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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B43L |
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管理番号 | 1114448 |
審判番号 | 不服2002-18922 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-01-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-09-30 |
確定日 | 2005-03-30 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第172889号「立体定規」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月 6日出願公開、特開平11- 1093〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年6月13日に出願された特願平9-172889号であって、出願からの主だった経緯は次のとおりである。 ・平成12年10月18日付け 拒絶の理由の通知 ・平成12年12月28日付け 意見書及び手続補正書の提出 ・平成14年 2月18日付け 拒絶の理由の通知 ・平成14年 4月19日付け 意見書及び手続補正書の提出 ・平成14年 8月23日付け 平成14年2月18日付けで通知した拒絶 の理由による拒絶の査定 ・平成14年 9月30日付け 本件審判請求及び手続補正書の提出 2.本願発明 平成14年9月30日付けの手続補正は、補正前の請求項1の「この平面板を貫通する穴部、線状溝、プロット穴等の一つ、もしくはそれらの複数の組み合わせからなる案内貫通部」を「この平面板を貫通する穴部、線状溝、プロット穴の一つ、もしくはそれらの複数の組み合わせからなる案内貫通部」と補正すること(以下、「補正事項a」という。)、同じく補正前の請求項1の「これらガイドマークを結線することにより立体図形を幾何学的重要位置を含む断面図も表現できるようにした立体定規」を「これらガイドマークを結線することにより立体図形と、幾何学的重要位置を含む断面図とを表現できるようにした立体定規」と補正すること(以下、「補正事項b」という。)を含むものである。なお、下線は補正箇所を示す。 そして、補正事項aは「等」という明りょうでない記載を削除するものであり、また補正事項bはガイドマークを結線することにより「立体図形」と「断面図」の双方を表現できることを明りょうにするものであるから、いずれの補正事項も明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 したがって、本願の請求項1に係る発明は、平成14年9月30日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。 「平面板と、この平面板を貫通する穴部、線状溝、プロット穴の一つ、もしくはそれらの複数の組み合わせからなる案内貫通部と、から構成され、これらの案内貫通部に筆記用具を挿入して平面板下方の所定のベース面にガイドマークを付し、これらガイドマークを結線することにより立体図形と、幾何学的重要位置を含む断面図とを表現できるようにした立体定規であって、前記案内貫通部の少なくとも一つは前記幾何学的重要位置を表示するためのものであり、かつ前記平面板上には、前記ガイドマークを結線するときに参考となる案内線が印刷表示されていることを特徴とする立体定規。」 3.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前日本国内において頒布された刊行物である、昭和9年実用新案出願公告第12443号公報(平成14年2月18日付けで通知した拒絶の理由において提示した実公昭9-12443号公報のこと。以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載または図示されている。ただし、便宜上、一部の漢字を常用漢字に、カタカナをひらがなにて表記し、文末には句点を付した。 (ア)「実用新案の性質、作用及効果の要領」の1行〜5行 「正方形版(1)の上辺に左より・・・其の下段には平行六面体(16)円筒(17)三角筒(18)立方体(19)等の斜面図を・・・描き之等各図面の各線の交点には小透孔を穿設したるものなり。」 (イ)「実用新案の性質、作用及効果の要領」の6行〜13行 「本考案品は算術演算に際して用ふるものにして使用に当りては本品を練習帳面上適当なる位置に置きて・・・斜面図(16)(17)(18)(19)・・・は各線の交点に穿ちたる小孔より鉛筆の尖端を以て標を練習帳面上につけ該標を便りて各種の図形を描くものなり。本考案は・・・算術学習上に使用せらるる各種の符号又は図形等を早く且美しく書くに便なるの実用的効果を有す。」 (ウ)「登録請求の範囲」 「正方形版(1)の上辺に左より・・・其の下段に多数の各種立方体の斜面図を・・・描写し各線の交点に小透孔を穿設してなる算術用定規の構造」 (エ)第一図 第一図の斜面図(16)〜(19)に示される白丸が小透孔であることは明らかであるから、第一図には立方体(19)の頂点に穿設された小透孔を結線することによって立方体(19)の斜面図を表現できること、および斜面図を描写するときに必要となる実線及び破線が正方形版(1)に描かれていることが図示されている。 また、第一図における立方体(19)の頂点に説明の都合上以下のように符号を付すと、頂点(a)、頂点(c)、頂点(e)、頂点(h)に穿設された小透孔よりつけられた標を結線することによって、頂点を含む断面図を表現できることは明らかである。 なお、立方体(19)の斜面図を描くためには、頂点(d)に小透孔が必要であることは自明であるから、頂点(d)に白丸が記載されていない点は誤記である。 ![]() 上記(イ)の記載からみて、「小透孔」に「鉛筆の尖端」を挿入することにより正方形版(1)の下に置かれた練習帳面に標をつけることは明らかであるから、これら(ア)〜(エ)を含む引用例の全記載及び図示からみて、引用例には、以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明」という。)。 「正方形版(1)と、この正方形版(1)に穿設された複数の小透孔と、から構成され、これらの小透孔に鉛筆の尖端を挿入して正方形版(1)の下の適当な位置に置かれた練習帳面に標をつけ、これら標を結線することにより立方体(19)の斜面図と、頂点を含む断面図とを表現できるようにした算術用定規であって、前記小透孔は立方体(19)の頂点位置を表示するためのものであり、かつ前記正方形版(1)には、斜面図を描写するときに必要となる実線及び破線を正方形版(1)に描かれていることを特徴とする算術用定規。」 4.対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明における「正方形版(1)」、「鉛筆」、「標」、「斜面図」、「算術用定規」は、それぞれ本願発明における「平面板」、「筆記用具」、「ガイドマーク」、「立体図形」、「立体定規」に相当する。 (イ)引用発明における「正方形版(1)に穿設された複数の小透孔」は、鉛筆の尖端が挿入されるものであるから、本願発明における「平面板を貫通するプロット穴の複数の組み合わせからなる案内貫通部」に相当する。 (ウ)引用発明における「正方形版(1)の下の適当な位置に置かれた練習帳面」は、鉛筆によって標がつけられるものであるから、本願発明における「平面板下方の所定のベース面」に相当する。 (エ)幾何学における「頂点」とは、「多角形や多面体に対して、線分や平面とともに図形や立体を決定する有限個の多くの点の一つ。」(マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会編「マグローヒル科学技術用語大辞典第3版」日刊工業新聞社発行、平成8年9月30日)であり、幾何学的に重要な位置ということができるから、引用発明における「頂点を含む断面図」は、本願発明における「幾何学的重要位置を含む断面図」に相当する。 (オ)引用発明における「斜面図を描写する」とは、練習帳面につけられた「標」(本願発明における「ガイドマーク」に相当。)を結線して「斜面図」(本願発明における「立体図形」に相当。)を表現することである。また、練習帳面につけられた標のみをもって斜面図を表現するとなれば誤った標同士を結線しかねないが、正方形版(1)に描かれた「斜面図を描写するときに必要となる実線及び破線」を参考にすれば、どの標同士を結線すれば斜面図を表現できるかが一目瞭然であるから、この「実線及び破線」は斜面図を表現するときに参考となる案内線ということができる。それ故、本願発明及び引用発明は、「ガイドマークを結線して立体図形を表現するときに参考となる案内線が表示されている」点で一致する。 したがって、両者は、 「平面板と、この平面板を貫通するプロット穴の複数の組み合わせからなる案内貫通部と、から構成され、これらの案内貫通部に筆記用具を挿入して平面板下方の所定のベース面にガイドマークを付し、これらガイドマークを結線することにより立体図形と、幾何学的重要位置を含む断面図とを表現できるようにした立体定規であって、前記案内貫通部は幾何学的重要位置を表示するためのものであり、かつ前記平面板上には、前記ガイドマークを結線して立体図形を表現するときに参考となる案内線が表示されていることを特徴とする立体定規。」 において一致し、次の点で相違する。 相違点 本願発明では、立体図形だけではなく、断面図を表現するときに参考となる案内線まで平面板上に印刷表示されているのに対して、引用発明では、断面図を表現するときに参考となる案内線は表示されておらず、その案内線を平面板上に表示する方法も特定されていない点。 5.判断 上記相違点について以下に検討する。 まず、平成5年4月1日から施行された「中学校学習指導要領 第2章各教科 第3節数学」(平成元年文部省告示第25号)では、第1学年の目標及び内容として「空間図形の切断、投影及び展開」を規定している。このように立体図形の断面図は中学校数学における重要な指導内容であるから、数学を教授する講師及び当該科目の習得を目指す生徒にしてみれば、立体図形と併せてその断面図も簡便に表現したいとの要請があることは明らかである。そして、引用発明である算術用定規の主な利用者はこれら講師及び生徒であるから、立体図形のみならず断面図を表現するときに参考となる案内線を算術用定規の正方形版上(本願発明における「立体定規の平面板上」に相当。)に表示することは当業者であれば容易に想到できることである。 また、ガイドマークを結線するときに参考となる案内線は、立体定規の使用者が容易に認識できさえすれば如何なる方法により表示されても良いはずであるから、表示方法として一般的な印刷により案内線を表示することは設計事項である。 そして、本願発明の作用効果も引用発明から当業者が予測できる範囲のものであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、請求人は審判請求書において、本願発明における幾何学的重要位置は「中心点」や「重心」といった「頂点」以外の点であることを前提として引用発明との相違点を主張するが、特許請求の範囲の記載からみて、「幾何学的重要位置」を「中心点」や「重心」といった「頂点」以外の点に限定して解すべき理由はないのであるから、請求人の当該主張は採用できない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-01-19 |
結審通知日 | 2005-01-25 |
審決日 | 2005-02-07 |
出願番号 | 特願平9-172889 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B43L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三輪 学、木村 史郎 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
清水 康司 谷山 稔男 |
発明の名称 | 立体定規 |
代理人 | 重信 和男 |
代理人 | 日高 一樹 |