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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B04B
管理番号 1114248
審判番号 不服2002-4264  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-12 
確定日 2005-03-23 
事件の表示 平成 6年特許願第265600号「遠心分離機」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月21日出願公開、特開平 8-126852〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年10月28日に出願した特許出願であって、平成14年1月28日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。
2.平成14年3月12日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成14年3月12日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正により、平成12年2月10日付け手続補正書により補正された本願明細書の【特許請求の範囲】、段落【0007】、【0011】及び【符号の説明】が、次のように補正された。なお、平成12年8月25日付け手続補正書でした補正は、平成14年1月28日付けで却下された。
(a)【特許請求の範囲】【請求項1】試料と、該試料を内蔵する遠心管と、該遠心管と質量的にほぼ等しいダミー遠心管と、該ダミー遠心管と該遠心管を収納可能なロータとを備えた遠心分離機において、ダミー遠心管挿入穴を有する上面部と磁石を有する側面部とから成り且つ前記ダミー遠心管を保持する収納体を、前記遠心分離機の側面または全面に着脱可能に設けることを特徴とする遠心分離機。
(b)【0007】【課題を解決するための手段】上記目的は、試料と、該試料を内蔵する遠心管と、該遠心管と質量的にほぼ等しいダミー遠心管と、該ダミー遠心管と該遠心管を収納可能なロータとを備えた遠心分離機において、ダミー遠心管挿入穴を有する上面部と磁石を有する側面部とから成り且つ前記ダミー遠心管を保持する収納体を、前記遠心分離機の側面または全面に着脱可能に設けることにより達成される。
(c)【0011】【発明の効果】本発明によれば、ダミー遠心管挿入穴を有する上面部と磁石を有する側面部とから成り且つ前記ダミー遠心管を保持する収納体を、前記遠心分離機の側面または前面に着脱可能に設けることで、ロータを交換した上でアンバランスが生じた時にダミー遠心管を直ぐに取り出せる使い勝手に優れた収納体を提供することができるので、遠心分離作業の効率向上を図ることができる。
(d)【符号の説明】1は遠心分離機、3は収納体、4,4’はダミー遠心管挿入穴、5は磁石である。
(2)上記本件補正(a)については、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「収納体」について「ダミー遠心管挿入穴を有する上面部と磁石を有する側面部とから成り且つ前記ダミー遠心管を保持する」並びに「前記遠心分離機の側面または全面に着脱可能に設ける」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する)について以下検討する。
(i)引用文献
(ア)引用文献1:実願昭63-171571号(実開平2-91650号)のマイクロフィルムには、次の事項が記載されている。
(ア-1)「(1)遠心分離用ロータと、・・・上記ロータの周縁に対して揺動自在に軸支された複数個の円筒状試験管ホルダーと、・・・各ホルダーの軸心が鉛直方向を向くように上記円筒状試験管ホルダーを固定化するホルダー固定機構と、・・・前記ホルダーに対して遠心分離すべき検体を入れた試験管の挿入および遠心分離終了後の試験管の取出しを行う試験管挿脱機構と、・・・を具備したことを特徴とする検体遠心分離装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(ア-2)「近年、臨床検体検査の分野では、・・・前処理の分野では、未だほとんどの作業が手作業によって行われ・・・前処理である遠心分離装置に対する試験管の装填および取出し操作に関しては、未だ人手に依存しているのが現状である。」(第3頁3〜12行)
(ア-3)「前記試験管挿脱機構20と対向するように、ダミー挿脱機構40が設けられている。このダミー挿脱機構40は、ロータ12全体のバランスを保つべく、ダミー部材41を試験管21が挿入されていない空のホルダー14に対して挿入または取出しを行うために機構である。このダミー挿脱機構40は、挿脱対象物が試験管21でなく、ダミー部材41である点を除けば、基本的には前記試験管挿脱機構20と同一の構成を有している。」(第13頁4〜13行)
(ア-4)「かくしてこのダミー挿脱機構40は、前記遠心分離装置本体10の前記コンベア設置側とは反対側に設置されているコンベア47によって搬送されてくるダミーラック46に架設されているダミー41を、前記ホルダー14に移設したり、その逆にホルダーからダミー部材を取出してダミーラック46へ戻したりするものとなっている。」(第13頁末行〜第14頁7行)
(ア-5)「ダミー挿脱機構40は、・・・ダミーラック46から所要数のダミー部材41を取出し、かつこれを所定位置の空の試験管ホルダー14に対して移設し、ロータ12全体のバランスを均衡させ、遠心動作時の振動を防ぐようになっている。」(第14頁18行〜第15頁4行)
(ア-6)「試験管挿脱機構20によって試験管ホルダー14内に装填された試験管21の本数および配置等はセンサ50により検知される。そしてここで検知された情報は、・・・制御用コンピュータ(・・)に送られ、ここでロータ12のバランスを取るために最も適切なダミー部材数、移設位置等が演算される。この演算結果は所定の制御信号となってダミー挿脱機構40に与えられる。」(第19頁2〜10行)
(ア-7)第1図には、「ダミーラックがコンベア上に載置され、コンベアによって遠心分離装置本体の側面に移動してくる」ことが伺える。
(イ)引用文献2:特開平2-194846号公報には、次の事項が記載されている。
(イ-1)「所望の液体が収納された試験管保持装置であって、試験管を直接保持する保持部の任意の位置にマグネットを設けると共に、前記保持部を位置決めすべき載置部を磁性体で構成したことを特徴とする試験管保持装置。」(特許請求の範囲)
(イ-2)第2図、第5図には「枠部上部に試験管を挿入する穴を有する保持カセット」が記載されている(第4頁)
(ウ)引用文献3:特開平2-211265号公報には、次の事項が記載されている。
(ウ-1)「遠心分離の一連の作業を自動化するに当り、ロータに装填するラック数により、アンバランスが生じた時に所定の位置にあるバランス取り用のダミーラックを自動的に装填させるとともに、ダミーラックを他のラックと誤認しない様にするため、ダミーラックを他のラック検出の専用センサを設け常にダミーラックを所定の位置に戻す様にし、繰り返し行われる作業の中においても1個のダミーラックですむ様に工夫したものである。」(第1頁右欄19行〜第2頁左上欄7行)
(エ)引用文献4:特開平3-127649号公報には、次の事項が記載されている。
(エ-1)「1.被遠心分離検体が入った採血試験管などを1本或いは複数本姿勢保持するラックを1個或いは複数本姿勢保持するラックを1個或いは複数個収納するバケットと、・・・遠心分離装置と、ローディングポートに到着した遠心分離前のラック或いはダミーポートに置かれたバランシングダミーラックを前記バケットに移載し、また前記バケット内の遠心分離後のラックを取り出し前記バランシングダミーラックはダミーポートへ、通常のラックはアンローディングポートに移載するハンドリング装置と、・・・・前記ハンドリング装置を制御することを特徴とする自動遠心分離装置。」(特許請求の範囲)
(ii)対比・判断
引用文献1には、記載事項(ア-1)、(ア-3)及び(ア-4)を本願補正発明の記載振りに整理すると、「遠心分離すべき検体を入れた試験管と、ダミー部材と、その周縁で該ダミー部材と試験管を収納する円筒状試験管ホルダーを軸支するロータとを備えた遠心分離機において、ダミー部材がダミーラックに架設され、コンベアによって遠心分離装置装置の側面に搬送される遠心分離装置」の発明(以下、「刊行1発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本願補正発明と引用1発明を対比すると、引用1発明の「検体」及び「試験管」が本願補正発明の「試料」及び「遠心管」に相当し、引用1発明の「ダミー部材」は、記載事項(ア-1)、(ア-3)から試験管が挿入されていない空の円筒状試験管ホルダーに挿入するものであり、また、挿脱機構も試験管とダミー部材と同じであることからみて、本願補正発明の「ダミー遠心管」に相当し、引用1発明の「その周縁で該ダミー部材と試験管を収納する円筒状試験管ホルダーを軸支するロータ」が本願補正発明の「該ダミー遠心管と該遠心管を収納可能なロータ」に相当し、引用1発明の「ダミーラック」が本願補正発明の「収納体」に相当することから、両者は「試料と、該試料を内蔵する遠心管と、ダミー遠心管と、該ダミー遠心管と該遠心管を収納可能なロータとを備えた遠心分離機において、前記ダミー遠心管を保持する収納体を前記遠心分離機の側面においている」点で一致し、以下の点で一応相違する。
(I)本願補正発明が「遠心管と質量的にほぼ等しいダミー遠心管を用いる」であるのに対して、引用1発明では、ダミー部材が「遠心管と質量的にほぼ等しい」か明確でない点
(II)本願補正発明が「ダミー遠心管挿入穴を有する上面部と磁石を有する側面部とから成り且つ前記ダミー遠心管を保持する収納体を、遠心分離機の側面または前面に着脱可能に設けるもの」であるのに対して、引用1発明では「ダミー部材がダミーラックに架設され、コンベアによって遠心分離装置装置の側面に搬送される」点
そこで、上記の相違点について検討する。
相違点(I)について
引用1発明のダミー部材については、記載事項(ア-3)及び(ア-5)に「ロータ全体のバランスを保つべく、ダミー部材を試験管が挿入されていない空のホルダーに対して挿入または取出しを行うために機構である」こと、「ダミーラックから所要数のダミー部材を取出し、かつこれを所定位置の空の試験管ホルダーに対して移設し、ロータ全体のバランスを均衡させ、遠心動作時の振動を防ぐようになっている」ことが記載されている。これらの記載からみると、「ダミー部材」は、試験管が挿入されていない空のホルダーに挿入してバランスを均衡させるものであるから、「ダミー部材」は「試験管」とは質量的に同等であるといえる。而して、この相違点について実質的な相違は見当たらないのであり、表現上いかに記載するかは当業者が適宜なし得るものである。
相違点(II)について
引用文献1には「ダミーラック」に関し、記載事項(ア-4)に「コンベアによって搬送されてくるダミーラックに架設されているダミー」と、また記載事項(ア-6)に「ロータのバランスを取るために最も適切なダミー部材数、移設位置等の演算結果が所定の制御信号となってダミー挿脱機構に与えられる」と記載され、記載事項(ア-7)から「ダミーラックがコンベア上に載置され、コンベアによって遠心分離装置本体の側面に移動してくる」が伺える。これらのことからみて、ダミーラックは、自動化のためとはいえ、ダミーラックを遠心分離装置本体の側面に位置させることが記載されているといえ、また、そうしたことは、引用文献3の「ダミーラックを所定の位置に戻す」(ウ-1)や引用文献4の「ダミーポート」(エ-1)からも伺えるのである。
そして、記載事項(ア-2)に記載されるように従来は「検体検査の分野における遠心分離装置では、ほとんどの作業が手作業によって行われ」るものであり、自動化にするか、手動で操作するかは、作業性、効率、コストなどのを考慮して適宜選択することは自明であることを勘案すれば、手動であっても遠心分離装置の近傍にダミー部材を設置することに格別困難性を伴うことはないといえ、しかもそのことは、使用する部材を近くに配置しておこうとする通常の技術的な手法にすぎないものともいえる。
そして、ダミー部材を近くに置くに当たっては、操作利便性や便宜性などを考慮することは設計上の常識であり、便宜性のために着脱自在な取付手段として磁石を用いることは極めて周知であり、しかも検体検出における遠心分離の分野において引用文献2の(イ-1)にみられるようにマグネットを用いることも知られていることから、ダミー部材の配設手段として磁石を用いることに阻害要因は見当たらない。また、引用文献2にはラックにダミー試験管を挿入する穴を有することも記載(記載事項イ-2)される。
以上のことからみれば、引用1発明の「ダミー部材を架設したダミーラック」を、ダミー遠心管挿入穴を上面部に形成させ、遠心分離装置本体の側面部など外面の適宜位置に磁石を用いて着脱自在に配設することは当業者にとって特段創意工夫を要することなく容易に想到し得るものといえる。
そして、上記相違点の構成を採用することにより奏される「非常に使い勝手に優れた収納体を提供することによって、遠心分離作業の効率向上が図れる」という効果も当業者であれば予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、上記引用1発明及び引用文献2に記載の発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(iii)
以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。そうすると、平成14年3月12日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、特許法第17条の2の第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反してなされたものであるから、同補正は、特許法第159条1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
(3)また、上記本件補正(c)についてみてみると、本件補正(c)では段落【0011】において「ロータを交換した上でアンバランスが生じた時に」を追加する補正がなされている。しかし、本願の出願当初の明細書には、「アンバランスが生じる時」については明瞭に記載はないが、段落【0002】の記載によれば、アンバランスは試料が奇数本の場合に生じるとみれるし、また、段落【0003】の「この種の遠心機は、ロータが遠心分離機本体にねじなどで固定されており容易に取り外すことができない構造であるため、・・」の記載からみると、そもそも「ロータを交換」することを念頭にしたものでないことは明らかであることから、補正後の上記記載の技術的事項が、本願の出願当初の明細書に開示されていることは認めることができない。而して、本件補正(c)は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。
したがって、平成14年3月12日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、特許法第17条の2の第3項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
(4)むずび
上記(2)及び(3)の理由により、平成14年3月12日付の手続補正書によりなされた補正は、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3.本願発明について
平成14年3月12日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年2月10日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】試料と、該試料を内蔵する遠心管と、該遠心管と質量的にほぼ等しいダミー遠心管と、該ダミー遠心管と該遠心管を収納可能なロータとを備えた遠心分離機において、前記遠心分離機の外面に前記ダミー遠心管を保持する収納体を着脱可能に固定するため、前記収納体に磁石を設けることを特徴とする遠心分離機。
4.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1、2及びその記載事項は、前記「2.(i)(ア)及び(イ)」に記載したとおりある。そして、前記「2.(i)」における周知技術である上記引用文献3,4の記載事項は前記「2.(i)(ウ)及び(エ)」に記載したとおりである。
5.対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「ダミー遠心管挿入穴を有する上面部と磁石を有する側面部とから成」る収納体、並びに「収納体を、前記遠心分離機の側面または全面に」着脱可能に、との構成を省き、着脱可能に「設け」が「固定する」となったものである。
そうすると、技術的にみれば「着脱可能に設け」と「着脱可能に固定する」とはその実施内容からすると実質上相違はないものであるから、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(ii)」に記載したとおり、引用文献1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

7.むずび
以上のとおりであるから、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-12 
結審通知日 2005-01-18 
審決日 2005-01-31 
出願番号 特願平6-265600
審決分類 P 1 8・ 561- Z (B04B)
P 1 8・ 575- Z (B04B)
P 1 8・ 121- Z (B04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 万里中村 泰三  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 鈴木 毅
西村 和美
発明の名称 遠心分離機  

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