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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10L
管理番号 1114269
審判番号 不服2003-7481  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-01-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-01 
確定日 2005-03-23 
事件の表示 特願2000-203503「廃木材の処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年1月23日出願公開、特開2002-20771〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年7月5日の出願であって、平成15年3月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年5月1日に拒絶査定に対する審判請求がされ、平成16年10月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月6日に意見書が提出されたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。」は、平成14年11月7日付け及び平成15年3月7日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「廃木材を0.5〜10mmの粉砕粒度の大きさに粉砕し、廃プラスチックを10/90〜90/10の範囲内の混合比(廃木材/廃プラスチックの重量比)で混合して、高炉に装入する廃木材の処理方法。」

2.引用文献に記載された発明
引用文献1:特開平10-102110号公報
平成16年10月7日付けで当審が通知した拒絶理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】粒径が10mm以上の可燃性廃棄物を、銑鉄を製造する竪型炉のレースウェイ内に送風羽口を介して吹き込み燃焼することを特徴とする竪型炉への可燃性廃棄物の吹き込み方法。
【請求項2】前記可燃性廃棄物中の合成樹脂の含有量が80wt%未満である請求項1記載の竪型炉への可燃性廃棄物の吹き込み方法。」(特許請求の範囲の請求項1〜2)
イ.「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、銑鉄を製造する竪型炉の送風羽口前に形成されるレースウェイ内に、可燃性廃棄物を供給し燃焼する、竪型炉への可燃性廃棄物の吹き込み方法および装置に関する。」(段落【0001】)
ウ.「【0010】【課題を解決するための手段】本発明者らは、レースウェイ内におけるコークスや種々の補助燃料の燃焼状況を観察、検討した結果、一定以上の粒径を有し強度の大きい固形燃料の場合、レースウェイ内でコークスと同様に燃焼効率良く燃焼させることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】すなわち、第1の発明は、粒径が10mm以上の可燃性廃棄物を、銑鉄を製造する竪型炉のレースウェイ内へ送風羽口を介して吹き込み燃焼することを特徴とする竪型炉への可燃性廃棄物の吹き込み方法である。前記第1の発明においては、前記可燃性廃棄物中の合成樹脂の含有量が80wt%未満であることが好ましい。」(段落【0010】〜【0011】)
エ.「【0017】【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明が対象とする固体状の可燃性廃棄物を、以下固形燃料とも記し、また可燃性廃棄物を破砕もしくは粉砕後、成型した固体状の可燃性廃棄物、または、可燃性廃棄物を破砕もしくは粉砕、乾燥後、成型した固体状の可燃性廃棄物を、以下成型固形燃料とも記す。
【0018】本発明に用いられる粒径を規定した固形燃料は下記の方法で製造することができる。すなわち、木屑、ゴムなどの産業廃棄物はそれらを裁断した後、打ち抜き網、グリズリーなど篩を用いて本発明において規定した前記粒径の固形燃料とする。」(段落【0017】〜【0018】)
オ.「【0022】図1に、本発明に係わる、竪型炉への固形燃料の吹き込み方法および吹き込み装置の一例を示す。なお、図1は、上記吹き込み方法および吹き込み装置を示す高炉の環状管〜羽口〜レースウェイ間流路の断面図であり、1は羽口、2は大羽口、3は固形燃料供給管、4はブローパイプ、5は下部ベンド、6は環状管、7は耐火物、8は伸縮継手、9は覗き窓、10はレースウェイ、11はレースウェイ10を形成するコークスの壁、11cは旋回コークス、12はレースウェイに供給された固形燃料、12cは旋回固形燃料、Aは羽口接続管、Bは高炉炉内側を示す。
【0023】固形燃料の高炉内レースウェイへの供給は、図1に示すように、固形燃料を羽口接続管Aに落とし込むことにより送風の気流に随伴させて、炉内レースウェイ10へ供給する。レースウェイ10の中では通常コークスが旋回しながら燃焼しているが、羽口から供給された固形燃料は、レースウェイの中で旋回しながら固形燃料の表面から乾燥、揮発分の放出、燃焼が行われる。」(段落【0022】〜【0023】、図1参照)
カ.「【0035】以上述べたように、本発明によれば、粒径の大きい固形燃料、より好ましくは粒径の大きい成型固形燃料を用い、さらには、固形燃料供給部から羽口先端迄の距離を規定し、固形燃料、特に破砕(粉砕)・成型によって製造した成型固形燃料の羽口迄の移動過程での粉化を防止することにより、レースウェイ内での固形燃料の滞留時間を長くし、レースウェイ内での固形燃料単位重量当たりの燃焼率を高めた。
【0036】この結果、下記の実施例に示されるように、固形燃料の燃焼効率が向上し、コークス比の低減が可能となり、また、高炉ガス中のダスト量、タール量を低減することが可能となった。」(段落【0035】〜【0036】)
キ.「【0039】本試験においては、下記(1)〜(4)(「(1)〜(4)」は丸数字。)に示す固形燃料を、羽口31から供給し、レースウェイ内での燃焼状況の目視観察、および、炉上部における煤、タールの発生状況の観察を行った。・・・
(3):木屑、ゴムである産業廃棄物を裁断して製造した固形燃料(本発明例16、17、比較例3、4)。・・・
得られた試験結果を表2に示す。粒径が10mm未満の固形燃料の場合、排ガス配管36のガス中における灰ダスト発生量が増加し、タールの発生が見られ、レースウェイ内での燃焼が不十分であることが推定された。
【0042】また、粒径が10mm未満の固形燃料を使用した場合、羽口からの炉内観察によっても、レースウェイ内で固形燃料が分解した後、すぐに見えなくなり、レースウェイからコークス充填層中へ流出してしまったものと考えられた。これに対して、粒径が10mm以上の固形燃料は、灰ダスト発生量が少なく、タールの発生も見られず、羽口からの炉内観察によっても、レースウェイ内で燃焼が十分進行することが分かった。」(段落【0039】〜【0042】、【0046】【表2】参照)

3.対比
本願発明1と引用文献1に記載された発明とを対比する。
引用文献1には、「【請求項1】粒径が10mm以上の可燃性廃棄物を、銑鉄を製造する竪型炉のレースウェイ内に送風羽口を介して吹き込み燃焼することを特徴とする竪型炉への可燃性廃棄物の吹き込み方法。
【請求項2】前記可燃性廃棄物中の合成樹脂の含有量が80wt%未満である請求項1記載の竪型炉への可燃性廃棄物の吹き込み方法。」なる発明が記載されている(摘示ア.、特許請求の範囲の請求項1〜2参照)。
また、可燃性廃棄物として、本発明例7〜16に、合成樹脂の含有量が80wt%未満で粒径が10mm以上の合成樹脂含有ゴミ、粒径が10mm以上の木屑からなるものが記載されている(摘示キ.、表2参照)。
そして、上記竪型炉、木屑は、本願発明1でいう高炉、粉砕された廃木材に相当するものである。
それ故、引用例1には、粒径10mm以上の木屑(廃木材)、廃棄合成樹脂(廃プラスチック)を竪型炉(高炉)に吹き込む方法の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
そこで、本願発明1と上記引用発明1とを対比すると、高炉に廃木材、廃プラスチックを装入する廃木材、廃プラスチックの処理方法である点で両者は一致するが、次に(1)、(2)の点で相違する。
相違点(1):本願発明1では、廃木材を0.5〜10mmの粉砕粒度の大きさに粉砕するのに対して、引用発明1では、木屑(廃木材)の粒径が10mm以上である点
相違点(2):本願発明1では、廃木材と廃プラスチックを10/90〜90/10の範囲内の混合比で混合するのに対して、引用発明1には、その点が明示されていない点

4.当審の判断
上記相違点(1)、(2)について検討する。
ア.相違点(1)について
本願明細書には、本願発明1に対応して、廃木材を0.5〜10mmの粒度にすることに関し、次の記載がある。
「【0011】【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述した従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、廃木材の燃焼カロリーを高めるか、または、比表面積を大きくすることによって燃焼性を高めることができ、併せて気送性を高めることによって、高炉に装入した際に、補助燃料として、廃木材を大量に処理することができることが判明した。即ち、例えば、廃木材を所定の粉砕粒度に粉砕し、粒状の廃プラスチックを混合することによって、燃焼カロリーを高めると共に、気送性が向上することを知見した。 」(段落【0011】)、
「【0013】この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、この発明の廃木材の処理方法の第1の態様は、廃木材を0.5〜10mmの粉砕粒度の大きさに粉砕し、廃プラスチックを10/90〜90/10の範囲内の混合比(廃木材/廃プラスチックの重量比)で混合して、高炉に装入する廃木材の処理方法である。」(段落【0013】)、
「【0017】【発明の実施の形態】
本発明の廃木材の処理方法の1つの態様を詳細に説明する。この発明の廃木材の処理方法は、廃木材を処理して、燃焼カロリーおよび/または比表面積によって表される燃焼性、ならびに、気送性を高め、高炉に装入する廃木材の処理方法である。廃木材の燃焼性は、図1に示すように、燃焼カロリーおよび/または比表面積によってきまる。従って、燃焼カロリーを高めるための廃木材の処理を行うとよい。更に、比表面積を高める、即ち、例えば、多孔質(ポーラス)状の形状になるように廃木材を処理するとよい。
【0018】この発明の廃木材の処理方法において、上述した廃木材の燃焼性、ならびに、気送性を高めるための処理が、廃木材を0.5〜10mmの粉砕粒度の大きさに粉砕し、粒状の廃プラスチックを10/90〜90/10の範囲内の混合比(廃木材/廃プラスチック材の重量比)で混合することからなっていてもよい。なお、木材のアスペクト比は一般的に高いので、粉砕粒度は、所定の範囲内のアスペクト比のものを対象とする。廃木材の粉砕粒度の大きさが0.5mm未満では、レースウエイ内に到達することができなかったり、レースウエイに到達することができても、熱風中を飛翔中に分裂・崩壊して、燃焼性が低下する。一方、廃木材の粉砕粒度の大きさが10mmを超えると、気流輸送時の固気比(粒子と気送用空気の混合比)が低下するため、炉内温度の低下を招き高炉操業が不安定になる。
【0019】粒状の廃プラスチックを混合することによって、廃木材の燃焼カロリーを高くするとともに、気送性を高めることができる。混合比(廃木材/廃プラスチック材の重量比)が10/90未満では、高炉操業に問題はないが、廃木材の処理量が少なくなる。一方、混合比(廃木材/廃プラスチック材の重量比)が90/10を超えると、燃焼カロリーが不十分であり、また気送性の改善も効果が低い。」(段落【0017】〜【0019】)
上記記載を参酌すると、本願発明1は「廃木材の燃焼カロリーを高めるか、または、比表面積を大きくすることによって燃焼性を高めることができ、併せて気送性を高めることによって、高炉に装入した際に、補助燃料として、廃木材を大量に処理することができることが判明したものである。即ち、例えば、廃木材を所定の粉砕粒度に粉砕し、粒状の廃プラスチックを混合することによって、燃焼カロリーを高めると共に、気送性が向上することを知見した。」(段落【0011】)と記載されているように、廃木材の粒径は、比表面積を大きくすることにより、燃焼性と気送性を高めるためのものである。
一方、引用発明1は、「一定(10mm)以上の粒径を有し強度の大きい固形燃料の場合、レースウェイ内でコークスと同様に燃焼効率良く燃焼させることが可能であることを見出し」たものであるが、一定(10mm)未満のものについては、次の(1)、(2)の記載がある。
(1)「粒径が10mm未満の固形燃料の場合、排ガス配管36のガス中における灰ダスト発生量が増加し、タールの発生が見られ、レースウェイ内での燃焼が不十分であることが推定された。また、粒径が10mm未満の固形燃料を使用した場合、羽口からの炉内観察によっても、レースウェイ内で固形燃料が分解した後、すぐに見えなくなり、レースウェイからコークス充填層中へ流出してしまったものと考えられた。」(摘示キ.段落【0039】、【0042】参照)
(2)「比較例3、原料;木屑、粒径;7mm×7mm×7mm、供給量;1.0kg/min、灰ダスト発生量;3.5kg/hr、タールの有無;有り、炉内観察結果;レースウェイ内からすぐに消失した、総合評価×
本発明例16、原料;木屑、粒径;15mm×15mm×15mm、供給量;1.0kg/min、灰ダスト発生量;0.2kg/hr、タールの有無;無し、炉内観察結果;レースウェイ内での旋回が観察された、総合評価◎」(【0046】【表2】参照)
上記(1)、(2)の記載を参酌すると、引用文献1には、粒径が10mm未満の木屑を装入すると、燃焼が不十分で、レースウェイ内で分解した後、すぐに見えなくなり、レースウェイからコークス充填層中へ流出し、灰ダストが多く、タールが発生することを示している。
ところで、本願発明1では、廃木材の比表面積を大きくすることにより、燃焼性と気送性を高めるものであるが、灰ダスト及びタールに関して、何等考察するところはなく、それ故、燃焼性、灰ダスト及びタールについては、引用文献1記載の粒径が10mm未満の木屑を装入する場合と同じ作用・効果を奏するものといえる。
また、気送性については、粒径が小さければ当然奏する効果といえる。
したがって、本願発明1において、0.5〜10mmの粒度にした廃木材を用いる点は、気送性を高めるために当業者が通常選択できる構成を採用しただけであり、そのことによる効果も格別なものとはいえない。
イ.相違点(2)について
引用文献1には、粒径が10mm以上の可燃性廃棄物として、本発明例7〜15に合成樹脂含有ゴミ、本発明例16に木屑が記載され、同等の総合評価(○〜◎)を得ている(段落【0046】表2参照)から、上記それぞれの本発明例で示される合成樹脂含有ゴミと木屑とを併用する点に格別の困難性はないし、また、可燃性廃棄物中の合成樹脂の含有量が80wt%未満(請求項2参照)であることから、引用発明1において、木屑(廃木材)と合成樹脂(廃プラスチック)を本願発明1程度の範囲内の混合比で混合するようにすることは、容易に想到し得る事項といえる。
そして、本願発明1において、上記相違点(1)、(2)を採用することによる効果については、当業者が当然予期し得る程度のものが窺えるにすぎない。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-26 
結審通知日 2005-01-26 
審決日 2005-02-08 
出願番号 特願2000-203503(P2000-203503)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉住 和之  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 佐藤 修
冨永 保
発明の名称 廃木材の処理方法  
代理人 川和 高穂  

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