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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q |
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管理番号 | 1114501 |
審判番号 | 不服2002-20240 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-10-17 |
確定日 | 2005-03-31 |
事件の表示 | 平成7年特許願第293942号「衛星放送受信アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成9年5月27日出願公開、特開平9-139623〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年11月13日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年11月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「静止衛星からの到来電波を反射および集束させる球面の一部分からなる反射鏡と、前記反射鏡の背面に仰角を所定値に固定して取付けられるとともに方位角が調整可能な第1の機械的手段と、前記反射鏡の集束点近傍に配設された一次放射器の空間的位置および前記反射鏡に対する向きを可変できる第2の機械的手段とを備え、前記第1の機械的手段により前記反射鏡の方位角を前記静止衛星からの到来電波の方向に調整し、前記第2の機械的手段により前記反射鏡に離軸入射電波となって入射する前記静止衛星からの到来電波の集束点に対して前記反射鏡の正規の集束点から離軸角に応じた距離だけ前記一次放射器の空間的位置を調整するとともに前記静止衛星からの到来電波の集束点の方向に前記一次放射器の向きを調整して、前記静止衛星からの到来電波が最大受信電力になるようにしたことを特徴とする衛星放送受信アンテナ。」 2.引用発明及び周知技術 (1)これに対して、当審の拒絶理由に引用された実願平2-57681号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開平4-19809号参照、以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 イ.「アンテナディッシュ本体と、一次放射器・コンバータ部とから形成される衛星放送受信用パラボラアンテナにおいて、 前記アンテナディッシュ本体が、合成樹脂の高発泡成形体として形成されており、該アンテナディッシュの背面に、支持部材取り付け部が一体成形されたことを特徴とする衛星放送受信用パラボラアンテナ。」(1頁、実用新案登録請求の範囲) ロ.「第1図は、本考案にかかる衛星放送または衛星通信受信用パラボラアンテナの構成を示す側断面図で、本体1と、一次放射器・コンバータ組立体2とからなる。」(3頁14〜17行目) ハ.「反射面11は到来電波を反射させて、一次放射器・コンバータ12の点へ集束させるのに必要な放物面に形成し、かつ銅系、ニッケル系等の導電体を被層し、電波を効率よく反射するように形成される。」(4頁1〜5行目) ニ.「一次放射器・コンバータ組立体2は、赤道上空36,000Kmに位置する静止放送衛星から到来する円偏波の電波を、一次放射器で直線偏波に変換し、かつコンバータ部で極めて微弱な電波を増幅すると共にその周波数を12GHzからケーブル伝送に適した1GHzに周波数に変換するものである。 本体1の下部には、一次放射器・コンバータ12を取り付けるためのアーム13を水平方向に挿入する穴14及び支持部材15を垂直方向に挿入するための穴16が形成される。さらにアーム13を本体に固定するためのねじ17を挿入する穴18が形成される。これらによって支持部材取り付け部3が一体成形によって形成される。」(4頁8行目〜5頁2行目) ホ.「アンテナ本体の反射面11の向きは、支持部材15の取り付け状態を加減することにより容易に調整することができる。また、アーム13の長さあるいは角度を調整可能に形成することにより、緯度差や地域差などに応じて電波到来方向と反射方向との整合を図ることができる。」(5頁14〜20行目) 上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「支持部材取り付け部3」はアンテナ本体の背面に設けられ、支持部材15は「垂直方向に挿入するための穴」に取り付けられ、その向きは「支持部材15の取り付け状態を加減することにより容易に調整することができる」ものであるから、当該支持部材取り付け部3及び支持部材15及び図示されていない支持部材15の他方の支持部材取り付け手段は「反射面の向きが調整可能な第1の機械的手段」を構成している。 また、上記「アーム13」は、その「長さあるいは角度が調整可能に形成」され、「緯度差に応じて電波到来方向と反射方向との整合を図る」ものであり、「長さ」の調整は空間的位置の調整に他ならず、「角度」の調整は向きの調整に他ならないから、当該構成は「反射鏡の集束点近傍に配設された一次放射器の空間的位置あるいは向きを調整して電波の反射方向との整合を図ることができる第2の機械的手段」を構成している。 また、上記「衛星放送受信用パラボラアンテナ」はいわゆる「衛星放送受信アンテナ」であり、当該「衛星」は赤道上空36,000Kmに位置する「静止(放送)衛星」である。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「静止衛星からの到来電波を反射および集束させる放物面からなる反射鏡と、前記反射鏡の背面に取付けられるとともに反射面の向きが調整可能な第1の機械的手段と、前記反射鏡の集束点近傍に配設された一次放射器の空間的位置あるいは向きを調整して電波の反射方向との整合を図ることができる第2の機械的手段とを備えた衛星放送受信アンテナ。」 (2)また、同じく当審の拒絶理由に引用された特開平4-167804号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「導電板を曲げ加工して形成したリフレクタと、このリフレクタの前方に対向するように配置されたコンバータ・ホーンとで構成され、前記リフレクタは凹状の球面に形成された電波反射領域と、その周囲に設けた平面領域と、これらの領域間に設けられた空気流の調整領域とで構成されることを特徴とする衛星受信アンテナ。」(1頁左下欄、特許請求の範囲第1項) ロ.「第2図に前記リフレクタ1の断面形状を示す。同図において、11は電波反射領域であり、その反射面は凹状の球面に形成されている。12はリフレクタ1を固定するためにその周囲に配設された平面領域、13は空気流の調整領域であり、前記電波反射領域11と平面領域12を滑らかに接続している。 このように構成されるリフレクタ1は、平面領域12においてねじ4等を利用して家屋の外壁等に取着させる。この場合、取り付けには接着剤等を使用してもよい。 そして、前記アーム3はリフレクタ1の下部位置から前方に突出させ、このアーム3の先端にリフレクタ1と対向するようにコンバータ・ホーン2を支持させている。 この構成のアンテナによれば、第3図の模式図にアンテナを側面から見た電波の集束状況を示すように、リフレクタ1の前面斜め上方向から入射した衛星電波は電波反射領域11における凹面鏡の集束作用により、前面下方の一定箇所即ち焦点Pに集中させられる。 第4図は同様に本アンテナを上方から見た模式図であり、同図において斜め左前方向から入射した電波は同様の作用により、リフレクタ1の斜め右前方向の一定箇所である焦点Pに集中させられる。したがって、焦点Pにコンバータ・ホーンを配設することで、パラボラアンテナとして利用することが可能となる。」(2頁左下欄9行目〜右下欄16行目) ハ.「また、第7図に例示するように、リフレクタ1を家屋の壁面に固定し、コンバータ・ホーン2は固定構造32によりリフレクタ1とは別にベランダ等の他の家屋の構造物に固定し、あるいは図示は省略するが、自立スタンド等を利用してリフレクタ1の焦点に配置することも可能である。」(3頁右上欄9〜14行目) 上記周知例1の記載及び添付図面(第5図、第6図)ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、「衛星受信アンテナに用いるパラボラアンテナとして、反射面を凹状の球面に形成したものを利用すること」及び「一次放射器を球面反射鏡の焦点に配置するためには空間的位置ばかりでなくその向きも調整すべきこと」は周知である。 (3)また、同じく当審の拒絶理由に引用された実願平5-49606号の願書に添付された明細書と図面の内容を記録したCD-ROM(実開平7-20709号参照、以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0005】 本考案は上記課題に鑑みなされたもので、予め定められた所定の広域範囲内では、仰角調整を行なう必要なく、方位角のみの1軸調整で容易に方向調整を行なうことが可能になる低価格な衛星受信用アンテナを提供することを目的とする。」(明細書7頁段落【0005】) ロ.「【0013】 上記衛星受信用アンテナのアンテナ反射鏡11は、取付け金具15及び取付けバンド18を介してマスト19に取付け固定され、取付け金具15には、上記反射鏡11における仰角無調整範囲が、例えばその受信地点を「青森」〜「甲府」間に対応させた34°〜39°の5度に設定される低仰角用固定孔16と、「甲府」〜「山口」間に対応させた39°〜44°の5度に設定される高仰角用固定孔17とが備えられる。」(明細書5頁段落【0013】) 上記周知例2の記載及び添付図面(図3)ならびにこの分野における技術常識によれば、「反射鏡の背面に取り付け金具により取り付けられ、予め定められた所定の広域範囲内では、仰角調整を行なう必要なく、方位角のみの1軸調整で容易に方向調整を行なうことが可能な衛星受信用アンテナ」は周知である。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明の「球面の一部分からなる反射鏡」と引用発明の「放物面からなる反射鏡」はいずれも「凹面反射鏡」であるという点で一致している。 また、本願発明の「反射鏡の背面に仰角を所定値に固定して取付けられるとともに方位角が調整可能な第1の機械的手段」と引用発明の「反射鏡の背面に取付けられるとともに反射面の向きが調整可能な第1の機械的手段」とはいずれも「反射鏡の背面に取付けられるとともに反射面の向きが調整可能な第1の機械的手段」である点で一致している。 また、本願発明の「一次放射器の空間的位置および前記反射鏡に対する向きを可変できる第2の機械的手段」と引用発明の「一次放射器の空間的位置あるいは向きを調整して電波の反射方向との整合を図ることができる第2の機械的手段」はいずれも「一次放射器の空間的位置等を可変できる第2の機械的手段」であるという点で一致している。 したがって、本願発明と引用発明は、 「静止衛星からの到来電波を反射および集束させる凹面反射鏡と、前記反射鏡の背面に取付けられるとともに反射面の向きが調整可能な第1の機械的手段と、前記反射鏡の集束点近傍に配設された一次放射器の空間的位置等を可変できる第2の機械的手段とを備えた衛星放送受信アンテナ。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> (1)「凹面反射鏡」に関し、本願発明の凹面は「球面の一部からなる反射鏡」であるのに対し、引用発明は「放物面からなる反射鏡」である点。 (2)「反射鏡の背面に取付けられるとともに反射面の向きが調整可能な第1の機械的手段」に関し、本願発明の手段は「反射鏡の背面に仰角を所定値に固定して取付けられるとともに方位角が調整可能な第1の機械的手段」であるのに対し、引用発明は「反射鏡の背面に取付けられるとともに反射面の向きが調整可能な第1の機械的手段」である点。 (3)「一次放射器の空間的位置等を可変できる第2の機械的手段」に関し、本願発明の手段は「一次放射器の空間的位置および前記反射鏡に対する向きを可変できる第2の機械的手段」であるのに対し、引用発明は「一次放射器の空間的位置あるいは向きを調整して電波の反射方向との整合を図ることができる第2の機械的手段」である点。 (4)本願発明は「前記第1の機械的手段により前記反射鏡の方位角を前記静止衛星からの到来電波の方向に調整し、前記第2の機械的手段により前記反射鏡に離軸入射電波となって入射する前記静止衛星からの到来電波の集束点に対して前記反射鏡の正規の集束点から離軸角に応じた距離だけ前記一次放射器の空間的位置を調整するとともに前記静止衛星からの到来電波の集束点の方向に前記一次放射器の向きを調整して、前記静止衛星からの到来電波が最大受信電力になるようにした」という構成を備えているのに対し、引用発明はその点の構成が不明である点。 4.当審の判断 そこで、まず、上記相違点(1)の「凹面反射鏡」について検討するに、例えば上記周知例1によれば、「衛星受信アンテナに用いるパラボラアンテナとして、反射面を凹状の球面に形成したものを利用すること」は周知であるところ、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の「放物面からなる反射鏡」を本願発明のように「球面の一部からなる反射鏡」に変更する程度のことは、当業者であれば適宜成し得ることである。 ついで、上記相違点(2)の「反射鏡の背面に取付けられるとともに反射面の向きが調整可能な第1の機械的手段」について検討するに、例えば上記周知例2によれば「反射鏡の背面に取り付け金具により取り付けられ、予め定められた所定の広域範囲内では、仰角調整を行なう必要なく、方位角のみの1軸調整で容易に方向調整を行なうことが可能な衛星受信用アンテナ」は周知であるところ、引用発明の「反射面の向き」は垂直方向に対しては固定されており、緯度差(即ち、仰角)に対しては第2の機械的手段により調整可能なものであるから、引用発明でいうところの「反射面の向き」の調整(即ち、「支持部材15の取り付け状態を加減」すること)を当該周知技術に基づいて方位角のみの調整に限定し、本願発明のような「反射鏡の背面に仰角を所定値に固定して取付けられるとともに方位角が調整可能な第1の機械的手段」とする程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。 次に、上記相違点(3)の「一次放射器の空間的位置等を可変できる第2の機械的手段」について検討するに、引用発明の「一次放射器の向き」は反射波の到来方向との整合を図るために調整されるのであるから、この向きは本願発明でいうところの「反射鏡に対する向き」に他ならないものである。また、「一次放射器を球面反射鏡の焦点に配置するためには空間的位置ばかりでなくその向きも調整すべきこと」は上記周知例1の記載からも明らかである。したがって引用発明の「一次放射器の空間的位置あるいは向きを調整して電波の反射方向との整合を図ることができる第2の機械的手段」を本願発明のような「一次放射器の空間的位置および前記反射鏡に対する向きを可変できる第2の機械的手段」とする程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。 ついで、上記相違点(4)について検討するに、パラボラアンテナ(即ち、焦点を有する凹面反射鏡を用いたアンテナ)の最大受信電力が一次放射器を反射鏡の焦点に配置しその向きを反射波の到来方向に向けたときに得られることは当業者には周知のことであるところ、上記周知例1によれば反射面を凹状の球面に形成した衛星受信アンテナもパラボラアンテナであるから、当該周知の知見に基づいてその取り付けを調整し、本願発明のような構成とする程度のことに格別の困難性は認められない。即ち、引用発明のアンテナの取り付け調整において、本願発明のように「前記第1の機械的手段により前記反射鏡の方位角を前記静止衛星からの到来電波の方向に調整し、前記第2の機械的手段により前記反射鏡に離軸入射電波となって入射する前記静止衛星からの到来電波の集束点に対して前記反射鏡の正規の集束点から離軸角に応じた距離だけ前記一次放射器の空間的位置を調整するとともに前記静止衛星からの到来電波の集束点の方向に前記一次放射器の向きを調整して、前記静止衛星からの到来電波が最大受信電力になるように」調整することは当業者であれば最大受信電力を得るために当然に行うべきことに過ぎないものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明ならびに上記周知例1、2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-01-27 |
結審通知日 | 2005-02-01 |
審決日 | 2005-02-15 |
出願番号 | 特願平7-293942 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 右田 勝則 |
特許庁審判長 |
佐藤 秀一 |
特許庁審判官 |
浜野 友茂 望月 章俊 |
発明の名称 | 衛星放送受信アンテナ |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 坂口 智康 |
代理人 | 岩橋 文雄 |