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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1114507
審判番号 不服2003-660  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-09 
確定日 2005-03-31 
事件の表示 平成 7年特許願第 62674号「画像処理プロセッサおよびそれを用いた画像処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月11日出願公開、特開平 8-263628〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年3月22日の出願であって、平成14年12月2日付けで拒絶査定がなされ、平成15年1月9日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、同年2月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年2月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年2月7日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明
本補正は、特許請求の範囲を、
「【請求項1】画像データを画像撮像装置から取り込んで画像データ処理をおこなう画像処理プロセッサにおいて、
画像データの入力と出力とをおこなう画像入出力部と、
画像メモリに対して画像データの読みだしまたは書き込みの制御をおこなう画像メモリ制御部と、
前記画像入出力部または前記画像メモリ制御部から入力した画像データを処理し、その結果を画像メモリ制御部に出力する画像処理部と、
前記画像処理部の処理結果から特徴量を抽出する特徴抽出部と、
この画像処理プロセッサの動作指定やシステムプロセッサからの画像データアクセスの仲介をおこなうシステム制御部とを有し、
前記画像撮像装置が動作する1種類以上のビデオ信号タイミングとビデオクロックが存在し、
かつ、前記ビデオクロックとは、独立に動作する画像処理用クロックが存在し、
前記ビデオクロックは、前記画像入出力部の動作クロックとして用いられ、 前記画像処理用クロックは、前記画像処理部と、前記特徴抽出部と、前記画像メモリ制御部の動作クロックとして用いられることを特徴とする画像処理プロセッサ。
【請求項2】 前記画像処理部が画像データを処理し、その結果を画像メモリに出力すると同時に、
これとは独立に画像メモリに対する画像の入出力、特徴抽出、システムプロセッサの画像メモリのアクセスが並列に実行できるように、
前記画像入出力部、前記特徴抽出部、前記システム制御部の各々にそれ自身を起動し制御する手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像処理プロセッサ。
【請求項3】 前記画像入出力部と、前記画像メモリ制御部と、前記画像処理部と、前記特徴抽出部と、前記システム制御部とを1つの半導体基板上に形成することを特徴とする請求項1および請求項2記載のいずれかの画像処理プロセッサ。
【請求項4】 画像撮像装置からの画像データを記憶するビデオメモリと、
表示装置へ表示するための画像データを記憶する表示メモリと、
画像処理の入力画像や画像処理結果を格納する一つ以上の画像メモリと、
前記ビデオメモリ、前記表示メモリおよび前記画像メモリに接続され、これらメモリに格納されている画像データの処理やデータ転送などをおこない、
画像データの入力と出力とをおこなう画像入出力部と、
画像メモリに対して画像データの読みだしまたは書き込みの制御をおこなう画像メモリ制御部と、
前記画像入出力部または前記画像メモリ制御部から入力した画像データを処理し、その結果を画像メモリ制御部に出力する画像処理部と、
前記画像処理部の処理結果から特徴量を抽出する特徴抽出部と、
この画像処理プロセッサの動作指定やシステムプロセッサからの画像データアクセスの仲介をおこなうシステム制御部とを有し、
前記画像処理部が画像データを処理し、その結果を画像メモリに出力すると同時に、
これとは独立に画像メモリに対する画像の入出力、特徴抽出、システムプロセッサの画像メモリのアクセスが並列に実行できるように、
前記画像入出力部、前記特徴抽出部、前記システム制御部の各々にそれ自身を起動し制御する手段を有する画像処理プロセッサとを有し、
前記ビデオメモリは、前記画像撮像装置から、第一のビデオクロックに従って画像データが書き込まれ、かつ、前記画像撮像装置から、前記第一のビデオクロックとは独立に動作する画像処理用クロックに従って前記画像データを読みだされ、
前記表示メモリは、第二のビデオクロックに従って画像データを読みだされて、表示装置への表示がされ、かつ、その第二のビデオクロックとは独立に動作する画像処理用クロックに従って前記画像データが書き込まれ、
前記画像処理用クロックは、前記画像処理部と、前記特徴抽出部と、前記画像メモリ制御部の動作クロックとして用いられることを特徴とする画像処理システム。
【請求項5】 前記画像処理プロセッサの前記画像入出力部が、前記ビデオメモリおよび前記表示メモリを内蔵していることを特徴とする請求項4記載の画像処理システム。」と補正し、明細書の関連箇所を合わせて補正しようとするものであって、補正前の請求項1及び4について、それぞれ発明の構成に欠くことができない事項を限定し、明細書の記載を特許請求の範囲の記載に整合させようとするものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮及び同第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができ、本補正が平成6年改正前特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定を満たすものであるかについて以下に検討する。

(2)刊行物記載の発明
本願出願前に頒布された、小林芳樹 武長寛 池田光二 高橋一哉 工藤善道 今出宅哉、”高性能画像処理LSI(ISP-X)の開発とインテリジェントカメラへの応用”、情報処理学会第49回(平成6年後期)全国大会講演論文集(6) ハードウェア システム、社団法人情報処理学会、1994年9月20日、1L-6、P.6-51〜6-52(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「1.はじめに
画像認識技術の実用化は、外観検査やOCRから始まり、今では道路交通や鉄鋼、電力などの基幹分野に普及してきた。近い将来、パソコンやゲーム、車載機などのパーソナル用途に広がると予想される。
このためには、認識ハードの小型化が必然である。その第一歩として、我々は、高性能かつ超小型化を可能にする1チップ画像処理LSI(ISP-X)を開発し、カメラ一体化ユニットを開発したので報告する。
2.ISP-Xの構成と特徴
ISP-Xは、画像メモリや映像入出力の制御機能を1チップに統合した画像処理LSI(図1〜3)で、汎用RAMを外付けするだけで画像認識システムを構築できる。主な特徴を以下に示す。
(1)画像処理部
*多様な画像処理機能を実現
従来の画像処理LSI ISP-2の画素間演算、空間フィルタ、min/maxフィルタに加え、ラベリング、正規化相関、ヒストグラムほかを統合。
*高速処理(25MHz)を実現
パイプライン演算により、全機能を25MHz処理。
*画像処理機能の並列処理が可能(下記は一例)
空間フィルタ-->2値化-->ヒストグラム処理。
*拡張画像プロセッサ・インターフェースを内蔵
(2)画像メモリ制御部
*DRAM接続による、システムの低価格化が可能
*高速ページモードにより25MHzアクセス実現
*4チャンネルの画像メモリをサポート
処理入力-2面、処理出力-1面、外部映像入出力対象-1面を想定し4CHサポート。各CHは、512×512画素の画面を最大64面まで拡張可能。
(3)映像入出力制御部
*NTSCカラー他、各種ビデオに対応可能
*ストロボ制御を内蔵
*画像処理と映像入力、出力の同時処理が可能
*画像メモリとカメラ映像のオーバレイが可能」(6-51頁左欄1〜36行)
イ 「(2)画像処理ボード
ISP-Xと、映像入出力用フレームメモリ(YUV各2面)、画像メモリ用DRAM(512×512画素画像16面)を搭載する。」(6-52頁左欄18〜21行)
ウ 「4.2 全体動作の概要
CCDカメラのデジタル映像が画像処理ボードに入力され、コントローラの指定に従って画像処理機能が実行される。コントローラの指定に従って画像処理機能が実行される。コントローラは、この結果から最終の認識判定を実行し、通信ポートを介して外部に認識情報を伝送する。」(6-52頁左欄30〜35行)
これら記載事項及び図1からみて、刊行物1には、
「CCDカメラのデジタル映像が画像処理ボードに入力され、コントローラの指定に従って画像処理機能が実行される動作をし、前記画像処理ボードには1チップ画像処理LSI(ISP-X)が搭載されており、ISP-Xは、画像メモリや映像入出力の制御機能を1チップに統合した画像処理LSIで、一例として空間フィルタ→2値化→ヒストグラム処理を行う画像処理部と4チャンネルの画像メモリをサポートする画像メモリ制御部とNTSCカラー他、各種ビデオに対応可能な映像入出力制御部を有する画像処理LSI」の発明が記載されている。

(3)周知例
本願出願前に頒布された特開平3-129477号公報には、以下の周知例が記載されている。
ア 「図形処理装置100が実施される好ましい態様としては、それ自体がLSIにされることである。それゆえ、以下の図形処理装置100の実施例は、LSI化されたものについて説明される。
<端子構成>
第2図は、図形処理装置100の端子構成を示す、電源(VCC)及びア-ス(GND)を除く総端子数は、139本である。
(1)システム・クロツク(SYSCLK)
端子SYSCLKに入力されるクロツク信号に同期して、図形処理装置100の処理が全て実行される。」(8頁右下欄9行〜9頁左上欄1行)
イ 「(16)表示クロツク(DISPCLK)
端子DISPCLKに入力されるクロツクの1/2の周波数で、CRTデイスプレイ装置207の表示を制御する、図形処理装置100の内部回路が動作する。」(10頁左上欄9〜13行)」

(4)対比
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、後者の「CCDカメラ」、「画像処理LSI」、「映像入出力制御部」、「画像メモリ」、「画像メモリ制御部」は、前者の「画像撮像装置」、「画像処理プロセッサ」、「画像入出力部」、「画像メモリ」、「画像メモリ制御部」に相当し、刊行物1の画像メモリのうち2面は「処理入力」用であるから(上記(2)ア「(2)画像メモリ制御部」参照。)、少なくとも画像メモリ制御部から入力した画像データは処理されるものであり、さらに刊行物1に記載された発明は「空間フィルタ」や「2値化」を行うからこれらの処理を行う「画像処理部」が存在することは自明であり、また、刊行物1記載のものは「ヒストグラム処理」を行い、また「コントローラの指定に従って画像処理機能が実行される」ものであること、さらに刊行物の図1には「特徴抽出処理部」及び「システムプロセッサインターフェイス」が記載されており、これらはそれぞれ本願補正発明の「特徴抽出部」及び「システム制御部」に相当することも明らかである。
してみると、両者は、
「画像データを画像撮像装置から取り込んで画像データ処理をおこなう画像処理プロセッサにおいて、
画像データの入力と出力とをおこなう画像入出力部と、
画像メモリに対して画像データの読みだしまたは書き込みの制御をおこなう画像メモリ制御部と、
前記画像入出力部または前記画像メモリ制御部から入力した画像データを処理し、その結果を画像メモリ制御部に出力する画像処理部と、
前記画像処理部の処理結果から特徴量を抽出する特徴抽出部と、
この画像処理プロセッサの動作指定やシステムプロセッサからの画像データアクセスの仲介をおこなうシステム制御部とを有する画像処理プロセッサ。」
である点で一致しており、以下の点で相違している。
(相違点)本願補正発明では、画像撮像装置が動作する1種類以上のビデオ信号タイミングとビデオクロックが存在し、かつ、前記ビデオクロックとは、独立に動作する画像処理用クロックが存在し、前記ビデオクロックは、前記画像入出力部の動作クロックとして用いられ、前記画像処理用クロックは、前記画像処理部と、前記特徴抽出部と、前記画像メモリ制御部の動作クロックとして用いられるが、刊行物1には動作クロックについては明記されていない点。

(5)当審の判断
そこで、上記(相違点)について検討すると、まず、刊行物1に記載された発明はNTSCカラーに対応しているから、その映像信号に同期したビデオ信号タイミングとビデオクロックが存在することは明らかであり、さらに周知のマイクロプロセッサ技術を背景とすれば、刊行物1(上記(2)ア参照。)に「空間フィルタ」や「ヒストグラム処理」を含む全機能を25MHzで高速処理すること、及び画像メモリ制御部が25MHzアクセスを実現することが記載されているから、刊行物1に記載された発明には画像処理部と特徴抽出部と画像メモリ制御部の動作クロックとして用いられる「画像処理用クロック」が存在することも明らかである。そして、画像入出力部は画像データの入力を行うにあたってその入力されるデータと同期をとらなければならないことは当業者に自明のことであり、かつ刊行物1に記載された「高速処理」を実現するには前記入力データの同期スピードより速くする必要があることも当然に導かれることである。そして、処理プロセッサに外部から別々のクロックを与えることは、上記(3)に示したように周知であるから、この周知技術を背景とすれば、前記ビデオクロックと画像処理用クロックを別々に与え両クロックを独立させることは、当業者が容易になし得る設計的事項である。
したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年2月7日付け手続補正は、上記2.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年11月7日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】画像データを画像撮像装置から取り込んで画像データ処理をおこなう画像処理プロセッサにおいて、
画像データの入力と出力とをおこなう画像入出力部と、
画像メモリに対して画像データの読みだしまたは書き込みの制御をおこなう画像メモリ制御部と、
前記画像入出力部または前記画像メモリ制御部から入力した画像データを処理し、その結果を画像メモリ制御部に出力する画像処理部と、
前記画像処理部の処理結果から特徴量を抽出する特徴抽出部と、
この画像処理プロセッサの動作指定やシステムプロセッサからの画像データアクセスの仲介をおこなうシステム制御部とを有し、
前記画像撮像装置が動作する1種類以上のビデオ信号タイミングとビデオクロックが存在し、
かつ、前記ビデオクロックとは、独立に動作する画像処理用クロックが存在し、
前記ビデオクロックと前記画像処理用クロックとが動作クロックとして用いられることを特徴とする画像処理プロセッサ。」

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の限定事項である「前記画像処理用クロックは、前記画像処理部と、前記特徴抽出部と、前記画像メモリ制御部の動作クロックとして用いられる」を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.(5)に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-26 
結審通知日 2005-02-01 
審決日 2005-02-15 
出願番号 特願平7-62674
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 真木 健彦  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 深沢 正志
加藤 恵一
発明の名称 画像処理プロセッサおよびそれを用いた画像処理システム  
代理人 小川 勝男  

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