本部が各店舗の売上を管理できるように、本部に売上管理テーブルを備えることは従来周知である。

したがつて、引用例1発明において、資金センタが、上記相違点1に係る本願発明のコンピュータシステムを備えることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点2について、

本部で、コンピュータシステムにより、各店舗の売上金等の情報を受信することは、POSシステムにおいて従来周知である。

また、回収金から事前に提供された釣銭の金額を減算することにより売上金を算出することも従来周知である。

更に、入金伝票に記載された金額、事前に提供された釣銭の金額、及び売上金は、精査の前にとりあえず確定したものであり、かつ、入金伝票に記載された金額は、事前に提供された釣銭の金額と売上金とを合わせたものであるから、回収金と入金伝票に記載された金額とを精査することと、回収金から事前に提供された釣銭の金額を減算した結果と売上金とを精査することとは、精査の点で実質的に同じである。

したがって、引用例1発明において、資金センタが、営業店舗から回収された回収金と入金伝票に記載された金額とが等しいか否かを精査し、精査した回収金から釣銭用棒金を作成することに代えて、上記相違点2に係る本願発明の精査端末を備えることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点3について、

手元にある現金を金融機関に納金することは従来周知である。

したがって、引用例1発明において、「回収金から釣銭用棒金を差し引いた金額を金融機関に対する納金とすることができる」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことでる。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1、引用例2の記載及び周知技術から当業者が予測できた範囲内のものである。

5.むすび

本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-20 
結審通知日 2005-01-26 
審決日 2005-02-08 
出願番号 特願平11-285647
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G07G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子 浩明  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
発明の名称 現金管理システム  
代理人 後藤 洋介  
代理人 池田 憲保  

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