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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02F
管理番号 1114519
審判番号 不服2004-13585  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2005-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-01 
確定日 2005-03-31 
事件の表示 特願2001-570926「故障対処法出力方法、出力システムおよび出力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月 4日国際公開、WO01/73224〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年3月30日(優先権主張:平成12年3月31日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成16年1月30日付けの拒絶理由通知に対し同年4月1日付けで特許請求の範囲に係る手続補正がなされ、同年5月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年7月30日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年7月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年7月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項9は、
「【請求項8】
予め故障信号に対応する対処法をデータベース装置に格納し、 作業機から送信されてくる作業機各部の故障を表す故障信号を受信し、
受信した故障信号に基づき前記データベース装置にアクセスして、前記受信した故障信号が示す故障の対処法を求め、
求められた前記対処法を表す対処信号を前記作業機およびサービスマンの少なくともいずれかに送信する故障対処法出力方法。」(以下、「補正発明」という。)
と補正された。
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)本願出願前に頒布された刊行物に記載された事項
(2-1)特開平10-46631号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】 複数の動作部の各々に設けられた各種センサから状態検出信号を入力し、予め用意された制御手順と前記状態検出信号に基づいて制御指令を生成し、前記制御指令を前記動作部の各々のアクチュエータを駆動するための駆動装置に与えて前記動作部の動作を制御する制御用コントローラと、前記制御用コントローラに接続される診断用コントローラを含み、この診断用コントローラが前記制御用コントローラに格納される所定のデータを読み出して出力する診断用装置と、送受話器と無線通信部を含む無線電話機と、前記無線電話機と前記診断用コントローラを接続する第1の通信用コントローラとを備える移動作業機械と、
コンピュータと、送受話器と通信部を含む電話機と、前記コンピュータと前記電話機を接続する第2の通信用コントローラとを装備し、かつベテランサービス員が配属される管理オフィスとから構成され、
前記移動作業機械と前記管理オフィスとの間では、前記無線電話機と前記電話機を用いてかつ電話回線を経由して現地サービス員と前記ベテランサービス員とが音声による連絡を行うことと、前記第1の通信用コントローラと前記無線電話機の前記無線通信部と前記電話機の通信部と前記第2の通信用コントローラを用いてかつ電話回線を経由して前記診断用コントローラから前記コンピュータへ所定データを送信するためのデータ通信を行うこととが可能であり、
前記第1の通信用コントローラは、前記音声による連絡と前記データ通信のいずれかを選択する切替え手段と、前記データ通信の通信可能状態を検出して表示する検出・表示手段とを備えることを特徴とする移動作業機械の保守・管理システム。」
(イ)「【0017】図1は本発明に係る移動作業機械の保守・管理システムの全体的な構成を概念的に示したものである。本実施形態では、移動作業機械として油圧ショベルの例を説明する。図1において、Aは現地であり、この現地Aには、ここで作業を行う油圧ショベル11が配置される。油圧ショベル11は、後述するごとく、エンジンや油圧ポンプと、複数の機械的動作部の各々に配置された作業動作を行うための各種アクチュエータと、当該動作部に配置された各種センサと、制御用コントローラを備え、また自己診断を行うための診断用コントローラ等を備えている。また現地Aにはサービス担当員(以下「現地サービス員」という)12が配置される。一方、現地Aから離れた遠隔の地には管理オフィス13が設けられ、管理オフィス13にはデータの処理・判断を行うコンピュータ14が配置されると共に、ベテランのサービス担当員(以下「ベテランサービス員」という)15が配属される。
【0018】現地Aの油圧ショベル11と、現地Aから離れた遠隔地の管理オフィス13との間は、電話回線16で接続される。従って、現地サービス員12が、例えば油圧ショベル11に搭載される電話機(以下「車載電話機」という)を使用して、管理オフィス13のベテランサービス員15と音声による連絡を行い、さらに当該車載電話機を利用して、油圧ショベル11の診断用コントローラから管理オフィス13のコンピュータ14に対して故障データ等の送信を行うことが可能である。故障データ等は、ベテランサービス員15が油圧ショベル11の状態を判断する時に役立つ重要なデータである。かかる電話回線による音声連絡と故障データ送信を可能にするため、油圧ショベル11と管理オフィス13の各々には通信用コントローラを備えるように構成される。」
(ウ)「【0022】図2においてブロック31はチェックツールを概念的に意味する。チェックツール31は、油圧ショベル11に搭載された制御用コントローラ21やセンサ群22等に異常(故障)がないか否かを調べるための診断用の装置である。本実施形態によるチェックツール31は、油圧ショベル11に搭載された前述の制御用コントローラ21に対して外付けで着脱自在に設けられる。図2は、制御用コントローラ21に対してチェックツール31が付設された状態を示す。チェックツール31は、診断用コントーラ32と、表示部33とキーボード34を備える。制御用コントローラ21に対しチェックツール31が付設されるとき、診断用コントローラ32と制御用コントローラ21は電気的に接続される。図2において、35は接続部である。
【0023】接続状態にある診断用コントローラ32と制御用コントローラ21の間ではシリアル通信が行われる。このシリアル通信で、制御用コントローラ21から出力されるデータは、診断用コントローラ32で読み込まれ、表示部33でデータが表示される。この状態で現地サービス員12は、キーボード34を操作することにより、表示部33に表示されたデータを選択することができる。またチェックツール31によれば、診断用コントローラ32の持つ自己診断の機能に基づいて、制御用コントローラ21の誤動作や各種センサの異常検出のチェックを行うことができる。」
(エ)「【0034】現地サービス員12は油圧ショベル11にチェックツール31を付設する。チェックツール31の診断用コントローラ32は、制御用コントローラ21と通信用コントローラ51に電気的に接続される。診断用コントローラ32は制御用コントローラ21から状態データや故障データを受け取る。現地サービス員12は、診断用コントローラ32に入力されたデータに基づいて、あるいは診断用コントローラ32の自己診断機能に基づいて、制御用コントローラ21、各種センサ、各種アクチュエータの状態について診断を行う。
【0035】現地サービス員12は、自分で故障の原因が把握できない場合には、通常では切替え器74により送受話器42側に接続されて成る車載電話機41を用いて管理オフィス13側に電話をかけ、ベテランサービス員15に問い合わせ、指示を求める。ベテランサービス員15が故障データを送れという指示を出した場合に、当該指示に従って、データ通信/送受話器切替えスイッチ53を操作して、切替え器74をMPU71側に接続し、データ通信を行えるようにセットする。これによって、通信用コントローラ51では、データ通信可能な状態になり、診断用コントローラ32のメモリに格納される故障データが管理オフィス13のコンピュータ14に送られる。またランプ54が点灯する。この場合には、管理オフィス13側においても、切替え器76によって故障データをコンピュータ14にて受信できる状態になっている。コンピュータ14に故障データが入力されると、表示部61に表示される。ベテランサービス員15は、表示された故障データの内容に基づいて故障の原因について考察し、判断を出す。
【0036】現地サービス員12は、データ通信の状態において、ランプ54が点灯している限りにおいては、管理オフィス13側へのデータ通信が順調に行われていると判断できる。データ通信が完了すれば、データ通信/送受話器切替えスイッチ53を操作して、音声による電話連絡が可能な状態にし、ベテランサービス員15の指示を再び待つかまたは管理オフィス13へ電話をかける。ベテランサービス員15は、故障データを受け取った後に、切替え器76を切り替えて電話連絡ができるようにし、必要に応じて現地サービス員12に対して指示を出す。」
(オ)上記(ア)〜(エ)の記載を参照すると、刊行物1には、前記移動作業機器の保守・管理システムを用いて、移動作業機器へ故障の対処法の指示を行っていることから、故障の対処法の指示方法が記載されているといえるから、刊行物1には、
「移動作業機械から送られてくる故障データを受信し、
受信した故障データに基づきベテランサービス員15は前記受信した故障データが示す故障の対処法を考察・判断し、
考察・判断された前記対処法の指示を現地サービス員12に出す故障の対処法の指示方法」
の発明が記載されていると認められる。

(2-2)特開平11-77978号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】 機械のユニット毎に設けられた制御用PLCと、ケースベース推論等の推論および必要なデータの入力・出力を行うコンピュータと、上記制御用PLCと上記コンピュータとのデータ変換をするインターフェース用PLCを備え、上記制御用PLCと上記コンピュータと上記インターフェース用PLCが通信回線によりリンクされていることを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項2】 制御用PLCから送出される機械の運転状態等に関する異常信号等の信号データをコンピュータ内にある推論エンジンに取り込める形式に変換する入力フィルタを備えることを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス支援システム。
【請求項3】 入力フィルタを介して得られる信号データの情報に基づき自動的に推論を行い異常原因,対処方法等を表示することを特徴とする請求項2に記載のメンテナンス支援システム。
【請求項4】 機械のユニット毎に設けられ、当該ユニットの異常を検出できる制御用PLCと、上記制御用PLCを相互にリンクするPLCリンクと、各制御用PLCに通信回線を通じてリンクされているインターフェース用PLCと、上記各インターフェース用PLCの出力を、エキスパートシステムに入力可能な信号に変換する入力フィルタと、上記入力フィルタの出力に基づいて必要な情報が入力されるエキスパートシステムと、上記エキスパートシステムと上記入力フィルタと上記インターフェース用PLCを制御するオペレーティングシステムから成ることを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項5】 上記エキスパートシステムが、複数の推論ルールを有するルールデータベースと、複数の類例ケースを有するケースベースと、複数のデータ項目を有するデータベースと、上記入力フィルタの出力に基づいて入力された情報に基づいて、ケースベース推論を実行し、その事故の実体についてのケースベース推論を実行してマッチするケースを取出し、そのマッチするケースについての真の事故の原因を求めるルールベース推論を実行することができる推論エンジンとを含み、その真の原因およびそれに対応する処置を出力することができることを特徴とする請求項4に記載のメンテナンス支援システム。」
(イ)「【0009】本発明は、多数のユニットから成り、各ユニットが互いにインターロックを取り協調的に制御される比較的大規模な機械の制御シスシムにおいて、1)突発的に生じる故障に対しても対応することができ、2)インターロックが関与する複雑な故障に対しても真の故障原因を特定することができ、3)必要に応じて、人間のオペレータを介在させることなく自動的に故障原因を判定し、また対処法を提示することができるメンテナンス支援システムを提案することを課題とする。」
(ウ)「【0017】図2に本発明のシステムのコンピュータ3を中心とするブロックダイヤグラムを示す。
【0018】コンピュータ内にはオペレーティングシステム30、推論エンジン32、ルールベース,データベース,ケースベースを含むエキスパートシステムのためのファイル33及び入力フィルタ34等のソフトウェアが組み込まれている。コンピュータは、さらに該エキスパートシステムにおけるルールベース,データベース,ケースベースへの項目の追加や修正等を行うための入力装置を備える。オペレーティングシステム30はインターフェース用PLC2からのデータの取り込みや表示装置4への表示データの出力、入力装置5からのデータやコマンドの入力、推論エンジン32とのデータのやり取りや入力フィルタ34へのインターフェース用PLC2からの信号データのやり取りを制御する。いずれかの制御用PLC1が検出した異常は信号データとしてPLCリンク6とインターフェース用PLC2を介してコンピュータ3に取り込まれる。」
(エ)「【0021】人間のオペレータが介在する場合の仕事の流れを図3のフローチャートに示す。オペレータが、異常の内容を入力装置5から入力し、エキスパートシステム31に与えると、推論エンジン32はファイル33を検索し、その異常にマッチングするケースを出力し、オペレーティングシステム30によって表示装置4に表示される。表示される該マッチングケースは、複数のこともありかつそれぞれのマッチングケースの一致の程度により重み付けと優先度の情報を付加されることもある。該マッチングケースには異常、すなわち故障の原因や処置方法に関する情報が含まれている。
【0022】オペレータは該マッチングケースの情報に基づき対応する。また、マッチングケースが複数提示される場合、最も的確なケースを最優先して表示するようにファイル33の内容を変更,修正することも可能である。
【0023】人間のオペレータが介在せず、入力フィルタ34の出力が自動的にエキスパートシステム31に入力される場合の仕事の流れを図4のフローチャートに示す。この場合、入力フィルタ34より得られた異常に関する表示をオペレータが入力するのではなく、直接エキスパートシステム31に与えることで、異常発生から故障原因,処置方法の表示までを自動的に行なう。入力フィルタ34は、インターフェース用PLC2から送られてきた情報を、エキスパートシステム31に入力可能な信号に変換する。」
(オ)上記(ア)〜(エ)の記載より、ファイル33には、複数の類型ケースが格納されていることは当業者にとって明らかである。
(カ)よって、刊行物2には、
「予め異常の信号データに対応した故障の処置方法の情報を含む複数の類型ケースをファイル33に格納し、
入力された異常の信号データに基づきファイル33を検索して、前記入力された異常の信号データが示す故障の処置方法を求めるエキスパートシステム」
の発明が記載されている。

(3)対比
補正発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明の「移動作業機械」、「現地サービス員12」、および「故障の対処法の指示方法」は、それぞれ、補正発明の「作業機」、「サービスマン」、および「故障対処法出力方法」に相当する。
また、刊行物1に記載された発明は、故障データの受信を行っていることから、何らかの故障信号を送受信していることは明らかである。
さらに、刊行物1に記載された発明の「考察・判断された指示を・・・出す」点と、補正発明の「求められた前記対処法を表す対処信号を・・・送信する」点は、いずれも、「求められた対処法を表す情報を・・・伝える」という点で共通する。
よって、両者は、
「作業機から送信されてくる故障信号を受信し、
受信した故障信号に基づき、前記受信した故障信号の対処法を求め、
求められた前記対処法を表す情報をサービスマンへ伝える故障対処法出力方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
補正発明では、サービスマンへ伝える対処法を表す情報が、対処信号であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、対処信号ではない点。
<相違点2>
補正発明は、前記対処法を求めるにあたって、予め故障信号に対応する対処法を格納したデータベース装置を有しており、受信した前記情報に基づき前記データベース装置にアクセスして、前記受信した故障信号が示す故障の対処法を求めるのに対して、刊行物1に記載された発明は、そのようなデータベース装置を有しておらず、前記データベース装置にアクセスせずに故障の対処法を求める点。

(4)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
一般に、情報を伝える場合において、当該情報を表す信号として送ることによって伝えることは、例示するまでもなく従来周知の事項であるので、対処法を表す情報を、対処信号として送ることは、当業者であれば容易に想到しうる程度のことにすぎない。
<相違点2について>
刊行物2に記載された発明の「ファイル33」、「異常の信号データに対応した故障の処置方法の情報を含む複数の類型ケース」、「異常の信号データ」、「検索」、および「故障の処置方法」は、補正発明の「データベース装置」、「故障信号に対応する対処法」、「故障信号」、「アクセス」、および、「故障の処置法」にそれぞれ相当するから、刊行物2には、
「予め故障信号に対応する対処法を格納したデータベース装置と、入力された故障信号に基づき前記データベース装置にアクセスして、入力された故障信号が示す故障の対処法を求めるエキスパートシステム」の発明が記載されている。
そして、刊行物2に記載されたエキスパートシステムの発明を、刊行物1に記載された発明に適用するに際しては何ら阻害要因を認めることができないから、刊行物2に記載された発明を刊行物1に記載された発明に適用し、補正発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できることにすぎない。
さらに、補正発明の奏する作用効果は、刊行物1および2に記載された発明に比べ格別なものがあるとはいえない。

(5)むすび
以上のことから、補正発明は、刊行物1および2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定によりその特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年7月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項14に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年4月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項9および請求項14に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項9】
作業機から送信されてくる作業機各部の故障を表す故障信号を受信し、
受信した故障信号が示す故障の対処法を求め、
求められた前記対処法を表す対処信号を前記作業機およびサービスマンの少なくともいずれかに送信する故障対処法出力方法。」
「【請求項14】
請求項9に記載の故障対処法出力方法において、
前記故障信号の受信および前記対処信号の送信を移動体通信を介して行う。」

(2)本願出願前に頒布された刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1には、「2.(2)(2-1)(ア)〜(オ)」に記載した内容が記載されている。
また、「2.(2)(2-1)(エ)」には、車載電話機を用いて通信を行うことが記載されていることから、情報の受信および送信を移動体通信を介して行っていることは、当業者にとって明らかである。
以上のことから、刊行物1には、
「移動作業機械から送られてくる故障データを受信し、
受信した故障データに基づきベテランサービス員15は前記受信した故障データが示す故障の対処法を考察・判断し、
考察・判断された前記対処法の指示を現地サービス員12に出す故障の対処法の指示方法であって、
故障データの受信および故障の対処法の指示を移動体通信を介して行う。」
発明が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明の「移動作業機械」、「現地サービス員12」、および「故障の対処法の指示方法」は、それぞれ、本願発明の「作業機」、「サービスマン」、および「故障対処法出力方法」に相当する。
また、刊行物1に記載された発明は、故障データの受信を行っていることから、何らかの故障信号を送受信していることは明らかである。
さらに、刊行物1に記載された「考察・判断された指示を・・・出す」点と、本願発明の「求められた前記対処法を表す対処信号を・・・送信する」点は、いずれも、「求められた対処法を表す情報を・・・伝える」という点で共通する。
よって、両者は、
「作業機から送信されてくる故障信号を受信し、
受信した故障信号に基づき、前記受信した故障信号の示す故障の対処法を求め、
求められた前記対処法を表す情報をサービスマンへ伝える故障対処法出力方法であり、
前記故障対処法出力方法は、前記故障状態を示すための情報の受信および前記対処法を表す情報の送信を移動体通信を介して行う。」
である点で両者は一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、サービスマンへ伝える対処法を表す情報が、対処信号であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、対処信号ではない点。

(4)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
一般に、情報を伝える場合において、当該情報を表す信号を送ることによって伝えることは、例示するまでもなく従来周知の事項であるので、対処法を表す情報を、対処信号として送ることは、当業者であれば容易に想到しうる程度のことにすぎない。
さらに、本願発明の奏する作用効果は、刊行物1に記載された発明に比べ格別なものがあるとはいえない。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-31 
結審通知日 2005-02-01 
審決日 2005-02-15 
出願番号 特願2001-570926(P2001-570926)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02F)
P 1 8・ 575- Z (E02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 木原 裕
高橋 祐介
発明の名称 故障対処法出力方法、出力システムおよび出力装置  
代理人 永井 冬紀  
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