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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01M
管理番号 1114465
審判番号 不服2000-7478  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-18 
確定日 2005-04-01 
事件の表示 平成 9年特許願第211656号「水稲用液状農薬の散布方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月12日出願公開、特開平10-117659〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年8月6日(優先権主張平成8年8月30日)の出願であって、平成12年3月15日付で手続補正がなされ、平成12年4月18日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月19日付で手続補正がなされたものである。

2.平成12年6月19日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成12年6月19日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ノズルがストレートな孔を有するところの蓄圧式散布容器を用いて、水稲用液状農薬を畦畔から湛水下水田に該ノズルから直射的に散布することを特徴とする液状農薬の散布方法。」
と補正された。
上記補正は、平成12年3月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ノズルがストレートな孔を有するところの蓄圧式散布容器の該ノズルから水稲用液状農薬を直射的に湛水下水田へ散布する」を「ノズルがストレートな孔を有するところの蓄圧式散布容器を用いて、水稲用液状農薬を畦畔から湛水下水田に該ノズルから直射的に散布する」と限定し、同じく「方法」を「液状農薬の散布方法」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-54638号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、
「濃厚な液体農薬を水田の代掻時から田植後の水稲の幼苗期に、薬液ボトルを装着した水テッポウ型散布器により手撒きすることを特徴とする、液体農薬の散布方法。」(特許請求の範囲、【請求項】)、
「濃厚な農薬乳剤等の液体農薬を水田の代掻時から田植後の幼苗期に散布するにあたり、薬液ボトルを装着したピストル型散布器により手撒きすることが簡単な方法であり、到達距離が長く、散布むらも少なく有効な方法であることを見いだした。」(段落【0006】)、
「本発明で使用する散布器は、水田のあぜ道から、代掻時から田植後の水稲の幼苗期の水田内の水面上に散布するために使用するものである。その基本的な構成は、(1)薬液ボトル、(2)このボトルに入れた液体農薬を所望の距離に所望の薬量を手の動きで調節できるようにした噴射部からなる。・・・液体農薬の散布器は、片手で操作できるもので、いわゆる水テッポウ型・・・からなるものである。」(段落【0007】)、
「噴射部の先端のノズルの口径は、小さすぎても大きすぎてもあぜ道から液体農薬を遠くまで散布できない。・・・口径が小さすぎると、液体農薬が霧状となって遠くへ散布できず、反対に口径が大きすぎると一度に多量の薬液が噴出するので、広い水田に均一に散布することができなくなる。またノズルの孔の数は1個でも・・・よい。その形状は、1つの孔・・・から1本の放物線上に液体農薬を放出する・・・できれば、・・・可変式となっているのが好都合である。このようなノズルの付いた噴射部は、液体農薬を所望の距離に散布できるようにするために水テッポウ型の本体より長く張り出したものであってもよく、必要によりその長さを調節できるようになっていてもよい。」(段落【0008】)、
「液体農薬は、水田の代掻時から田植後の水稲の幼苗期に水田へ散布して効力を発揮するものであり、水田中に拡展するように調剤されているものであればよい。」(段落【0011】)、
「薬剤散布後3日間湛水状態に保ち、・・・水稲を・・・、通常の栽培管理をする。」(段落【0020】)
との記載が認められ、これらの記載によれば、引用例1には、

「ノズルが1本の放物線状に液体農薬を放出する孔を有するところの薬液ボトルを装着した水テッポウ型散布器を用いて、水稲用液体農薬をあぜ道から湛水状態の水田に該ノズルから所望の距離に所望の薬量を散布する液体農薬の散布方法。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。なお、引用例1記載の「放物線上」は、誤りと認められ「放物線状」と認定した。。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「1本の放物線状に液体農薬を放出する孔」、「水稲用液体農薬」、「あぜ道」、「湛水状態の水田」および「所望の距離に所望の薬量を散布」は、本願補正発明の「ストレートな孔」、「水稲用液状農薬」、「畦畔」、「湛水下水田」および「直射的に散布」に相当し、本願補正発明の「ノズル・・・を有するところの蓄圧式散布容器」および引用例1発明の「水テッポウ型散布器」は、「水稲用液状農薬散布具」ということができるから、両者は、
「ノズルがストレートな孔を有するところの水稲用液状農薬散布具を用いて、水稲用液状農薬を畦畔から湛水下水田に該ノズルから直射的に散布する液状農薬の散布方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点、水稲用液状農薬散布具が、本願補正発明では、蓄圧式散布容器を用いるものであるのに対し、引用例1発明は、薬液ボトルを装着した水テッポウ型散布器である点。

(4)判断
上記相違点について検討すると、液体の噴射に際し、一般的に、家庭園芸などで散布液を噴出させるため、蓄圧タンク内に加圧用ピストンを持つポンプシリンダを収納した蓄圧式噴霧器は従来周知(例えば、実願昭59-185173号(実開昭61-98561号)のマイクロフィルム、実願平4-10088号(実開平5-70660号)のCD-ROM参照。)であり、また、連続的に放水できる蓄圧式の水鉄砲も周知(実願昭56-16992号(実開昭57-132996号)のマイクロフィルム、実願昭61-54483号(実開昭62-166490号)のマイクロフィルム参照。)であるから、引用例1発明において、連続放水等ができるために、水テッポウ型散布器を、蓄圧式散布容器を用いたものに代えて本願補正発明のように蓄圧式散布容器を用いるようにした点に格別の困難性は見当たらない。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものとは認められない。
したがって、本願補正発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成12年6月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成12年3月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「ノズルがストレートな孔を有するところの蓄圧式散布容器の該ノズルから水稲用液状農薬を直射的に湛水下水田へ散布することを特徴とする方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-24 
結審通知日 2005-01-26 
審決日 2005-02-15 
出願番号 特願平9-211656
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01M)
P 1 8・ 121- Z (A01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋月 美紀子吉田 佳代子  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 林 晴男
白樫 泰子
発明の名称 水稲用液状農薬の散布方法  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 萼 経夫  
代理人 中村 壽夫  
代理人 加藤 勉  

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