• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1114418
審判番号 不服2003-14677  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-30 
確定日 2005-03-30 
事件の表示 平成10年特許願第 98433号「配線・配管用保護カバー」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月15日出願公開、特開平11-280985〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年3月25日の出願であって、平成15年4月15日付けの拒絶理由通知書に記載した理由によって平成15年6月20日付けで拒絶査定がなされたが、同年7月30日に審判の請求がなされ、同年8月27日付けで明細書全文についての手続補正がなされたものである。

2.平成15年8月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年8月27日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
(1)補正後の本願の特許請求の範囲に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲は、次のとおり補正された。
【請求項1】 弾性変形可能な側壁部を備えた基体と蓋体とから成り、両者の側壁部に内外方向に対向して設けられた各係合部の相互係合により一体に結合される配線・配管用保護カバーであって、
前記基体及び蓋体の各側壁部には、両者を一体に結合した状態において、相互の係合の解除を防止するための係合解除防止部が、前記各係合部とその内外を反転させた状態で相互に当接可能にそれぞれ設けられ、
前記各係合部は、基体及び蓋体の側壁部を形成する係合片に設けられて、内側係合部と係合する外側係合部は、基体と蓋体との結合・分離方向、及び内外方向の双方に対して直交する長手方向に沿って部分的に設けられており、
しかも前記基体と前記蓋体とが一体に結合された状態において、両者の結合ラインにおける前記外側係合部の部分には、前記各係合部を離反させて相互係合を解除すべく、係合部を変形させ得る拡開穴が前記長手方向に沿って部分的に設けられていることを特徴とする配線・配管用保護カバー。
【請求項2】 前記外側係合部は、係合片の長手方向の中央部を除く両端部に一対設けられていることを特徴とする請求項1に記載の配線・配管用保護カバー。
(2)新規事項について
本件補正に係る請求項1に記載された「両者の結合ラインにおける前記外側係合部の部分には、・・・拡開穴が・・・設けられている」との構成について、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「本願当初明細書」という。)の記載を検討すると、本願の図3、図4、図8が図示するところによれば、拡開穴3は、基台C1と蓋体C2の結合ラインにおける基台の部分に拡開穴が設けられていることは開示されているが、蓋体の外側係合片5に設けられているものは開示されていない。そして、本件補正に係る上記「外側係合部」とは、本願当初明細書に記載された当該外側係合片5を含むものと認められるから、本件補正に係る請求項1に記載された「両者の結合ラインにおける前記外側係合部の部分には、・・・拡開穴が・・・設けられている」との構成は、本願当初明細書に記載された事項とみることはできない。

(3)まとめ
したがって、本件補正は、本願当初明細書に記載した事項の範囲内でなされたものではないから、特許法17条の2第3項の規定に違反し、特許法159条1項の規定により読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年8月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成15年5月23日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものである。
【請求項1】 弾性変形可能な側壁部を備えた基体と蓋体とから成り、両者の側壁部に内外方向に対向して設けられた各係合部の相互係合により一体に結合される配線・配管用保護カバーであって、
前記基体及び蓋体の各側壁部には、両者を一体に結合した状態において、相互の係合の解除を防止するための係合解除防止部が、前記各係合部とその内外を反転させた状態で相互に当接可能にそれぞれ設けられ、
しかも前記基体と前記蓋体とが一体に結合された状態において、両者の結合ラインの部分には、前記各係合部を離反させて相互係合を解除すべく、係合部を変形させ得る拡開穴が設けられていることを特徴とする配線・配管用保護カバー。
【請求項2】 前記拡開穴は、外嵌された側の部材の係合部を外方に拡開させ得る構成であることを特徴とする請求項1に記載の配線・配管用保護カバー。
【請求項3】 前記拡開穴の形成位置は、前記結合ラインの方向に沿って係合部が設けられている部分に含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線・配管用保護カバー。

4.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭60-133327号(実開昭62-40396号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)について
引用例1は、エルボ型二つ割配管カバーの連結構造の考案に関するものであって、そこには、図面とともに、次の記載がある。
・「本考案は、配管カバーを接続する開口部を両端に形成すると共に、全長にわたって径方向に二分割し、両分割部材の分割緑部どうしを係脱する連結部を前記両開口部近くに形成し、前記連結部夫々に、前記分割縁部一方のカバー内方への移動によって互いに離脱可能な係合突起と係合凹部を設けたエルボ型二つ割配管カバーに関する。」(1頁末行〜2頁7行)

・「次に、本考案の実施例を、図面に基づいて説明する。
第 7図に示すように、クーラーやボイラ等の空調機器における室外器(1)と屋内に設置された室内器(2)との間に亘って、天井(3)及び縦壁(4)に沿って配設された往復二本の空調配管(A),(B)及びドレン管(D)を、直線状の配管カバー(5)やエルボ型配管カバー(6)の内部に挿通保持させた状態で、前記天井(3)及び縦壁(4)に固定して空調配管設備を構成してある。
前記エルボ型配管カバー(6)は、第1図乃至第6図に示すように、硬質塩化ビニール樹脂などの耐候性、耐衝撃性に勝れた硬質樹脂から成るほぼ角筒型でL形に屈曲し、外周面におけるL形屈曲外側面(6a)又は内側面(6b)が、互いにほぼ直交する二方向の壁面(X),(Y)に当付けて固定する様に形成されている。そして、直線状の配管カバー(5),(5)を接続する開口部(7)を両端に形成すると共に、L形屈曲面に沿う全長にわたって径方向に二分割し、両分割部材(6a),(6B)の分割縁部(8)どうしを係脱する連結部(9)を両開口部(7)近くに形成し、連結部(9)夫々に、前記分割縁部(8)一方のカバー内方への移動によって互いに離脱可能で肉厚方向に沿った外方側に突出する円形の係合突起(9A)と軸芯が肉厚方向に沿った円形の係合孔(9B)を設け(第3図及び第4図)、係合突起(9A)と係合孔(9B)の離脱のための前記一方の分割縁部(8)の移動に抵抗を付与する接当面(10A)を有する接当部(10)を、連結部(9)夫々の近くで L 形曲り部(11)側に配置して分割緑部(8)の他方に形成してある(第3図及び第5図)。」(4頁15行〜6頁6行)

(2)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭53-146279号(実開昭55-61691号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)について
引用例2は、管継手の考案に関するものであって、そこには、図面とともに、次の記載がある。
「小切欠き111は二個の単位体の係合により管継手を組立てた際、直線状側縁の合わせ目の外面側に細溝7を形成するためのもので、管継手を分解しようとする場合この細溝7にドライバー状物を差し入れこじあけることにより解体を容易にするものである。」(3頁9〜14行)

5.対比
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用例1に記載された発明とを比較すると、引用例1発明の「分割部材6a」及び「分割部材6b」は、本願発明の「基体」及び「蓋体」に相当し、以下同様に、「連結部9」は「係合部」に、「接当部」は「係合解除防止部」に、それぞれ相当するから、両者は、
「弾性変形可能な側壁部を備えた基体と蓋体とから成り、両者の側壁部に内外方向に対向して設けられた各係合部の相互係合により一体に結合される配線・配管用保護カバーであって、
前記基体及び蓋体の各側壁部には、両者を一体に結合した状態において、相互の係合の解除を防止するための係合解除防止部が、前記各係合部とその内外を反転させた状態で相互に当接可能にそれぞれ設けられた配線・配管用保護カバー。」
の点で一致し、次の点で相違している。(なお、引用例1に記載された発明は、エルボ型のものであるが、本願の請求項1の記載には特に限定がないので、本願発明はエルボ型のものも含むものと解されるので、以上のように一致点を認定して差し支えない。)
本願発明は、「前記基体と前記蓋体とが一体に結合された状態において、両者の結合ラインの部分には、前記各係合部を離反させて相互係合を解除すべく、係合部を変形させ得る拡開穴が設けられていることを」構成要件とするものであるのに対し、引用例1の発明は、かかる構成要件を備えないものである点。(以下「相違点」という。)

6.相違点についての検討
引用例2に開示された「細溝」は、その構造及び機能に照らし、本願発明の「拡開穴」に相当するものである。そうすると、引用例2に開示された細溝を引用例1の発明に適用して、相違点に係る本願発明の構成を想到することは、当業者であれば容易であったものというべきである。
本願発明の効果を検討しても、引用例1及び引用例2記載の各発明から当業者であれば容易に予測できる程度のものであって、これを超える格別顕著な効果を奏するものではない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-14 
結審通知日 2005-01-25 
審決日 2005-02-07 
出願番号 特願平10-98433
審決分類 P 1 8・ 561- Z (F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内山 隆史  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 今井 義男
櫻井 康平
発明の名称 配線・配管用保護カバー  
代理人 内藤 哲寛  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ