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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
管理番号 1114585
異議申立番号 異議2003-73466  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-07-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-02-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3433598号「ボールペン用油性インキ組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3433598号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3433598号の請求項1に係る発明は、平成7年12月27日に特許出願され、平成15年5月30日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人篠原敏明より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年9月3日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正の内容は以下のとおりである。
ア.訂正事項a
[請求項1]の「着色材」を「油溶性染料」と訂正する。
イ.訂正事項b
発明の詳細な説明の段落[0005]の「着色材」を「油溶性染料」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは請求項1に係るインキ組成物の着色材が油溶性染料であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、本件特許明細書に「着色材は、従来ボールペン用油性インキ組成物に使用されている油溶性染料が主として用いられるが」(段落[0006])と記載されており、新規事項を追加するものではない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記訂正事項bは発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する同法126条第2項及び同条第3項の規定に適合するから当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上述のように、訂正請求による訂正が認められるから、本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正後の請求項1に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。
「【請求項1】油溶性染料と、溶剤と、樹脂と、アミルベンゼン及び/またはトリメチルベンゼンとを少なくとも含むボールペン用油性インキ組成物。」

(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人篠原敏明は、下記の甲第1〜10号証(以下、「刊行物1〜10」という。)を提示し、訂正前の請求項1に係る発明は刊行物1又は2に記載された発明であるから、請求項1に係る発明の特許は特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり、また、請求項1に係る発明は刊行物1〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、さらに、請求項1に係る発明の特許は、刊行物2〜5、7〜10を参考にすると、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであるから、当該発明の特許は取り消されるべきである旨主張する。



刊行物1:特開昭55-152769号公報(特許異議申立人の提示した甲第1号証)
刊行物2:特開昭59-80476号公報(同甲第2号証)
刊行物3:IBERT MELLAN,"INDUSTRIAL SOLVENTS",SECOND EDITION,(1950),
BOOK DIVISION REINHOLD PUBLISHING CORPORATION,p.269-272( 同甲第3号証)
刊行物4:特開昭61-83270号公報(同甲第4号証)
刊行物5:特公平7-76321号公報(同甲第5号証)
刊行物6:川端克彦監修、ぺんてる株式会社編、「筆記用具の化学と材料」
、有限会社グレースラボラトリ、1995年1月20日第1版第
1刷発行、32〜36頁(同甲第6号証)
刊行物7:「化学大辞典3 縮刷版」、共立出版株式会社発行、1987年
2月15日縮刷版第30刷発行、509頁、「こうぎょうガソリ
ン」の項(同甲第7号証)
刊行物8:松井繁等、「ミネラルスピリット中の芳香族炭化水素について」
、鉄道薬学研究年報、(1982)、vol.30、p.157
〜161(同甲第8号証)
刊行物9:特開平5-1242号公報(同甲第9号証)
刊行物10:特開平7-310040号公報(甲第10号証)

なお、当審において通知した取消理由通知の概要は訂正前の請求項1に係る発明は上記刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、上記した申立ての理由の概要のうち特許法第29条第1項の規定に違反するものであるとの理由と概略同じである。

(3)上記刊行物に記載された事項
刊行物1:
ア)「顔料と、ポリマーと、該ポリマーの溶剤と、該溶剤に難溶性の水溶性染料とから成ることを特徴とするボールペンインキ。」(特許請求の範囲)
イ)「本発明は、油性ボールペンインキに関するものであり」(1頁左下欄8〜9行)
ウ)「本発明に用いる顔料は・・・溶剤に溶解せずに分散するものであれば、いずれも使用することができ、・・・通常の無機顔料、有機顔料、用いる溶剤に難溶性の染料・・・がある。」(2頁左下欄下から8〜末行)
エ)「ポリマーとしては、各種の合成樹脂、合成ゴム、天然樹脂・・・が使用可能であり・・・ポリビニルピロリドン・・・エポキシ樹脂・・・などがある。」(2頁右下欄下から6行〜3頁左上欄下から3行)
オ)「用いる溶剤の例としては・・・アミルベンゼン・・・ソルベントナフタ・・・等の炭化水素溶剤・・・が使用できる。」(3頁右上欄12行〜右下欄13行)
カ)ヘビーソルベントナフタを配合したインキの実施例(4頁実施例1,2)
刊行物2:
キ)「ゴム成分、揮発性溶剤、顔料および非揮発性溶剤からなるインキにおいて、微細粒径でインキ成分に対して不活性な無機化合物および/または半固状物質または/および融点が130℃以下の軟質固体物質を含有することを特徴とする消去可能なボールペン用インキ。」(特許請求の範囲)
ク)「ゴム成分は・・・スチレン-ブタジエン共重合体合成ゴム・・・などである。」(2頁左下欄下から5〜末行)
ケ)「本発明で使用する揮発性溶剤は・・・ソルベントナフサ、ヘビーナフサ・・・である。」(2頁右下欄7〜15行)
コ)「本発明で使用する顔料は・・・その粒径は約5ミクロン以下であることが好ましい。」(3頁左上欄3〜7行)
刊行物3:
サ)ヘビーソルベントナフタはおよそ50wt%のハイフラッシュナフサコンポーネントを含有すること(269頁24〜29行)
シ)ハイフラッシュナフサはおよそ45wt%のトリメチルベンゼンを含有すること(272頁3〜9行)
ス)ヘビーナフタは粗ヘビーソルベントナフタと同意であること(269頁20行)
刊行物4:
セ)「少なくとも金属粉顔料と、油溶性樹脂と、溶剤とよりなる金属粉顔料インキに於いて・・・特徴とする筆記具用金属粉顔料インキ。」(特許請求の範囲)
ソ)「溶剤としては・・・ミネラルスピリット等の石油系溶剤・・・があり」(2頁左下欄2〜下から2行)
タ)アルミニウム粉顔料、石油樹脂、キシレン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット、オイルレッドTR71が配合されたインキの実施例(3頁実施例1)
刊行物5:
チ)「ジルコアルミネート系カップリング剤で表面処理された顔料と、油溶性樹脂と溶剤とから少なくともなることを特徴とする筆記具用油性顔料インキ」(特許請求の範囲の請求項1)
ツ)溶剤としてミネラルスピリット等が用いられること(2頁3欄38行〜4欄5行)
テ)顔料、油溶性樹脂、溶剤としてメタノールとミネラルスピリットを配合したインキの実施例(3頁実施例5)
刊行物6:
ト)油性染料インキの分類として染料、溶剤、樹脂、界面活性剤、その他が挙げられ、染料として油溶性染料が、溶剤として工業ガソリンがあること(35頁表4)
ナ)油性顔料インキの分類として顔料、染料、分散媒溶剤、分散剤、樹脂、可塑剤、その他が挙げられ、染料として油溶性染料が、分散媒溶剤として工業ガソリンがあること(36頁表5)
刊行物7:
ニ)工業ガソリンの種類としてミネラルスピリットがあること
刊行物8:
ヌ)ミネラルスピリットはJISにおいて工業用ガソリン4号に分類され、1,2,4-トリメチルベンゼン等を含有すること(157頁下から11〜10行、161頁下から9〜7行)

(4)特許法第29条第1項について
刊行物1に記載されたヘビーソルベントナフタは、摘記事項サ)及びシ)によれば、トリメチルベンゼンを含有するものであるから、刊行物1には、摘記事項ア)〜カ)からみて、顔料、樹脂、溶剤としてトリメチルベンゼンを一部構成成分として含有するヘビーソルベントナフタ、溶剤に難溶性の水溶性染料を含有する油性ボールペンインキに関する発明が記載されている。
刊行物1に記載のヘビーソルベントナフタからトリメチルベンゼンを除いた残余の成分は本件発明の「溶剤」に相当するから、本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は「着色材、樹脂、溶剤、トリメチルベンゼンを含むボールペン用油性インキ組成物」である点で一致する。しかしながら、着色材が本件発明は油溶性染料であるのに対し、刊行物1に記載された発明では顔料と溶剤に難溶性の水溶性染料を併用したものである点で相違する。
したがって、本件発明は刊行物1に記載された発明ではない。

刊行物2に記載されたヘビーナフサは、摘記事項サ)〜ス)によれば、トリメチルベンゼンを含有するものであり、また、刊行物2に記載のインキは用いる溶剤からみて(摘記事項ケ)参照)油性であるといえるから、刊行物2には、摘記事項キ)〜コ)からみて、顔料、ゴム成分、揮発性溶剤としてトリメチルベンゼンを一部構成成分として含有するヘビーナフサ、非揮発性溶剤、微細粒径の無機化合物等を含有する油性ボールペン用インキに関する発明が記載されている。
刊行物2に記載のヘビーナフサからトリメチルベンゼンを除いた残余の成分は本件発明の「溶剤」に相当するから、本件発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、両者は「着色材、溶剤、トリメチルベンゼンを含むボールペン用油性インキ組成物」である点で一致する。しかしながら、着色材が本件発明は油溶性染料であるのに対し、刊行物2に記載された発明では顔料である点、本件発明においては樹脂を含有するのに対し、刊行物2に記載された発明においてはゴム成分を含有する点、さらに、刊行物2に記載された発明は微細粒径の無機化合物等を構成成分とするのに対し、本件発明では構成成分としない点で相違する。
したがって、本件発明は刊行物2に記載された発明ではない。

(5)特許法第29条第2項について
本件発明は、本件特許公報段落[0013]の記載からみて、ボールペン用油性インキ組成物にアミルベンゼン、トリメチルベンゼンを配合することによって初筆かすれを防止するものであり、本件特許公報段落[0017]には、かかる作用がアミルベンゼン、トリメチルベンゼンの有する溶解性とボールペンの構造によるものであることが説明されている。そして、これらの前提として、本件発明は、油溶性染料と、溶剤と、樹脂を含有するボールペン用油性インキ組成物に関するもので、上述のように、本件発明は少なくとも着色材が油溶性染料である点で刊行物1及び2に記載された発明とは異なるものである。
これに対して、摘記事項サ)〜ヌ)からみて、刊行物3には、ヘビーナフサ等の組成が記載されており、刊行物4には、金属粉顔料、油溶性樹脂、ミネラルスピリット等の溶剤を含有する筆記具用金属粉顔料インキについて記載されており、刊行物5には、ジルコアルミネート系カップリング剤で表面処理された顔料、油溶性樹脂、ミネラルスピリット等の溶剤を含有する筆記具用油性顔料インキについて記載されており(なお、刊行物4及び5には、該インキをボールペンに適用することは記載されていない。)、刊行物6には、油性染料インキ、油性顔料インキの原料の概説として油溶性染料、溶剤、樹脂等が用いられることが記載されており、刊行物7には、工業ガソリンの種類としてミネラルスピリットが記載されており、刊行物8はミネラルスピリット中にトリメチルベンゼンが存在することが記載されているが、これら刊行物3〜8の記載内容を総合的に勘案しても、そのいずれにも油溶性染料が配合されたボールペン用油性インキ組成物において初筆かすれを防止すること、また、ボールペン用油性インキ組成物にアミルベンゼン及び/又はトリメチルベンゼンを配合することによって初筆かすれを防止することは記載も示唆もされていないので、本件発明の目的である初筆かすれの少ないボールペン用油性インク組成物とすべく刊行物1及び2に記載された発明のインキに油溶性染料を配合することは当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。また、本件発明の長期間保存しても初筆かすれがほとんどないという効果(本件特許公報段落[0031]参照)が予測し得る範囲内のものであるということもできない。
したがって、本件発明は刊行物1〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)特許法第36条第6項について
異議申立人が本件発明に係る出願は特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないとする理由は、おおよそ次のa)及びb)のとおりである。
a)本件発明においてトリメチルベンゼンの含有量が規定されていないため、本件発明のインキ組成物は、従来の、ミネラルスピリット(異議申立人は甲第8号証を提出してミネラルスピリット中には少量のトリメチルベンゼンが含有されると主張している)を含有するボールペン用油性インキ組成物と区別ができないこと、及びb)本件発明のインキ組成物が、自ずとトリメチルベンゼンを含有する、刊行物2に記載のボールペン用インキ、刊行物4に記載の筆記具用金属粉顔料インキ、刊行物5記載の筆記具用油性顔料インキと区別できないこと。
しかし、a)について、本件発明はトリメチルベンゼン以外にも油溶性染料、溶剤、樹脂を含有するものであり、これらの成分によって従来のインキ組成物と区別できるものであり、b)について、上記(4)及び(5)ですでに示したように、本件発明のインキ組成物は刊行物2に記載のボールペン用インキとは異なるものであり、刊行物4及び5にはボールペン用とすることは記載されておらず、刊行物4及び5に記載のインキは本件発明のインキ組成物とは異なるものであるから、これらと区別することができるものであり、本件発明は明確でないとはいえない。
したがって、本件発明の特許に係る出願が特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

(7)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ボールペン用油性インキ組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 油溶性染料と、溶剤と、樹脂と、アミルベンゼン及び/またはトリメチルベンゼンとを少なくとも含むボールペン用油性インキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はボールペンに用いる油性インキ組成物に関する。具体的には、長期保存後でも書き始めの際のかすれ、いわゆる初筆かすれの少ないボールペン用インキ組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ボールペン用油性インキ組成物は、染料や顔料などの着色材と、グリコール類や高沸点のアルコール等の溶剤と、ケトン樹脂、キシレン樹脂、ロジン誘導樹脂などの紙面への定着を主な目的とした樹脂と、必要に応じてポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール等の粘度調整、流動特性調整を主な目的とした樹脂とからなっている。
【0003】
溶剤としてグリコール類を用いたものは、グリコール類が吸湿性を有している為、インキ組成物中の染料や樹脂が析出し、ペン先からのインキ吐出量が低下してかすれが発生したり、更に、イオン化した染料と空気中の酸素とによってボールや、ボールペンチップのソケット内部が腐食してペン先からのインキ吐出量が低下してかすれが発生したり、はなはだしい場合には筆記不能になったりするという問題を発生し易かった。この問題を解決するための提案は多数知られている。例えば、脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物の添加(特公昭39-27676号公報)や、グリコール溶剤と脂肪酸エステルの併用(特公昭40-3378号公報)、ポリエチレングリコール類のオレイルエーテル又はエステルの添加(特開昭55-54370号公報)、酸化防止剤と腐食抑制剤の併用(特公昭58-10436号公報)などである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した種々の提案にも関わらず、ボールペン用インキ組成物の品質は十分に満足するものとはなっていない。特に、長時間保存した後の、初筆かすれに関しては、はなはだ不十分なものであった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、油溶性染料と、溶剤と、樹脂と、アミルベンゼン及び/またはトリメチルベンゼンとを少なくとも含むボールペン用油性インキ組成物を要旨とするものである。
【0006】
以下詳細に説明する。着色材は、従来ボールペン用油性インキ組成物に使用されている油溶性染料が主として用いられるが、調色、筆跡特性改良のため顔料の併用も可能である。その具体例を挙げる。油溶性染料としては、ローダミンBベース(C.I.45170B、田岡染料製造(株)製)、ソルダンレッド3R(C.I.21260、中外化成(株)製)、メチルバイオレット2Bベース(C.I.42535B、米国、National Aniline Div.製)、ビクトリアブルーF4R(C.I.42563B)、ニグロシンベースLK(C.I.50415)(以上、独国BASF社製)、バリファーストイエロー#3104(C.I.13900A)、バリファーストイエロー#3105(C.I.18690)、オリエントスピリットブラックAB(C.I.50415)、バリファーストブラック#3804(C.I.12195)、バリファーストイエロー#1109、バリファーストオレンジ#2210、バリファーストレッド#1320、バリファーストブルー#1605、バリファーストバイオレット#1701(以上、オリエント化学工業(株)製)、スピロンブラックGMHスペシャル、スピロンイエローC-2GH、スピロンイエローC-GNH、スピロンレッドC-GH、スピロンレッドC-BH、スピロンブルーBPNH、スピロンブルーC-RH、スピロンバイオレットC-RH、S.P.T.オレンジ6、S.P.T.ブルー111(以上、保土ヶ谷化学工業(株)製)などが例示できる。
【0007】
顔料としてはPRINTEX95、同75、同45、同P、同XE2、(以上、デグサ.ジャパン(株)製)、#2400B、#1000、#MCF88、MA100、MA7、MA11、#50、#40、#30、CF9、#20B、(以上、三菱化成工業(株)製)、RAVEN7000、同2000、同1200、同1000、同500、同410、同14(以上、コロンビアカーボン日本(株)製)などのカーボンブラック、P25(日本アエロジル(株)製)などの酸化チタン、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム等の無機顔料や、ハンザイエロー10G、同5G、同3G、同4、同GR、同A、ベンジジンイエロー、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、キノリンイエロー、スダーン1、パーマネントオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGN、パーマネントブラウンFG、パラブラウン、パーマネントレッド4R、ファイヤーレッド、ブリリアントカーミン6B、ボルドー5B、チオインジゴレッド、ファーストバイオレットB、ジオキサンバイオレット、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、インジゴ、アシッドグリーンレーキ、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。
【0008】
これらの着色材は単独あるいは混合して使用することができる。その使用量はボールペン用油性インキ組成物全量に対して10〜45重量%が好ましい。
【0009】
溶剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル等のエーテル系溶剤、ベンジルアルコール、α-メチルベンジルアルコール等のアルコール系溶剤やプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、N-メチル-2-ピロリドンなどが使用できる。
【0010】
これらの溶剤は単独あるいは混合して使用することができる。その使用量はボールペン用油性インキ組成物全量に対して35〜80重量%が好ましい。
【0011】
樹脂は、定着性向上、筆跡の裏写り防止の他、粘度調整、染料の溶解促進の為に添加するものであり、シクロヘキサノン、アセトフェノン、尿素などのケトンとホルムアルデヒドとの縮合樹脂、シクロヘキサノンの縮合樹脂及びそれらを水素添加した樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、重合脂肪酸とポリアミン類との縮合体であるポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルアルキルエーテル、クマロン-インデン樹脂、ポリテルペン、キシレン樹脂、ロジン系樹脂やその水素添加物、ロジン変性されたマレイン酸樹脂、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合物、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物、ポリオキシエチレンやフェノール樹脂などが挙げられる。
【0012】
これらの樹脂は単独あるいは混合して使用することができる。その使用量はボールペン用油性インキ組成物全量に対して5〜50重量%が好ましい。
【0013】
アミルベンゼン及びトリメチルベンゼンは、ボールペン用油性インキ組成物の初筆かすれを防止する為に用いるものである。具体例としては、1-フェニルペンタン、イソアミルベンゼン、tert-アミルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン(別名プソイドクメン)や1,3,5-トリメチルベンゼン(別名メシチレン)などが挙げられる。
【0014】
アミルベンゼン及びトリメチルベンゼンは単独あるいは混合して使用することができる。その使用量はボールペン用油性インキ組成物全量に対して0.5〜5重量%が好ましい。
【0015】
尚、上記必須成分の他、ひまし油、ひまし油のポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルアミン、二硫化モリブデンなどの潤滑剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、分散剤などを適宜選択して使用してもよい。
【0016】
本ボールペン用油性インキ組成物の調製は、従来公知のインキ組成物の製造方法を適用することができる。即ち、着色材として染料を用いた場合には攪拌混合機で各成分を溶解することによってボールペン用油性インキ組成物を得ることができ、顔料を用いた場合には分散混合機で顔料を他の成分と共に分散させることによってボールペン用油性インキ組成物を得ることができる。なお、製造時、染料などの固形物を溶解させるために加熱することや、顔料などの粗大粒子を除去するためにフィルターを用いることなどは特に好ましい方法である。
【0017】
【作用】
本発明のボールペン用油性インキ組成物が初筆かすれに優れているのは、トリメチルベンゼン及びアミルベンゼンの有する優れた溶解性により、チップ先端部におけるインキが乾燥する際に、インキが造膜作用を示す事なく流動性を保っているため、ボール回転時にスムーズにインキがボールに転写し、吐出するためと推察される。
【0018】
【実施例】
以下、実施例、比較例を示す。
実施例1
スピロンバイオレットC-RH(紫色の油溶性染料、保土ヶ谷化学工業(株)製)
15重量部
バリファーストブラック#3802(黒色の油溶性染料、オリエント化学工業(株)製)
10重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 22重量部
ベンジルアルコール 20重量部
ハイラック222(ケトン樹脂、本州化学工業(株)製) 16重量部
ピリビニルピロリドン 5重量部
イソアミルベンゼン 2重量部
オキシエチレンドデシルアミン 10重量部
上記成分を攪拌機で加熱攪拌(80℃、4時間)した後、温時圧濾過し黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0019】
実施例2
スピロンブラックGMHスペシャル(黒色の油溶性染料、保土ヶ谷化学工業(株)製)
15重量部
バリファーストバイオレット#1701(紫色の油溶性染料、オリエント化学工業(株)製)
11重量部
ベンジルアルコール 30重量部
プロピレングリコール 10重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 10重量部
ハロン110H(ケトン樹脂、本州化学工業(株)製) 15重量部
1,3,5-トリメチルベンゼン 4重量部
ポリオキシエチレン(10)硬化ひまし油 5重量部
上記成分を攪拌機で加熱攪拌(80℃、4時間)した後、温時圧濾過し黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0020】
実施例3
バリファーストブルー#1607(青色の油溶性染料、オリエント化学工業(株)製)
30重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 30重量部
ベンジルアルコール 15重量部
ハロン110H(前述) 12重量部
1,2,4-トリメチルベンゼン 3重量部
ポリオキシエチレン(5)ドデシルアミン 10重量部
上記成分を攪拌機で加熱攪拌(80℃、3時間)した後、温時圧濾過し青色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0021】
実施例4
S.P.T.オレンジ6(橙色の油溶性染料、保土ヶ谷化学工業(株)製)
15重量部
スピロンレッドC-GH(赤色の油溶性染料、保土ヶ谷化学工業(株)製)
15重量部
スピロンイエローC-2GH(黄色の油溶性染料、保土ヶ谷化学工業(株)製)
3重量部
ヘキシレングリコール 20重量部
ベンジルアルコール 20重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10重量部
ハロン110H(前述) 10重量部
ポリビニルアセタール 4重量部
1,2,4-トリメチルベンゼン 1重量部
1-フェニルペンタン 2重量部
ポリオキシエチレン(20)オクタデシルアミン 1重量部
上記成分を攪拌機で加熱攪拌(70℃、6時間)した後、温時圧濾過し赤色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0022】
実施例5
スピロンバイオレットC-RH(前述) 15重量部
バリファーストブラック#3802(前述) 10重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 22重量部
ベンジルアルコール 20重量部
ハロン110H(前述) 16重量部
ポリビニルピロリドン 5重量部
1,3,5-トリメチルベンゼン 2重量部
オキシエチレンドデシルアミン 10重量部
上記成分を攪拌機で加熱攪拌(70℃、5時間)した後、温時圧濾過し黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0023】
比較例1
実施例1において、イソアミルベンゼンの代わりにオレイン酸を用いた以外は実施例1と同様になして黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0024】
比較例2
実施例2において、1,3,5-トリメチルベンゼンの代わりにポリオキシエチレン(10)硬化ひまし油を用いた以外は実施例2と同様になして黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0025】
比較例3
実施例3において、1,2,4-トリメチルベンゼンの代わりにひまし油を用いた以外は実施例3と同様になして赤色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0026】
上記、実施例1〜5、比較例1〜3で得たボールペン用油性インキ組成物について初筆かすれ試験を行なった。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
試験サンプルの作成:上記実施例1〜4及び比較例1〜3で得た各ボールペン用油性インキ組成物を市販の油性ボールペン(BK100、ぺんてる(株)製、ペン先はステンレス製チップと超硬合金のボールとよりなっている)と同様の筆記具に0.3g充填し、試験サンプルとした。
【0029】
初筆かすれ試験1:各試験サンプルを手書き筆記した後、キャップを外したまま横向きで50℃、30%の条件の恒温恒湿室内に24時間放置する。恒温恒湿室から取り出した後、22℃、湿度60%の室内で2時間放置し、室温に戻して、手書きで直線筆記する。その書き初めから正常筆記できた筆跡の位置までの長さを定規で測定する(単位mm)。
【0030】
初筆かすれ試験2:各試験サンプルを手書き筆記した後、キャップを外したまま横向きで40℃、50%の条件の恒温恒湿室内に3ヶ月放置する。恒温恒湿室から取り出した後、22℃、湿度60%の室内で2時間放置し、室温に戻して、手書きで直線筆記する。その書き始めから正常筆記できた筆跡の位置までの長さを定規で測定する(単位mm)。
【0031】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように本発明に係るボールペン用油性インキ組成物は、長期間保存しても初筆かすれがほとんど発生しないという優れた効果を有している。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-01-24 
出願番号 特願平7-352053
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C09D)
P 1 651・ 113- YA (C09D)
P 1 651・ 537- YA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 千弥子  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 鈴木 紀子
冨永 保
登録日 2003-05-30 
登録番号 特許第3433598号(P3433598)
権利者 ぺんてる株式会社
発明の名称 ボールペン用油性インキ組成物  

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