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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23Q
管理番号 1114195
審判番号 不服2003-12122  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-10-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-27 
確定日 2005-03-25 
事件の表示 平成 4年特許願第244124号「高電流電気部品プラグ」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年10月12日出願公開、特開平 5-264035〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年8月20日(パリ条約による優先権主張 1991年8月28日、米国)の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成15年6月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりの次のものと認める。

「【請求項1】 頑丈な取付部(32)を有する弾力性のあるクリップ接触片(34)と、接地されるシェル(12)とを備えた、自動車のシガーライタレセプタクル(10)のソケットに差し込めるようにした電気部品プラグ(38)であって、電気コード(86)との接続用の回路機構(82)を備えるとともに、この回路機構(82)と接続するばね付勢接点プランジャ(48)を内側端に備え、この接点プランジャ(48)は、プラグ(38)をシガーライタレセプタクル(10)内に深く位置付けると、ばね圧により、シガーライタレセプタクルの接触片(34)の頑丈な取付部(32)に、当たって接触するようになっている電気部品プラグにおいて、保持段部(42)をこのプラグ(38)の内側端に設け、この保持段部(42)は、シガーライタレセプタクル(10)の弾力性のあるクリップ接触片(34)と噛み合い、このクリップ接触片により摩擦力で取り込み保持されることによって、シガーライタレセプタクル(10)内の深い位置にプラグを保持され、前記プランジャは、外側面に環状フランジ(52)を備え、前記保持段部(42)には、環状フランジがスライドする孔(46)が、前記内側端とは反対側に形成され、前記プラグの保持段部(42)は、前記プラグの該一端に近接して設けられ、前記環状フランジは、前記内側端とは反対側で、圧縮ばね(50)との直接接触により前記内側端に押圧されることを特徴とする電気部品プラグ。
【請求項2】 閉塞端(14)を有し、他方端には、電気プラグ(38)を収容してこれを保持できる開口を有する管状レセプタクルのシェル(12)であって、側壁に電気接触機構(18)を持つとともに、頑丈な取付部(32)を有する弾力性のある内側電気接触片(34)を持ち、弾力性のある内側電気接触片(34)は、シェル(12)の閉塞端(14)内に絶縁状態で保持されるシェルを備え、プラグ(38)には、その側部に、シェル(12)の電気接触機構(18)との電気接続を行うばね片機構(72)を設け、プラグ(38)は、シェル(12)に差し込めるようになっており、プラグ(38)は、電気コード(86)との接続を行う回路機構(82)を持つとともに、その内端に、回路機構(82)と接続するばね付勢接点プランジャ(48)を持ち、接点プランジャ(48)は、プラグ(38)をレセプタクル(10)内に深く位置付けると、ばね圧により、シガーライタレセプタクル(10)の接触片(34)の頑丈な取付部(32)と接触できるようになっている、電気レセプタクルとプラグの分離自在な構成体において、プラグ(38)の内端に保持段部(42)を設け、この保持段部(42)は、シガーライタレセプタクル(10)の弾力性あるクリップ接触片(34)と噛み合いこの接触片により摩擦力で取り込み保持されることにより、レセプタクル(10)内の深い位置にプラグ(38)を保持でき、前記プランジャは、外側面に環状フランジ(52)を備え、前記保持段部(42)には、環状フランジがスライドする孔(46)が、前記内側端とは反対側に形成され、前記プラグの保持段部(42)は、前記プラグの該一端に近接して設けられ、前記環状フランジは、前記内側端とは反対側で、圧縮ばね(50)との直接接触により前記内側端に押圧されるることを特徴とする電気レセプタクルとプラグの分離自在な構成体。」
(なお、請求項1及び2に記載された「前記環状フランジは、前記内端側とは反対側で、」及び「前記内端側に押圧されること」は、それぞれ「前記環状フランジは、前記内側端とは反対側で、」及び「前記内側端に押圧されること」の誤記と認めて、上記のように認定した。また、以下、「請求項1」に係る発明を、「本願発明1」という。)

2.引用刊行物
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、次のものである。

引用文献1:実願昭56-16659号(実開昭57-132965号)のマイクロフィルム。

3.引用文献に記載された事項
引用文献1には、シガーソケット内に差す込んで電源を取出すのに使用するシガレットプラグに関して、図面とともに、次の事項が記載されている。

・「第1図は一般的なシガーソケット1を示すもので、図示の場合にはシガレットライタではなく、カークリーナやカーポット等の電源取出し用のシガレットプラグを示している。このシガーソケット1は、導電性の筒状ケース2に電源の他側(たとえばマイナス側)を接続すると共に、筒状ケース2の閉塞端部に絶縁体3を介して導電性の端子4および係止部5aを有するバイメタル5をかしめ固定し、前記端子4に電源の片側(たとえばプラス側)を接続した構造をなしている。」(1頁19行〜2頁8行)
・「第3図ないし第5図は本考案の一実施例を示すもので、図示例のシガレットプラグ11は、そのプラグ本体12の一端側すなわち第3図および第4図の左端側先端に開口12aを有し、この開口12aの近傍に複数の係止孔12bを有している。そして、前記開口12a内に絶縁体13を嵌合し、この絶縁体13に形成した爪13aを前記係止孔12b内で係止させて絶縁体13の抜け止めをおこなっている。……また、絶縁体13の略中央部分には貫通孔13cを有し、この貫通孔13c内に片側(たとえばプラス側)接点14を摺動可能に挿通し、その一端側にストップリング15を固定して片側接点14の抜けを防止している。さらに、片側接点14と絶縁体13との間には圧縮ばね16を配設し、片側接点14が常に第3図左方向に押付けられて第5図に示すシガーソケット21の端子24との間で適切な接触圧力が得られるようにし、この片側接点14に電源コード19の一方の端部を電気的に接続している。また、前記絶縁体13の外周部には、第5図に示すシガーソケット21のバイメタル25の係止部25a、25aと係合しうる係合部13dを形成している。さらに、プラグ本体12の側面に複数(図示例の場合は2個)の開口孔12dを形成し、この開口孔12dより導電性の板ばね材からなる他側(たとえばマイナス側)接点26を突出させ、この他側接点26に前記電源コード19の他側の端部を電気的に接続している。……前記シガーソケット21は、第5図に示すように、導電性の筒状ケース22に電源の他側(たとえばマイナス側)を接続すると共に、筒状ケース22の閉塞端部に絶縁体23および27を介して導電性の端子24および係止部25aを有するバイメタル25を固定し、前記端子24に電源の片側(たとえばプラス側)を接続した構造をなしている。」(4頁11行〜6頁14行)
・「したがって、第5図に示すように、シガーソケット21内にシガレットプラグ11を差込んだ状態では、バイメタル25の係止部25aが絶縁体13の係合部13dに係合し、シガレットプラグ11が抜け出るのを良好に防ぐと同時に、圧縮ばね16によって端子24と片側接点14との間の接触圧力を十分の保持し、これによって電源の片側の接続を良好になすと共に、板ばねよりなる他側接点26の復元力によって筒状ケース22を押圧して電源の他側の接続をも良好になすことができる。したがって、バイメタル25には電流が全く流れないため、従来のように、バイメタルの電気抵抗に基づく発熱が全くなく、これによるバイメタルの熱変形も生じないので、バイメタル25によるシガレットプラグ11の保持を良好なものとすることができる。」(6頁14行〜7頁9行)

4.対比・判断
上記摘示事項からみて、引用文献1には、
「導電性の端子24および係止部25aを有するバイメタル25をかしめ固定し、電源のマイナス側に接続される導電性の筒状ケース22を備えた自動車用のシガーソケット21に差し込めるようにしたシガレットプラグ11であって、電源コード19に接続するとともに、圧縮ばね16付勢片側接点14を内側端に備え、この片側接点14は、シガレットプラグ11を筒状ケース22内に深く位置付けると、圧縮ばね16のばね圧により、筒状ケース22のバイメタル25の固定部の導電性の端子24に当たって接触するようになっているシガレットプラグ11において、このシガレットプラグ11の内側端に、絶縁体13の係合部13dを設け、この絶縁体13の係合部13dは、筒状ケース22のバイメタル25の係止部25aと係合し、保持されることによって、筒状ケース22内に深い位置にシガレットプラグ11を保持し、前記絶縁体13には、片側接点14がスライドする貫通孔13cが形成され、前記係合部13dは、前記シガレットプラグ11の内側端に近接して設けられ、圧縮ばね16が片側接点14の内側端とは反対側で直接接触により前記内側端に押圧されたシガレットプラグ。」
が記載されているものと認められる。

《本願発明1について》
そこで、本願発明1と引用文献1に記載されたものとを対比すると、
(a)引用文献1に記載されたバイメタル25をかしめ固定している端子24は、シガレットプラグ11の着脱操作によってバイメタル25、端子24自体が脱落することがないような耐久性を備えていることは当然のことであるから、引用文献1に記載された「導電性の端子24」は、本願発明1の「頑丈な取付部(32)」に相当しているものと認められる。
(b)引用文献1に記載されたバイメタル25の係止部25aには、シガレットプラグ11の絶縁体13の係止部13aが着脱係合して保持されるものであるから、係止部25aを有するバイメタル25に、弾力性があることは明らかであり、引用文献1に記載された「係止部25aを有するバイメタル25」が、本願発明1の「弾力性のあるクリップ接触片(34)」に相当しているものと認められる。
(c)引用文献1に記載された「電源のマイナス側に接続される導電性の筒状ケース22」は、本願発明1の「接地されるシェル(12)」に相当しているものと認められる。
(d)引用文献1に記載された「シガーソケット21」は、本願発明1の「シガーライタレセプタクル(10)のソケット」に相当しているものと認められる。
(e)引用文献1に記載された「シガレットプラグ11」は、本願発明1の「電気部品プラグ(38)」に相当しているものと認められる。
(f)引用文献1に記載された「圧縮ばね16付勢片側接点14」は、本願発明1の「ばね付勢接点プランジャ(48)」に相当しているものと認められる。
(g)引用文献1に記載された「絶縁体13の係合部13d」は、本願発明1の「保持段部(42)」に相当しているものと認められる。
(h)引用文献1に記載された「この係合部13dは、筒状ケース22のバイメタル25の係止部25aと係合し、保持されること」は、本願発明1の「この保持段部(42)は、シガーライタレセプタクル(10)の弾力性のあるクリップ接触片(34)と噛み合い、このクリップ接触片のより摩擦力で取り込み保持されること」に相当しているものと認められる。

そうすると、本願発明1と引用文献1に記載されたものとは、次の点で一致しているものと認められる。
〈一致点〉
「頑丈な取付部(32)を有する弾力性のあるクリップ接触片(34)と、接地されるシェル(12)とを備えた、自動車のシガーライタレセプタクル(10)のソケットに差し込めるようにした電気部品プラグ(38)であって、電気コード(86)を備えるとともに、ばね付勢接点プランジャ(48)を内側端に備え、この接点プランジャ(48)は、プラグ(38)をシガーライタレセプタクル(10)内に深く位置付けると、ばね圧により、シガーライタレセプタクルの接触片(34)の頑丈な取付部(32)に、当たって接触するようになっている電気部品プラグにおいて、保持段部(42)をこのプラグ(38)の内側端に設け、この保持段部(42)は、シガーライタレセプタクル(10)の弾力性のあるクリップ接触片(34)と噛み合い、このクリップ接触片により摩擦力で取り込み保持されることによって、シガーライタレセプタクル(10)内の深い位置にプラグを保持され、前記プラグの保持段部(42)は、前記プラグの該一端に近接して設けられる電気部品プラグ。」

しかし、次の点で相違している。
〈相違点〉
・相違点1
電気コード(86)と、ばね付勢接点プランジャ(48)とが、本願発明1では、「電気コード(86)との接続用の回路機構(82)を備えるともとに、この回路機構(82)と接続するばね付勢接点プランジャ(48)」を備えているのに対し、引用文献1に記載されたものは、「片側接点14に電源コード19の一方の端部を電気的に接続している。」(5頁10〜11行)の記載及び第3図に示されたものから、電気コード(電源コード19)と、ばね付勢接点プランジャ(ばね付勢片側接点14)とが直接接続されている点。
・相違点2
ばね付勢接点プランジャ(48)と保持手段(42)の構成が、本願発明1では、「外側面に環状フランジ(52)を備え、前記保持手段(42)には、環状フランジがスライドする孔(46)が、前記内側端とは反対側に形成され、」ているのに対し、引用文献1に記載されたものにはこのような構成が記載されていない点。
・相違点3
ばね付勢接点プランジャ(43)のばねの付勢の構成が、本願発明1は、「前記環状フランジは、前記内側端とは反対側で、圧縮ばね(50)との直接接触により前記内側端に押圧される」のに対し、引用文献1に記載されたものは、片側接点14と絶縁体13との間に圧縮ばね16を配設して、第3図左方向(内側端)に押付けている点。

そこで、この相違点を検討する。
・相違点1について
本願発明1の構成要件である「回路機構(82)」について、その具体的構成が、如何なる構成を含むものなのかを明細書の記載を斟酌して検討すると、その指示番号(82)からみて、「ねじ82」ということができる。そうすると、相違点1の本願発明1の構成は、その具体的な構成において、電気コード(86)との接続用のねじ(82)を備え、このねじ(82)とばね付勢接点プランジャ(48)とを接続する構成を含むものといえる。
そこで、この「ねじ」による接続用の回路機構について検討すると、電気コードと、(ソケットに差し込む)プラグとを接続する手段として、一般に、ねじを用いてプラグの金具に電気コードを固定し、両者を接続するようなことは、周知技術であるし、また、自動車のシガレットライターの差込口に挿入して機器の電源を得るカープラグにおいても、例えば、実願昭61-47182号(実開昭62-160477号)のマイクロフィルムには、カープラグの接点端子3(「ばね付勢接点プランジャ」に相当する)と、リード線8とを「ネジ14」で接続するものが示されているから、相違点1の構成は、プラグと電気コードとを接続する周知技術から、当業者が容易に想到し得たものといえる。

・相違点2について
ばね付勢接点プランジャの構成として、該プランジャの外側面に環状フランジを備え、該プランジャの保持手段に、該環状フランジがスライドする孔を形成したものは、例えば、実願昭61-97326号(実開昭63-3078号)のマイクロフィルム(第1図の電極棒11と絶縁部材10の構成参照)、実願昭58-166472号(実開昭60-74346号)のマイクロフィルム(第3図の電源入力端子12と保持具11の構成参照)、実願昭55-130111号(実開昭57-53585号)のマイクロフィルム(第2図の接触子13と前部ケース11Aの構成参照)、実願昭55-124839号(実開昭57-51267号)のマイクロフィルム(図面の先端接触子1と前端部のカープラグカバー7の構成参照)、実願昭63-13597号(実開平1-119187号)のマイクロフィルム(第1図のプラグ側(+)端子8と先端部にフランジ23を設けた外側筒22の構成参照)、に示されるように周知な構造である。
そうすると、これらの周知な構造を斟酌すれば、引用文献1に示されたばね付勢された片側接点14に代えて、前記周知な構造のばね付勢接点プランジャとすることによって、相違点2の本願発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものといえる。

・相違点3について
外側面に環状フランジを設けたばね付勢接点プランジャは、上記相違点2において検討したように周知な構造である。そして、その環状フランジに直接圧縮ばねを接触させ、該プランジャを内側端に押圧するようにしたものも、上記相違点2に例示した刊行物の各々によって周知な構造といえるから、相違点3の構成も格別なものではない。

そして、本願発明1の効果も、引用文献1に記載されたもの及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得たものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1に記載されたもの及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-12 
結審通知日 2004-10-19 
審決日 2004-11-04 
出願番号 特願平4-244124
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長清 吉範松下 聡関口 哲生  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
発明の名称 高電流電気部品プラグ  
代理人 小川 利春  
代理人 山本 量三  

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