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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) F23J
管理番号 1114177
審判番号 無効2000-35593  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-03-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-10-26 
確定日 2002-05-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第2137946号発明「排ガス処理方法及び排ガス処理装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2137946号の請求項1及び請求項2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2137946号の請求項1及び2に係る発明は、平成3年9月12日に特許出願され、平成10年8月21日に特許の設定登録がされたもので、これに対し、平成12年10月26日に請求人 日本鋼管株式会社より無効審判の請求がなされ、平成13年3月12日に審判事件答弁書が、平成13年5月11日に弁駁書がそれぞれ提出されたものである。

2.本件発明
本件特許第2137946号の請求項1及び2に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件第1発明」、請求項2に係る発明を「本件第2発明」という。)は、願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書及び図面」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 焼却炉から排出された排ガスを冷却する工程、冷却された排ガスから煤塵を第一バグフィルタで除去する工程、煤塵除去後の排ガスを中和する工程、次いで中和された排ガスを第二バグフィルタで浄化する工程、を有することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項2】 焼却炉から排出された排ガスを冷却するガス冷却装置、該ガス冷却装置で冷却した排ガスから煤塵を除去する第一バグフィルタ、該第一バグフィルタを通過した排ガスに中和剤を加えて排ガス中の酸性ガスを中和反応させる反応塔、及び該反応塔から排出した排ガスを浄化する第二バグフィルタを有することを特徴とする排ガス処理装置。」

また、特許明細書では、本件第1発明及び本件第2発明に関し、
【発明が解決しようとする課題】として、
「しかしながら、飛灰を焼却灰と共に高温で溶融処理した場合、飛灰に含まれている塩類や重金属が揮散してダストが発生するうえに、塩化物が分解してHClを発生するので、再び消石灰を噴霧して溶融排ガスを処理しなければならない。このように塩化物や重金属類を多量に含む飛灰の処理には困難を伴う。そこで、従来からこの処理の困難な飛灰を如何にして少なくするかが課題であった。
そこで、この発明の目的は、上記課題を解決することであり、処理・処分が容易な煤塵と処理・処分が困難な飛灰とを分別して集積し、且つ飛灰の発生量を低減することが可能であり、その処理コストも全体として低廉なものにすることのできる排ガス処理方法及び排ガス処理装置を提供することである。」(段落【0007】及び段落【0008】)と記載され、
【作用】として、
「この発明は、上記のように構成されているので、次のように作用する。即ち、燃焼炉内で燃焼時に発生した排ガスは、ガス冷却装置で約200℃まで冷却した後に、第一バグフィルタに導入される。そして、最初に、第一段階として第一バグフィルタによって排ガス中の煤塵が主に除去される。煤塵が除去された排ガスは反応塔に導入され、そこで排ガス中の酸性ガスは消石灰等の中和剤を加えてることで中和反応を起こす。続いて、第二段階として、この反応生成物は第二バグフィルタによって除去される。その際、未反応の消石灰や重金属等も前記第二バグフィルタによって除去されて、排ガスは清浄化される。
上記のように、第一段階で煤塵が除去され、第二段階で酸性ガスや重金属類等を含む飛灰が除去されるので、従来に比べて量が大幅に低減する。」(段落【0012】及び段落【0013】)と記載され、
【発明の効果】として、
「この発明による排ガス処理方法及び排ガス処理装置は、上記のように構成されているので、次のような効果を有する。即ち、この発明は、焼却炉から排出された排ガスをガス冷却装置で冷却した排ガスから煤塵を除去する第一バグフィルタ、該第一バグフィルタを通過した排ガスに中和剤を加えて排ガス中の酸性ガスを中和反応させる反応塔、及び該反応塔から排出した排ガスを浄化する第二バグフィルタを有するので、前記焼却炉から排出された排ガスを冷却し、冷却された排ガスから煤塵を前記第一バグフィルタで除去した後に、煤塵除去後の排ガスに中和剤を噴霧し、続いて中和剤を噴霧された排ガスを前記第二バグフィルタで清浄化することができる。従って、排ガスから前記第一バグフィルタで主に煤塵が除去された分だけ、前記第二バグフィルタで除去される飛灰の量は減少する。そして、前記第一バグフィルタ3によって除去された煤塵は、焼却灰と混合して容易に溶融処理することができる。それ故に、溶融処理及び埋立処分の困難な飛灰、特に、塩化物を多量に含む飛灰の量を大幅に低減させることができ、従来に比べて、処理コストを低廉なものにすることができる。
また、前記第一バグフィルタでは高速濾過を行なうので、パルスジェット型バグフィルタを使用でき、十分な煤塵の除去を達成できる。また、前記第二バグフィルタでは低速濾過を行なうので、前記反応塔内で反応しなかった未反応の酸性成分、未反応の消石灰、或いはダイオキシン類、重金属類等を確実に排除できる。」(段落【0023】及び段落【0024】)と記載されている。

3.当事者の主張
3-1請求人の主張
請求人 日本鋼管株式会社は、特許第2137946号発明の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、いずれも、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、同法第123条第1項第2号の規定によって無効とされるべきである、と主張するとともに証拠方法として下記甲第1号証乃至甲第7号証を提出している。
(証拠方法)
甲第1号証:米国特許第3892543号明細書
甲第2号証:特開平1-155937号公報
甲第3号証:「ウェイストイノベーション21Cプロジェクト、高効率か つコンパクトな排ガス処理技術開発プロジェクト、平成元年 度報告書」平成2年3月 財団法人廃棄物研究財団発行 第 84頁、第98頁
甲第4号証:日本粉体工業協会編「バグフィルターハンドブック」昭和5 2年2月10日 株式会社産業技術センター発行 第114 頁、第118頁〜第121頁、第182頁〜第186頁、第 218頁〜第221頁
甲第5号証:被請求人が提出した、特許異議申立人 福岡 栄夫に対する 平成8年11月15日付特許異議答弁書
甲第6号証:「第10回 全国都市清掃研究発表会 講演論文集」昭和6 3年12月21日 社団法人全国都市清掃会議発行 第17 0頁〜第172頁
甲第7号証:「都市清掃」 第39巻、第153号 昭和61年8月25 日発行 第376頁〜第383頁

3-2被請求人の主張
これに対し、被請求人 株式会社荏原製作所は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、いずれも、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また甲第1号証と甲第2号証を組み合わせることは決して容易ではなく、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない、と主張するとともに証拠方法として下記乙第1号証乃至乙第4号証を提出している。
(証拠方法)
乙第1号証:1993年3月24日 化学工業日報社発行 「ばいじん処 理マニュアル」 第73頁、第74頁
乙第2号証:米国特許第3834123号
乙第3号証:八女西部クリーンセンター パンフレット
乙第4号証:廃棄物処理施設構造指針解説 第200頁、第201頁

4.甲各号証記載の発明
4-1 甲第2号証記載の発明
甲第2号証には、
「ごみ焼却炉排ガスを冷却後、電気集塵器またはサイクロンで除塵するごみ焼却炉の排ガス処理方法において、前記電気集塵器またはサイクロンで除塵された排ガスに中和剤を添加した後、バグフィルタに導入して排ガス中の酸性成分を除去するとともに、前記バグフィルタ内またはバグフィルタに入るまでの排ガス温度を芳香族系塩素化合物の生成温度以下に冷却することを特徴とするごみ焼却炉の排ガス処理方法。」(特許請求の範囲第1項)、
「人体にとって有害な有機塩素化合物、特に、芳香族系塩素化合物、例えばPCDD(ポリ塩素化ジベンゾダイオキシン)、PCDF(ポリ塩素化ジベンゾフラン)等のような高毒性の芳香族塩素系化合物は、農薬の副生物またはごみ焼却の際の2次生成物質として生成され、環境を汚染することが知られている」(第1頁右下欄16行〜第2頁左上欄2行)こと、
「本発明の目的は、ごみ焼却炉排ガス中に含まれる有害な有機塩素化合物、特に芳香族系有機塩素化合物を効率よく除去することができるごみ焼却炉の排ガス処理方法を提供することにある。」(第2頁右上欄4行〜7行)こと、
「本発明者等は、先の出願(例えば特願昭62-70936号)により、前記有害有機塩素化合物の発生プロセスを明らかにした。すなわち本発明者等は、芳香族系塩素化合物は焼却炉からの排ガスの冷却過程で発生すること、およびこの冷却過程での反応には塩化水素が寄与していること等に着目し、排ガス中の酸性成分、特に塩化水素を除去するとともに、前記芳香族系塩素化合物をバグフィルタで捕集することにより、有機塩素化合物濃度を著しく低減できることを見出し、本発明に到達した。」(第2頁右上欄9行〜19行)こと、
「電気集塵器またはサイクロンにより除塵された排ガス中に中和剤を供給することにより、排ガス中の酸性成分と中和剤との接触効率が向上する…(略)…排ガス中の塩化水素が除去されると芳香族系塩素化合物の生成も抑制される。また、バグフィルタ内またはバグフィルタに入るまでの排ガス温度を芳香族系塩素化合物の生成温度以下(例えば150〜250℃以下)に冷却することにより、前記中和反応における反応生成物とともに、芳香族系塩素化合物がバグフィルタで除去される。」(第2頁右下欄2行〜14行)こと、
「本発明において、電気集塵器は公知のものでよいが、特に低温型のものが好ましい。」(第3頁右上欄10行〜11行)こと、
「また中和剤は、消石灰(Ca(OH)2 )、生石灰(CaO)、石灰石(CaCO3 )等があげられるがこれらに限定されるものでなく、同様の効果が得られる他の物質でもよいが、煙道内に気流搬送可能な程度の紛状物であることが好ましい。」(第3頁右上欄15行〜20行)こと、
「本発明においては、バグフィルタ内またはバグフィルタ入口までの排ガス温度を芳香族系塩素化合物の生成温度以下、すなわち100〜250℃好ましくは150℃以下に冷却する。100℃よりも低い温度に冷却すると、排ガス中の水分が凝縮してミストとなりバグフィルタ上に付着するので、中和剤が潮解してフィルタの目詰まりが生じる。また、250℃を超えると芳香族系塩素化合物が生じる温度条件に入る。」(第3頁左下欄3行〜11行)こと、
「第1図は、本発明の一実施例を示す装置系統図である。
この装置は、焼却炉1に順次連結されたガス冷却塔2、空気予熱器3、電気集塵器4aおよびバグフィルタ6から主として構成されており、前記電気集塵器4aとバグフィルタ6との間の煙道に中和剤供給管5が連結されている。なお、7はバグフィルタ6の底部に設けられた反応生成物抜出管、9はブロワ、10は煙突、11はバグフィルタ6の空気配管、12はソレノイド弁である。このような構成において、焼却炉1で発生した750〜950℃の燃焼排ガスは、ガス冷却塔2および空気予熱器3で例えば約250〜150℃に冷却された後、電気集塵器4aに入り、排ガス中のダストが補集される。燃焼排ガス中のダスト濃度は、焼却されるごみの種類および燃焼条件に左右されるが、通常6000〜8000mg/Nm3 であり、これが前記電気集塵器4aにより例えば30〜50mg/Nm3 まで除去される。大部分のダストが除去された排ガスは中和剤供給管5から供給される中和剤、例えば紛状のCa(OH)2 と混合され、芳香族系塩素化合物等の有機塩素化合物の発生原因となる酸性成分と前記Ca(OH)2 とが反応しながらバグフィルタ6に入る。反応生成物と未反応のCa(OH)2 は前記バグフィルタ6上にほぼ均一に堆積し、Ca(OH)2 は、ここを通過する排ガス中の酸性成分、例えばHClと次式のように反応する。
2HCl+Ca(OH)2 →CaCl2 +2H2O
このように酸性成分、特にHClが効率よく除去されるので、排ガス中の有害有機塩素化合物濃度が低減される。バグフィルタ内の排ガス温度をできるだけ低く(150〜250℃)することにより、生成する有機塩素化合物、例えばPCDD、PCDF等を物理的に補集することができる。」(第3頁右下欄2行〜第4頁左上欄17行)こと、
「本実施例によれば、電気集塵器4aにより予めダストが除去された排ガス中に、酸性成分中和剤として粉状Ca(OH)2 を供給することにより、バグフィルタ6上にはダスト濃度が極めて低いCa(OH)2 層が形成されるので、排ガスと前記Ca(OH)2 との接触効率が向上し、排ガス中の酸性成分(特にHCl)が高効率で除去され、有害な有機塩素化合物の発生が抑制されるとともに、バグフィルタ6により芳香族系塩素化合物を低温下で高効率で補集することができる。排ガスと中和剤との接触効率の向上により、中和剤添加量は例えば前記酸性成分の1〜3倍当量で十分である。」(第4頁右上欄1行〜13行)こと、が図面とともに記載されている。
上記の記載及び図面の記載からみて、甲第2号証には、
「焼却炉1から排出された燃焼排ガスをガス冷却塔2および空気予熱器3で約150〜250℃に冷却する工程、冷却された燃焼排ガスからダストを電気集塵器4aまたはサイクロン4bで除去する行程、ダスト除去後の燃焼排ガスを消石灰(Ca(OH)2 )等の中和剤で中和する工程、中和された燃焼排ガスをバグフィルタ6で浄化する工程、を有することを特徴とするごみ焼却炉の排ガス処理方法」、
及び、
「焼却炉1から排出された燃焼排ガスを約150〜250℃に冷却するガス冷却塔2および空気予熱器3、ガス冷却塔2および空気予熱器3で冷却された燃焼排ガスからダストを除去する電気集塵器4aまたはサイクロン4b、電気集塵器4aまたはサイクロン4bを通過しダストを除去した燃焼排ガスに消石灰(Ca(OH)2 )等の中和剤を加えて燃焼排ガス中の酸性成分を中和反応させる中和剤供給管5及びその下流の反応部、及び中和剤を加え中和反応した反応生成物、芳香族系塩素化合物及び未反応中和剤などを補集し燃焼排ガスを浄化するバグフィルタ6を有することを特徴とするごみ焼却炉の排ガス処理装置」
が記載されている。

4-2 甲第3号証記載の発明
甲第3号証には、
「これまでの研究結果において、酸素過剰雰囲気中でEP灰を300℃付近に保持すると、かなり多量のダイオキシンが生成されることやコロナ放電がダイオキシン前駆物質の生成を促進させることなどが報告されている。装置内で上記の状況が生じている電気集じん器においては、ダイオキシンの生成があるものと推定されている。この現象が確認された実測例も報告されている。
一方、バグフィルターについては、低温であることや微粒子の捕集性能が優れていること等から、ダイオキシンの除去効果が高いことが指摘されている。」(第84頁5行〜11行)こと、が記載されている。

4-3 甲第1号証記載の発明
甲第1号証には、
「本発明の第一の目的は化学的に汚染された粒子を含むガス流、特に汚染ガス(二酸化イオウなど)、エアロゾル粒子などを含む炉排ガスを処理する改良法を提供することである。」(第2欄18行〜22行)こと、
「汚染されたダスト含有排ガスは、ダクトシステム2から供給され、ホッパ3を通過し、そして、フィルタ7を通過し、浄化されたガスは清浄ガス室へ移動し、そこからダクト9に導かれていく。噴射ガスは弁13でコントロールされているダクト12から室8、フィルタ7、空間5等を通って一気に吹き出されてフィルタ表面から煤塵を除去し、フィルタを定期的に綺麗にし、ホッパ3に蓄積する粒子はコンベア4により導出される。」(第5欄21行〜30行)こと、
「予備浄化されて粒子はなくなっているが有害成分がまだ含まれているガス流は、ダクト9によって、全て第一フィルタにおいて述べたようにポケットフィルタ7a、汚染ガス充満室5a、溝付き壁6a、清浄ガス室8a、ロート型フィーダ3aおよびコンベア4aを有する第二フィルタハウジング1aに運ばれる。第二フィルタの上流には計量器を有するホッパ10が設けられており、それによって固体の添加剤をガス流に供給できるようになっている。」(第5欄49行〜57行)こと、
また、第一フィルタ7に関し、「図面において、私は、第一の、ポケット、バグまたはチューブフィルタ……を示す。」(第5欄7行〜8行)こと、
また、第二フィルタ7aに関し、「それによって、ポケットまたはバグまたはチューブフィルタから転落して引き抜かれる添加剤含有粒子の量は……」(第2欄52行〜56行)こと、
「粒子は定期的に、例えば振動器14を通じての揺すぶりあるいは第一フィルタで述べたようなガス流の逆流によって除去され」(第5欄61行〜64行)ること、が図面とともに記載されている。

5.本件第1発明について
5-1 対比
本件第1発明と甲第2号証記載の発明とを対比すると、甲第2号証記載の発明における「焼却炉1」、「燃焼排ガス」、「ガス冷却塔2および空気予熱器3で約150〜250℃に冷却する工程」、「ダスト」、「消石灰(Ca(OH)2 )等の中和剤で中和する工程」は、その機能に照らして本件第1発明における「焼却炉」、「排ガス」、「冷却する工程」、「煤塵」、「中和する工程」に相当する。また、甲第2号証記載の発明における「バグフィルタ6」に関し、甲第2号証記載の発明では、それ以外にバグフィルタを有さないが、「バグフィルタ6」の上流側にはダストを除去する工程(ダストを除去する装置)が設けられおり、該「バグフィルタ6」は、その機能からみて本件第1発明における「第二バグフィルタ」に相当するものと認められる。したがって、上記両者は、
「焼却炉から排出された排ガスを冷却する工程、冷却された排ガスから煤塵を除去する工程、煤塵除去後の排ガスを中和する工程、次いで中和された排ガスを第二バグフィルタで浄化する工程、を有することを特徴とする排ガス処理方法」
の点で一致し、下記相違点(1)で相違している。
相違点(1)
冷却された排ガスから煤塵を除去する工程が、本件第1発明では、バグフィルタ(第一バグフィルタ)で除去するのに対し、甲第2号証記載の発明では、電気集塵器またはサイクロンで除去する点。

5-2 当審の判断
そこで、上記相違点について以下検討する。
バグフィルタは、電気集塵器やサイクロンとともに、排ガス等から煤塵を除去する集塵器として周知の代表的なものであるとともに各集塵器はその目的に応じ代替可能であることは従来周知であり(例えば、電気書院編集部編「公害防止技術マニュアル」株式会社電気書院 昭和52年3月20日発行 第45頁〜第51頁、第56頁〜第59頁、松本敬信監修「公害防止装置・機器便覧」株式会社ラテイス 昭和46年9月7日第2刷発行 第159頁〜第176頁 参照)、また甲第3号証には、排ガスからの煤塵の除去に関し、バグフィルタについて、低温であることや微粒子の捕集性能が優れていること等からダイオキシンの除去効果が高いことが指摘されている、すなわち甲第3号証には、煤塵を除去する集塵器としてバグフィルタの使用が示唆され、その効果も高いことが示されている。さらに甲第1号証には、汚染されたダスト含有排ガスは、第一フィルタ7を通過して除塵、浄化され、該除塵、浄化されたガスは、ダクト9等を介し、かつホッパ10から固体の添加剤(例えば消石灰等)が供給された後第二フィルタ7aにより浄化されること、さらには第一フィルタ7及び第二フィルタ7aはともにポケットまたはバグまたはチューブフィルタを用いること、が記載されている。すなわち甲第1号証には、汚染されたダスト含有排ガスの除塵及び浄化のために、第一フィルタ7及び第二フィルタ7aはともにバグフィルタを用いることが示唆されているということができる。
そして、甲第2号証記載の発明において、燃焼炉から排出された高温の排ガスはガス冷却塔2および空気予熱器3により約150〜250℃に冷却する工程を有し、該排ガスを冷却した後、電気集塵器またはサイクロンに導入して除塵するものであって、該電気集塵器またはサイクロンにかえてバグフィルタを適用するのに何ら阻害する理由が認められない。してみると上記「バグフィルタは、電気集塵器やサイクロンとともに、排ガス等から煤塵を除去する集塵器として周知の代表的なものであるとともに各集塵器はその目的に応じ代替可能であることが従来周知である」ことを基礎とし、甲第3号証及び甲第1号証の上記記載事項に基づいて、甲第2号証記載の発明において、電気集塵器またはサイクロンにかえてバグフィルタを採用すること、すなわち相違点(1)における本件第1発明の構成とすることは、いずれも排ガスを除塵し、浄化する技術であることから当業者が容易に想到し得たことである。

また、本件第1発明が奏する作用、効果は、甲第2号証、甲第3号証及び甲第1号証に記載の発明から容易に予測できたものである。

したがって、本件第1発明は、甲第2号証、甲第3号証及び甲第1号証に記載の発明、並びに上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.本件第2発明について
6-1 対比
本件第2発明と甲第2号証記載の発明とを対比すると、甲第2号証記載の発明における「焼却炉1」、「燃焼排ガス」、「ガス冷却塔2および空気予熱器3」は、その機能に照らし本件第2発明における「焼却炉」、「排ガス」、「ガス冷却装置」に相当する。また、甲第2号証記載の発明における「バグフィルタ6」に関し、甲第2号証記載の発明では、それ以外にバグフィルタを有さないが、「バグフィルタ6」の上流側にはダストを除去する電気集塵器またはサイクロンが設けられおり、該「バグフィルタ6」は、その機能からみて本件第2発明における「第二バグフィルタ」に相当するものと認められる。したがって、上記両者は、
「焼却炉から排出された排ガスを冷却するガス冷却装置、該ガス冷却装置で冷却した排ガスから煤塵を除去する集塵器、該集塵器を通過した排ガス中に中和剤を加えて排ガス中の酸性ガスを中和反応させる場所(反応部)を通過させ、その後排ガスを浄化する第二バグフィルタを有することを特徴とする排ガス処理装置」の点で一致し、下記相違点(2)及び(3)で相違している。
相違点(2)
本件第2発明では、冷却された排ガスから煤塵を除去する集塵器が、バグフィルタ(第一バグフィルタ)であるのに対し、甲第2号証記載の発明では、電気集塵器またはサイクロンである点。
相違点(3)
本件第2発明では、中和反応させる反応塔を具備するのに対し、甲第2号証記載の発明では、煤塵が除去された排ガス中に中和剤が供給されて中和反応させるものであって、中和反応させる反応塔を具備しない点。

6-2 当審の判断
そこで、上記相違点について以下検討する。
・相違点(2)について
バグフィルタは、電気集塵器やサイクロンとともに、排ガス等から煤塵を除去する集塵器として周知の代表的なものであるとともに各集塵器はその目的に応じ代替可能であることは従来周知であり(例えば、電気書院編集部編「公害防止技術マニュアル」株式会社電気書院 昭和52年3月20日発行 第45頁〜第51頁、第56頁〜第59頁、松本敬信監修「公害防止装置・機器便覧」株式会社ラテイス 昭和46年9月7日第2刷発行 第159頁〜第176頁 参照)、また甲第3号証には、排ガスからの煤塵の除去に関し、バグフィルタについて、低温であることや微粒子の捕集性能が優れていること等からダイオキシンの除去効果が高いことが指摘されている、すなわち甲第3号証には、煤塵を除去する集塵器としてバグフィルタの使用が示唆され、その効果も高いことが示されている。さらに甲第1号証には、汚染されたダスト含有排ガスは、第一フィルタ7を通過して除塵、浄化され、該除塵、浄化されたガスは、ダクト9等を介し、かつホッパ10から固体の添加剤(例えば消石灰等)が供給された後第二フィルタ7aにより浄化されること、さらには第一フィルタ7及び第二フィルタ7aはともにポケットまたはバグまたはチューブフィルタを用いること、が記載されている。すなわち甲第1号証には、汚染されたダスト含有排ガスの除塵及び浄化のために、第一フィルタ7及び第二フィルタ7aはともにバグフィルタを用いることが示唆されているということができる。
そして、甲第2号証記載の発明において、燃焼炉から排出された高温の排ガスはガス冷却塔2および空気予熱器3により約150〜250℃に冷却され、その後、電気集塵器またはサイクロンに導入して除塵するものであるから、該電気集塵器またはサイクロンにかえてバグフィルタを適用するのに何ら阻害する理由が認められない。してみると上記「バグフィルタは、電気集塵器やサイクロンとともに、排ガス等から煤塵を除去する集塵器として周知の代表的なものであるとともに各集塵器はその目的に応じ代替可能であることが従来周知である」ことを基礎とし、甲第3号証及び甲第1号証の上記記載事項に基づいて、甲第2号証記載の発明において、電気集塵器またはサイクロンにかえてバグフィルタを採用すること、すなわち相違点(2)における本件第2発明の構成とすることは、いずれも排ガスを除塵し、浄化する技術であることから当業者が容易に想到し得たことである。
・相違点(3)について
反応を起こさせるために反応塔を設けることは化学反応における常套手段にすぎず、反応塔を設けることは従来周知である。
してみると、甲第2号証記載の発明において、中和反応させる反応塔を具備させることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、上記相違点を総合しても格別の作用、効果を奏するものとは認められず、本件第2発明が奏する作用、効果は、甲第2号証、甲第3号証及び甲第1号証に記載の発明、並びに上記周知の事項から容易に予測できたものである。

したがって、本件第2発明は、甲第2号証、甲第3号証及び甲第1号証に記載の発明、並びに上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本件第1発明及び本件第2発明は、いずれも甲第2号証、甲第3号証及び甲第1号証に記載の発明、並びに上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件第1発明及び本件第2発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-03-08 
結審通知日 2002-03-13 
審決日 2002-03-26 
出願番号 特願平3-260443
審決分類 P 1 112・ 121- Z (F23J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷川 吉雄阿部 寛川向 和実  
特許庁審判長 滝本 静雄
特許庁審判官 岡本 昌直
大槻 清寿
登録日 1998-08-21 
登録番号 特許第2137946号(P2137946)
発明の名称 排ガス処理方法及び排ガス処理装置  
代理人 城山 康文  
代理人 大野 聖二  
代理人 森田 耕司  
代理人 田中 政浩  
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